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国際女性デーを記念して開催された「Empower Through The Cloud Event」

みなさん、こんにちは。AWS で Employees Engagement & Internal Communications を担当しております藤谷ひとみです。3 月 8 日は International Women’s Day(国際女性デー)と言って、女性たちが歴史的に果たしてきた活躍や貢献を称える日です。AWS では、この国際女性デーを記念して、さまざまな社内外イベントを開催いたしましたが、本ブログではその中の一例をご紹介したいと思います。

3 月 23 日に外部にオンラインで配信された「Empower Through The Cloud Event」は、Women In Technology Japan (WITJ) が主催し、AWS とメルカリの 2 社の協賛によって実現しました。日本社会、特に IT 業界における女性の活躍や、クラウド人材の創出をさらに促進するために私たちは何をすべきか、さまざまな有識者を招いてディスカッションが行われました。

女性を取り巻く社会的バイアスにどう対処するか:シニアリーダーによる Fire-side chat

最初に行われたのは、それぞれ金融・IT 業界において、長らく経営戦略の一環として多様性の受け入れに尽力してきた 2 名のシニアリーダーによる Fire-side chat です。一人目は、キャシー松井氏です。キャシー氏は Goldman Sachs に在籍中の 1999 年に「ウーマノミクス」を提唱した方です。その概念は広く世界に浸透し、今でも多くの企業や投資家に影響を与えています。もう一人は、AWS Japan の代表である長崎忠雄です。彼は、AWS Japan にて幅広い業界のお客様のデジタルトランスフォーメーションに貢献する傍ら、ダイバーシティーの推進を訴えるとともに、AWS Japan の従業員に対してもコミットを奨励しています。

Fire-side chat では、この両名が日本を取り巻くジェンダー平等の現状や、解決の糸口などについて話し合いました。まず長崎は、日本社会におけるジェンダー平等がなかなか進まない要因として、Diversity & Inclusion(多様性の受け入れ)がなぜ大切なのかが理解されていないことを指摘。「腹落ちしてないけど、みんなやっているし、やらなきゃいけないから・・・」という考え方にもあるのではないかという持論を展開。それに対してキャシー氏からは、20 年ほど前にご自身が育児をしながらキャリアを継続しようと苦労していた時の経験談を紹介。その時に、自分と同じように苦労している Working Mother たちが他にも多くいることを知り、多くの優秀な人材が活躍する機会が失われている現状は、日本社会全体にとっての大きな損失であると思ったことが、「ウーマノミクス」を提唱するに至った経緯であるとお話いただきました。

次に話し合われたのは「思い込み(バイアス)」について。長崎は、日本ではまだまだ家事・育児は女性の役割であるというバイアスがいまだに根強く残っていることや、国内で偏差値の高い大学では女子学生の割合が 50% を大きく下回っており、特に理数系の学部では 30% 程度しかおらず OECD 諸国の中で最も低い数字であることを紹介し、これらの不均衡を解決する必要があると訴えました。キャシー氏によると、このようなバイアスは日本だけではないとのこと。例えば海外の TV コマーシャルでも家で料理を作っているのが女性であったり、企業の新卒採用のソースが(女子学生の割合が低い)特定の大学・学部に偏っていたり。これらのバイアスを取り除くには、多様性がもたらす価値を認識すること、そしてそれを一人ひとりが正しく理解することが大切。特に印象に残った キャシー氏のメッセージとして次の 2 つをご紹介します。「同質の中にいることは居心地がいい。でもそれでは革新的な考えや成長は生まれない」、「金融・IT 業界で活躍する女性を増やすには、彼女たちに早い段階から将来のロールモデルを見せて啓蒙することが大切」。

女性を取り巻く社会的バリアに加え、職場における女性に対するバリアにも話が広がりました。能力やポテンシャルは高いのに、新しいプロジェクトに自分から手を挙げたり、自らのキャリアアップのために積極的にアクションを取ったりするのは、男性に比べて女性の方が困難に感じる人が多いように見受けられますと長崎。キャシー氏は一昨年に出版された著書、『女性社員の育て方、教えます』の中から、一般的に男性より女性の方が自己承認が低いこと、それを見越した上で、上司は女性の(ないしは性別に関わらず自己承認が低い)部下に対しては、少し多めに言葉をかける、ほめる、そして支援するべきというヒントも教えていただきました。

技術職にて活躍する女性による Panel

次はメルカリ、AWS でそれぞれ技術職において活躍している女性 2 名に登壇いただき、パネルディスカッション形式でお話を伺いました。一人目は、メルカリグループの成澤真由美氏です。 成澤氏は音楽教育事業から IT に転身され、現在はメルペイの CPO(Chief Product Officer)として多岐にわたるビジネスを牽引されています。 もう一人は、AWS のソリューションアーキテクトの宇都宮聖子です。大学院で情報理工学の博士号を取得後、国立情報学研究所や自動車業界を経て、現在は AWS のソリューションアーキテクトとして活躍しています。この両名からは技術職の魅力やチャレンジなどについて伺いました。

成澤氏からは、ご自身が音楽教育事業から IT 業界へ転身された経緯や、この業界で活躍している人がみな、必ずしも情報工学系の学歴・経歴を持っているわけではなく、また多様な人材に活躍の機会が与えられていることについてお話いただきました。さらには、メルカリグループの経営チームで実行している「重要なミッションに適切な人材を積極的に抜擢(Empowerment)する文化」をご紹介いただき、ダイバーシティーの浸透を進めるには、目の前にある出来ることから始めること、続けること、そしてやめないことが大切であり、そうすることで最終的に結果がついてくることを教えていただきました。

一方 AWS の宇都宮は、自分が仕事で携わるテクノロジーが世の中を変えていく過程を、目の当たりにできる面白さ、エンジニア職に就く女性はまだ少ないものの、女性であるが故の仕事上の不利益はなく、むしろ育児と仕事が両立しやすい在宅勤務や、時間管理のしやすさ、男性も女性と同様に育児休暇をとる性差のない環境について話していただきました。さらに彼女は、自身の母校で毎年出張授業を開催し、次世代を担う高校生がクラウドや AI などの最先端技術に触れながらグローバル企業での多様なキャリアに触れる機会を提供しており、性別によるバイアスを取り除いた啓蒙活動を行っていることも紹介してくれました。

またお二人から技術職の魅力について、「Code を入力して Enter Key を押すだけで、即時に全世界に自分の思いが伝えられるスピードとスケール感」、「努力して習得したテクノロジーは、嘘をつかない」など、とても興味深いコメントもいただきました。

シニアリーダーの経験談に基づくダイバーシティーの考え方、技術職に就いている女性の仕事観など、どのエピソードも非常に示唆に富んだもので、230 名を超えた視聴者からも「とても学びの多い内容でした」、「キャシー氏のおっしゃった“自分が知らないものにはなれない”と言う言葉が印象に残りました。私もメンターを見つけたいと思います」と言ったフィードバックがありました。講演をいただいた皆様、そしてオンラインで参加した視聴者の皆様にあらためて感謝申し上げます。

今回のこのイベントを主催いただいた WITJ は、IT 業界で働いている、もしくは興味がある女性たちのキャリアアップ支援を目的として様々な活動を行っており、その創設者である Annie Chang 氏は長らく日本の IT 業界におけるジェンダー平等のために尽力してこられた方です。彼女は最後の Closing remark の中で、「日本のジェンダー平等には、まだまだ課題が多く残されているのが現状であり、個人、企業、そして私たち全員が改善のためのアクションを取ることが大切」と呼び掛けています。

キャシー氏と初対談を終えた長崎は、「日本のジェンダー平等はキャシー氏のような expertise を持った提唱者がいらっしゃることで、もっと変わっていくはず。長引く世界的パンデミックによる影響で、デジタル化や SDGs へのフォーカスがさらに求められる中、Diversity & Inclusion(多様性の受け入れ)は避けて通ることのできない経営課題であり、AWS のテクノロジーを通じてさらに社会に貢献していきたい」と振り返ります。

日本社会におけるジェンダー平等の実現のためにできること

昨今、多くの企業や組織で注目を浴びている Diversity & Inclusion(多様性の受け入れ)は、長らく社会で「あたりまえ」とされてきた慣習や価値観に対して、新しい考え方を提唱するという、とてもチャレンジングで時間がかかるタスクであり、一朝一夕で数値目標が達成されるようなものではありません。また数値目標の達成だけで測れるものでもありません。私自身も前職からこれまで約 15 年間 Diversity & Inclusion に関連する業務に携わっており、AWS に入社して以降も、多方面で workshop 等を行っています。時として「私一人がこれをやったところで、一体何が変わるのだろう」と、途方もなく長い道のりと無力感にさいなまれることもありますが、「明けない夜はない」と信じて、今後もライフワークとして微力ながら継続していきたいと思います。この拙稿が、ご高覧くださった方々にとって、「何かできることはないか」と考えていただくようなきっかけになれば、こんなに嬉しいことはありません。

また次回のブログでお会いしましょう


AWS EBC にてお待ちしています。

私、藤谷ひとみが、お客様向けに Amazon/AWS における Diversity & Inclusion の定義、Unconscious Bias(無意識の偏見)が起こるメカニズム、具体的な取り組みなどについて、Workshop 形式にて質疑応答を交えながらお話いたします。ご関心ある方は是非ご用命ください。お待ちしております!

詳細はこちらになります。ご用命は弊社の担当営業にご連絡ください。



藤谷 ひとみ
アマゾンウエブサービスジャパン合同会社
事業戦略推進統括本部
Engagement & Communications マネジャー
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