Amazon Web Services ブログ

AWS Launch Wizardで行うSAPアプリケーションソフトウェアの自動インストール

はじめに

SAP on AWSの取り組みは2008年から続いています。当初からAWSはお客様の声に耳を傾け、そのフィードバックを AWS プラットフォームに反映し、SAP on AWSのエクスペリエンスを向上させるよう努めてきました。13年以上にわたりお客様から継続して頂いていた声の一つとして、SAPワークロードをより迅速かつシンプルにデプロイしたいという点がありました。その声を受け、re:Invent 2019で、AWS Launch Wizard(サードパーティアプリケーションのサイジング、設定、デプロイのプロセスをガイドするサービス)が、当時既にサポートされてたMicrosoft SQL Serverに加えて、SAP HANAおよび SAP HANAベースのSAP NetWeaverワークロードのデプロイをサポートするように拡張されることを発表しました。AWS Launch Wizardを使用すると、SAPユーザーにSAPの技術担当のナレッジとスキルセットに基づくステップバイステップのサポートが提供されるため、SAPワークロード用のAWSインフラストラクチャの設定とデプロイのプロセスを劇的に簡素化できます。

AWS Launch Wizardによって、SAPワークロードのインフラストラクチャの構築期間を最大 75%短縮できたという声をお客様やパートナー企業から頂いています。このサービスは次のような様々なユースケースに活用することができます。

  • PoC(Proof of Concept)やパイロットフェーズ
  • 開発、テスト、品証、本番環境の移行
  • ジャストインタイム方式のディザスタリカバリ構築
  • 新プロジェクト向けのアドホックシステムや既存ランドスケープへの新規システム作成等

本日(2020年12月16日)、AWS Launch Wizardがインフラストラクチャの設定とプロビジョニングに加えて、SAP NetWeaver、SAP S/4HANA、SAP BW/4HANA をはじめとした、アプリケーション層でのソフトウェアインストール機能をサポートしたことをお知らせします。

AWS Launch WizardでSAPアプリケーションをインストール

AWS Launch Wizardの以前のリリースでは、SAP NetWeaver基盤のアプリケーションに必要なAWSサービスをプロビジョニングし、SAP HANAデータベース(選択した場合)のインストールが可能でした。しかしその後、ユーザーはデプロイされたインスタンスにSAP NetWeaverアプリケーションソフトウェアを手動でインストールする必要がありました。この手動インストール作業は、お客様が選択したデプロイモデルによっては、数日を要する場合もありました。

SAPアプリケーションソフトウェアを手動でインストールすると、アプリケーションのパラメータを定義したり、AWSサービスと連携したりする際に人的ミスの余地が生まれます。インストール後に、数日または数週間のテストと検証が発生する可能性があり、エラーがあれば再作業が発生し、作業時間が増加します。

本機能ではAmazon S3バケット経由でSAPアプリケーションソフトウェアを準備したうえで、アプリケーションをインストールすることができます。つまり、SAPアプリケーションと付随するAWSサービスやSAP HANAデータベースを、ほんの数時間で起動することができます。

それでは、AWS Launch Wizardの主な機能とその価値について触れてみましょう。

AWS Launch Wizardの主な機能と利点

ガイド付きユーザーエクスペリエンス

デプロイプロセス全体を通して、AWS Launch Wizardでは、AWSとSAPのベストプラクティスに従ってSAPシステムを立ち上げるためのガイダンスを提供します。例えば、

  • アプリケーションの要件を満たす様々なデプロイパターン(シングル、マルチノード、高可用性)から選択可能
  • ドロップダウンメニューによりオペレーティングシステムやバージョンなど、デプロイの重要な項目を簡単に選択して選択できます
  • 重要な入力情報は検証され、悪影響を及ぼすエラーを排除することで時間を劇的に削減できます

インフラストラクチャの推奨事項

AWS Launch Wizardを使用する場合は、SAPアプリケーションのCPU/メモリ、またはその パフォーマンス指標としてSAPS値(SAP Application Performance Standard)を用いることも可能です。本サービスでは、アプリケーションコンポーネントとランドスケープ内のシステムの役割に基づいて適切なサイズのAmazon EC2インスタンスとAmazon EBSストレージボリュームを算出し、過剰なサイジングやコストを抑えることができます。

再利用可能なインフラストラクチャテンプレート

AWS Launch Wizardはアプリケーションを実行する Amazon VPCとサブネットやセキュリティグループの設定方法など、インフラストラクチャ関連の設定事項を簡単に定義し保存することができます。これらの設定は、たとえばクラウド技術者が設定を保存し、将来のデプロイで SAP Basis管理者が利用するテンプレートとしても活用できるため、DevOps チームやインフラストラクチャチームからの支援が不要になります。

AWS Launch WizardがSAPをサポートし4月に一般リリースされて以来、多くのお客様からのフィードバックを受け、より多くの設定や連携、統合や機能を使用しサービスを更新してきました。ではAWS Launch WizardがSAPのデプロイをサポートすることを発表してからのマイルストーンを見てみましょう。

AWS Launch Wizardのイノベーションマイルストーン

  • 2019年12月 — プライベートプレビュー: re:Inventにて単一ノードのSAP HANAおよびSAP NetWeaverでAWS Launch Wizardがプレビューで利用可能であることが発表されました。
  • 2020年4月 — 一般リリース: AWS Launch Wizardが一般公開でリリースされ、SAP HANA およびSAP NetWeaver on SAP HANAの最も一般的なデプロイパターン (シングルノード、マルチノード、高可用性構成) がサポートされました。
  • 2020年7月 — お客様のプロキシサーバーを介したアウトバウンドインターネット接続のルーティング: プロキシサーバーを使用したAmazon VPCからのアウトバウンドインターネット接続のルーティングのサポートを開始しました。
  • 2020年7月 — Amazon Route 53 の統合: AWS Launch Wizardは、選択した Amazon Route 53ホストゾーンにDNSレコードを作成します。これにより、デプロイされるAmazon EC2インスタンスごとに、/etc/hostsファイルエントリを保持する必要がなくなります。
  • 2020年8月 — リージョンの拡張: AWS Launch Wizardは、欧州(ミラノ)、中東(バーレーン)、アフリカ(ケープタウン)、および アジアパシフィック(香港)で追加で利用できるようになりました。
  • 2020年9月 — 複数ルートテーブルのサポート: このアップデートにより、複数のルートテーブルを使用して高可用性構成のSAPシステムを自動的にデプロイできるようになり、信頼性を更に向上させることができます。
  • 2020年9月 — Amazon EFSの統合: このリリースでは、スケールアウト構成のために複数のSAP HANAノード間で共有する必要がある/hana/sharedファイルシステムと/backupファイルシステムにAmazon EFSの利用が可能となりました。
  • 2020年9月 — Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 8.1 サポート: AWS Launch Wizardのデプロイに RHEL 8.1 が利用可能になりました。
  • 2020年9月 — SUSE Enterprise Linux (SLES) 15 SP1 および 12 SP5:  このリリースでは、SUSE Linux Enterprise for SAP Applications(SLES) バージョン12 SP5/15SP1が利用可能になりました。
  • 2020年10月 — AWS Backint Agentのサポート: AWS Launch Wizardと AWS Backint Agentを統合し、AWS Launch Wizardのデプロイプロセス中にSAP HANAバックアップを設定できるようになりました。
  • 2020年11月 — AWS Launch Wizardのデプロイ前後処理の設定スクリプト拡張:  このリリースでは、AWS リソース設定プロセスの前と後に実行されるスクリプトをAWS Launch Wizard経由で実行し、SAP環境をカスタマイズできます。
  • 本日(2020年12月16日) — SAP アプリケーションソフトウェアのインストール: 本日(2020年12月16日)のリリースによりSAP NetWeaver、SAP S/4HANA、および SAP BW/4HANAのアプリケーションソフトウェアを、デプロイされるEC2インスタンスに手動インストールする必要がなくなりました。

このタイムラインの内容だけでなく、AWSサービスとの統合をすべく活動を続けておりました。現在AWS Launch Wizardでは 15 種類以上のAWSサービスと統合されています。これにより、他のネイティブAWSサービスと連携したり、SAPデプロイのオーケストレーションを可能とします。

 AWS 起動ウィザードと主要な AWS サービスがどのように統合され、SAP の自動デプロイを可能にするかを示す図。

ぜひAWS Launch Wizardをご利用ください

このガイダンスと自動化が及ぼすインパクトは大きなものではないでしょうか。それはほんの数時間で本番環境に対応したSAPアプリケーションが起動でき、利用できることであり、より作業が高速化されるだけでなく、優秀な技術者がより価値のあるタスクに時間を割くことができるようになるという事です。また、全てのプロセスにおいて、ガードレールのような、有りがちなエラーを回避する仕組みが用意され、ユーザーが安心してアプリケーションをデプロイする事ができるという点です。

AWS Launch Wizardを引き続き改善し、AWS上のSAPワークロードのデプロイをより簡単にする旅を続けられることを嬉しく思っています。

お客様自身のSAPシステムのデプロイを開始する場合は、詳細情報を確認するためにAWS Launch Wizardのウェブページをご覧ください。AWS Launch Wizardで現在サポートされているSAPアプリケーション/データベース、およびオペレーティングシステムの完全なリストについては、AWS Launch Wizardのドキュメントを参照してください。AWS Launch WizardはSAPのお客様向けにサポートするソリューションを拡張し続けているため、定期的にご確認ください。

翻訳はPartner SA松本が担当しました。原文はこちらです。