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【開催報告】Amazon QuickSight事例祭り ~データを駆使して組織とビジネスを変革する~

8/12に「Amazon QuickSight 事例祭り ~データを駆使して組織とビジネスを変革する~」を開催しました。お盆の週であったにも関わらず沢山の方々に参加いただき、登壇者のアクサ生命保険株式会社・株式会社ドリコム・ヤフー株式会社・リブパス株式会社・レッドフォックス株式会社からはデータ活用に関する様々なエピソードをお話しいただきました。

本ブログでは一部発表の内容をご紹介します。また、発表資料および動画へのリンクも掲載しています。

Amazon QuickSight ご紹介

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 アナリティクス事業本部 事業開発 伊東 大騎
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初めに伊東からは、なぜ Amazon QuickSight がクラウド時代に適したサービスなのかと、データを可視化するBusiness Intelligence(BI)ツールとしてのユニークなポイントをご紹介しました。

誰もがビッグデータ活用の重要性を認識しているものの、実際に分析基盤のシステムを構築し新しいツールと働き方を社内に浸透させるのは簡単ではありません。特に従来の仕組みであるとデータが一括管理されていない・オンプレミスの運用保守コストと性能が限界・分析作業が非効率など課題が山積みです。そこでクラウド化により無駄な作業を削減することで、本質的な業務に集中できます。

Amazon QuickSight は、このような時代のニーズに応えるべく開発されたBIサービスです。まずクラウド標準のサービスであるため、サーバー管理不要で自動スケールによる拡張性も担保されています。もちろんHigh Availability(マルチAvailability Zone)構成で耐障害性に優れており、セキュリティ各種に準拠しているため、企業においても安心してご活用いただけます。また、BIサービスはライセンスコストも課題になりがちです。これからの時代は全社員によるデータ活用が要となるため、 Amazon QuickSight はアクセス頻度に応じた従量課金の価格体系も提供しています。


機能改善の速さも Amazon QuickSight の魅力で、今年も多くのアップデートがありました。まずインメモリのSPICEにおける1データセットあたり上限が1億行/200GBから2.5億行/500GBにパワーアップしました。SPICEの改善により分析作業がより快適になります。また、Amazon QuickSight にはクリック操作で扱える機械学習サービスのML Insightがあり、Amazon SageMaker とも簡単に連携できるようになりました。最後が組み込みアナリティクスのアップデートです。これまでWebアプリケーションに組み込んで使う場合はReaderのみの対応でしたが、Authorとしてアドホック分析やデータソースの操作もできるようになりました。新たにこのような機能をSaaSに実装するのは困難ですが、Amazon QuickSight を使うことで簡単に・高速に・スケーラブルに実現できます。

ゲーム運営を進化させるログ基盤と分析の取り組み

株式会社ドリコム データソリューション部 部長 山本 守 様 / データサイエンティスト 石井 雄一郎 様 / データエンジニア 金子 大貴 様
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ゲーム業界からドリコム社の山本様・石井様・金子様にご登壇いただき、目まぐるしくトレンドが変化するソーシャルゲームにおける分析基盤のクラウド化とデータ分析活動についてお話しいただきました。

ソーシャルゲームはデータを踏まえた継続的かつ高速な改善が重要なため、ドリコム社は早期から分析基盤を構築してデータ分析に取り組んでいましたが、内製のシステムでは限界を迎えつつありました。具体的には、爆発的なデータ量によるシステムパフォーマンスの限界、運用の属人化、オンプレミスの管理コスト、などが挙げられます。結果、新しいタイトルをリリース時もデータドリブンな意思決定をするのに十分な時間を充てられていませんでした。そこで、データソリューション部主導のもと、クラウド移行とBI製品採用による効率化を決定されました。

選定時は他のサービスも満遍なく調査された結果、Amazon QuickSight を採用されました。理由はサーバー管理が不要なうえ、初心者でも簡単にダッシュボードを作成できる・インメモリのSPICEと Amazon Athena の組み合わせにより集計および表示が速い・ユーザーアカウントはIAMロールで一括管理できるためです。

分析基盤は各ゲームタイトルごとに下記のようなデータレイクを構築されています。リアルタイム性を確保したシンプルなサーバーレス構成のため、エンジニア 2 名で複数タイトルを運用されています。バッチ処理の実行には AWS Step Functions を活用し、SQL ファイルが配置された Amazon S3 バケットに対して、AWS Lambda 関数を経由して Amazon Athena がクエリ発行を実行できる仕組みを実現されています。これにより、エンジニア以外でもバッチ処理を追加できるようになり、運用の負担を削減されています。


移行を終えた結果、多くのビジネス効果がありました。ダッシュボード運用の人的コストが80%削減し、分析基盤のシステムコストも60%削減。結果、アナリストは効率的により多くの分析作業をこなし、プロダクト改善活動に集中できるようになりました。ダッシュボードも全社員に開放することで全員でのデータ活用を実践されています。今は新タイトルをリリースする前に200近くのKPI/KGIを定義しダッシュボードも準備しておくことで、リリース後すぐにデータを踏まえたアジャイル運営ができるようにされています。

ドリコム社は統計解析による質の高いデータ活用も目指されています。例えば、マーケティングキャンペーンがゲーム上のユーザーアクティビティにどれ程の影響があったかを傾向スコアマッチングで評価されています。また、Amazon SageMaker のXGBoostアルゴリズムによりユーザーを部類し、その結果を Amazon QuickSight で可視化されています。今後もドリコム社のデータ活用における更なる活用が期待されています。

新型コロナ禍の営業対策 QuickSightで高速ダッシュボード開発

ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 テクノロジーサービス本部 データインテリジェンス部 田中 祐介 様
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ヤフー社からはシニアアナリストの田中様にご登壇いただき、このコロナ禍において広告営業がどのようにデータを駆使した対策を取られているかお話しいただきました。

田中様は広告クライアントの売上最大化を目的とした分析を行い営業を支援されています。新型コロナウイルスの影響でWeb上のユーザー動向が急激に変化したため、アナリストがヤフー広告のパフォーマンスをコロナBefore/Afterおよび昨年対比で分析し、その結果をタイムリーに営業活動へ繋げる必要がありました。経験値では判断できない、前例のない事態であるからこそ、よりデータの重要性が増しました。

一刻も早く体制を整えるべく Amazon QuickSight を採用した結果、プロトタイプ作成から1週間でリリースすることができました。分析環境の構成として、オンプレミスのHadoop環境から大規模データをAWS上の Amazon S3 にコピーし、Amazon Athena を介して Amazon QuickSight で可視化されています。なるべく Amazon Athena で事前に集計およびテーブル準備をすることで性能面での最適化が行われています。


導入をスムーズに進めるための工夫もされています。まずは小さいデータでプロトタイプを作成し、関係者のレビューを受けたうえで、データを本番同様のものに入れ替えて実運用に移行されています。また、既に別ツールも社内で使われていることから、新しいツールの導入において課題がありました。そこで Amazon QuickSight の推進担当を立て、1つの広告カテゴリで分析の実績を作りダッシュボードをテンプレート化することで、部署内で普及させることができました。

既に広告クライアントへのタイムリーな提案に Amazon QuickSight を活用されています。影響の大きい広告カテゴリを特定したうえで広告主や代理店に現在の情勢とヤフー社としての打ち手を伝えられています。下記のようなチャートとML Insightのナラティブを組み合わせたダッシュボードで分析されています。また、アナリストもデータ抽出における工数を削減でき、本質的な分析作業に集中できるようになりました。

今後は Amazon SageMaker XGBoostアルゴリズムによりユーザー毎に推定コンバージョン率を算出し、その結果を Amazon QuickSight 上に可視化することで、より高度な分析をされていく予定です。また、可視化ダッシュボードにより営業活動におけるクライアントへの付加価値を更に向上できると考えられています。

QuickSightを用いたパーソナライズド動画の視聴効果の可視化

リブパス株式会社 小西 哲平 様

デジタルマーケティングにおけるパーソナライズド動画サービスを展開するリブパス社の小西様から、可視化基盤によるSaaS価値の向上についてお話しいただきました。

これまではパーソナライズド動画のログデータを都度Excelで出力および集計しPowerPointでクライアントに報告されていましたが、動画のログデータ(視聴率・再生時間・完了率など)とクライアントのデータ(契約率など)を準備して分析するのに多くの単純作業があり無駄な工数を取られるため、BIツールで効率化することを検討されました。

Amazon QuickSight を検討された結果、リブパス社のBI要件(異なるデータソースを自由に組み合わせる・ダッシュボード自動更新・直感的な操作性)を満たしたのに加えて、アクセス数に応じた従量課金で運用コストを抑えられることから、採用を決定されました。また、BI環境構築の手間が無いため、迅速に環境を立ち上げて運用を開始できるのも魅力の一つでした。

分析基盤のアーキテクチャとして、まず自社サービスのログとクライアントのCSVファイルを Amazon S3 に集約されています。企業間のデータベース連携はセキュリティおよび運用上できないため、それぞれのファイルを収集したうえで前処理と可視化をされています。そして、データ更新時に AWS Batch が起動し、Amazon ECS からPythonによりデータの前処理を実行し、 Amazon QuickSight で可視化されています。

Amazon QuickSight の検討を始められてから1カ月で実運用を開始し、クライアントにも可視化ダッシュボードを開放することで、一緒に動画配信効果を分析できるようになりました。契約率が高くなるような動画コンテンツの改善や属性に応じた最適な音声の選択などに活かされています。

今後もリブパス社の可視化基盤として Amazon QuickSight を様々なクライアントに展開される予定です。SaaS利用者へのBIおよびデータ分析機能の提供がサービス価値向上に欠かせないことが良く分かる事例でした。

Smart Work Acceleratorサービス「cyzen」に開発ナシでダッシュボード機能を容易に後付け!

レッドフォックス株式会社 cyzen開発チーム 下村 禎 様
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レッドフォックス社は営業のような現場作業をスマートフォンで効率化するSmart Work Acceleratorサービスcyzenを展開されており、cyzen開発チームの下村様からSaaSにおける可視化ダッシュボードの活用方法をお話しいただきました。

営業員がcyzenを使うことで業務効率を改善されていますが、ご利用者が自主的にデータドリブンで営業員のスキルアップを図れる仕組みを検討されていました。そこで、cyzenに蓄積された個人別の成績・行動量の変化推移・KPIなどのデータをBIサービスで可視化し、cyzenご利用者に提供することになりました。


その導入において最初は他のBIサービスを使われていましたが、AWSサービスとのデータ接続・外部提供における契約スキーム・初期コストが課題となり、費用対効果の検証には負担が大きすぎました。まずは小さく始めて改善PDCAを回し、それを踏まえて導入有無のビジネス評価をするのが理想的であるため、効果を実証できていない段階での投資には懸念がありました。

そこで Amazon QuickSight を検討された結果、安定したシステムで簡単に低コストで始められることが分かり、採用を決定されました。操作方法は独学で習得できたことからスムーズにツールを移行でき、ダッシュボードの印象も自動的にグリッド形式で綺麗に整えてくれることから見やすいとの評判でした。

最初に Amazon QuickSight の検討を始めてから1カ月強でシステム構築と可視化ダッシュボードの作成が完了し、既に11社とのトライアル運用を実施されています。ご利用者からのフィードバックを踏まえてダッシュボードを改善し、データ活用が現場に浸透するようご支援されています。また、ご利用者との会議中にフィードバックをダッシュボードに反映し高速改善されていますが、これはブラウザ標準のツールならではのメリットです。

今後はトライアル運用を通じてビジネス効果を評価し、ダッシュボード提供がメリットあると判断した場合は、cyzenの一機能としてサービス上に組み込むことを検討されています。データをサービス化するための具体的なノウハウがまとまった発表でした。

まとめ

今回は、現場でデータ活用のプロジェクトを社内で推進されている方々から、Amazon QuickSight およびAWSのアナリティクスサービスをどのように活用しビジネスに貢献されているのか、生の体験をお話しいただきました。Amazon QuickSight の利用に興味を持っていただいたお客様あるいはAWSのサービスを利用することをご検討いただいているお客様がいらっしゃいましたら、無料で個別相談会を開催しておりますので、こちらのリンクからぜひお申し込みください。