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スタートアップ各社の CTO、VPoE が長崎に集結 【CTO Night & Day 2022 – Day1 ダイジェスト】

CTO Night & Day は、スタートアップを中心とした企業における、CTO や VPoE などの技術経営者のための招待制カンファレンスです。参加者同士によるディスカッションや経験・事例の共有などを通じて、技術経営者としての経験年数や企業規模を超えた幅広い知識と人脈の交流の場を提供し、技術経営者のコミュニティが醸成・活性化され、業界全体が発展していくことを目的としています。

2014 年より年 1 〜 2 回、宮崎、京都、金沢など日本各地での開催を重ねた後、2020 年と 2021 年はオンラインで開催し、2022 年は 3 年ぶりの現地開催となりました。感染症対策など安全面を最大限に配慮したうえで、オフサイトならではの学びとネットワーキングの場を提供いたしました。

今回参加された CTO・VPoE の方々は合計 134 名。企業経営・組織運営をけん引する立場の人々が抱える課題やその解決策について、熱い議論が交わされました。本記事では、長崎県長崎市宝町の「THE GLOBAL VIEW 長崎」にて 2022 年 10 月 6 日に行われた Day1 の模様を中心に、ダイジェスト形式でお届けします。

前夜祭 Welcome Party

Day0 のウェルカムディナーは、明治時代のイノベーターが集った世界遺産のグラバー園で開催しました。3 年ぶりのネットワーキングは、人と会うこと自体がコンテンツとなり、至るところで笑顔と共に「ご無沙汰しています!」「はじめまして!」とテンションの高い会話が始まりました。開始当初は、初参加や若い CTO の方々に緊張の面持ちもありましたが、先輩 CTO たちのカジュアルで温かい対応によりすぐに打ち解けた様子。終始とても熱量の高い交流が行われていました。

AWS Morning Session / Ask An Expert (個別相談会)

Day1 午前中に開催されたのは、AWS 社員が特定のテーマに基づいてノウハウを共有する AWS Morning Session。そして、AWS のソリューションアーキテクトが、お客さまの抱える課題をヒアリングしてアドバイスをする Ask An Expert(個別相談会)です。

7 つのトラックに分かれ、前半パート・後半パートでセッションを実施しました。参加者の方々は、興味のあるセッションのテーブルに着座し、耳を傾けます。

<前半パート>

T1 Engineering with Amazon Culture -とある Amazon SDE/PdM の経験-

T2 ゴールドマン・サックスに学ぶインシデントの検知と対応

T3 CTO のための Design for Resilience

T4 プロダクトに検索機能追加するときに考えること

T5 [AWS Startup ゼミ]よくある課題を一気に解説!~御社の技術レベルがアップする CTO 向け総集編~

T6 ゲーム領域から非ゲームへ技術転用:ゲーミフィケーション, クラウドゲーミング、クラウドゲーム開発

T7 Ask An Expert – AWS SA との個別相談コーナー

<後半パート>

T1 採用・評価と Amazon Culture

T2 我流でクラウドを使っている CTO に贈る、知っておいて頂きたいベストプラクティス

T3 円安に負けない! CTO のための AWS コスト削減のヒケツ

T4 クラウドエンジニア育成プログラム「AWS Jumpstart」の紹介と育成方針に関するディスカッション

T5 ゲーム業界から見たメタバース、ブロックチェーン(NFT)の最新動向

T6 ––––––(実施セッションなし)

T7 Ask An Expert ー AWS SA との個別相談コーナー

いずれのセッションも盛り上がりを見せましたが、とりわけ多くの方が参加していたのは「採用・評価と Amazon Culture」です。

開発組織を拡大していく過程において「いかにしてエンジニア採用を成功させるか」や「個々人の活動をどのような方法で評価するか」は重要なテーマ。かつ、成功難易度が非常に高い課題です。

本セッションではス[タートアップソリューションアーキテクトの塚田 朗弘が、Amazon の歴史やその文化を事例として挙げつつ、採用・評価の知見やノウハウを解説しました。

Welcome Lunch

12 時からは全員が集まっての Welcome Lunch。会場である「THE GLOBAL VIEW 長崎」のレストランにて、ビュッフェ形式の食事が振る舞われました。ローストビーフやカレー、サラダといったビュッフェの定番メニューだけではなく、デザートコーナーには長崎名物のカステラも並びます。こうした地方名産の食事を楽しめるのも、オフサイトならではの魅力です。

近年、コロナ禍の影響から人々が対面で交流する機会はなかなかありませんでした。だからこそ、いずれの参加者も顔を突き合わせて会話できる Welcome Lunch を、心の底から楽しんでいた模様です。各テーブルでは「久しぶりにお会いしましたね」「話してみたいと思っていました」などの言葉が交わされ、みなさん和やかに談笑されていました。

Opening, Icebreak

午後からはいよいよ、CTO Night & Day の本編がスタート。AWS スタートアップ事業開発部 本部長の畑 浩史が、オープニングの挨拶を行いました。畑は、前日夜に「グラバー園」にて実施された Welcome Party(前夜祭)について触れ「久しぶりに CTO Night & Day をリアル開催できて、感慨深いです」と述べました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業開発部 本部長 畑 浩史

さらに、CTO Night & Day のイベント概要や歴史、今回のアジェンダ、会場を長崎に決めた理由などを解説しました。そして、今年度の CTO Night & Day のテーマが“チャレンジ”であると言及します。「社会情勢やスタートアップ企業を取り巻く環境は、大変な状況が続いています。そんなときだからこそ、チャレンジすることの意義をともに考えていきましょう」と会場の方々に伝えました。

最後に「せっかくの機会ですので、ぜひ多くの方々とつながってください。この会場で生まれた出会いが、新しい何かを生み出す機会になれば幸いです。それでは、CTO Night & Day 2022 Nagasaki を開始します」と結びました。畑による挨拶の後は、会場のみなさんにアイスブレイクをして打ち解けてもらい、各セッションへと続きます。

Session 1 チャレンジをくり返す CTO の飽くなき意欲

<スピーカー>

パイオニア株式会社 常務執行役員 CTO SaaS テクノロジーセンター センター長 岩田 和宏 氏

テイラー株式会社 取締役 CTO 髙橋 三徳 氏

<モデレーター>

Sansan株式会社 執行役員/技術本部 インフラ戦略部 部長/同 海外開発拠点設立準備室 室長 藤倉 成太 氏

パイオニア株式会社 常務執行役員 CTO SaaS テクノロジーセンター センター長 岩田 和宏 氏(写真左)

テイラー株式会社 取締役 CTO 髙橋 三徳 氏(写真右)

Sansan株式会社 執行役員/技術本部 インフラ戦略部 部長/同 海外開発拠点設立準備室 室長 藤倉 成太 氏

世の中には、ひとつの企業で長く CTO として活動し続ける方だけではなく、環境を変えて新たな場所でのチャレンジをくり返す方もいます。本セッションではそうした CTO の方々が、挑戦することの意義や思い描いている世界について語りました。

パイオニア社の岩田 氏は、大手セキュリティ会社での画像処理系の研究開発からキャリアをスタートした後、外資系ベンチャーでの医療用 3D 画像診断アプリの開発、スタートアップ企業複数社でのプロダクト開発に携わってきました。そして、前職で MaaS スタートアップ企業の CTO を担った後、2021 年 3 月よりパイオニア株式会社 常務執行役員 CTO に就任したのです。

テイラー社の髙橋 氏は EC サイト運営企業でキャリアをスタートした後、メガベンチャー企業の創業期にエンジニアとして参画。その後、複数のスタートアップ企業で CTO やチーフエンジニアを経験した後、フリマアプリ運営企業にて研究開発組織や新規事業の立ち上げなどに携わりました。そして、2021 年 7 月に連続起業家の柴田 陽 氏とともにテイラー株式会社を共同創業したのです。

モデレーターの Sansan 社の藤倉 氏も、もともと同社の CTO を務めていましたが 2022 年 6 月より海外開発拠点設立準備室 室長に立場を変え、Sansan 社の海外展開の先陣を担っています。

セッションでは「チャレンジをくり返すモチベーションは何か」「何をきっかけとしてキャリアの“区切り”を考えるか」などのテーマに基づいて議論が行われます。各登壇者は自身の過去の体験をふまえながら「より良いキャリアの築き方」「過去から現在までの、スタートアップ企業で働く人々が置かれている環境の変遷」「働いている場所で成果を出すための考え方」などを述べていました。

また、今回のイベントでは各セッションの終了後に「感想戦」を実施しているのも特徴です。これは、各テーブルに着座している参加者同士でセッションの感想を言い合うことでより理解を深め、かつ CTO 同士のつながりを強くすることを目的としています。

Session 2 Diversity, Equity & Inclusion を実現する組織を考える

<スピーカー>

VideoTouch株式会社 CTO gaooh 氏

株式会社FLUX 取締役 CTO Edwin Li 氏

スマートニュース株式会社 Co-Founder, COO and Chief Engineer 浜本 階生 氏

<モデレーター>

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップソリューションアーキテクト 佐藤 大資(えっちゃん)

VideoTouch株式会社 CTO gaooh 氏(写真右)

株式会社FLUX 取締役 CTO Edwin Li 氏(写真左)

スマートニュース株式会社 Co-Founder, COO and Chief Engineer 浜本 階生 氏(写真中央)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップソリューションアーキテクト 佐藤 大資(えっちゃん)

Diversity, Equity & Inclusion とは、人種や国籍、性別、年齢、性的志向などさまざまなバックグラウンドや属性を持った人々を公正に扱い、それぞれの個性・能力が発揮できる環境を構築していくという考え方です。本セッションでは、Diversity, Equity & Inclusion を実現するために CTO が意識・実践すべきことについて、各登壇者が語りました。

序盤では「Diversity, Equity & Inclusion を実現することで企業に生じる利点」について意見交換を実施。各人からは「前提として、業務に関係のない要素で当人のモチベーションが下がってしまうのは本質的ではない。同僚には生き生きと働いてもらいたい」「企業の採用力を高めるうえでも、ありとあらゆる属性の人々を受け入れることは重要」などの言葉が語られました。

また、企業でのコミュニケーションの公平性を担保するための観点として「母国語の異なるメンバーが同一のミーティングに参加した場合にとるべき方法」「フルタイムで働けない人々に配慮して、テキストベースの文化を作り上げる意義」なども議論に上ります。各人とも、自社の事例をふまえた意見や対応策を述べていました。

他にも、私たちが何気なく使っている「Slack のカスタム絵文字」にも言及。こうした絵文字で「神対応」や「○○の女神」といった比喩表現が用いられることがあります。ですが、「これらは宗教や性別などに関わるセンシティブな表現であり、Diversity, Equity & Inclusion の観点からは使用を避けるほうが良いのではないか」などの意見が出ました。

いずれの登壇者からも、すべての人々が働きやすい環境を実現するための知見が語られ、有益なセッションとなりました。

Session 3 知っておきたい Web3 の現状と未来

<スピーカー>

コインチェック株式会社 執行役員 VP of Engineering 佐藤 ニール 氏

株式会社Kyuzan 取締役 CTO 小宮山 凌平 氏

株式会社LayerX 代表取締役 CTO 松本 勇気 氏

<モデレーター>

合同会社暗号屋 代表社員 紫竹 佑騎 氏

コインチェック株式会社 執行役員 VP of Engineering 佐藤 ニール 氏(写真左)

株式会社Kyuzan 取締役 CTO 小宮山 凌平 氏(写真中央)

株式会社LayerX 代表取締役 CTO 松本 勇気 氏(写真右)

合同会社暗号屋 代表社員 紫竹 佑騎 氏

「次世代分散型インターネット」を示す概念である Web3 は、近年多くの人々の注目を集めています。ブロックチェーン技術をベースとして NFT や Cryptocurrency(暗号通貨)などの分散型のプラットフォームが構築されたり、Play-to-Earn などの経済圏が誕生したりと、著しい進化・発展を遂げているのです。本セッションでは、そんな Web3 の現状や未来、技術トレンドやビジネスユースケースなど、CTO が知っておくべきことを議論しました。

たとえば「Web3 の技術は何を解決するのか」というテーマについて、各人が忌憚のない意見を述べました。Web3 の技術について肯定的な意見だけではなく、否定的・懐疑的な意見も飛び出し、賛否両方の立場で議論が行われます。

また、Web3 の技術を世の中に普及させていく過程では、適切なインセンティブ設計を行うことや各種法律・規制と向き合うことも必要になります。これまでの歴史で登場したさまざまな制度や規制などの事例をふまえ、Web3 領域の今後の展望を議論。序盤から終盤まで、熱量の高いディスカッションが続くセッションとなりました。

Networking Dinner CTO Night

各セッションを終えた後は、会場のレストランにて全員参加のパーティーである Networking Dinner CTO Night が催されました。乾杯の音頭をとるのは、過去全 11 回全て参加の BASE株式会社 上級執行役員 SVP of Development 藤川 真一 氏と株式会社サイカ 取締役 EVP of Development 是澤 太志 氏です。

BASE株式会社 上級執行役員 SVP of Development 藤川 真一 氏(写真左)

株式会社サイカ 取締役 EVP of Development 是澤 太志 氏(写真右)

藤川 氏は「CTO Night & Day には 2014 年ごろから毎回参加し続けています。多くの方々と情報交換する過程で得た知見が、自分自身のマネジメント業務などの改善につながっていますし、この場を作ってくださったことに感謝しています。ぜひみなさんも他の参加者と話をしていただき、有益な一言を得てください」と推奨しました。

是澤 氏はこれまでのご自身の経歴について触れたうえで「CTO Night & Day があったからこそ自分のキャリアをより良いものにできましたし、若い世代の方々との接点も生まれました。会場にいらっしゃるみなさんも、有益な学びやすてきな出会いがあることを祈っています」と感慨深そうに述べました。

「乾杯!」という合図の後は、みなさん思い思いにおいしい食事や和やかな会話を楽しみ、CTO Night & Day 2022 Nagasaki の Day1 が終了しました。

この後は、Day2 のダイジェストへと続きます。