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生成 AI アプリをノーコードで作成・社内配布できる GenU ユースケースビルダー

AWS ジャパンでは、お客様の生成 AI 活用促進のため様々な支援を提供しています。有志により開発されているオープンソースのサンプルアセット generative-ai-use-cases-jp (GenU) もその一つです。GenU は、すぐに業務活用できる生成 AI ユースケース集として 2023 年に誕生し、今日まで Amazon Bedrock の新機能追従や新たなユースケースの拡充など、精力的なアップデートを継続しています。本記事では、2024 年 11 月に GenU の新たな機能としてリリースされた、ノーコードの生成 AI アプリ開発環境「ユースケースビルダー」についてご紹介します。

GenU とは

generative-ai-use-cases-jp (GenU) は aws-samples で公開されている生成 AI アプリケーションのサンプル実装です。オープンソースライセンスで提供されており、お客様はアプリケーションを無料で迅速に AWS アカウント上に構築いただけます※1。AWS や IT の知識不要で、簡単に展開できる方法が用意されており、すぐに利用開始することが可能です。アプリケーションは AWS のサーバーレスサービスを中心に構築されており、使った分だけの従量課金で小さく始め、数千人規模の全社展開にも設定変更なく対応可能です。提供開始から 1 年あまりで、多数の日本のお客様にプライベートな生成 AI 活用基盤としてご利用いただいています。GenU についての詳細は GenU 公式ウェブサイトをご参照ください。

※1 ご利用状況に応じた AWS 利用料が別途発生いたします。詳細は料金試算をご参照ください。

ユースケースビルダーとは

GenU には一般的な AI チャットのみならず、要約、翻訳、校正などの基本的な生成 AI のユースケースが標準で用意されています。一方、お客様からは自社の業務に特化したユースケースの追加を望まれる声をいただいていました。GenU はオープンソースライセンスで提供されており、お客様により自由な改造を行うことができます。しかし、改造のためにはフロントエンドフレームワーク React の知識等が必要であり、敷居が高いという課題がありました。そこで、シンプルなプロンプトのみでのカスタムユースケース構築機能を「ユースケースビルダー」として新たに提供開始しました。

ユースケースビルダーでは、プロンプト内に 2 つの中括弧 {{}} によるプレースホルダを使って、ノーコードで利用者向けのインプットフォームを作成することができます。現状では、自由記述のテキストフォームとファイル添付に対応しており、Kendra や Knowledge Base など、GenU で対応しているデータソースと連携することも可能です。また、今後のアップデートで利用できる入力フォームの種類は拡張される予定です。ユースケースビルダーには豊富なサンプルユースケースも用意されています。まずはサンプルを見るだけでも、生成 AI を活用した独自アプリのイメージが湧くのではないかと思います。

ユースケースビルダーの利用例

実際にユースケースビルダーで独自ユースケースの作成を行ってみましょう。(1) まず、GenU の初期ページから「ビルダーモード」のスイッチを有効化してユースケースビルダーを利用開始し、(2) 新規作成ボタンをクリックします。


ユースケース新規作成画面にて、「タイトル」「概要」「プロンプトテンプレート」を設定します。「タイトル」と「概要」は生成には影響しません。利用者が内容をイメージしやすいものをご自由に入力してください。「プロンプトテンプレート」に記載した内容が、実行時に生成 AI に入力されます。テンプレート内に {{text:入力}} のようにプレースホルダを記載すると、右側のプレビュー画面に対応するテキストボックスが出現します。アプリ実行時、利用者がテキストボックスに記載した内容がプレースホルダを置き換えます。プロンプトテンプレートの作成時には、用意されているサンプルプロンプトや、AWS ドキュメントのプロンプトエンジニアリングの概念などを参照し、モデルのパフォーマンスを最適化するプロンプトの作成を心がけましょう。

図の通り、初めてのアプリとして、テキスト中の表形式データをcsvに変換して抽出するユースケースを作成できました。作成したユースケースは、画面右側のプレビュー欄ですぐに試すことができます。動作確認のため、Wikipedia から国民の祝日の一節を入力し、祝日一覧を csv 形式で出力してみます。すると、意図通り説明文が省略され、表部分のデータのみを csv 形式で抜き出すことができました。

アプリが狙い通りに動作したら、詳細設定を行いましょう。入力例を追加してユーザーに利用方法を伝えたり、利用する大規模言語モデルを固定してコストや応答速度を最適化し、生成 AI に不慣れなユーザーにも使いやすいアプリにすることができます。また、一部モデルでは添付ファイルのアップロードに対応しており、画像や動画を入力するマルチモーダル推論や、PDF などの読み込みを行うことも可能です。

設定が終わったら、ユースケースの作成ボタンをクリックし、設定内容を保存しましょう。作成したカスタムユースケースは同じ GenU にログインできる利用者間で共有できます。便利なユースケースが作成できたら社内で共有することで、部門や会社全体での生成 AI 活用促進に役立てることができます。

さいごに

本記事では、オープンソースの生成 AI サンプルアセット GenU に新たに追加された「ユースケースビルダー」について紹介しました。生成 AI チャットだけではなく、自社の業務内容に沿った生成 AI アプリを簡単に作成し、社内で共有する手段として、GenU を活用いただけます。ぜひお試しください。GenU は AWS ジャパン有志を中心に、オープンソースプロジェクトとして開発が行われています。利用者の皆様からの貢献も歓迎しております。こんな機能がほしい、というアイディアがありましたら、ぜひ github リポジトリの Issues や Pull Request の投稿をいただけますと幸いです。

著者について

岡本 晋太朗 (Shintaro Okamoto)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ソリューションアーキテクト

石化プラントの計装制御設計エンジニアを経て、プラントデジタルツインソリューションの構築に従事。現在は AWS Japan で製造業のお客様を中心に技術支援を行っています。特技は美味しいご飯を炊くことです。