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モダナイゼーションを実践するEBA (前編)

こんにちは、カスタマーソリューションマネージャー (CSM) の宮本です。この記事では、モダナイゼーションを検討しているお客様向けに、AWSがご提供するEBA (Experience-Based Acceleration) というプログラムをご紹介します。

以前、こちらの記事で、モダナイゼーションとは何か、およびEBAの概要について言及しました。EBAに興味を持たれた方の中には「まだまだ具体的に何をするのかイメージがつかない」という方もいらっしゃると思います。
本記事では、前後編に渡り、より具体的にEBAの内容をご説明し、イメージをつかんでいただきたいと思います。

前編では、EBAの概要、スケジュールや期待される効果、目標設定についてご紹介します。

EBAの概要

EBAは、お客様のモダナイゼーションを加速させるModernization Accelerator (ModAx) というプログラムの一部です。ModAxでは、システムの評価とアーキテクチャ策定を行い、モダナイゼーション対象となるアプリケーションを見極め、実際にビルド&デプロイを経験していただきます。このビルド&デプロイを経験いただくプログラムが、EBAです。

なお、システムの評価とアーキテクチャ策定は、MODAというプログラムにて実施します。
MODAとEBAは共に、AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for Cloud Nativeとしてご提供しております。詳細はこちらの記事を参照ください。
また、EBAはモダナイゼーションに限らず、基盤構築やマイグレーションをテーマに実施する場合もありますが、本記事中で言及する”EBA”は、”モダナイゼーションをテーマとしたEBA”の事を指します。

EBAとは、お客様自身によるパイロット開発を伴走型で支援するプログラムです。
本格的なモダナイゼーションの実現に向け、お客様が行うパイロット開発を、約6週間で設定し、“2 pizza team”や“2-way door”という要素も取り入れながら、AWSが短期集中的に支援し、最小プロダクトを開発いただく経験を通して、今後のお客様の開発に役立てていただきます。
“2 pizza team”や、“2-way door”というのは、Amazonで用いられている考え方です。これらの用語は、関連記事である“アプリケーションのモダナイゼーションを加速するEBA”で触れていますので参照ください。

スケジュールや期待される効果

EBAは、5週間の準備期間と、6週目の3日間で実施するビルド&デプロイで構成されています。準備期間では、EBAの目標、成功条件を定義、具体的なタスクを決定し、要件定義・設計・実装を進めていきます。最後の3日間では、参加者が一同に会し、集中的にビルド&デプロイの作業を実施し、最小限のプロダクトを完成させ、アプリケーションのモダナイゼーションを実践していただきます。

自ら手を動かしてモダナイゼーションを実践し、ノウハウと成功体験を獲得すると同時に、何が不足しているかを把握し、課題を整理することで、今後、お客様が本格的に取り組んでいくモダナイゼーション計画の策定に役立てていただくことを期待しています。

EBAに参加いただく方は、ある程度AWSのサービスに精通している必要があります。
そのため、EBAを実施するうえで必要な知識、スキルが不足している場合、事前にAWSが提供するトレーニングを受講いただく事を推奨します。また、AWSチームによる勉強会を開催する事も可能です。EBAの準備期間に入る前に、必要最低限の知識、スキルを習得いただきます。

では、スキルも習得したところで、5週間の準備期間で何を実施するかを紹介します。

EBAではお客様とAWSとで複数のチームを構成します。
大きくは、ファシリテーションを担当するチームと、実作業を担当するチームに分かれます。ファシリテーション担当は1チームのみですが、作業担当チームは規模に応じて確定させます。ファシリテーション担当チーム、作業チームに対して、AWSチームがそれぞれサポートをさせていただきながら、EBAを進めていきます。

目標設定

最初に、EBAの目標を明確にします。EBAの期間は6週間と限られています。そのため、EBAを何のために実施するのか、何を達成すれば成功とするのか、という具体的な目標を設定し、それを達成するために準備期間で必要なタスクを進めていきます。

目標設定は、非常に重要なポイントであり、同時にお客様が悩まれるポイントです。
EBAに参加する全員が、何を達成すべきなのかを明確に理解できる目標を設定することが重要です。目標があいまいな場合、EBA参加者によって、何を達成するかの基準がずれる可能性があります。EBAでは、2つの観点で目標を設定します。1つは、EBAを実施すること自体の目標で、成功基準とも表現します。もう1つは、各作業チーム毎の目標です。

まず、重要なのはEBAを実施すること自体の目標 (成功基準) を設定することです。
EBA自体の目標設定のために、なぜEBAを実施することに決めたのか、EBA実施後にどうなりたいか、を改めて考えてみてください。アジャイル開発 (スクラム) を取り入れて開発/リリースのスピードを上げたいのか、AWSの構築スキルやサービス知識を習得して自社で開発する力を身に付けたいのか、異なる部門間の協業により組織の壁を取り除きたいのか、実施する理由や、目指すべき姿はさまざまだと思います。目指すべき姿に合わせた目標 (成功基準) を設定し、EBAにてそれを達成することで、ぜひ次のステップへと繋げていただきたいです。

その後、各作業チームの目標を設定します。
各作業チームが、具体的にEBA期間中に何をするのかを定義しましょう。例えば、「対象システムのプロトタイプを作成する」や、「スキルを向上させる」という目標を設定する場合、プロトタイプは、具体的にどの機能まで実装するかであったり、どのような基準でスキルが向上したことを示すか、という事を明確にし共通認識とすることが重要です。

また、現実的な目標に加えて、ストレッチ目標を設定することを推奨します。
「ストレッチ目標」とは、もう少し頑張れば、実現できる程度の難易度に設定された目標のことです。
皆さま、EBAの準備期間開始時のスキルや知識を前提に目標を立てられますが、実際に準備期間を進めていくと、スキルや知識を習得していき、準備期間中に最初に設定した目標を達成することも起こり得ます。最初の時点で、少し高めの目標を設定し、さらに「ストレッチ目標」を設定しましょう。

まとめ

前編ではEBAの概要、スケジュールや期待される効果、目標設定について説明しました。
後編では、最後の6週目の3日間で何を実施するのか、実施体制やEBAにてAWSが支援する事などについて紹介します。

参考リンク

アプリケーションのモダナイゼーションを加速するEBA
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)

著者

カスタマーソリューションマネージメント統括本部
カスタマーソリューションマネージャー (CSM) 宮本 雅勝、服部 昌克