Amazon Web Services ブログ

Amazon Rekognition を利用して人身売買と戦う Marinus Analytics 社

Marinus Analytics 社は女性が経営する 2014 年に創設した会社で、ビッグデータを実用的なインテリジェンスに変える AI ツールを構築しています。特に、Amazon Rekognition の顔認識機能といった人工知能の利用に積極的で、人身売買の被害者を発見し、家族と再会ができるよう取り組んでいます。

Marinus Analytics 社の社長兼共同創業者である Emily Kennedy 氏は、「人間は人工知能を恐れるべきではないと思います。人間は他の方法よりもはるかに優れた結果を出し、広域に影響を与えることができるからです。」と言います。「Marinus Analytics 社にとって、人身売買と戦っている人たちが、当初はどうにもしようのない山ほどのデータを目の当たりにしながらも、難しい課題を克服するために AI 技術を使い、命を救うことができたのは、幸運なことでした。」

Marinus Analytics 社は、Amazon Rekognition などの人工知能を利用し、Traffic Jam といった被害者の特定や発見を支援するツールを機関に提供し、人身売買の調査に携わっている人たちを支援しています。Traffic Jam は Amazon Rekognition を利用して作動し、FaceSearch と呼ばれる顔認識機能を備えています。このツールを使用すると、数百万の記録を秒単位で自動的に検索する画像解析が可能となり、貴重な時間を節約することができるのです。これで、Traffic Jam を使わずに解析する方法と比較して、著しい改善をもたらすことができます。

Kennedy 氏の説明によると、「 Traffic Jam を使わないと、何千ものオンライン広告を手作業で選別することになります。」「つまり、コンピュータに張り付いて、マッチングするかもしれないと期待しつつ、画面にある被害者の写真を、オンライン上のあらゆる写真と比較しているのです。ですが昔と違って現在では、このような重要なタスクは、Amazon Rekognition のような AI 技術を使用することで、より正確にそして数秒で行えるようになりました。被害者が次の町へと移動してしまう前に、限られた時間で彼らを見つける必要がある場合には、特に大事なことなのです。」

Marinus Analytics 社が開発のプロセスにあった頃、複数のコンピュータ・ビジョン・サービスをテストしつつ、人身売買のケースの捜査官が使うツールをテクノロジーで補完できるかどうかを調査していました。多くのサービスでデータをテストしましたが、残念ながら利用できそうなサービスは見つかりませんでした。分析に必要な画像は通常きめが粗く、顔がカメラから遠く離れたところにあるのが普通で、さらに適切な照明のもとで写真が撮影されることはあまりないからです。

しかし、2017 年に Amazon Reognognition を発見し、必要とする AI ツールの類であると分かったのです。

「 Amazon Rekognition でデータをテストしたところ、結果は驚異的なものでした。まさに、当社のツールのパッケージに統合が可能な AI 技術だったのです。」と、Marinus Analytics 社の CEO で共同設立者の Cara Jones 氏は述べています。「 Amazon Reognognition をTraffic Jam のパッケージに FaceSearch を介して組み込むや否や、人身売買の被害者発見がうまくいったという話を耳にしだしたのです。このツールこそが、当社が被害者を発見し、家族との再会をサポートするのに、重要な要素となっているのです。」

他にも、Marinus Analytics 社が人身売買との戦いに挑む方法があります。それは、AmazonのRekognition を介して DetectText API を使用することです。この機能を使えば、画像内のテキストを検出、抽出し、機械可読テキストに変換することができます。インターネット上にある何百万もの人身売買広告では、テキストが画像上に重なって表示されているため、この機能ではそうしたテキスト全てを抽出し、照合して整理することを可能にしました。結果、より簡単に画像検索ができるようになったのです。

人身売買との戦いは難しいように見えるかもしれません。ですが、Marinus Analytics 社にはすでに成功した事例があります。例えば、この技術を使って、カリフォルニア北部でオンラインセックスを行っていた 16 歳の行方不明者を発見しました。

「警察が Traffic Jam FaceSearch を使って、家族が提出した被害者の写真をアップロードし、わずか数秒で高い信頼スコアのマッチングを見つけることに成功したのです。」と Kennedy 氏は言います。「警察は場所と時間を見て、探していた行方不明者だと推定しました。その後たった数日で、被害者は家族と再会できたのです。」

最近あった別のケースでは、警察は 2 年間行方不明となっている多数の被害者のうち、ある一人を探していました。捜索に使った写真はどれも 2 歳以上の行方不明者のものであり、有益な手がかりにつながる見込みはほとんどありませんでした。しかし警察は、FaceSearch で 2 歳児の写真を使って被害者と適合する人物を発見し、彼女を人身売買した業者を摘発するのに成功したのです。

これと同じケースは他にもあります。1 年以上行方不明だった別の被害者がいました。警察が捜索を続けていましたが、見つかる見込みはなさそうでした。けれども、FaceSearch で出た結果を再確認すると、最も適合の可能性の高い人物の 1 人が、被害者の本名で登録した電話番号を所持していたことが分かったのです。この女性は外観が変わってしまっていたため、最初の調査では発見に至らなかったのです。ですが、Traffic Jam FaceSearch でマッチングが成功したのです。警察は、非常に凶悪な人身売買業者から 20 人の被害者を特定しました。AI の助けを借りることで、この人身売買業者に対して、通常かかる 2 年よりもはるかに早期の 3 ヶ月で事件を解決し、この人身売買業者を刑務所に収容することができたのです。

「この技術は極めて強力ですから、世界をよりよくするポジティブな目的に使わなければなりません。」と Kennedy 氏は語ります。「 Amazon Rekognition といった技術により、人身売買のような犯罪に対し効果的に対処し、影響力を広げ、非常に有益なことを達成できます。つまり、搾取された人々を家族のもとに戻し、彼らに自由で充実した人生を送るチャンスを与えることができるのです。」


今回のブログ投稿者について

Kaiser Larsen は AWS 人工知能ソリューションの製品マーケティングマネージャーです。仕事外では、ハイキングに出かけたり、家族や友人のために料理の腕を振るったり、また、何か祝えることがあればそれにかこつけてアイスクリームを食べています。