AWS Startup ブログ

AWS Summit Japan 用のアップサイクル T シャツを作成。ヘリテッジ社と Amazon・AWS の環境保全の取り組みとは

ヘリテッジ株式会社(以下、ヘリテッジ)は、ジェンダーを問わず楽しめる日本のファッションブランド「CRAFSTO」を運営する企業です。「CRAFSTO」の特徴はサボテンやリンゴが原料のレザーや工業施設の廃材など、サステナブルな素材を扱っていること。地球環境に優しくて、機能性や耐久性に優れ、デザイン性に富んだヘリテッジのプロダクトは、大きな注目を集めています。

AWS はヘリテッジ社の活動に共感しています。そのため、2024 年 6 月 20 日(木)、21 日(金)の 2 日間にわたり開催される AWS を学ぶイベント「AWS Summit Japan」においてスタッフが着用する T シャツとしてヘリテッジの製品を採用しました。この T シャツは、100% アップサイクル素材で作られた製品なのです。

今回はアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Japan Go-To-Market Business Unit GTM Solution Department Senior GTM Managerの杉山 彩奈が、ヘリテッジ株式会社 CEO の久保 順也 氏にインタビュー。同社の事業概要や環境保全活動に取り組む意義、そして Amazon・AWS のサステナビリティへの取り組みなどについて話しました。

「持続可能なものづくり」を実現するために創業

杉山:まずは久保さんがヘリテッジを創業された経緯からお聞かせいただけますか。

久保:私は大手ベンチャーキャピタルに新卒入社し、スタートアップ向けの投資を担当していました。リーマンショックが起きた影響で各種の投資を控え、代わりに企業の買収に注力することになりました。成長しそうなメーカーやアパレル会社、デザインブランドなどを調べていたのですが、買収を検討している企業のなかにレザーバッグメーカーがあったのです。

その企業の社長とお話をするなかで、「EC サイトやデジタルマーケティングなどに注力すれば、より事業を伸ばせるのではないか」と可能性を感じました。そこで、その企業に参画し、経理や生産管理、Web マーケティングに携わり、最終的には役員になりました。

ものづくりの現場に入ってわかったのは、素材が大量に廃棄されることです。たとえばレザー製品の場合、革を裁断した後の端材はすべて捨てられています。レザー以外の業界でも、製品を作る過程で捨てられる素材がたくさんあります。

また、ものづくりの世界では若い職人たちのキャリアパスが整備されていないことも課題です。このままでは「日本の良さである繊細さや安定感のあるものづくりが、いつか衰退してしまうのではないか」という課題を感じるようになりました。

レザーバッグメーカーを退社した後、経営コンサルとして独立しました。そして、前職で知り合った職人と再会したことをきっかけに、「日本の職人が活躍できる場を創りたい」「環境や人それぞれの面で、持続可能なものづくりを実現したい」という気持ちが再燃し、2020 年にヘリテッジを創業したのです。

ヘリテッジ株式会社 CEO 久保 順也 氏

杉山:どのような事業を展開されていますか。

久保:ファッションブランド「CRAFSTO」を展開し、ジェンダーニュートラルとサステナビリティを重視したものづくりをしており、革製品の財布やバッグ、小物、衣類などを取り扱っています。これらはすべてメイド・イン・ジャパンであり、かつ環境に配慮した素材や特定の業界で出た廃材を活用したアイテムになっています。

使用している素材の例としては、サボテンを素材にしたヴィーガンレザーが挙げられます。この素材は 10 年の耐久性を持ち、軽くて丈夫です。車の内装にも利用されています。

ヴィーガンレザーとアップサイクルレザーで作られたバッグ。

これ以外にも、マッシュルームやトウモロコシ、リンゴなど多種多様なヴィーガンレザーを使ったアイテムを作成しています。動物性の皮革と比べて軽いため、使い勝手も非常に良いです。また、レザーだけではなくオーガニックコットンや工業製品を加工する過程で出た端材なども活用し、商品を展開しています。

企業がサステナビリティ活動に取り組む意義とは

杉山:こうした環境保全のための活動に企業が取り組むことで、社会全体にどのようなプラスの面があると思われますか。

久保:一般の方々にとって、環境保全の活動はあまり身近ではないですし、難しすぎるというケースがほとんどです。私もこうした事業を展開しているので、常に勉強を続けているのですが、世界各国でさまざまなルールや活動があり、それらをすべて知るのは容易ではありません。

だからこそ、企業が率先してサステナビリティのリーダーシップをとることで、活動が人々の目に留まりやすくなり、環境保全についての理解も進みます。地球環境を良くするためにも、消費者一人ひとりの意識を無理に変えようとするのではなく、企業が中心となってまずは行動を起こすことが重要です。

杉山:そうした意味でも、「AWS Summit Japan」で着用されるアップサイクル T シャツには大きな意義があるとお感じになりますでしょうか。

久保:そう思います。もともと、あるベンチャーキャピタルが開催するイベントで AWS の社員の方とお会いした際、サステナビリティに関する情報交換をしたことが、この施策のきっかけになりました。

ファッション・アパレル商品用の生地を作るメーカーでは、色むらが発生したり、何らかの理由で余ったりした生地は、ほとんどが捨てられてしまいます。生地の素材が無駄になりますし、焼却処分する際には二酸化炭素も発生します。

それで今回は、生地メーカーや縫製工場と協業してそうした廃棄予定の生地を活用し、かつ運送距離をできる限り短くすることで二酸化炭素排出量も削減して、イベント用のアップサイクル T シャツを作ることになりました。

デイジー・パープル 2色のスタッフ用 T シャツに採用

Amazon・AWS としてのサステナビリティ活動

杉山:Amazon や AWS にとっても、サステナビリティへの取り組みは非常に重要で、Amazon は、The Climate Pledge という気候変動対策に関する誓約を掲げています。温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることは、環境に大きなインパクトがあると考えています。

Amazon はパリ協定よりも 10 年早く、2040 年までにネットゼロカーボン(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を達成することを約束し、その一環として、2025 年までに自社の事業を 100% 再生可能エネルギーで行えるよう取り組みを進めています。もともとは 2025 年ではなく 2030 年と発表していたのですが、これを 5 年も前倒ししました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Japan Go-To-Market Business Unit GTM Solution Department Senior GTM Manager 杉山 彩奈

久保:前倒しにしたのは、どのような理由があってのことでしょうか。

杉山:社会、コミュニティ、そして環境に関する重要な取り組みを行うとともに、事業の将来を見据え、サステナビリティの構想を広げています。そのすべての中心にあるのが、Customer Obsession(カスタマーオブセッション)です。私たちは、サステナビリティがお客様にとって重要であると理解しています。その声にお応えするために責任ある活動をしています。

また、AWS クラウドによって実現するサステナビリティには「クラウドの」「クラウド内」「クラウドを通じて」の 3 つの要素があります。

  1. クラウドのサステナビリティ(Sustainability of the cloud):クラウドへのマイグレーション(移行)により IT システムのサステナビリティを向上する
  2. クラウド内のサステナビリティ(Sustainability in the cloud):Well-Architected Framework のサステナビリティの柱やさまざまなサービスを利用した AWS のワークロードの最適化
  3. クラウドを通じたサステナビリティ(Sustainability through the cloud):クラウドベースのソリューションとアドバイザリーサポートの導入により、サステナビリティ目標達成を加速させる

順に解説しますと、1.「クラウドのサステナビリティ」については、たとえばオンプレミスのデータセンターに置いてあるサーバーを AWS に移行すると、それだけで二酸化炭素排出量の削減ができるというデータがあります。*

*451 Research クラウドのエネルギー効率性や二酸化炭素の削減効果に関する調査結果より

2.「クラウド内のサステナビリティ」については、AWS はコストパフォーマンスに優れた AWS Graviton プロセッサを自社で開発しており、こうしたサービスを使うだけでも二酸化炭素排出量やコスト削減につながります。AWS Billing and Cost Managementコンソールから確認できる AWS Customer Carbon Footprint Tool では、AWS のワークロードから発生する二酸化炭素排出量を表示することもできます。

さらに3.「クラウドを通じたサステナビリティ」ですが、クラウドを利用する各企業では「ものづくりの一連のプロセスにおいて、各所の電力や水の使用量のデータを収集・可視化したい」とか「製品のサプライチェーンの透明性を向上させたい」などの課題をお持ちです。AWS が持つノウハウを活かして、お客さまがこうしたサステナビリティ活動に取り組むための支援を行っております。

久保:かなり多様な取り組みをされているのですね。

杉山:今回の「AWS Summit Japan」でも、サステナビリティに関連するブースを出展する予定です。Amazon・AWS が提供しているサステナビリティのソリューションについて、情報をしっかりお伝えできるようにがんばりたいと思います。

久保:イベントに向けて、私たちも一生懸命 T シャツを作ります。環境保全のためにこれからもできることを全力でやっていきますし、「AWS Summit Japan」が盛り上がることを祈っております。


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