クラウドファイルストレージとは
クラウドフファイルストレージはクラウド上にデータを保存する方法で、サーバーとアプリケーションは共有ファイルシステムを通してデータにアクセスできます。この対応性のためにクラウドファイルストレージは共有ファイルシステムに依存するワークロードに最適で、コードの変更なしで統合を容易に行えます。
クラウドファイルシステムとは
クラウドファイルシステムは、ファイルデータへの共有アクセスを提供するクラウド内の階層ストレージシステムです。ユーザーはファイルを作成、削除、変更、読み出し、書き込みでき、これらのディレクトリツリーに論理的に整理して直感的にアクセスできます。
クラウドファイル共有とは
クラウドファイル共有は、複数のユーザーに対してクラウドで保存されているファイルセットに同時アクセスを提供するサービスです。オンラインファイルストレージのセキュリティは、管理者が共有ファイルデータへのアクセスを制御できるように、ユーザーとグループのアクセス許可で管理されます。
クラウドファイルストレージがコラボレーションにどのように役立つか
クラウドファイルストレージにより、チームメンバーはほぼあらゆる場所から同じファイルにほぼリアルタイムで同時にアクセス、表示、編集できます。編集内容は編集しながらユーザーまたはグループに表示され、変更は同期されて保存されるため、ユーザーまたはグループはファイルの最新バージョンを確認できます。クラウドファイル共有によるコラボレーションには、次のように多くの利点があります。
- 離れた場所にいるメンバーでも、協力して共通の目標を達成できます。
- 異なるタイムゾーンの共同作業者間でタスクを共有することにより、柔軟に作業の予定を立てられます。
- 動画やオーディオファイルなどの大きなファイルを簡単に共有、編集できます。
- ファイルがリアルタイムで編集または更新されたときに通知を受け取ります。
- 共有ファイルにコメントを残して、アイデアや提案を共有できます。
クラウドファイルストレージのユースケース
クラウドファイルストレージは、既存のアプリケーションをサポートおよび統合する柔軟性をもたらすだけでなく、クラウド内のすべてのファイルを簡単にデプロイ、管理、維持できます。これら 2 つの主要な利点により、組織は幅広いアプリケーションと業務をサポートできます。クラウドベースのファイルストレージに適したユースケースには、大容量コンテンツのリポジトリ、開発環境、メディアの保存、ユーザーのホームディレクトリなどのワークロードがあります。ファイルストレージのユースケースの例を次に示します。
ウェブサービング
ウェブサービングアプリケーションでは、バックエンドアプリケーションを統合する場合に共有ファイルストレージが課題になることがあります。一般的に、ウェブサイトのコンテンツ配信では複数のウェブサーバーを使用し、各ウェブサーバーから同じファイルのセットにアクセスする必要があります。クラウドファイルストレージは、一般的なファイルレベルのプロトコル、ファイル命名規則、ウェブ開発者の使い慣れたアクセス許可に準拠したソリューションで、ウェブアプリケーションに統合できます。
コンテンツ管理
コンテンツ管理システム (CMS) には、共通の名前空間とファイルシステム階層へのアクセスが必要です。ウェブサービングのユースケースと同様に、CMS 環境でも通常、コンテンツを提供するサーバーを複数を使用し、同じファイルのセットにアクセスする必要があります。クラウドファイルストレージは、必要とされるファイルシステムのセマンティクス、ファイル命名規則、および開発者の慣れ親しんだアクセス許可に準拠したソリューションで、ドキュメントやその他のファイルのストレージを既存の CMS ワークフローに統合できます。
分析
分析には、成長に合わせてさらに拡張できる大量のデータストレージが必要になる場合があります。このストレージは、分析ツールにデータを配信するために必要なパフォーマンスも提供する必要があります。多くの分析ワークロードでは、ファイルインターフェイスを介してデータのやり取りが行われ、ファイルロックの機能を利用しており、ファイルの一部に書き込む機能が必要となります。クラウドファイルストレージは、一般的なファイルレベルのプロトコルをサポートし、容量とパフォーマンスをスケールできるため、既存のビッグデータと分析ワークフローに簡単に統合できる優れたファイル共有ソリューションです。
メディアとエンターテインメント
デジタルメディアとエンターテインメントのワークフローは絶え間なく変化し続けています。多くの企業はハイブリッドクラウドデプロイを使用しており、ファイルシステムプロトコル (NFS または SMB) または同時プロトコルアクセスを使用した標準化されたアクセスを必要としています。このようなワークフローでは、市販製品、専用構築の製品、パートナーソリューションから柔軟で整合性のあるセキュアな方法で、データにアクセスできる必要があります。クラウドファイルストレージは既存のファイルシステムのセマンティクスに準拠しているため、コンテンツ制作、デジタルサプライチェーン、メディアストリーミング、ブロードキャストのプレイアウト、分析やアーカイブの用途において、処理および共同作業用のリッチメディアコンテンツのストレージを統合できます。
ホームディレクトリ
ホームディレクトリは、特定のユーザーやグループのみがアクセスできるファイル保管場所として、多くのクラウドワークフローに役立ちます。クラウドのスケーラビリティとコストの優位性を利用しようとしている企業では、ホームディレクトリを使用したアクセスをより多くのユーザーに拡大しています。クラウドファイルストレージシステムは、一般的なファイルレベルのプロトコルと標準のアクセス許可モデルに準拠しているため、この機能を必要とするアプリケーションをクラウドにリフトアンドシフトで移行できます。
データベースのバックアップ
既存のメカニズム、ソフトウェア、セマンティクスを使用したデータのバックアップでは、回復ロケーションの柔軟性がほとんどない、独立したディザスタリカバリシナリオを作成できます。多くの企業では、データベースのバックアップをクラウドに保存することで得られる柔軟性を、更新時の以前のバージョンの一時的な保護や、開発とテストの用途で活用しようとしています。クラウドファイルストレージは、データベースサーバーからマウントできる標準のファイルシステムが利用できます。そのためネイティブのアプリケーションツールやエンタープライズ向けバックアップアプリケーションを使用でき、データベースのポータブルなバックアップの作成に最適なプラットフォームです。
開発ツール
開発環境では、最新のイノベーションの開発において共同作業が必要となるため、安全な方法で非構造化データの共有を進めるには多くの課題があります。コードやその他のファイルを系統的な方法で共有するというニーズがある場合、共有クラウドファイルストレージを利用すると、セキュアで整理されたリポジトリが提供され、クラウド開発環境内からアクセスできます。クラウドベースのファイルストレージは、スケーラブルで可用性の高い、共同作業に最適なソリューションです。
コンテナやサーバーレスアプリケーションのためのストレージ
コンテナは、すばやいプロビジョニング、移行、プロセス分離を実行できるため、マイクロサービスの構築に適しています。コンテナでは毎回起動時にオリジナルのデータにアクセスする必要があるため、実行しているインスタンスかどうかに関係なく接続できる共有ファイルシステムが必要になることがあります。クラウドファイルストレージでは、クラスター内のあらゆるコンテナから使用できるデータに、永続的な共有アクセスを提供できます。アプリケーションのセキュリティ、スケーラビリティ、および可用性に費やす時間を減らしながら、サーバーレスクラウドコンピューティングで俊敏性を高めることができます。例えば、大規模でミッションクリティカルなサーバーレスアプリケーションを AWS Lambda で実行できます。クラウドファイルストレージは、Lambda 関数の実行後および実行中に保持する必要があるデータ共有のために、可用性と耐久性に優れたサーバーレスデータストレージを提供できます。
エンドユーザーコンピューティング
エンドユーザーコンピューティング (EUC) は、テクノロジの組み合わせであり、従業員が業務を遂行するために必要なアプリケーション、デスクトップ、およびデータへのセキュアなリモートアクセスを提供します。現代の企業は EUC を利用して、従業員がどこにいても、複数のデバイスを使用して、安全かつスケーラブルな方法で働けるようにしています。永続的なデスクトップやドキュメント管理システムなどの EUC テクノロジーには、安全で信頼性が高く、スケーラブルなファイルストレージシステムが必要です。
クラウドファイルストレージの要件
クラウドでの理想的なファイルベースのデータストレージソリューションは、現時点に適したパフォーマンスと容量を実現し、ビジネスニーズの変化に応じて拡張できる必要があります。ソリューションには、次の機能が含まれている必要があります。
- フルマネージド: 物理的なハードウェアや継続的なソフトウェアメンテナンスを必要とせずに、数分で起動できるフルマネージドファイルシステムを提供
- パフォーマンス: 一貫したスループット、スケーラブルなストレージスペース、低レイテンシーのパフォーマンスを提供
- 互換性: 新しいコードを記述することなく、既存のアプリケーションとシームレスに統合
- セキュリティ: 機密データを保護するためのネットワークセキュリティとアクセス制御権限を提供
- 可用性: 複数サイト間の冗長性があり、いつでも必要なときにアクセス可能
- 経済性: 前払いのプロビジョニングコストやライセンス料なしで、使用した容量に対してのみ支払う
クラウドファイルストレージサービスのタイプ
クラウドファイルストレージの利点は明らかですが、すべてのクラウドファイルストレージが同じではないという点に目を向けながら検討する必要があり、さまざまなソリューションが存在します。クラウドファイルストレージは、次の 2 つの方法で提供されます。1 つは、最小限の設定でほとんどメンテナンスを必要としないフルマネージド型のソリューション、もう 1 つは自社運用のソリューションです。自社運用のソリューションでは、個別のコンピューティング、ストレージ、ソフトウェア、ライセンスが必要で、設定と管理のために専門知識のある担当者が必要です。
フルマネージドソリューション
フルマネージドソリューションでは、セットアップやメンテナンスがほとんどまたはまったく必要ありません。フルマネージドソリューションは、最も要求の厳しいアプリケーションワークロードのニーズを満たすように機能します。また、AWS コンテナやサーバーレス、オンプレミスのユースケースなど、AWS コンピューティングモデル向けのシンプルでスケーラブルなファイルストレージも提供します。すべてのファイルデータのニーズに対して、実質的に無制限のクラウドストレージを利用できます。
DIY 型のソリューション
DIY 型のクラスター化されたソリューションには、時間のかかるセットアップ、管理、およびメンテナンスが必要です。例えば、ファイルストレージサービスは、スケーラビリティがなく、データを保護するための冗長性もほとんどない自己管理型ストレージを使用する、コンピューティングインスタンス上の単一ノードファイルサーバーで構成される場合があります。セットアップは複雑で時間のかかるプロセスであり、人的エラーが発生しやすく、セキュリティリスクが増大します。対照的に、マネージドソリューションは信頼性、安全性、拡張性に優れており、設定と管理にかかる時間を何時間も何日も節約できます。
クラウドファイルストレージと他のタイプのクラウドストレージとの比較
クラウドストレージには、ファイル、オブジェクト、ブロックの 3 種類があります。各タイプには独自のメリットがあります。
ファイルストレージ
多くのアプリケーションでは、共有ファイルへのアクセスやファイルシステムが必要です。このタイプのストレージは、多くの場合、ネットワークアタッチドストレージ (NAS) サーバー でサポートされています。Amazon EFS や Amazon FSx などのファイルストレージソリューションは、コンテンツリポジトリ、開発環境、機械学習、データサイエンス、メディアの保存、ユーザーホームディレクトリなどのユースケース向けです。Amazon FSx for Lustre は、ハイパフォーマンスコンピューティングに最適です。
オブジェクトストレージ
クラウドで開発されたアプリケーションは、多くの場合、オブジェクトストレージの膨大なスケーラビリティとメタデータ特性を活用できます。Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) のようなオブジェクトストレージソリューションは、スケーラビリティと柔軟性を必要とする最新のアプリケーションをゼロから構築するために適しています。また、分析、バックアップ、アーカイブ用に既存のデータストアをインポートするためにも使用できます。オブジェクトストレージはインターネット用に構築されており、バケットとオブジェクトで構成されています。バケットはオブジェクトのコンテナです。オブジェクトは、ファイルと、そのファイルを説明するあらゆるメタデータです。規模が大きいため、オブジェクトストレージを使用するとコストを抑えることができます。フォルダ階層がなくても取得時間が短縮されます。また、そのメタデータ分類により、より優れたデータ分析が可能になります。
ファイルストレージとオブジェクトストレージの違い
オブジェクトストレージソリューションはファイルをオブジェクトとして保存することをサポートしていますが、既存のアプリケーションでアクセスするためには新しいコードを書く必要があり、API の使用方法や名前のセマンティクスの直接的な知識が求められます。逆に、ファイルベースのデータストレージソリューションは、一般的なファイルレベルのプロトコルとアクセス許可モデルをサポートします。共有ファイルストレージで動作するように設定されたアプリケーションと統合するために、新しいコードを記述する必要はありません。
ブロックストレージ
データベースシステムやエンタープライズリソースプランニング (ERP) システムのような他のエンタープライズアプリケーションは、多くの場合、ホストごとに専用の低レイテンシーなストレージを必要とします。このタイプのストレージは、直接接続ストレージ (DAS) またはストレージエリアネットワーク (SAN) に類似しています。Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) などのブロックベースのクラウドストレージソリューションは、仮想サーバーごとにプロビジョンされ、ハイパフォーマンスワークロードに必要なミリ秒のレイテンシーで動作します。
ファイルストレージとブロックストレージの違い
ブロックストレージは、自己管理型のファイルストレージソリューションの基盤とするストレージコンポーネントとして使用できます。ただし、ホストとボリュームの関係が 1 対 1 に限られるため、完全マネージド型のファイルストレージソリューションのスケーラビリティ、可用性、経済性のメリットを得ることが難しく、追加の予算とサポートのための管理リソースが必要になります。フルマネージド型のクラウドファイルストレージソリューションを使用すると、複雑さの解消、コストの削減、管理の単純化を実現できます。
AWS ファイルストレージサービスとは
世の中にはファイルベースのデータがたくさんあります。AWS は、ファイルベースのアプリケーションとワークロードの多様なニーズに対応するのに役立つ、フルマネージドファイルシステムサービスを提供します。組織では、ミッションクリティカルなビジネスアプリケーションの可用性を高める必要があり、これらのアプリケーションの多くは、共有ファイルストレージを利用しています。これらのアプリケーションをクラウドに移行することで、機動性を高めながら、スケーラビリティ、高可用性と耐久性、セキュリティ、さらにコスト削減を実現できます。
AWS は、アプリケーションとユースケースに合わせて最適化された次のファイルシステムサービスを提供しています。
- Amazon EFS は、設定して忘れることができる、シンプルで伸縮自在なサーバーレスファイルシステムを提供します。これにより、AWS コンピューティングサービス用の共有ファイルシステムを迅速に作成および設定できます。
- Amazon FSx for Lustre は、ハイパフォーマンスコンピューティングのようなコンピューティング集約型アプリケーションに適しています。このサービスを使用すると、入力と出力が Amazon S3 に保存され、パフォーマンスが最適化されたファイルシステムでデータを簡単に処理できます。
- Amazon FSx for NetApp ONTAP は、NetApp の人気のある ONTAP ファイルシステム上に構築されたマルチプロトコルのフルマネージド共有ストレージを提供します。
- Amazon FSx for OpenZFS は、OpenZFS ファイルシステム上に構築されたフルマネージド型の共有ファイルストレージを提供するため、アプリケーションコードやデータ管理方法を変更することなく、Linux ベースのファイルサーバーを AWS に移行できます。
- Amazon FSx for Windows File Server は、幅広いデータアクセス、データ管理、および管理機能を備えたフルマネージド型のネイティブ Windowsファイルシステムを提供します。
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