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【ブース展示レポート】生成 AI スタートアップが提供する、革新的なプロダクトとは?【AWS Summit Japan】

AWS について学べる日本最大のイベント「AWS Summit Japan」が、2024 年 6 月 20 日(木)、21 日(金)の 2 日間にわたり開催されました。「AWS Summit Japan」では各種の基調講演や 150 を超えるセッション・企画、会場内のブースによって AWS の知識を身に付けられるだけではなく、参加者同士でベストプラクティスの共有や情報交換ができます。

このイベントでは AWS のソリューションや業界別展示、事例展示、パートナーソリューション展示など、250 以上のブースが出展されました。今回はそのなかから、生成 AI を活用してプロダクトを開発・提供するスタートアップ 8 社のブースをピックアップ。各社の事業や展示内容についてご紹介します。

カラクリ株式会社

カラクリ株式会社は、AI 技術を活用してカスタマーサポート業務を効率化するソリューションを提供する企業です。同社が研究開発で培ってきたノウハウやデータを利用して、AI チャットボットに特化するように改良することで高精度な会話体験を実現。生成 AI と従来型 AI(定型 AI)のハイブリッド型チャットボット「KARAKURI chatbot by GAI」をはじめとした「KARAKURI Digital CS Series」というサービス群を提供しています。

同社は「AWS LLM 開発支援プログラム」を活用して世界で初めて AWS Trainium による MoE の学習に成功した企業。同社の開発した総パラメータ数 467 億、推論時のアクティブパラメータ数 129 億の LLM である「KARAKURI LM 8x7B Chat v0.1」はベンチマークテストで国産オープンモデルとして最高の評価を得ています。ブース内でもそれに関連した技術的な解説やチャットボットのデモなどが実施されていました。

ストックマーク株式会社

ストックマーク株式会社は、AI を活用した企業向け情報収集・資料作成支援サービスを提供するスタートアップです。同社の主要顧客は、製造業を中心とした国内エンタープライズ企業。それらの企業の社内外にあるテキストデータを、自然言語処理 AI で解析する事業を提供しています。

主要プロダクトは、ビジネス特化の AI によりビジネスニュースや論文・特許、社内ドキュメントなどの推薦・検索・要約ができる「Anews」、自然言語処理によって国内外の膨大なファクトニュースやオピニオン記事を収集・分類・可視化して市場調査を行う「Astrategy」。ブース展示ではこれらのプロダクトに搭載された機能や、AWS を用いて構築したアーキテクチャの概要などが紹介されていました。

Sparticle株式会社

Sparticle株式会社は 2019 年の創業以来、情報要約ツール「Glarity」やリアルタイム通訳アプリ「Felo 瞬訳」、AI チャットボット「GPTBase」など多様な AI 製品を提供してきました。国内最高水準の RAG 技術や独自の Felo LLM を活用して、高精度の回答や高いセキュリティ・パフォーマンスを実現しています。

自然言語を扱う生成 AI では、ハルシネーション(もっともらしい嘘)が出力されてしまうことが大きな問題です。しかし、同社のサービスでは特定のデータソースから学習させた情報のみをテキスト生成に用いることで、ビジネスユースにも耐え得るように回答の信頼性を高めています。ブース展示では、音声認識の技術と RAG 技術とを組み合わせて、AI のアバターと会話ができるようなデモが提供されていました。

SpiralAI株式会社

SpiralAI株式会社は生成 AI の領域において「人間らしさ」の実現に注力する企業です。人の個性や考え方、主義・主張、癖などが再現された AI を作成することで、「コミュニケーションを取っていると楽しい」と思えるようなサービスの実現を目指しています。

今回のブースでは「AI 野々村真」と「ククリ様」という 2 種類のサービスが展示されていました。「AI 野々村真」はタレントの野々村 真 氏をモデルとした AI 音声対話型デジタルヒューマン。シニア向け介護施設で活用することで、施設利用者の認知機能の改善やサービス満足度向上を目指しています。

また、「ククリ様」は縁結びの神様をモチーフとした恋愛指南 AI キャラクターです。いずれのサービスも、人間らしく温かみを感じるような対話を行っていました。

Turing株式会社

Turing株式会社は、あらゆる条件下で車が人間の代わりに運転操作を行う「完全自動運転」の実現を目指すディープテックスタートアップです。「Vision Centric 方式」と呼ばれる、主にカメラの映像のみで周囲を認識して運転操作を行う技術を採用。LLM や深層学習モデルなどとの組み合わせにより、交通状況を認知・判断し論理的に思考して運転する手法を採用しています。

同社は複数の画像・動画モデルと言語モデルとをシームレスに統合するライブラリ Heron を開発しており、ブースではその動作のデモを公開していました。Heron に対して画像と関連する質問を与えると、それに最も適した回答をします。この技術が、同社の自動運転技術の根幹を支えているのです。また、ブースに設置された真っ赤な電気自動車(EV)は、ひときわ来場者たちの目を引いていました。

株式会社Preferred Networks

株式会社Preferred Networks は生成AI・基盤モデルからスーパーコンピュータ、チップまで、 AI技術のバリューチェーンを垂直統合することで、ソフトウェアとハードウェアを高度に融合したソリューション・製品を開発し、様々な産業領域で事業化しています。。創業から 10 年以上が経っており、日本国内の AI 系スタートアップのなかでは長い歴史を持ちます。

同社は、生成 AI を活用して想定ユースケースごとにパッケージ化したサービス群を「PreferredAI」として提供しています。ブースの展示では、PowerPoint などで作成された資料を自動でレビューし問題点をハイライトしてくれる「PreferredAI Slide Review」や蓄積された自社のドキュメントや検索データを元に数秒でノートを生成する「PreferredAI Notes」などのデモが披露されました。

株式会社Poetics

株式会社Poetics は人文知と科学の知見をクロスオーバーさせながら、言語・音声などのコミュニケーションに関わる AI を開発するスタートアップです。Poetics 社はもともとコールセンターで使用されるシステムの受託開発から事業をスタートしたこともあり、他社と比較して「人の感情の機微やニュアンスをくみ取って解析すること」に強みを持ちます。

同社の提供する「JamRoll」は、会話を見える化し営業生産性を向上させる商談解析 AI です。電話・オンライン商談の全ての会話を自動録音・録画、文字起こし、音声・感情 AI 解析で営業スキルの向上と情報共有を自動化し、組織の事業成⻑に貢献します。

株式会社松尾研究所

株式会社松尾研究所はAI技術の社会実装や大企業などとの協業を担う企業です。東京大学松尾・岩澤研究室に伴走し、アカデミアで生み出された先端技術を各業界につなげ、社会実装を通じて得られた知見をまたアカデミアに還元するという好循環を目指しています。

サービスで扱っている技術領域は、需要予測や異常検知、自然言語処理を用いたチャットボット、ロボティクスなど多種多様。さまざまな業界・業種を対象として課題解決を行っています。ブースでは、インタラクティブに人と会話できるデジタルヒューマンを展示していました。会話の内容が自然であることに加えて、リップシンクや表情の変化を行うなどの工夫もこらされています。

おわりに

生成 AI を活用してプロダクトを開発することで、既存の技術では成し得なかったような新たな価値を創出することができます。たとえば、データ分析の高速化やコンテンツ生成の自動化により、ビジネスプロセスの最適化が図れます。また、パーソナライズされたサービスの提供が可能となり、より良いユーザー体験の実現にも寄与するはずです。生成 AI が切り拓く可能性が、私たちの生活や仕事の質を大きく向上させることでしょう。