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カスタマーソリューションマネージャー(CSM)の役割と働き方について(前編)

皆さん、こんにちは。 アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 Customer Solutions Manager(CSM)の小薗です。

アマゾンウェブサービスには、お客様にクラウドをより快適にご利用いただくために多種多様なポジションが存在します。それぞれがAmazonが掲げるリーダーシップ・プリンシプル(LP)に基づき、お客様を起点に考えお客様のニーズに応えるための役割が定義されています。Customer Solutions Managerもその職種の一つです。

しかし私自身、Customer Solutions Managerとして活動する中で、「Customer Solutions Managerの役割は何か?」と質問されることが多くあり、まだまだこの職種の役割が世の中に浸透していないと感じています。

このBlogは前編/後編の2部構成となっており、前編でアマゾンウェブサービスにおけるCustomer Solutions Managerの役割とその活動内容について、後編でCustomer Solutions Managerの実際の働き方について紹介していきます。

カスタマーソリューションマネージャーとは

一般的にCSMは“Customer Success Manager”の略称である場合が多く、その役割は自社の「製品」を購入いただいたお客様に対して、よりスムーズに、より最適な形で利用いただくように、「製品」の利用促進を行いお客様との関係性を強化していくことにあります。問題が発生してから対応するサポート担当者とは違い、お客様のビジネス動向を先回りして把握し、製品の最新の特色を活かして未然に課題を防ぐことが求められます。我々アマゾンウェブサービスにとっての「製品」とは当然、クラウドサービスであるAWSです。このパートでは、AWSを利用するにあたってお客様がぶつかる課題とは何なのかを紐解きながら、アマゾンウェブサービスのCSM=”Customer Solutions Manager“の役割について記述していきたいと思います。

総務省の情報通信白書によるとクラウドサービスを利用している企業の割合は、2015年時点で44.6%。2019年時点で64.7%と爆発的に増加していることがわかります。近年、各企業は事業の俊敏性をあげることを求められました。事業の俊敏性をあげるためには、「先行投資の抑制」「インフラ固定費の変動費化」「開発プロセスの変革」などの施策が検討されはじめ、その結果、それぞれの施策との親和性が高いクラウドサービスが注目を浴びる形となりました。しかし、オンプレミス環境上にウォーターフォールモデルで開発している企業がクラウド環境でアジャイル開発をするプロセス変革は容易ではなく、数々の障壁(ハードル)にぶつかることになります。

クラウドを利用する際の課題というと、どうしても技術的な課題を想像されるかもしれません。しかしこの絵で表されているように、お客様がクラウドを使ってビジネス価値を向上させていくためには、クラウドを取り扱うための環境/組織作りをする必要がありますし、ガバナンスを確立しそのルールを各部門に拡大していく運用を取り決める必要があります。CSMはこういった非技術的な課題も含めたハードルを事前にお客様に通知し、対応策を提示することでお客様がスムーズにクラウドジャーニーの階段を上っていただけるように貢献する役割を担っています。

また、クラウドサービスであるAWSの特性に注目するとCSMの役割がまた浮かび上がってきます。AWSを利用してお客様のビジネス価値を最大限に向上させていくためには、様々な観点での最適化が必要となってきます。様々な観点とは、コスト最適化、セキュリティ、耐障害性、パフォーマンス、サービスの範囲などがあります。これらの一般的なベストプラクティスはAWS Well-Architectedホワイトペーパーに纏められています。しかしベストプラクティスはあくまで一般的なものであり、お客様のビジネス目標や市場動向、ITベンダーとの関係性など、多くのパラメータによってお客様ごとにやるべきことが変動するため、お客様の状況に応じたSolutionを設計・適用する必要があります。こちらに対するアマゾンウェブサービスの取り組みとして、Solutions Architectがお客様の技術的要件に沿ったSolution設計を行い、お客様に伴走し状況に応じて非技術的な設計も交えながらSolutionの適用をガイドする役割をCustomer Solutions Managerが担うことになります。

ここまでCSMの役割について紹介してきました。他の職種と同様、お客様を起点に考えお客様のニーズに応えるために定義された職種だということがご理解いただけたでしょうか。次のパートではより彩度をあげるためCSMの具体的な活動内容について紹介していきます。

カスタマーソリューションマネージャーの活動内容

CSMの活動を深掘りするにあたって、重要な3つのポイントを以下に挙げていきます。

Customer Value Realization

1つ目は前述した通り、お客様のビジネス目標に対してAWSを最適な形で利用していただきカスタマーバリューを最大化することです。これをCustomer Value Realizationと呼んでいます。CSMはCustomer Value Realizationを実現するために、お客様の状況に則したクラウドジャーニーを計画化します。

Program Management

計画化したクラウドジャーニーに沿って安全・迅速にお客様が目標達成できるようガイドするには、優れたProgram Managementのスキルが必要です。クラウドジャーニーを歩む道のりで複数のクラウド活用プロジェクトが立ち上がりますが、1つのプロジェクトにフォーカスしてしまいCustomer Value Realizationを見失わないように、CSMはプロジェクト全体を 1 つの大きなプログラムにまとめて俯瞰的に状況を把握し、適切なタイミングで各プロジェクトにSolutionを適用することでプロジェクト全体を成功に導いていきます。また、進行中のプロジェクトで将来リスクになり得る潜在的な課題を検出し、都度予防策を講じていきます。それでもなお発生してしまった課題に対しては、ステークホルダー管理のスキルを発揮し、他の職種やAWSパートナーを動員してオーナーとして課題を解決します。CSMはこのような取り組みを継続して行いお客様との関わりを深めていくことで、クラウド活用の新たな機会をお客様と共創し、ビジネス目標達成に近づけて行きます。

Cloud Journey Acceleration

CSMの活動の重要なポイントの3つ目は、Cloud Journey Accelerationです。日本だけでなく、世界中でAWSをご利用いただいているお客様と伴走しているため、CSMには数多くの知見や経験が蓄積されています。このデータを用いて支援プログラムとして昇華させたものをCloud Journey Accelerationと呼んでいます。CSMはクラウドジャーニーのガイド役としてお客様を先導し、適材適所のタイミングでこのプログラムを実行します。

また、既存の支援プログラムがお客様の状況とマッチしないという状況も往々にして発生するため、その場合はお客様の状況に応じたSolutionを検討・発明して適用することで、クラウドジャーニーの推進を加速していきます。新たに生み出したSolutionは他のCSMでも再現できるよう、プログラム化して世界中に拡大することを心掛けており、AWSを活用いただいているお客様全体のクラウドジャーニー加速に繋げていきます。その中で新たにクラウドを活用いただける領域を見つけたら、AWS内の他リソースと連携を取りながら最適なSolutionを提案してクラウドジャーニーをさらに加速させていく役割を担います。

Cloud Journey Accelerationの一つの例として、お客様が新たにシステムをAWSに移行したいと考えている場合にお客様の課題を可視化するMigration Readiness Assessment (MRA) というプログラムがあります。MRA はAWS Cloud Adoption Framework (CAF) と呼ばれるフレームワークに沿って質問に回答いただき、クラウド移行に関する課題を明確化し、クラウドに移行する際に必要となるタスクの抜け漏れを洗い出し、その後の移行計画のインプットとしてご利用いただくことを目的としています。 MRAの詳細についてはこちらのBlogを参考ください。

また、「AWSへの移行及びモダナイゼーションを経験したことが無く、第一歩を踏み出すことを躊躇してしまうことで開発速度が上がらない」というお客様に対しては、Experience-Based Acceleration (EBA) という移行及びモダナイゼーションの体験型ワークショップを提供しています。EBAはお客様とAWSが一体となりパイロット開発を進める約一カ月の体験型ワークショップで、スモールスタートでAWSへの移行及びモダナイゼーションを体験して成功体験を獲得いただくことで、その後の開発加速に繋げることを目的としています。EBAの詳細についてはこちらのBlogをご参照ください。

最後に「クラウドジャーニーを進める上で、必要なAWSスキルの現状とのギャップを把握しギャップを埋めるためのトレーニングを受講したい」というお客様に対しては、Learning Needs Analysis (LNA) というスキルギャップの分析を行うプログラムを提供します。AWSトレーニングのスペシャリストであるTraining and Certification (T&C) の担当者と連携し、LNAの分析結果に応じた最適なトレーニングメニューを作成して、お客様のクラウドジャーニーに最適なAWSスキルを取得していただきます。LNAの詳細についてはこちらのBlogをご参照ください。

おわりに

ここまでアマゾンウェブサービスのカスタマーソリューションマネージャーの役割について説明してきました。それは、Customer Values Realizationを実現するために、Program Managementのスキルを発揮しながら多種多様なお客様の課題を解決し、Cloud Journey Accelerationを有効活用してクラウドジャーニーを加速させる、ということです。紹介した活動例だけではなく、CSMがお客様のビジネスを加速するための活動は多岐に渡ります。次の後編では、実際のカスタマーソリューションマネージャーの働き方にフォーカスしていきたいと思います

カスタマーソリューションマネージメント統括本部
カスタマーソリューションマネージャー (CSM) 小薗 将史、小林 正拡