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IT ワークロードの環境持続可能性を向上させるための IDC からのヒント
このブログは 2024 年 4 月 23 日に Jenna Leiner によって執筆された内容を翻訳したものです。原文はこちらを参照して下さい。
世界のデジタル化が進むにつれ、企業はデジタルトランスフォーメーションを推進するために電力を大量に消費する IT インフラストラクチャと、環境の持続可能性を両立させる複雑な課題に直面しています。このような相反する要求により、データセンターのエネルギー消費と炭素排出が大きな注目を集めています。
IDC InfoBrief 報告書「Energy and Carbon Efficiency Benefits of Public Cloud Computing over Enterprise Datacenters, 1」によると、2023 年の時点でパブリッククラウドデータセンターはエンタープライズデータセンターよりも 3.8 倍エネルギー効率が高いと推定されています。情報技術、通信、コンシューマー技術市場における市場インテリジェンス、アドバイザリーサービス、イベントの主要グローバルプロバイダーである IDC は、2023 年のパブリッククラウドデータセンターの電力使用効率 (PUE) が 1.22 だったのに対し、エンタープライズデータセンターは 1.84 であったと推定しています。IDC の調査によると、2023 年のパブリッククラウドデータセンターは、エンタープライズデータセンターよりも 4.7 倍炭素効率が高かったと推定され、この差は 2027 年までに 7 倍に広がると予想されています。その結果、IDC は 2027 年までにパブリッククラウド利用による炭素削減量が、米国で 2100 万台の自動車を道路から排除したのと同等になると推定しています。IDC は、炭素使用効率 (CUE) をデータセンターの運営に関連する炭素排出量を測定するために使用される指標として定義しています。これは、エネルギー消費と炭素排出を直接関係付けるため、データセンターの環境への影響を評価するのに特に役立ちます。
IDC によると、この炭素効率化を推進する主な要因はいくつかあります。
- カーボンフリーなエネルギー源 : クラウドプロバイダーはカーボンフリーなエネルギーに大規模な投資を行っています。IDC によると、太陽光、風力、原子力、水力発電などのカーボンフリーなエネルギー源によるパブリッククラウドのエネルギー消費の割合が、2023 年の 61% から 2027 年には 74% に増加すると推定されています。
- より効率的なハードウェアと施設 : クラウドデータセンターは、最初からエネルギー効率を考慮して設計されており、高度な冷却システム、最適化されたサーバーレイアウト、スマートビルディングテクノロジーを活用しています。また、規模の経済から効率投資に対するより大きな収益を得ることができます
- 利用率の改善 : クラウドプロバイダーは、仮想化とコンテナ化によってインフラストラクチャの利用率を最大化し、コンピューティングリソースをより効率的に使用できるようにしています。一方、エンタープライズデータセンターでは利用率が低い傾向にあります。
- よりエネルギー効率の高いシリコン : クラウドプロバイダーは、AI、機械学習、高性能コンピューティングなど特定のワークロードに特化したカスタムのエネルギー効率の高いシリコンチップの開発に投資しています。これらのチップは、より低い電力消費で高い性能を発揮するように設計されており、パブリッククラウドデータセンターの全体的なエネルギー要求を大幅に削減します。
クラウドの炭素削減機会は、単に運用上の排出量だけに留まりません。IDC の調査によると、パブリッククラウドデータセンターを利用すると、エンタープライズデータセンターと比較して、年間 34 〜 37% のエンボディドカーボンが少なくなることがわかりました。データセンターに関連するエンボディドカーボンとは、データセンターの建設やハードウェアの製造に伴う間接的な排出量のことです。データセンターのエンボディドカーボンの一つの源泉はサーバーインフラストラクチャです。IDC は、パブリッククラウドデータセンターではサーバーが効率的に利用されているため、同じタスクを実行するのに必要なサーバー数が少なくて済むと結論付けました。これにより、サーバーの製造と輸送に伴うエンボディドカーボンが削減されます。IDC は、2027 年だけでパブリッククラウドサービスを利用することで、28 メガ二酸化炭素換算トン (28 MMTCO2e) のエンボディドカーボンが削減できる可能性があると算出しており、これは 600 万台以上の自動車を道路から排除することに相当します。
パブリッククラウドデータセンターのエネルギーと炭素効率の利点により、IDC は生成型人工知能 (生成 AI) ワークロードをパブリッククラウドデータセンターで実行する方が、エンタープライズデータセンターで実行するよりもエネルギーと炭素効率が高いと推定しています。生成 AI は大量にエネルギーを消費する可能性がありますが、このレポートでは生成 AI の持続可能性の利点が概説されています。
- 生成 AI における最もエネルギーを消費するトレーニングは、レイテンシーに依存しません。つまり、トレーニングのワークロードは、電力が利用可能な場所、特に低炭素またはカーボンフリーの電力源がある場所に配置できます。
- 一般に、お客様は第三者のデータセンターを利用することを予定しています。これらのデータセンターはよりエネルギー効率が高く、カーボンフリーの電源を使用する可能性が高くなります。
このレポートでは、データセンターポートフォリオの環境持続可能性の向上を目指す企業リーダーに対して、いくつかの重要なヒントをまとめています。
- 現在のカーボンフットプリントを評価 : まずは既存の IT インフラストラクチャのエネルギー消費と炭素排出を把握することから始めます。経営陣は、サステナビリティ戦略を支援し、エネルギーと炭素効率の恩恵を得るために、どのワークロードをパブリッククラウドに移行すべきかを検討する必要があります。
- 適切なパブリッククラウドプロバイダーを選択 : あなたの価値観と持続可能性の目標に合致し、ニーズに適した関連ソリューションを提供するプロバイダーを選びます。さらに、データセンターポートフォリオの環境持続可能性だけでなく、環境、社会、ガバナンス (ESG) にも注目します。ESG はエネルギー消費と炭素排出だけにとどまりません。あなたの価値観に合致した強力な社会的およびガバナンス実践を持つパブリッククラウドプロバイダーを選択してください。
- データセンターの立地を考慮 : 全体的なグリッドの発電構成とカーボンフリーエネルギーの利用可能性が、環境への影響に影響を与える可能性があります。寒冷地のデータセンターでは、冷却システムのエネルギー需要を削減できます。
- CloudOps ツールを使用してベストプラクティスを実装 : CloudOps ツールと実践は、サーバー利用率とワークロードを最適化、リソースを適切なサイズに調整し、需要に基づくスケーリングを効果的に可能にします。さらに、CloudOps ツールは、リソースクォータとモニタリングツールを実装することで、影響範囲の拡大を防ぎ、リバウンドの影響を制限します。
IDC の調査結果では、IT ワークロードをパブリッククラウドデータセンターに移行することで、企業の持続可能性戦略を支援し、上記のエネルギーと炭素効率の利点を実現できると結論付けています。クラウドコンピューティングのエネルギー効率性を活用することで、組織はイノベーションとビジネス価値を推進しながら、炭素排出量を削減できます。パブリッククラウドコンピューティングのエネルギーと炭素効率に関する詳細については、「Energy and Carbon Efficiency Benefits of Public Cloud Computing over Enterprise Datacenters」を参照してください。また、AWS の持続可能性に対するコミットメントについても確認できます。
翻訳はソリューションアーキテクトの Yoshinori Sawada が担当しました。
- IDC InfoBrief, sponsored by AWS, Energy and Carbon Efficiency Benefits of Public Cloud Computing over Enterprise Datacenters, Doc. #EUR251921924, April 2024