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AWS SCT と併せて Workload Qualification Framework (WQF) を使用した OLTP と OLAP の各ワークロードの分類

移行は複数のフェーズがあるプロセスで、実行する移行のタイプに応じて異なるステップが関わってきます。AWS Schema Conversion Tool (AWS SCT) レポートの活用とパートナーとの協力によって、その作業の 50 パーセント以上を自動化することができますが、それでもまだ残っている多くの作業を行う必要があります。そこで役立つのが Workload Qualification Framework (WQF) です。

この記事では、お客様のエンタープライズインフラストラクチャを移行するプロセス全体の分析に役立つ、AWS SCT のための WQF モジュールをご紹介します。WQF は、移行戦略がある場合はそれを推奨し、適切な移行ツールを提示します。また、これらの情報を明確に伝達します。

WQF は、OLTP と OLAP の各ワークロードを評価して分類する援助を行うソリューションアーキテクト、パートナー、およびコンサルタントのために設計されています。WQF は、移行の容易さ、スタッフの時間消費、および AWS のサービスにおける適切な対象サービスを判断する助けになります。

以下の図は、AWS SCT と併せて WQF を使用する場合のプロセスの概要を示したものです。

WQF は移行プロセスの計画フェーズ中に、データとそのデータを使うアプリケーションの移行に何が必要になるかを判断するために使用できます。WQF レポートは、以下を実行することによってユーザーを助けます。

  • 以下によるワークロードの評価と各ワークロードのスコア付け。
    • 専有機能の評価
    • 複雑性
    • サイズ
    • 使用されるテクノロジー
  • 移行戦略の推奨
  • 移行ツールの推奨
  • 移行エンジニアが活用するための明瞭なフィードバックの提供

これらに加えて、WQF は AWS Data Migration Service (AWS DMS) とも統合されています。

WQF は OLTP とデータウェアハウスのワークロードを、以下にリストする 5 つのカテゴリーに分類します。各カテゴリーの詳細を理解するには、こちらの AWS SCT ドキュメントを参照してください。

カテゴリー 1 ODBC/JBDC ワークロード
カテゴリー 2 軽量の専有機能ワークロード
カテゴリー 3 重量の専有機能ワークロード
カテゴリー 4 エンジン固有のワークロード
カテゴリー 5 移植性のないワークロード、ハイリスクワークロード、またはリフト&シフトワークロード

WQF は以下の移行シナリオに使用できます。

  • Oracle から Amazon RDS for PostgreSQL または PostgreSQL との互換性がある Amazon Aurora への移行
  • Oracle から Amazon RDS for MySQL または MySQL との互換性がある Amazon Aurora への移行
  • Microsoft SQL Server から RDS for PostgreSQL または Aurora PostgreSQL への移行
  • SQL Server から RDS for MySQL または Aurora MySQL への移行

WQF の使用手順

AWS SCT と併せて WQF を使用するには、以下の手順を実行してください。

  1. AWS Marketplace から入手できる WQF Amazon Machine Image (AMI) を起動します。この起動には、以下を確実にしてください。
    • 適切な AWS リージョンを使用すること。SCT インスタンスのセットアップに使用する .pem ファイルを使ってパスワードを取得し、ログインします。
    • 作業マシンに SCT ドライバをダウンロードして、それらを SCT で設定すること。手順については、このドキュメントを参照してください。
    • 大規模ワークロードの適性を判断する予定の場合は、SCT インスタンスに十分な CPU リソースとメモリリソースがあることを確認すること。WQF は、情報の取得に基盤となる SCT インストールを使用します。インスタンスには、WQF での使用のために特別に構築された SCT がすでにインストールされています。
  2. AMI をセットアップしたら、デスクトップにある WQF Start アイコンをダブルクリックします。
  3. WQF が正常に起動したら、作業マシンの Google Chrome を使って、http://localhost:4200/ の WQF ウェブコンソールに移動します。

注意: AWS Marketplace AMI を使用することが、現時点での最良のアプローチです。WQF が AWS DMS と共にクラウドに統合された後は、最良のアプローチも変わると思われます。

WQF レポートの生成手順

WQF レポートを生成するには、以下の手順を実行してください。

  1. WQF プロジェクトを作成します。
  2. プロジェクトに、ひとつ、または複数のアプリケーションを追加します。
  3. プロジェクト内の各アプリケーションに、ひとつ、または複数の物理コンポーネントを追加します。
    WQF には物理コンポーネントと論理コンポーネントがあります。物理コンポーネントは、WQF がソースデータベースサーバーに関する詳細情報を収集することを可能にします。論理コンポーネントは、WQF がデータベースオブジェクトとアプリケーションに関する詳細情報を収集することを可能にします。WQF に情報をフィードするための物理コンポーネントと論理コンポーネントを追加するには、作業マシン上の SCT プロジェクト、または別のマシンからの SCT プロジェクトの圧縮ファイルのどちらかを使用できます。
  4. プロジェクト内の各アプリケーションに論理コンポーネントを追加します。
  5. プロジェクトを計画するためのインベントリレポートと WQF 分析レポートを生成します。移行プロジェクトに関する詳細情報を取得するには、レポートファイルをダウンロードしてから、それらを Microsoft Excel で開くことができます。

レポートは、以下のタイプから選択できます。

  1. インベントリレポート: このレポートは、移行元となるデータベースサーバーに関する重要な機能に基づいた情報とハードウェア情報を提供します。このレポートに必要なデータは、ユーザーがデータベースサーバーの詳細情報を入力し、情報の収集元とすることができる物理コンポーネントを使用して収集されます。このレポートからの情報は、データベースサーバーの移行を計画するために役立ちます。
  2. コスト計算レポート: このレポートは、移行しようとしているワークロードをカテゴリ別に分類し、アプリケーションの一部として選択されたすべての論理コンポーネントと物理コンポーネントの詳細項目を報告します。このレポートには、SCT からの結果と推奨事項に基づいた、移行のためのコストモデルが含まれています。このレポートは、アプリケーションの移行方法も段階的に説明します。

これらの手順に関する詳細については、AWS SCT ドキュメントを参照してください。 最後に、レポートを保存するための以下の画面に到達します。この画面では、レポートを OpenXML 形式でダウンロードすることができます。

その後、これらのレポートを Excel がインストールされたコンピューターに移動させて開き、以下のようにカテゴリー分類、分析、および移行戦略を表示することができます。以前に生成されたレポートをダウンロードするには、All Reports タブを選択します。

以下の WQF Assessment Report の例は、移行するデータベースサーバーの完全な分析を提示しています。

以下の WQF Assessment Report は、MySQL への移行に必要な互換性と工数を示しています。

以下の WQF Assessment Report は、PostgreSQL への移行に必要な互換性と工数を示しています。

以下の WQF Inventory Report は、移行するデータベースサーバーの重要な機能に基づいた情報とハードウェア情報を示しています。

後ほど、これまでに説明したものと同様の概要と詳細に基づいて、異なるチーム構造を構成し、WQF レポートで報告される各役割に異なるコストを関連付けることができます。また、レポートの Migration Efforts to PostgreSQL or MySQL タブで、異なる工数シナリオを検討するための詳細を取得することも可能です。

まとめ

要約すると、WQF SCT モジュールは、お客様のエンタープライズインフラストラクチャ全体を移行する方法のプロセスを分析します。モジュールは、移行戦略がある場合はそれを推奨し、適切な移行ツールを提示します。また、移行計画中にこれらの情報を明確に伝達します。


著者について

Mahesh Kansara は アマゾン ウェブ サービスのデータベースエンジニアです。 彼は AWS のお客様と協力して様々なデータベースおよび分析プロジェクト関連の指導や技術支援を行っており、AWS を使用する際にお客様がソリューションの価値を向上させられるようにサポートしています。