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Kabbage が Amazon Textract で PPP 融資経験を向上させた方法

この記事は、中小企業にキャッシュフローソリューションを提供するデータ/テクノロジー企業である Kabbage のデータサイエンス責任者、Anthony Sabelli 氏によるゲスト投稿です。原文はこちらです。

Kabbage は、中小企業にキャッシュフローソリューションを提供するデータ/テクノロジー企業です。私たちがお客様にサービスを提供する方法のひとつは、オートメーションを通じて柔軟なクレジットラインへのアクセスを提供することです。中小企業は、リアルタイムのビジネスデータを Kabbage に接続して、完全に自動化された融資決定を数分で受け取ります。この効率性により、Kabbage は 500,000 社を超える中小企業に、給与保護プログラム (PPP) を含めた 160 億円以上の運転資本へのアクセスを提供できました。COVID-19 の発症に伴って国が閉鎖され、中小企業が営業を停止せざるを得なかったとき、Kaggage では、中小企業庁 (SBA) 史上最大の連邦救済活動となったプログラムのための絶えず変化する新しい融資審査基準に対応しながら、技術面での複数の課題を克服しなければなりませんでした。 Kabbage では、PPP まで SBA ローンを貸し出したことはありませんでしたが、当社のチームは 2 週間たらずで、新規顧客を含めた対象の中小企業のすべてが、その規模と名声にかかわらず、政府資金にアクセスするための完全に自動化されたシステムを立ち上げました。

Kabbage は、PPP の主要基準であった給与データと税務データではなく、お客様のリアルタイムのビジネスデータと収益パフォーマンスに基づいて融資審査を行ってきました。検証と融資審査の自動化に役立つ IRS 向けの API が確立されていなかったため、私たちは、中小企業が可能な限り迅速に資金にアクセスできるようにシステムを根本的に改造しなければなりませんでした。これに加えて、Kabbage は、何十万人もの社員と、何兆ドルもの資産を自由に活用できる経験豊富な数多くの SBA 融資業者に仲間入りする数百人規模のチームに過ぎませんでした。

この記事では、Amazon Textract が、完全に自動化された融資を経験できるように Kabbage の PPP 申請者の 80% をサポートし、承認時間を数日間から 4 時間の中央値まで短縮した方法をお話したいと思います。プログラムの終了時には、Kabbage は米国最大の銀行である Chase を含めた大手米国銀行を追い抜いて、申請数で全国第 2 位の PPP 融資業者となり、297,000 社を超える中小企業にサービスを提供し、米国全土で推定 945,000 件の雇用を維持しました。

Amazon Textract の実装

長年取り引きしてきた銀行で申請できなかった多数の中小企業が他の融資業者に頼ったことから、Kabbage は、新規顧客からの申請を受け入れる数少ない PPP 融資業者のひとつとして、需要が増加するのを目の当たりにしました。

企業は、納税申告から事業証明書、そして身分証明書におよぶ書類をアップロードする必要があり、当初はすべてのローンが手動で審査されていました。人が規定の給与計算を裏付けるためにさまざまな書類からの値を確認、検証、および入力してから、顧客に代わって申請書を SBA に提出しなければなりませんでした。しかし Kabbage では、ほんの数日で数百から数千部の書類を送信する中小企業が何万社におよび、この数は一気に数百万社に増加しました。このタスクにはオートメーションが必要でした。

私たちは、このタスクを各要素に分解する必要がありました。当社のシステムはもともと、一般に Know Your Business (KYB) および Know Your Customers (KYC) として知られる検証プロセスの自動化に長けていたので、新規企業の申請を受け入れることができ、合計数は Kabbage の PPP 顧客の 97% に昇りました。さらに、書類の取り込み、検証、およびレビューを自動化して、ローンの審査に必要となる適切な値のみを抽出できるように、ローン計算プロセスを標準化する必要がありました。

これを実現するため、当社の PPP 顧客ベースの 67% を占める個人事業者と請負業者を含めた異なるビジネスタイプに対するローン計算を、各種 IRS フォームに存在する特定の値に基づいて体系化しました。主な IRS フォームの初期分類器は、48 時間以内でブートストラップしました。最後のハードルは、プログラムに準拠するローンを貸し出すために、値を正確に抽出することでした。Amazon Textract は、この最後のハードルを乗り越える手段となりました。Kabbage は 1 週間以内で POC から完全な実装にこぎつき、2 週間以内で完全な本番環境に移行しました。

当社のパイプラインへの Amazon Textract の統合は、信じられないほど簡単でした。具体的に言うと、Kabbage では StartDocumentAnalysis と GetDocumentAnalysis を使用しました。これらは、Amazon Textract と非同期的にやり取りすることを可能にします。また、FeatureTypes に Forms を使用することが、税務書類の処理に適していることもわかりました。結果的に、Amazon Textract は正確で、大量のバックログを処理するためにスケールしました。Amazon Textract の統合を完了した後は、バックログをなくしてしまうことができました。これは、プログラムの終了まで、PPP フローの重要なステップでありつづけました。

中小企業への大きな影響

全体的に見ると、2019 年、Kabbage のお客様はほぼ 30 億ドルの運転資本ローンにアクセスし、約 60,000 人の新規のお客様がその要因でした。Kabbage は、わずか 4 か月で 2 倍以上の資金 (70 億ドル) をおよそ 5 倍の新規顧客 (297,000 人) に提供しました。ローン額の平均値は 23,000 ドル、および中央値は 12,700 ドルで、PPP 顧客全体の 90% が従業員数 10 人以下です。これは、危機発生時に最も被害を受けやすい立場であるにもかかわらず、資金援助の請求時に見過ごされてしまう企業を象徴しています。Kabbage のプラットフォームは、国内の広範囲に及ぶ遠隔地域にサービスを提供することを可能にし、米国の全 50 州と海外領土にローンを提供しました。貸し出されたローンの 3 分の 1 は、平均世帯年収が 50,000 ドル未満の郵便番号に属する企業に提供されています。

私たちは、Kabbage のチームとテクノロジーが達成した事柄に誇りを持っています。わずかなリソースで米国最大の銀行をはるかにしのぐ業績をあげたのです。米国の大手銀行の従業員 790 人に対して、Kabbage の従業員は 1 人しかいないにもかかわらず、私たちは大手銀行の融資額を追い抜き、約 300,000 社の米国で最も小さな企業に 70 億を超えるローンを提供しました。

未来の展望

Kabbage では、中小企業に対する金融サービスへのアクセスを増加させるために、当社のキャッシュフロープラットフォームを強化する新しいデータソースを見つけるべく絶えず努力しています。Amazon Textract は、私たちの戦略に新たな手段を追加することを可能にしてくれました。PPP までは、納税申告から値を抽出したことがなかったのです。これにより、Kaggage の融資審査モデルをより豊かにする機会が開かれます。これは、資金にアクセスできるようにお客様を支援するにあたって中小企業の財務健全性と業績に対する別の観点を追加し、より強力なビジネスを構築するためのキャッシュフローについてさらに多くの洞察を提供します。

まとめ

COVID-19 はさらに、メインストリートビジネス (中小企業) が全企業の 99%、全雇用の半数、そして非農業部門 GDP の半分を占めているにもかかわらず、米国の金融システムから十分なサービスを受けていないことを明らかにしました。テクノロジーはこれを修正できます。お客様が今後どのように金融サービスにアクセスすることを期待するのかを根本的に変えるには、PPP のために Kabbage が構築し、提供したもののようなクリエイティブなソリューションが必要です。

Amazon Textract は、私たちが全国で 2 番目に大きな PPP 融資業者となり、中小企業が最も必要な時に資金を提供することで成功を収めるのを可能にした重要な機能でした。API を当社のワークフローに統合するプロセス全体がシンプルで分かりやすかったことから、私たちの経済の根幹を成す中小企業のより多くが、最も必要な時に重要な資金を受け取れることを確実にするために、より多くの時間を費やすことができました。


著者について

Anthony Sabelli 氏は、中小企業にキャッシュフローソリューションを提供するデータ/テクノロジー企業である Kabbage のデータサイエンス責任者です。Anthony は応用数学の学士号をブラウン大学で、博士号をコーネル大学で取得しました。Kabbage ではグローバルデータサイエンスチームを率いており、営業パフォーマンスと融資審査モデルを向上させるために、中小企業のお客様からの 200 万件を超えるライブデータ接続を分析しています。