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クラウド財務管理はコスト削減以上のメリットをもたらす

こんにちは。シニア事業開発マネージャーの門畑です。本日は451 Researchが調査した報告書 (クラウド財務管理はコスト削減以上のメリットをもたらす:Cloud Finacial Management Benefits Go Beyond Cost Savings) と2023年3月29日に上梓した書籍 (AWSコスト最適化ガイドブック) の概要をご紹介します。

451 Research報告書の概要

451 Researchに世界中の1,000人の意思決定者を対象にアンケートを実施いただきました。調査回答者の圧倒的多数 (95%) は、クラウドサービスを利用することで、同等のオンプレミスのシステムと比較して、ITインフラストラクチャの総所有コストの削減が図れると回答しています。パブリッククラウドの支出・使用量を継続的に監視し、利用部門のコスト意識を高めることで、経済的にもまたサスティナビリティ (持続可能性) の観点でも効果を得られます。クラウド利用費用を最適化するためのクラウド財務管理を組織に組み込むことは、コスト最適化以上のメリットを継続的に獲得できる、と報告しています。

Cloud Financial Management (CFM: クラウド財務管理)を組織に組み込むことによる効果

調査結果によるとクラウド財務管理を組織に組み込んだことにより、事業のコスト維持に寄与したと回答した割合が41%に対して、利益率、収益の向上に寄与したと回答した割合がそれぞれ52%、48%となりました。クラウド財務管理を通して「ビジネスへ貢献した」と回答した割合が多いことがわかります(図1)。

図1. クラウド財務管理を組織に組み込むことにより寄与

クラウドを利用している期間が長いほど、クラウド財務管理のベストプラクティスを組織に組み込む可能性は高く、またコスト削減も達成する可能性が高く、クラウドを4年以上利用している利用者のうち60%以上がインフラストラクチャに対する単価を60%以上削減できたと報告しています。

AWSコスト最適化ガイドブック

451 Researchの報告から、クラウド財務管理を組織に取り込むことで、インフラストラクチャに対する費用の削減だけではなくビジネスへの貢献も得られることがお分かりになったかと思います。削減した原資から革新的な領域に対してIT投資を加速し、加えてクラウドネイティブなアーキテクチャ・体制・運用プロセスを整備することで、開発スピードを上げ、ビジネスへの変更に迅速に対応可能となります。このように、持続的なクラウド利用費用最適化の仕組みを組織に組み込むことは、贅肉を削ぎ落とし筋肉質に変え、ITを強い武器に変えることにつながっていくことがお分かりになると思います。すなわち、クラウドを”利用するだけ”ではなく、クラウドの”最適化”を成し遂げることで、DXも実現できると考えられます。

AWSコスト最適化の勘所

AWSが提唱しているクラウド利用費用最適化を進めるためのフレームワークがCloud Financial Management (CFM:クラウド財務管理)フレームワークです。CFMフレームワークは、(1) クラウド利用費用の可視化、(2)-1 迅速にクラウド利用費用削減を実現するめのクイックウィン最適化、(2)-2 中長期的な視点でクラウド最適化に取り組むアーキテクチャ最適化、(3) クラウド利用費用の予測と次年度の予算策定のための予測に基づいた計画、(4) 持続的なクラウド最適化を推進していくためのFinancial Operations (FinOps)の実践の4つの柱を持ちます(図2)。

図2. CFMフレームワーク

クラウド利用費用を最適化するための最初のステップとして、利用しているリソースがどの組織 / チーム / 開発プロジェクト / サービスに帰属しているのかを明確にし、利用費用・利用量を監視・管理することが必要です。クラウド利用費用に対する責任の所在を明確にし、また利用費用のデータ取得と分析を通して投資対効果を把握することで、適切なIT投資・リソース配分を決定する材料となります。

AWSへ移行し、本格的に利用していく中で大切なのは、利用費用を可視化したうえで、ワークロードの特性を評価し、段階的にかつ定期的に見直しを行うことです。その中で迅速にクラウド利用費用を最適にするためのクイックウィン最適化は、最初のアクションとなるでしょう(図3)。

図3. クイックウィン最適化

さらに中長期的な計画として総所有コストを最適化していくには、アーキテクチャの観点での最適化が不可欠です。ネットワークアーキテクチャは、可用性やネットワークの遅延等の各非機能要件とクラウド利用費用の両方を適切に評価することが肝要です。加えて、クラウドの特性を活かして、よりよい運用・拡張性と回復力を確保することで運用工数を削減し、生産性向上に加えてビジネスの俊敏性を高めていくためには、クラウドネイティブアーキテクチャを採用することが肝要です。お客さま自身による設定・保守作業工数を軽減するために、システムを疎結合化し、コンテナサービスの利用やマネージド型サービス / サーバーレスを用いたアーキテクチャの検討を行います。

また、クラウド利用費用を予測し、年度の予算策定のための計画を行う必要があります。クラウドの場合は費用の予測が運用費用ベースとなることから、オンプレミスの場合と比較して予算計画と支出の差異が相対的に多く発生します。したがって、予測のスパンを短くし、予実差異が発生した場合にその原因の特定と予測の見直しを行う必要があります。

ここまで紹介してきた個々のアプローチを仕組み化することで、持続的にクラウド利用費用最適化を実現することが可能となります。そのためには、ビジネス戦略上におけるクラウド利用の位置付けに基づき、上述のアーキテクチャ最適化の検討に加えて、手動作業をできる限り排除し自動化を進めていくためのAWSサービスや、サードパーティー製品などを用いたソリューションが不可欠となります。加えて、人材の確保・育成やクラウド推進組織の組成、クラウド利用費用の可視化の徹底やクラウド最適化のためのガバナンスの構築も求められます。さらに、IT・クラウド利用によるビジネスへの貢献を可視化するための仕組み、共有費用等の配賦方法等の運用プロセスの確立も必要となるでしょう。このような財務・ビジネスの観点を踏まえたうえでクラウド最適化を推進するためのFinancial Operations(FinOps)を実践することではじめて、クラウドを有効活用しつつ持続的なクラウド利用費用最適化を実現することが可能となります。

まとめ

今回は、451 Researchによる調査結果からクラウド最適化を推進することでインフラストラクチャに対する費用の削減だけではなくビジネスへの貢献も得られることがお分かりになったかと思います。AWSコスト最適化ガイドブックはAWSの個々のサービスの特徴とクラウド利用費用の削減アプローチ、AWSコスト管理に係るサービスの利用方法に留まらず、持続的な最適化を促進するための体制・運用プロセスまで踏み込んだ内容としております。最適なクラウド利用並びにDXの推進にお役立ていただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

事業開発本部 シニア事業開発マネージャー 門畑顕博