AWS JAPAN APN ブログ
より高い収益性を実現する:AWS パートナーの連携とインセンティブ
「AWS Partner Experience Transformation」は、AWS パートナープログラム、AWS Marketplace、AWS パートナーセントラルの最新情報に関するブログシリーズです。
本記事は Global Partner Management Solutions Architect の Hans Schabert と Sr. Partner Management Solutions Architect の George Swain が 2024 年 3 月 20 日に投稿した「Achieving Greater Profitability: AWS Partner Alignment and Incentives」の翻訳版です。
Canalys 社が実施した Partner Ecosystem Multiplier 調査によると、幅広い製品・サービスを提供している AWS パートナーは、AWS 売上 1 ドルあたり 6.40 ドルの乗数効果を達成できることが分かっています。
この高い乗数効果を達成するには、プロフェッショナルサービス、マネージドサービス、コンサルティング、再販、そして AWS パートナー組織内の異なる事業部門など、様々な分野での事業最適化が不可欠です。
本記事では、AWS パートナーが収益性 (profitability) を達成するうえで直面する一般的な課題と、セールスやファンドベネフィット、ポートフォリオの連携、アマゾン ウェブ サービス (AWS) からの支援などを活用してこれらの課題を克服する方法をご紹介します。
AWS パートナーネットワーク (APN) は、AWS のテクノロジー、プログラム、専門知識、ツールを活用してお客様向けのソリューション構築およびサービス提供を行うグローバルなコミュニティです。APN には 200 か国以上から 13 万社を超える企業が参加しており、そのうち 70% が米国外に本社を置いています。AWS はパートナーと共に、革新的なソリューションの提供、技術的な課題の解決、ビジネス獲得、そして、より高い顧客価値の実現に取り組んでいます。
AWS Partner Profitability Framework と AWS Partner Experience Transformation ブログシリーズでは、AWS がどのようにパートナーエクスペリエンスを変革しているかを確認いただくことができます。
Figure 1 – 幅広い製品・サービスを提供する AWS パートナーは、6.40 ドルの乗数効果があるとされている (Canalys 社の調査による)
収益性の達成における課題
AWS パートナーは、パートナーエコシステムの乗数効果を活用する際、技術、ビジネスプロセス、財務など、様々な側面で課題に直面していると述べています。具体的には以下のようなものが挙げられます:
- 部門間の断絶 : 組織内での部門間の連携不足は大きな課題です。例えば、顧客プロジェクトの実装時に、DevOps チームとマネージドサービスチームの間で、デプロイ方法やアーキテクチャ、文書化などの相違から対立が生じることがあります。こうした部門間の溝は、顧客がソリューション間を移行する際の非効率性や収益性の低下につながります。IDC の予測では、2026 年までに公共クラウドの支出の 65% がマネージドサービスプロバイダー (MSP) によって管理されるようになるため、AWS パートナーは、顧客を無理なく円滑にマネージドサービスソリューションに乗せていくことが必要になります。
- 営業およびマーケティングの関与 : 多くのパートナーが多様なサービスポートフォリオを保有しているものの、設計段階で営業やマーケティングが十分に関与していない場合、これらのサービスや製品を十分に認識できていないことがあります。その結果、クロスセルの機会を見逃し、顧客に適切でないソリューションを提供してしまい、時間とリソースの無駄につながります。
- 適切でないセールスインセンティブモデル : 製品やサービスの販売代理店などの、販売チャネルのパートナー企業における伝統的な営業モデルが、クラウドサービスの販売サイクルと合致しないことがあります。これにより、セールス KPI と報酬体系の間に矛盾が生じ、セールス担当者が顧客に最適なソリューションを効果的に提案できなくなる可能性があります。
Gartner の予測分析によると、2024 年に世界の IT 支出が 5 兆ドルに達すると予測されており、業界の LOB 購入者がテクノロジー購入者の最大グループ (41%) を占めています。業界の LOB 購入者は、実証済みのビジネス価値とアウトプットを備えた、業界に特化するソリューションの採用を求めています。
セールスチームが顧客の課題に合った適切なソリューションを提案できるようにすることが非常に重要です。チーム間の連携を深め、このようなアライメントを確保することは、AWS パートナーが顧客にとってより大きな価値を提供し、自社の収益性の高い成長を実現するために不可欠です。
カスタマージャーニーに焦点を当てる
顧客の課題と AWS ソリューションの間のギャップを効率的に埋めるには、販売構造、ファンドベネフィット、ポートフォリオ管理に対する十分な理解が必要です。本セクションでは、AWS パートナーがこれらを実現し、全体的なビジネスの成功を高めるためのメカニズムを紹介します。
「これが効率的な方法だ」と言うのは簡単ですが、実際には継続的なプロセスが必要です。AWS は、パートナーの成功を後押しするための適切なアプローチを特定するために、パートナーと協力しています。
Customer obsession は、Amazon だけでなく AWS パートナーにとっても重要な Leadership Principles です。お客様のニーズを認識し、そのニーズに合わせてポートフォリオを調整することは、パートナーの収益性を高める上で重要な要素です。
Figure 2 – AWS パートナーのカテゴリー別の乗数効果 (Canalys 社による)
Canalys 社の調査によると、「Focused」カテゴリーに分類された AWS パートナーのうち、クラウドポートフォリオの提供を拡大・調整することで収益を増やすことを検討したパートナーはわずか 14 %でした。整合化のプロセスを通じて、AWS パートナーはお客様の課題をよりよく理解でき、AWS 売上 1 ドルあたり 6.40 ドルの乗数効果に近づけることができます。
これには、さまざまなセグメントや業界向けの独自のポートフォリオやカスタマージャーニーが含まれる場合があります。新規のお客様には、AWS Optimization and Licensing Assessment (OLA) やデータディスカバリーワークショップなどの導入支援を提供することで、パートナーとの連携を始めることができます。これらのポートフォリオの見える化は、営業やプロジェクトマネージャーが顧客を適切な方向に導くために重要です。
顧客は統合されたソリューションを求めている
今日の顧客は測定可能な成果をもたらす統合されたソリューションを求める傾向にあります。これらには、ソフトウェア、ハードウェア、コンサルティング、実装、または変更管理を含む複数のコンポーネントが含まれます。
パートナーマッチングイベントを通じた複数のパートナー間の連携により、革新的なビジネス成果を生み出すことができます。これらは 1 つ以上のパートナーのテクノロジーまたはサービスを活用して構築でき、単独パートナーとして提供または、他の AWS パートナーとして提供することが可能です。
例としては、FinOps に特化したパートナーと協力し、自社の顧客のコスト管理を支援することが挙げられます。このコラボレーションにより、収益の最適化と、新しいワークロードに伴う無駄な作業負荷の削減が期待できます。顧客関係、提供能力、顧客セグメンテーションに基づき、各パートナーに固有の顧客課題を中心としたポートフォリオを構築することが重要です。
顧客の課題に合わせてポートフォリオを最適化する
ポートフォリオの最適化を顧客のニーズに合わせるメカニズムとしては、ポートフォリオマネージャー、営業、デリバリー、マーケティングが参加するディスカッションやワークショップが最も効果的です。
Partner Profitability Workshop は、次の 4 つのステップで実施できます。
- 中小企業 (SMB) の顧客など、特定のセグメントについて営業担当にインタビューします。インタビュー中、営業担当者は、顧客から対処を求められたすべての課題をリストアップすることが推奨されます。これらの課題は、顧客の成熟度 (グリーンフィールドからクラウドネイティブまで) に応じて整理します。
- 次に、パートナーのソリューションアーキテクト/プリセールスアーキテクトと連携します。ステップ 1 の結果に基づいて、各顧客の課題に対する最適なソリューションについて、色分けして回答を書き込みます。(例 : 時間と資材のオファリングは黄色、販売可能なパッケージソリューションは青色など)
- ホワイトボードを見直して、時間と資材 (黄色) の回答だけで対処できる課題や、または対応するオファリングがない課題の空白部分を特定します。また、顧客の課題解決の流れに基づいてパートナーポートフォリオ内を横断するパスを特定し、新しいパッケージオファリングまたは既存オファリングのスコープ調整により、ギャップをどのように減らすか、解消できるかをアクションアイテムとして特定します。
- 最終ステージでは、さまざまなアクションアイテムを確定します。これには、バリュープロポジションに関する販売チームの研修、顧客のコスト負担軽減のためのファンド提供やインセンティブなどが含まれます。また、既存または新規顧客向けの次の GTM キャンペーンやプロモーションの基礎となるものが含まれます。
Partner Profitability Workshop の結果とアクションアイテムは、様々な結果をもたらす可能性があります。パートナーから聞いた2つの例を紹介します。
- セールスインセンティブは、組織内の営業利益を管理し、特定のオファーに優先順位を付ける上で重要な要素です。パートナーは、セールスインセンティブの優先順位付けが、新規顧客やポートフォリオの参入要素にとって特に重要であると述べています。AWS パートナー向けのカスタマー・エンゲージメント・インセンティブ (CEI) は、営業チームが AWS クラウド運用の初期段階で企業の要件を絞り込むためのコストを削減し、エンドカスタマーの成長を促すのに役立ちます。
- パートナーのマネージドサービスへの移行が、ワークショップのもう 1 つの成果例です。パートナーのマネージドサービスが顧客にとってより良い選択であるかどうかを評価することが目的のシナリオでは、マーケティングキャンペーンを使用 して、既存顧客を対象にコスト最適化ワークショップを実施しました。マーケティング開発ファンド (MDF) の活用により、この取り組みにおける提供サービスと販売パイプラインの推進に役立ちました。
始め方
AWS Partner Profitability Framework を活用することで、ビジネスモデル全体にわたる専門性と価値を深化させ、より高い収益性を実現する方法を学びましょう。
まず、組織内で最も収益性の高い部門を特定し、経営陣などの関係者と連携して、営業、マーケティング、デリバリー、エグゼクティブスポンサーとのパートナー Partner Profitability Workshop を開始することから始めます。Partner Profitability Workshop の実施と支援については、AWS パートナーチームにご相談ください。
翻訳は APN Program Manager 佐久間が担当しました。原文はこちらです。