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LNAによるギャップ分析を活用した効率的なAWSスキル育成計画の立案

みなさん、こんにちは。AWSカスタマーソリューションマネージャー (CSM) の伊藤です。私は普段、お客様のAWSへの移行をお手伝いさせていただいております。大規模なシステム移行に関して、成功を左右する主な要因の一つとして、プロジェクトメンバのAWSスキルが挙げられます。いざプロジェクトを開始してみても、スキル不足が原因でプロジェクトが停滞してしまったという話もございます。効果的にスキル育成をするためには、正確にメンバのスキルギャップを把握したうえで、育成計画を策定することが重要です。AWSでは、スキルギャップ特定を支援するLNA (Learning Needs Analysis) というプログラムをご用意しております。この記事では、LNAを使ってスキルのギャップ分析を行い、効果的なAWSスキル育成計画の立案をするための一連の流れについてご紹介します。

トレーニングの必要性

お客様のクラウド移行プロジェクトの状況に関するお話を伺っていると、「調査に時間がかかっておりプロジェクトが遅延している」、「誤った設計のまま進んでしまい、手戻りが発生する」といった課題をお聞きすることがあります。様々な要因が考えられますが、クラウドに関するスキル不足も主たる要因の一つとしてあげられるのではないでしょうか。この話題に触れる頻度から、多くのお客様で同じ様な状況に直面していると推察しています。そこで、デジタルスキルトレーニングを取り巻く状況から順を追って確認してみます。

デジタルスキルトレーニングを取り巻く状況

日本とAPAC6か国 (オーストラリア、インド、インドネシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国) を対象にして実施され、2022年4月に公表されている、AWS APACデジタルスキル調査では、クラウド関連のスキル育成に関して、非常に興味深いインサイトが得られています。日本の状況に着目すると、デジタルスキルトレーニングの必要性と実施状況の間に、7か国中で最も大きな乖離があり、クラウドを含めたデジタルスキルに関するトレーニングが不足している状況が浮き彫りになっています。

スキル育成計画策定における課題

トレーニングが不足している要因の一つとして、適切なスキル育成計画を策定できていないことが考えられます。各部門やロールに応じて、業務上必要なスキルは異なります。また、メンバによって習熟度も様々です。そのような状況において、効果的にスキル育成を進めるためには、画一的なトレーニングではなく、業務やメンバの習熟度に合わせたトレーニングを実施することが重要です。しかしながら現実には、計画策定を主導される方とメンバの認識が乖離していることも多いのではないでしょうか。当然、計画策定の前提に誤りがあると効果的なスキル育成はできません。

スキルギャップの特定が肝

実際のクラウド人材の育成プロセスで確認してみましょう。将来の成長のために組織に必要となるスキルの過不足を可視化する、このタスクの巧拙が、後続のスキル育成計画の成否に影響を及ぼすことは言うまでもありません。スキルギャップの特定こそがプロセス全体の肝になっていることがご理解いただけいると思います。

育成プロセスにおいてスキルギャップの特定は重要である

LNA (Learning Needs Analysis) を活用したスキルギャップの特定

LNAでは、IT組織全体のスキルギャップを特定し、役割 (例: 開発担当者) に応じたスキル  を「スキル無し」から「エキスパート」の5段階で評価します。具体的には、自分の主な役割や二次的な役割、資格の取得状況やAWSの利用経験などを入力することで、より実態に即したスキル評価の設問のセットが提示されます。この評価を通じて、スキルアップを必要としている人や組織がどこなのか、定量的な情報として可視化できる様になり、より実効性の伴うスキル育成計画策定へとつながります。

LNAの提供内容イメージ

LNAでは、Webアンケートとレポートをお客様にご提供します。Webアンケートにて、ロールに合わせて一人20~30問程度の質問を行いお客様のスキルや学習状況を収集します。レポートでは、組織や個人毎のスキルギャップの情報や推奨トレーニングコース一覧を提供します。この情報を活用することで、先にご説明した、組織や個人のスキルギャップに応じた適切なトレーニングプランの策定のみならず、定期的にLNAの評価を行うことで、トレーニング効果を測定する為の指標として利用することも可能です。

LNAを用いて簡単なアンケートで現状を可視化しスキルギャップを把握することが出来る

活用事例

Principal Financial Groupの事例

同社では、COVID-19の流行により、遠隔地からのサービス需要に対応するため、クラウド移行を早急に進める必要がありました。このため、クラウドスキルを持った人材確保の必要性が高まっていました。実現に向けて、既存スタッフのスキルアップ/リスキルを行うために、AWS Training and Certificationに着目し、LNAを使用してスキルギャップを特定しました。Senior Vice President and Chief Information Officer, Kathy Kay氏は、このブログ記事の中で、LNAについて以下のコメントを述べています。

どのレベルのAWSスキル成熟度を達成する必要があるかがわかった
彼女はさらに、LNA利用の効果として次のコメントも残しています。

LNAを用いてエンジニアリングプラクティスを近代化することができた

LNA利活用のポイント

LNAの利用及び、評価結果を活用する上での重要なポイントを幾つかご紹介します。

  • 自らの組織におけるロール毎に求められるスキル基準を明確にし、LNAの評価との関係性を定義することで、より実効性のあるスキルギャップ分析を行うことができる。
  • 一度の利用に止まらずLNAを定期的に実施することで、育成状況の可視化や中長期的な視点での育成計画の評価にも活用できる。
  • スキル評価レポートとして、個人、組織毎の詳細な評価結果をExcelファイル形式で入手できる。これを独自の視点でのスキル評価、分析に活用することも可能である。

なお、当記事を読まれてLNAをもっと知りたいと思ったら、こちらのページもご確認ください。
今後、お客様の組織のLNAのスケジュールを作成する、または追加の情報を受け取るには、こちらのWebフォームからAWS トレーニングと認定のエキスパートにお問い合わせください。

著者

カスタマーソリューションマネージャー 伊藤 一弘
カスタマーソリューションマネージャー 上原 研太
カスタマーソリューションマネージャー 西部 信博