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【開催報告】Amazon QuickSight Roadshow 東京 2023

2023 年 8 月 4 日に「Amazon QuickSight Roadshow 東京 ~ QuickSight におけるデータドリブン経営、SaaS 組み込み、そして生成系 AI ~」を開催しました。真夏日に沢山の方々にお越しいただき、物理開催ならではの盛り上がりを再認識しました。丸一日かけて Amazon QuickSight に特化したコンテンツをお届けしました。本ブログでは各発表内容を紹介します。

オープニング・ Amazon QuickSight の最新アップデートを総まとめ!

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 QuickSightシニア事業開発マネージャー 伊東 大騎

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データの重要性が増す一方で、多くの企業がデータドリブン経営の実現に悩まれています。Amazon QuickSight はこれからのデータ活用に不可欠な要素を取り入れたBIツールで、クラウド・従量課金・モダンなユーザビリティといった土台の上にビルトイン AI ・組み込みアナリティクス・定型レポート・インメモリエンジン・ガバナンスといった先進的な機能を兼ね備えています。Amazon QuickSight は猛スピードで進化しており、この 2 年で 150 以上の機能をリリースしています。本セッションではこの 2 年近くであったリリースを総まとめしました。

NTTドコモのネットワーク事業における社内 QuickSight コミュニティの取り組み事例

株式会社NTTドコモ 無線アクセスデザイン部 エリア品質企画担当 中山 広実 氏

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全社員でのデータ活用の実現には文化やコミュニティの醸成が欠かせません。本セッションでは、NTTドコモのネットワーク事業における社内コミュニティの取り組みを紹介いただきました。ネットワーク事業ではネットワークの安定運用や品質向上を目的に全国のネットワークデータを分析しており、データ規模はテラバイト単位になります。この大規模データを分析者の目的ごとに異なる粒度・切り口で分析していますが、従来は Excel での作業が多く非効率であったため、Amazon QuickSight を使ったデータ分析の DX を目指しました。BI ツールのダッシュボード機能を通じて分析手法のノウハウを社内で広める、複数の大規模データを組み合わせた分析を気軽に行える環境を提供する、といった点にも着目しました。Amazon QuickSight の料金体系は利用者に Author として気軽に分析をしてほしいという要望と合っており、フルマネージドサービスであることから運用管理の手間が省け、AWS のデータベースと簡単に接続できる点が良かったです。

BI ツールの活用方法として、担当者がダッシュボードを準備して利用者は閲覧のみで活用するパターンがよくありますが、本取り組みでは分析したい人が Author として自由に分析できる環境を目指しました。なぜかというとネットワークの分析は定型化できないものが多く、データの種類と分析単位が多岐にわたるためです。また、よりデータの内容に精通している現場のネットワーク作業者が分析することで、新しい分析手法の発見に繋がることも期待しています。2022 年 4 月に本取り組みを開始し、今では 300 以上の Author と 3500 以上の Reader 閲覧にまで発展しました。

速いスピードで利用が広まった 1 つの理由にコミュニティ活動があります。社内コミュニティを通じてAmazon QuickSight の利活用を促進し社内認知を広めたいと考えました。また、ユーザー同士で相談しあえる場を作ることで運営側の問い合わせ対応の負荷を軽減できると考えました。今では全国各地のネットワーク担当者がコミュニティに参加しています。目指す姿はコミュニティの自走です。ユーザー同士で意見交換をし、質問に回答し、自主的に勉強会を開催する、という状態です。

まずは Slack での専用チャネルを設けることで気軽にコミュニケーションできるようにしました。導入当初は運営が何かを周知することにしか使われていませんでしたが、質問者にチャネルへの投稿を促し続けることで徐々に利用が活性化し、今ではコミュニティメンバーが運営よりも早く質問に回答してくれています。次が定期的な勉強会・事例共有会の開催です。レベル別のコンテンツを提供し、開催後には Slack 上で難易度のフィードバックを得るようにしています。事例では利用者が実際にどのように Amazon QuickSight を活用しているかを利用者から発信してもらっています。最近では普段の会議の中でも Amazon QuickSight で行った分析が共有されるようになりました。更には、特定の支店で生み出された分析手法を全国向けの会議で発表したことをきっかけに他支店へも広がっていくという理想的なノウハウ展開もありました。最後がダッシュボード作成イベントです。これを機に Amazon QuickSight 初心者でも実用的なダッシュボードを作成でき大好評でした。まずは使うきっかけを作ってあげることが大切と感じました。以上の取り組みより、コミュニティの活性化には交流の場を設けるだけではなく、粘り強く運用して広めていくことの重要性を学びました。

〜スタートアップ事例から学ぶ〜 ビジネスをのばす QuickSight の賢い使い方

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップソリューションアーキテクト 岸田 晃季

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Amazon QuickSight はスタートアップのお客様でも活発にご利用いただいております。スタートアップがビジネスを成長させるためには、プロダクトをマーケットにフィットさせるための戦略をたてることが必要となりますが、そのためには以下のようなプロダクトのフィードバックデータを回収し、機能を見直すというサイクルを高速化することが求められます。ですが、人的リソースが不足しがちなスタートアップにとっては、手が回りにくい領域です。

そのようなスタートアップにとって、有用な選択肢としてあがるのが Amazon QuickSight となります。以下のスライドは、スタートアップの成長フェーズにそったスタートアップの課題を Amazon QuickSight でのアプローチと照らし合わせて整理した図です。Amazon QuickSight は、スタートアップにおける各フェーズの課題に対して、柔軟に対応できる機能を備えています。

当日では、上記のフェーズに合わせて初期・中期・後期のビジネスフェーズのカスタマーの事例を紹介させていただきましたが、こちらのブログでは初期フェーズの事例を抜粋して紹介いたします。こちらのケースでは、まだ分析基盤が無くリリースしたてのプロダクトを運用するフェーズのお客様の例です。ユーザーの利用状況を蓄積している Amazon Aurora などの RDBMS から、Amazon QuickSight のコネクターを利用して直接データにアクセスしており、初期フェーズでも十分実装可能なシンプルな構成です。ここでは、Amazon Aurora 側のパフォーマンスへの影響が懸念されますが、Amazon QuickSight の SPICE というインメモリエンジンを利用することで、データを SPICE に取り込み Amazon Aurora 側への影響を軽減することができます。もし、画像を Amazon QuickSight 上で表示したい場合は、画像を Amazon S3 などでホスティングする形で、Amazon QuickSight のカスタムビジュアルコンテンツを利用して画像を参照することも可能です。

このように、Amazon QuickSight ではデータ分析基盤にリソースを割くことが難しいような初期フェーズのお客様でも手軽に構築できる機能が備わっております。加えて、Amazon QuickSight 自体はサーバーレスの構成、かつユーザーごとの従量課金制ですので、小さくはじめるスタートアップにとっても有用な選択肢となっております。他事例などの詳細は、別途公開されている資料をご参照ください。

QuickSight のコスト、管理していますか?新機能を用いたコスト管理のコツ

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 溝渕 匡

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Amazon QuickSight の利用が進むと想定どおりに使用されているか、コスト観点で気になってくると思います。コストの詳細を見るという点では Cost Explorer や AWS 使用状況レポートでは十分とは言えず、コストと使用状況レポート ( CUR ) にて確認が必要になってきます。しかし、CUR に表示される Amazon QuickSight のコスト情報は、次のように十分とは言えない状況が続いていました。

こうした問題への対応として、CUR で取得できる Amazon QuickSight に関する情報が増えました。

このアップデートにより、ユーザーレベルのコスト情報を用いた利用の妥当性評価 (全員分析を掲げた時、実際に全員が分析しているかなど) やコスト予測、コスト効率 (作成者に関するコスト比率から、生成したレポートやダッシュボードの価値を見るなど)、またセッション別のコストなどコストを基点とした様々な分析が可能になりました。CUR は Amazon QuickSight に簡単に取り込むこともでき、そうした情報についてもお伝えしました。詳細は資料をご覧ください。

QuickSight のユーザーコミュニティ活動のご紹介

ディップ株式会社 DX事業本部 プロダクト開発部データストラテジー課 課長 豊田 晋也 氏

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Amazon QuickSight にユーザーコミュニティがあるのをご存知でしたか?本セッションではユーザーコミュニティの運営メンバーより活動の背景と内容を紹介いただきました。Amazon QuickSight ユーザーとしてもっと発信したい、ユーザー目線での情報を収集したい、データをビジネス価値にするための工夫を知りたい、といったことを目的にユーザー主導で交流の場を設けています。記念すべきイベント第一回が 2023 年 7 月 14 日に行われ 100 名近くにライブ視聴いただきました。今後も活動を展開していくにあたり、運営メンバーと登壇者を募集しています!気軽に参加いただける集まりです。

Dive Deep パート1:QuickSight におけるアセット管理

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 QuickSightソリューションアーキテクト 坂下 和香奈

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Amazon QuickSight で作成したアセット(データセットや分析、ダッシュボード)が増えてくると、アセットの管理が重要になります。開発環境から本番環境への移行、バックアップやリストア、SaaS 環境での各テナントへのダッシュボードへの提供など、簡単にスムーズに実施できることが求められます。坂下から、昨年末よりリリースされたアセット管理の API / CLI について、発表させていただきました。

昨年末までの Amazon QuickSight においては、アセット管理において、「簡単にダッシュボードの生成ができない」「テンプレートを使用したバックアップやインポート・エクスポートは効率的でない」といった課題がありました。

昨年の AWS re:Invent で発表された新しいAPI( Assets as Code : AaC ) では、ダッシュボードや分析のビジュアル情報を JSON / YAML 形式で出力することができるようになりました。

これまで、分析やダッシュボードのバックアップ、移行に使用していた Template(テンプレート)について、まず確認しました。テンプレートでは、ビジュアル情報はスナップショットとして取得されますが、ビジュアルの内容変更はできません。テンプレートにはバージョン管理機能があり、使用するデータセットをプレースホルダとして切り替える機能をもっていますが、アカウント内での操作となるため、事業継続計画や災害復旧には利用できません。

ダッシュボードを、開発アカウント ( AWS Account A ) から本番アカウント ( AWS Account B ) に移行するフローになります。分析からテンプレートを作成し、それを移行し権限変更をした後、エイリアスを作成し、それをもとにダッシュボードを作成します。また、ダッシュボードを使用しているデータセットやデータソースなどのアセットも、各々定義を取得し、書き換えて、移行する必要があります。

Assets as Code ( AaC ) と呼ばれる新しい API になります。テンプレートとは異なり、テンプレートでできなかったことができるようになっています。

同じダッシュボードの移行を、Assets as Code ( AaC ) にて実施した場合のワークフローです。ダッシュボードからビジュアル情報を取り出し、それを利用して、本番アカウントでダッシュボードを作成します。ただし、データセットやデータソースなど依存アセットについては、テンプレートの時と手順は変わりません。

Assets as Bundle ( AaB ) と呼ばれる新しい API が今年 5 月に発表されています。この API は、Assets as Code ( AaC ) の機能拡張版であるため、できること・できないことは基本 AaC と同じですが、移行をよりスムーズにやれるよう、依存アセットも合わせて定義情報をエクスポート、インポートできるようになっています。

ダッシュボードの移行を、Assets as Bundle ( AaB ) にて実施した場合のワークフローです。

Template、Assets as Code ( AaC )、Assets as Bundle ( AaB )の比較になります。
シート対応とは、分析からダッシュボード公開時にシート選択が昨年末より可能になっており、分析とダッシュボードのシートが異なる場合の対応になります。また、Boto3 / CLI バージョンについては、移行元・移行先での API / CLI 利用時に、Boto3 / CLI バージョンを意識して利用する必要があるかどうかという比較項目になります。

用途や要件に応じて最適なものを選択すること、また、Assets as Code ( AaC )、Assets as Bundle ( AaB )はまだ新しい API で未完成な部分もあるので、今後の機能アップデートや拡張について敏感になることを、お伝えさせていただきました。

Dive Deep パート2:フォルダと API を活用したシングルアカウントでの複数環境運用

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアソリューションアーキテクト 宮﨑 太郎

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Amazon QuickSight の利用が進むと開発のステージに対応した環境管理のニーズが発生します。本セッションでは、Amazon QuickSight を使用する場合の環境管理の選択肢についてお話しし、特にその中でも比較的簡単に始めることが可能なフォルダ機能を活用したシングルアカウントでの複数環境運用方法についてお話ししました。

ダッシュボード構築を進めると次第に関係者が増え、データセットや分析、ダッシュボードといったアセットへの変更で本番環境や業務運用への影響を出してしまうリスクが大きくなってきます。これを受け、活用が進んだ利用者様の多くでアセットの相互影響を少なくするための環境分離ニーズが発生しています。

Amazon QuickSight において環境分離を行う方法は大きく 3 種類となります。それぞれ、アカウントレベルで分離する方法、1アカウント内を名前空間で分離する方法、1アカウント内をフォルダで分離する方法です。

各パターンのメリットデメリットは様々ですが、今回は最もシンプルな分離方法であるフォルダ分離についてご紹介します。

フォルダを利用した分離に登場する権限管理要素間の関係はこちらの図のようになります。まず、アセットについてはそれぞれ開発・本番のフォルダに格納し、それらのフォルダに対し、操作が可能なグループとユーザを設定することでアクセス権を管理・制限します。

共有フォルダでの環境管理のイメージはこのような形となります。管理者・開発者・QA(品質保証)・ビジネスユーザー等のユーザーグループごとに開発・テスト・本番といった環境を表すフォルダへのアクセス権限を管理し、変更・検証が終わったアセットをフォルダ間で移動していくことによって簡易的な複数環境管理を実現します。

フォルダを利用した環境分離においては、フォルダ間でのリソース共有の可否を軸として大きく二つ × 利便性の観点で二つのかけ合わせにより 4 つの実装パターンを想定しています。

リソース共有パターンにおいては、データソース・データセットは環境間で共有し、最新のダッシュボードのみ環境間で共有していきます。こちらのパターンでは、環境間を移動する対象がダッシュボードに限定されるため管理がシンプルになるという利点がある一方、おおもとのデータソース・データセットを変更すると本番側にも影響が出てしまうという懸念もあります。

リソース分離パターンにおいては、リソース共有パターンの懸念となっていたポイントを解消し、データソース・データセットのレベルから環境を分離します。これにより、環境間で影響を与えることなく安全なアセット管理を行うことが可能です。一方で、リソース共有パターンと比較した場合にアセットを環境数分、ある種重複して管理する必要があったり、環境間リリースの際には手順が複雑化しがちであったりといった管理面での煩雑さがデメリットとなってきます。このような煩雑さについては、CLI / API の採用や手順の標準化等によりある程度軽減することも可能なため、規模が大きくなる場合にはプログラムによる管理も選択肢としてご検討ください。

ここまで実装パターンのご紹介をいたしましたが、大きくは「環境間でどこまでリソースを共有してよいか」を軸として考え、さらにその中で CLI / API での効率化の必要性をご判断頂くと選定の根拠が明確になるかと思われますので、参考にしていただければ幸いです。

最後にサマリとなります。Amazon QuickSight では必要とする要件・ユースケースに応じた複数の環境分離の選択肢があります。本セッションではその中でも手軽に分離が可能なフォルダ分離パターンについてご紹介しました。本パターンでは、主にデータの共有レベルが判断のキーポイントとなりますので、ご利用の形態に応じご検討ください。また、各操作については画面 ( GUI ) に加え、プログラム ( CLI / API ) での操作による運用自動化・効率化も可能となりますので、是非ご利用いただければと思います。

Dive Deepパート3:データセットパラメータでクエリーを最適化し、CloudWatch で測定

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 QuickSightソリューションアーキテクト 坂下 和香奈

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ダイレクトクエリーを使用して大規模なデータを、Amazon QuickSight 上で扱う場合パフォーマンスが危惧されます。Amazon QuickSight で大規模なデータを自由に利用させるより、データ管理者側でそれを制御できる機能「データセットパラメータ」が、今年 5 月に発表されました。坂下より、その機能紹介とデモ、さらにダッシュボードのロード時間を CloudWatch にて測定するデモを紹介させていただきました。

データセットパラメータは、データセット作成時に利用するパラメータで、主にカスタム SQL や計算フィールドで使用できます。作成されたパラメータは、分析のパラメータとマッピングすることにより、可視化時にその値を SQL 内に置き換えてくれます。

ユースケースとしては、主にクエリー作成の自由度が上がるため、データソース側の機能を引き出すようなより柔軟な処理が実現でき、パフォーマンスの改善につながります。それ以外にも、大規模データにてダッシュボードを作成する場合のデータセットとして汎用化させることができます。

デモでは、Amazon Athena 経由で Amazon S3 にある約 2000 万件のデータを、データセットパラメータを使用して航続距離上位フィルターしダッシュボードを作成するところをデモしました。

作成したデータセットパラメータ ( $top ) と、そのパラメータを利用したカスタム SQL 、さらにそのパラメータにリンクされた分析上のスライダーになります。

デモの中で、どのようなビジュアルクエリが Amazon Athena に送られていたかも確認しました。作成したカスタム SQL がサブクエリー化され、実行されていること、さらにデータセットパラメータ ( $top ) に、スライダーの値が入っていることが確認できます。

次に、公開されたダッシュボードがロードされた時間を、CloudWatch で確認するデモを実施しました。

データセットパラメータを利用すると、大規模データのダイレクトクエリ利用時にパフォーマンスを最適化できることが確認できましたが、現時点でいくつかの制限事項があります。その内容について、最後に確認させていただきました。

Amazon QuickSight を活用した大学 IR ダッシュボードサービス「 IRQuA 」サービス立ち上げ事例

ヴェルク株式会社 取締役 / アーキテクト 津久井 浩太郎 氏

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社外向けソリューションで Amazon QuickSight を利用するユースケースもあります。ヴェルクでは IRQuA という大学向けデータ分析ソリューションを運営しています。大学 Institutional Research( IR )とは教育機関が自身の教育や研究の質、学生の成功、運営の効率性などの向上を目的にデータ活用することを示します。少子化による学生数の減少が進む一方で大学の数は増え定員割れが発生していることから、データを駆使した大学経営の効率化が喫緊の課題です。大学 IR におけるデータは変更頻度が高く分析しずらい形で保管されている傾向があり、かつ大学側にノウハウが不足していることから、従来のソリューションはワンオフ型で高額な傾向がりました。そこで、IRQuA はクラウド型かつ低コストで提供できる形とし、前提知識がなくても簡単に使いこなせ安価にデータ基盤を構築できることをコンセプトにしています。

既に IRQuA を導入した大学関係者から沢山の声が届いています。見やすい、直感的で簡単、専門家のノウハウが反映されている、価格が手頃、データをもとに議論が生まれるようになった、好きなときにデータを活用できるようになった、など。BI ツールの選定に関しては下記の理由で Amazon QuickSight を採用しました。評価段階ではお客様にも試していただきました。

下記はサンプルデータを使ったデモになります。志願倍率の経年推移、入学定員充足率、入学の歩留まり、など大学 IR にまつわるデータを使いやすい形に可視化して提供しています。大学によってはタブレットを使って執行部にダッシュボードを見せています。

当初は中小規模の大学を対象としていましたが、蓋を開けると大規模大学でもニーズがあることが分かりました。今後のビジョンとして大学の共通的なプラットフォームにしていきたいと考えています。IRQuA を通じて教職員同氏の横の繋がりを作ることで大学 IR をさらに広めていきたいと思います。

SaaS で QuickSight を活用するためのポイント 〜設計から運用まで〜

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 高橋 佑里子

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BI ツールである Amazon QuickSight を SaaS に埋め込むと、グラフのビジュアルなどの実装コストを省きながらエンドユーザーに SaaS 内のデータ活用機能を提供することができます。データ活用機能を提供することで、SaaS のエンドユーザーの満足度を高めることができると考えられます。本セッションでは、テナント間のアクセス制御が重要な SaaS で Amazon QuickSight を活用するポイントとして、SaaS に QuickSight を埋め込む場合のユースケース別のアクセス管理方法に重点を置いてお話しさせていただきました。

閲覧機能のみを提供するユースケースの場合、Amazon QuickSight 上でユーザーを作成して権限制御をする方法以外にも、Amazon QuickSight 上でユーザーを作成せずに匿名アクセスと行レベルセキュリティ機能を組み合わせることで閲覧者の権限制御を行うことができます。ユーザー管理が不要なので、簡単に始めることができるというのがポイントです。閲覧機能のみを提供したい場合には選択肢の 1 つにしていただけると幸いです。

生命保険会社の営業部門における予測分析のビジネス活用と得られた学び

アクサ生命保険株式会社 営業戦略本部営業デジタル部パフォーマンスレポーティンググループ 寄主 奈美 氏

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アクサ生命保険ではデータ基盤を全社で活用しており、標準 BI ツールである Amazon QuickSight のアクティブユーザー数も年々増加しています。パフォーマンスレポーティンググループでは全営業部門の成績データを用いて Amazon QuickSight 上にレポートを作成しています。このようにデータ分析の環境が整ってきたということもあり、次は予測分析を取り入れることにしました。

これまでも予測の作成は行っていましたが、Excel を使った手作業によるものであったため膨大な手間と工数が発生していたのと、担当者の経験と実績に頼り属人化していました。そこで、機械学習を駆使した予測作成に Amazon Forecast を使うことにしました。Amazon QuickSight にも ML Insight がありますが、今回は天気などの外部データも取り込むことで精度を高める狙いがありました。もちろん予測結果は Amazon QuickSight で可視化することで営業が活用しやすい形にしています。

データサイエンスや機械学習の知識・経験がない中でのチャレンジであったため試行錯誤の連続でした。まずは学習データを色々と試し、最初は思いつく限りのデータを投入しました。どうすれば精度を高められるか検証していく中で徐々に改善し、過去データの実績に対する予測値の評価で良い結果を得ることができました。次に、Amazon Forecast のローリングフォーキャスト機能を使うことで Predictor を再学習させることなく追加データから予測値を更新できるようにしました。これで予測を自動的に日時更新できるようになりました。

試行錯誤を経て Amazon QuickSight 上での Simulation Forecast が完成しました。従来は月末最終予測値にしか対応できていませんでしたが、Amazon Forecast で予測の自動化をすることで全期間の結果をタイムリーに Amazon QuickSight 上で分析できるようになりました。

この最新の予測レポートをより多くの営業に使ってもらうための工夫も検討しました。現状は Amazon QuickSight レポートへのリンクが複数ある、沢山ある中から関連するものを検索するのが大変、という課題がありました。そこで、社員全員が閲覧する社内イントラサイトにダッシュボードを組み込むことでストレスフリーなアクセスを実現しました。

本取り組みを通じて、まず予測作成の工数がゼロになりました。予測の精度は上がり、担当者の知見に依存することがなくなったため客観性も改善しました。そしてアクティブユーザー数も一気に増え、社員の2人に1人が利用しているという状況になりました。ダッシュボードが組み込まれたページ上に利用者アンケートを貼り付けることで満足度を調査できるようにし、ユーザーごとのアクセス状況を確認するダッシュボードから効果測定をしています。既により高精度な予測作成に取り組んでおり、Amazon SageMaker Canvas の検証も始めています。

ITでもデータサイエンスでもないビジネス部門が機械学習と予測分析にチャレンジしましたが、ビジネス部門で試行する良さが沢山ありました。慣れるのに時間はかかりますが、欲しいものをすぐに作れるというメリットがあり、現場業務に熟知しているのでより適確に投入データやアウトプットについて判断できます。そして別部門あるいは企業に依存することがなくなるのでより素早く進めることができます。

QuickSight のポテンシャルを引き上げる SageMaker Canvas 連携で実現するノーコード予測分析

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 中島 佑樹
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 アナリティクススペシャリストソリューションアーキテクト 佐藤 祥多

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中島と佐藤からは Amazon QuickSight に Amazon SageMaker Canvas で生成した機械学習( ML )モデルや予測結果を連携させる具体的な方法と得られるインサイトについて Demo (動画参照) を実施しました。

Amazon CEO Andy Jassy のこのメッセージは、機械学習の予測がもたらす価値を端的に表していると思います。予測という言葉は、機械学習のモデルが出力する、推論や分類や将来の数字など広い意味を含みます。昨今話題の生成系 AI が生成するテキストや画像もその結果です。機械学習はデータを収集学習するプロセスを自動化することにより顧客体験を半自動的に改善する仕組みを提供します。半自動と言っているのは、学習データを人手で付与することもあるからです。to B, to C に限らず IT システムがもたらす顧客体験の向上のために、従来の機械学習を使用しないシステムでは人手でアプリケーションを改修する必要がありました。この顧客体験の改善の半自動化によって、ビジネスにおける PDCA を素早く実施し、効果・価値を迅速に創出できるのです。

強力なビジネスインパクトを与える機械学習ですが、残念なことに、機械学習を実行できるデータサイエンスリソースは限られています。右の図は、機械学習におけるフライホイールです。顧客体験が向上されれば、より多くのユーザが利用します。ユーザが増えれば多くのデータ集まります。多くのデータが集まれば機械学習の予測はより精度が高く優れたものになるでしょう。そして、顧客体験が向上するのです。ここで、優れた機械学習アプリケーションを開発する人手が足りないことがボトルネックとなります。

この課題を解決するために Amazon SageMaker Canvas は生まれました。Amazon SageMaker Canvas を使用すると、Amazon QuickSight が対象とするビジネスアナリストやドメインエキスパートは、ML の経験がなくても、非常に正確な ML 予測を簡単に生成できます。Amazon SageMaker Canvasを使用すると、ビジネスアナリストはクラウドやオンプレミスのデータソースに簡単にアクセスしてデータをインポートし、特徴量エンジニアリング、モデル Selection、トレーニングを AWS の AutoML イノベーションにより実行します。Amazon SageMaker Canvas には重要な特徴が何かを分析する機能や What if 分析も含まれています。Amazon SageMaker Canvas には使用量ベースの価格設定があり、前払い料金やライセンスなしで、使用した分だけ支払うことができます。これにより、コード不要の ML ツールの総所有コストを大幅に削減可能です。

2023 年に入り、Amazon SageMaker Canvas の予測結果やモデルを Amazon QuickSight と共有する機能がサポートされました。従来は Amazon SageMaker Canvas の予測結果やモデルを Amazon QuickSight で分析するためには、予測結果を連携する仕組みを別途構築したり、システム管理者に手動でのファイル配置をお願いしたりする場合もありました。この機能より、ビジネスアナリストは Amazon SageMaker Canvas で生成された ML 予測やモデルを活用し、Amazon QuickSight のインタラクティブなダッシュボードで分析を充実させることができます。そして、このダッシュボードから得たインサイトを使用して、日々のデータドリブンな意思決定が加速します。

このセッションでは小売と広告のユースケースを用いて Live Demo を実施しました。詳細は動画をご覧いただけますと幸いです。

最後のまとめです。まず、本セッションではビジネスで予測することの価値を説明しました。未来を予測することでビジネス価値が創出される点を強調しました。また、ノーコード予測分析のソリューションとして Amazon SageMaker を説明しました。Amazon SageMaker Canvas を利用することでブロッカーだった専門的な人材の用意をすることなく機械学習のパワーを得られます。Amazon SageMaker Canvas と Amazon QuickSightを使ったデモとして小売データと広告データを使ったデモを実施しました。Amazon QuickSightを使うことで Amazon SageMaker Canvas で得られた予測を更に分析できることを説明しました。

キーノート:BI における生成 AI

AWS, ASEAN AI/ML Specialist, Dr. Chomchana Trevai
AWS, QuickSight Go-To-Market Lead for Asia Pacific & Japan, Michael Armentano

本セッションは非公開となりますが、関連する情報についてはこちらの Big Data Blog をご覧ください。

まとめ

本イベントでは Amazon QuickSight とデータ活用に関するトピックを満遍なくお届けしました。ユースケース別のセッションではデータドリブン文化を醸成するためのコミュニティ活動に関する事例や SaaS における BI ツールを駆使したデータサービスの価値についてご紹介しました。今後はますます AI の利活用が進んでいき、Amazon QuickSight と AWS の AI サービスを組み合わせることでビジネス部門が自発的に予測分析を取り入れることができます。更には、Amazon QuickSight における生成系 AI( Generative BI )の未来像もお見せしました。データ分析・可視化における全く新しい世界観がすぐそこまできています。今後も Amazon QuickSight の動向から目が離せません!

データ事業本部 事業開発 伊東 大騎