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クラウドからビジネス価値を最大化するためのベストプラクティスに関する対話

著者: AWS Cloud Economics、ビジネス開発マネージャー、Calvin Wu 
Mark Schwartz は、自身のブログ記事「 Unlocking the Trillion Dollar Value of Cloud」(クラウドから 1 兆 USD 規模の価値を引き出す) で、McKinsey Digital の予測を深く掘り下げています。その予測とは、態勢が整っている企業は、クラウドから 1 兆 USD もの価値を引き出せる可能性があるというものです。McKinsey の記事にはクラウドの価値の発生源は明確に示されているものの、一部の組織がこのような価値の発生源の獲得に成功している方法についてはそれほど明確ではありません。成功する組織は、他の組織とは異なることをしているのでしょうか?  
AWS Cloud Economics では、この疑問を解明しようと、全世界のお客様 705 社を対象とした調査を行いました。その結果、45 のプラクティスがビジネス価値の創造に最も影響していたことがわかりました。この調査では、組織におけるベストプラクティスの成熟度とビジネス価値の KPI の改善との相関関係も明らかになりました。
AWS のお客様の多くは、AWS への移行後にメリットと KPI の向上を実感していますが、これらのベストプラクティスの導入において成熟度が高いお客様は、際立って優れた結果を実現していたのです。例えば、総 IT 支出に対するインフラストラクチャ支出の割合が 11.7% 減少し ( 成熟度の低いお客様では 0.2% の減少 )、各管理者が管理できるインフラストラクチャの量が増加していました ( サーバー数が 416% の増加、成熟度の低いお客様では 110% )。戦略的な仕事に使った時間は 54% の増加 ( 成熟度の低いお客様では 27% の増加 )、単位時間あたりのコードデプロイ数は、 9.6 倍 ( 成熟度の低いお客様では 5.8 倍 ) でした。価値は手の届くところにあります。問題は、可能な限り多くのことを実現できるように組織を調整できるかどうかです。

ビジネス価値を創造するための 4 つのベストプラクティス

調査では、以下の 4 つのベストプラクティスが、 AWS Cloud Value Framework のすべての領域 (コストの削減、スタッフの生産性、オペレーションの回復力、ビジネスの俊敏性) において、最大限の改善と相関していることを示しました。さまざまな組織でこれらのベストプラクティスをどのようにとらえ、実施すればよいのか、背景やインサイトについて、Mark から話してもらいましょう。

ベストプラクティス #1: クラウド移行ロードマップの設計とソーシャル化

Calvin Wu: 本日は Mark さんの専門知識をお借りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。まず、最初のベストプラクティスであるクラウド移行ロードマップの作成から始めましょう。私たちの調査によると、特に成功した組織では、IT とビジネスの両面から、影響を受けるすべてのワークロード所有者を対象にしてクラウド移行ロードマップを設計し、ソーシャル化していました。

事前にすべてのワークロードについて移行計画を立てる必要はありませんが、一部の組織では、移行と意思決定に対してより「アジャイル」なアプローチを採用していることがわかりました。

Mark Schwartz: クラウド移行とデジタルトランスフォーメーション全般は、組織の広い範囲に影響を及ぼします。成功するには、変更エージェント (通常は IT 部門) が率先して、実施している変革の内容をアピールし、他の部署にも緊迫感を広めることで、組織全体に影響を与える必要があります。ですから、ロードマップを作成してそれをソーシャル化することが重要なステップであるのも当然です。これは、移行の成功を会社全体に広めるための方法というわけです。ここで考えられる 2 つの落とし穴は、最初から完璧なロードマップを作成しようとすると時間がかかりすぎる点と、柔軟性のないロードマップになってしまう点です。企業はクラウドジャーニーでの取り組み中に多くのことを学びますが、重要になるのは、学んだことを活用して、継続的に計画を改善するという点です。成功している企業は、ロードマップの目的を達成するために必要なきめ細いロードマップを用意し、ステークホルダーと連携して全面的に参加してもらう必要があると考えています。

ベストプラクティス #2: 包括的なビジネスケースの構築

Calvin Wu: ありがとうございます。クラウド移行ロードマップは、2 番目のベストプラクティスと密接に関連していることも多いようですね。つまり、コスト面と非コスト面の両方のメリットを含めたビジネスケースを構築することです。IT コストの削減にとどまらないクラウドビジネスケースを作成し、組織全体の賛同と所有権を獲得して、これらのメリットを実現することが重要になります。この点は、AWS のお客様が享受する価値の 92% がコスト以上のメリットに由来するという IDC の調査結果によって裏付けられています。そして Mark さんは、最近の McKinsey のブログ投稿についてお話しになっていました。ビジネスケースは、それをどのように構築するかによって、クラウドで実現できる価値への影響がプラスになったりマイナスになったりする可能性があると仰っていましたが、その要点を簡単に説明していただけますか?

Mark Schwartz: はい、これは重要なポイントだと思います。クラウドのビジネスケースは、当然のことながら、その企業がクラウドから何を得ようとしているかに基づいていなければなりません。 クラウドは、俊敏性、回復力、セキュリティを向上させるために役立ち、イノベーションと顧客サービスの向上を可能にし、オペレーションの合理化にも役立ちます。そこで、このようなメリットのうち、企業の戦略目標に最も関連性が高いものはどれかを考えます。 決定したら、そこからビジネスケースが導かれるはずです。明確さや、クラウドで行うことの優先順位、緊急性、結果の測定方法も同様です。企業ではよく、クラウドでの目標は俊敏性を高めることだと言われていますが、実際には、インフラストラクチャのコスト削減という点に基づいてビジネスケースが構築されている点に注目すべきです。クラウドのメリットは、技術面だけでなく、ビジネス面のメリットでもあります。そこにビジネスケースが存在するわけです。

Calvin Wu: ええ、同感です。多くのお客様は、イノベーションを行う場合の俊敏性を理由としてクラウドに移行しますが、このメリットを数値化するのは難しいようです。その点 AWS Cloud Economics には、AWS のお客様が移行によるビジネス価値を特定および定量化するために役立つ多数のリソースが揃っています。1,000 社を超えるお客様が実現した価値を測定するベンチマークが用意されており、これは他の企業が独自のビジネスケースを作成する際にも役立つものです。

ベストプラクティス #3: クラウドプログラムのエグゼクティブスポンサーの割り当て

Calvin Wu: 3 番目のベストプラクティスに移りますが、クラウドプログラムを全面的にサポートおよび監督するエグゼクティブスポンサーを獲得すると、価値創造への進歩を加速できることがデータによって示されています。Mark さん、この点については、ご自身の見解をお持ちだと思います。この点が、組織によっては落とし穴となることがどのように証明されているか、解説をお願いできますでしょうか。また、よくある間違いを避け、エグゼクティブスポンサーシップのメリットを活かすにはどうすべきか、組織にアドバイスするとしたら、どのようになりますか?

Mark Schwartz: クラウドトランフォーメーションにおける企業全体の役割について、先ほど申し上げたことに戻るのですが、全員が関与すれば、トランフォーメーションの成功率はぐっと高まります。しかし多くの場合、変更エージェントやテクノロジーの専門家には、組織の全員を関与させる力がありません。シニアエグゼクティブスポンサーがいれば、その点を支援してもらい、ビジョンの提供や、会社の戦略的目標との連携、緊急性の面で後押ししてもらうこともでできます。これは非常に重要なことです。しかし、そこには落とし穴もあり得ます。組織の下層に強力な変更エージェントが存在する場合は、エグゼクティブスポンサーの支援を待つことはお勧めしません。中間管理職やラインスタッフの立場からでも、プロジェクトを進めるためにできることはたくさんあります。その後、上級管理職のサポートを受ける方がスムーズになるかもしれません。

ベストプラクティス #4: 一元的なクラウドチームの作成

Calvin Wu: IT 財務、ビジネス、セキュリティに関するあらゆる分野の専門家を含む一元的な Cloud Center of Excellence (CCoE) を設定すれば、組織はより大きな価値を達成できることがわかりました。CCoE チームは、開発チームによるイノベーションの加速に役立つコンサルティング、標準化、ベストプラクティスを提供することで効果的をもたらします。 Mark さん、分析に時間をかけすぎない方が良いということを先ほどお話しいただきましたし、「一元的」という言葉は特に、多くの解釈があると思います。CCOE の役割と、イノベーションの阻害を回避するための適切なバランスを見つけるということについて、考えをお聞かせいただけますか?

Mark Schwartz: わかりました。 私が CIO を務めていたときには、実は CCoE を作成しませんでした。このとき私たちの変革はかなり成功したと思います。ただし、ここには微妙な点があり、どのように調整するかによると思います。CCoE は、実際に職務を遂行するチームのスピードアップという点で重要な役割を果たすことが可能です。例えば、深い専門知識、企業全体の調整、ツールへのアクセス、創造的なアイデア、ポリティカル面の支援を提供できます。本質的には、サーバントリーダーとして、ビジョンを遂行するすべての人の障壁を取り除くこともできます。この方法は、必要なクラウドスキルを多くの社員がまだ持っておらず、CCoE が専門知識を提供できる初期段階では特に効果的です。反対に、方法を間違えると、CCoE のような中央集権的な組織が却って妨げとなり、官僚主義的な要素が加わって、プロジェクトの進行に遅れをきたす可能性もあります。役割の集中化と分散化のトレードオフについて、さらに深く掘り下げたブログ記事を公開しましたので、よろしければご覧ください。

Calvin Wu: Mark さん、ありがとうございます。先ほど説明したように、成功している多くの組織で実施されている共通のベストプラクティスがあります。ただし、変化を牽引する場合や、ビジネス価値の創造を急ぐ場合など、状況によっては、これらのプラクティスの一部で微調整が必要になるケースが多々あります。

全体的な改善と目標を絞った改善の両方に向けたベストプラクティスを探るには、eBook「Best Practices to Maximize the Business Value of the Cloud」(クラウドからビジネス価値を最大化するためのベストプラクティス) をダウンロードしてください。


ゲストについて

Calvin Wu は、アマゾン ウェブ サービスのクラウドエコノミクス部門ビジネス開発マネージャーであり、AWS に移行したお客様に関するメトリクスと傾向を数値化するための主要なベンチマーク調査の主導に注力しています。AWS に入社する前は、SAP America、Goldman Sachs、Deloitte でテクノロジーおよび財務に関する数々の役職を歴任しました。シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスで MBA を取得し、SUNY Geneseo で会計学の学士号を取得しています。

Mark Schwartz

Mark Schwartz

Mark Schwartz は、アマゾン ウェブ サービスのエンタープライズストラテジストで、「The Art of Business Value and A Seat at the Table: IT Leadership in the Age of Agility」を執筆しました。AWS に入社する前は、米国市民権・移民局 (国土安全保障省の機関) の CIO、Intrax の CIO、Auctiva の CEO を歴任してきました。彼はペンシルベニア大学ウォートン校で MBA を、イェール大学でコンピュータサイエンスの理学士号を、そしてイエール大学で哲学の修士号を取得しています。