Amazon Web Services ブログ
Qualcomm Cloud AI 100 を搭載した新しい Amazon EC2 DL2q インスタンスを利用して、 OEM が自動化機能の開発を促進
このブログは、OEMs accelerate automated feature development with new Amazon EC2 DL2q instances, powered by the Qualcomm Cloud AI 100 を翻訳したものです。
2023 年 9 月の IAA MOBILITY にて、アマゾン ウェブ サービス (Amazon Web Services、AWS) と Qualcomm Technologies, Inc. は、特定産業向けのソリューションの構築に共に取り組むことを強調しました。そして今、 Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) DL2q インスタンスの一般利用開始という、この共同での取り組みの最初の主要なマイルストーンに到達しました。クラウド上での AI による推論のための Qualcomm® Cloud AI 100 を搭載した Amazon EC2 DL2q インスタンスは、 Qualcomm Technologies の AI ソリューションを AWS クラウドに導入した最初のインスタンスタイプになります。
Amazon EC2 DL2q インスタンスを OEM のエンジニアが利用することにより、AD/ADAS (Autonomous Driving / Advanced Driver Assistance Systems、自動運転/先進運転支援システム) など、Qualcomm のデバイス上の深層学習 (Deep Learning、DL) に関するワークロードの開発を行い、パフォーマンスと精度を評価することができます。DL2q インスタンスはスマートフォンや自動運転、パソコン、XR のためのヘッドセットで使用されるものと同じ AI テクノロジーを特徴としているため、OEM エンジニアがこれらの AI ワークロードをデプロイする前に開発・評価するのに理想的です。また、クラウド上に DL のワークロードをコスト効率良くデプロイするためにも利用可能です。
車両とクラウド上でのハードウェアのパリティ
自動車産業のお客様がソフトウェア・デファインド・ビークル (Software Define Vehicle、SDV) の時代へと移行し、より高度なソフトウェア開発とデプロイを効率良く行うために、AWS と Qualcomm Technologies は車両とクラウド環境間の最大のパリティを実現しました。これにより、自動車メーカーは、顧客体験をより良くするための新機能を車両に導入しつつ、市場投入への時間を短縮することができます。
統合されたドメイン電子制御ユニット (Electric Control Unit、ECU) アーキテクチャへと移行するにつれて、自動車メーカーはより高度な自動運転機能を新しい車両プラットフォームの中で採用しています。高度な自動運転機能の開発はデータ駆動、かつ、計算負荷が高いプロセスであり、先進的な機械学習モデルを学習するためには何百ペタバイトものデータが必要です。開発過程において、自動車メーカーはテスト車両フリートを使ってデータを収集し、オンプレミスデータセンターのインフラへとデータを転送し、そこで前処理・ラベリング・保存を行います。開発者のチームとデータサイエンティストは新しい自動運転用のモデルや機能のためのコードを開発し、テスト車両フリートで収集した何百万マイルものデータと機械学習アルゴリズムを用いて、モデルの学習を行います。この工程には時間とお金が必要で、それに特化した AI アクセラレータ上で実行されます。自動車メーカーはその AI アクセラレータを購入する必要があり、オンプレミスのインフラ内で利用します。AWS 上における Qualcomm の Cloud AI 100 テクノロジーはこの状況を変えるもので、クラウド上における Qualcomm のチップとのハードウェアパリティによって、実世界により近いシミュレーションを実現します。
自動車産業におけるユースケースと BMW による採用
DL2q インスタンスは最大 8 つの Qualcomm AI 100 アクセラレータと合計 128 GB のアクセラレータ用メモリを搭載しており、ユーザーはこれを使って、コンテンツ生成・テキスト要約・バーチャルアシスタントといった人気のある生成系 AI のアプリケーションや、自然言語処理、コンピュータビジョンのためのクラシックな AI アプリケーションを実行することができます。Qualcomm Cloud AI 100 を採用することにより、DL2q は Qualcomm AI スタックポートフォリオを特色としており、ユーザーは「一度ビルドを行って、あらゆる場所にデプロイ」というアプローチをとることが可能です。すぐに始めるために、Qualcomm のソフトウェア開発キット (Software Development Kits、SDK) と PyTorch や TensorFlow といった人気のある機械学習のためのフレームワークが事前にパッケージ化された AWS Deep Learning AMI (DLAMI) をユーザーは利用することができます。機能開発のために、物理的なデータやシミュレーションによるデータを AWS 上に代わりに保存して利用することにより、ユーザーは劇的にコストを削減し、開発時間を数週間から数時間へと合理化することができます。クラウド上にこれらのタスクを移行することによって、開発者は 200 以上の AWS サービスを利用することが可能で、全体として、機能開発のプロセスの大規模化と加速を実現することができます。
Director of Technology Strategy for AWS Automotive である Andrea Ketzer は「既存の産業に対して、標準的な運用プラクティスを変更するように説得するためには、大変な努力が必要です。しかし、大規模にソフトウェア開発をクラウドへと移行することによる利点は、サポートをするのに役立つとともに、開発と設計の未来をはっきりと示しているのです。」「Qualcomm と協業することで、自動車産業から製造業、そしてその他の領域におけるお客様のためのソフトウェア・デファインドな開発を前進させることになると確信を持っています。我々の専門性を組み合わせることで、この世界に新しくかつエキサイティングなデジタルエクスペリエンスを提供する機会を生み出します。」と述べています。
2025 年にローンチ予定の次世代車両「Neue Klasse」の高度な自動運転機能の開発に役立てるために、 業界の先駆者として、BMW Group が Amazon EC2 DL2q を利用する最初の自動車メーカーになる予定です。これらの共同での取り組みは、クラウド技術をソフトウェア・デファインド・ビークルの設計や開発に統合することが、デプロイのためのタイムラインを加速するためにいかに役に立つかを明確に示すものです。
利点と次のステップ
Qualcomm Technologies, Inc. の Sr. Director, Product Management である Rajat Sagar は「AWS との連携により、高性能、かつ、低消費電力の深層学習推論用アクセラレーションのテクノロジーに関する、我々が有している確立された業界のリーダーシップをさらに強化することができます。」「我々のこれまでの取り組みは、クラウド技術をソフトウェア開発とデプロイのサイクルに統合することに大きなポテンシャルがあることを示しています。大きくコストを削減するソリューションを用いて、あらゆる産業における新しい可能性を生み出す手助けをしたり、進化し続ける業界の需要に対応することを目的として、AI をデプロイするための強化された能力を実現するためにも、今後も AWS と協業していくことを楽しみにしています。」と述べています。
AWS によるエンタープライズ企業のクラウド利用のサポートについての詳細な情報に関しては、www.aws.com にアクセスしてください。 DLAMI と DL2q インスタンスを使い始めたい方は AWS マネージメントコンソール、AWS コマンドライン インターフェイス (Command Line Interface、 CLI)、および、AWS SDK にアクセスしてください。
このブログはソリューションアーキテクトの渡邊翼と畔栁竜生、スペシャリストの橘幸彦が翻訳を担当しました。