AWS Startup ブログ

CTO・VPoEの知見をオンラインで共有しよう【CTO Night and Day 2020 Online】

CTO Night & Day は、CTO や VPoE など技術の立場から企業経営に関与するリーダーのための招待制カンファレンスです。

2014年から続く本カンファレンスでは、参加者同士によるディスカッションや事例共有などを通じて、世代や業種を超えた幅広い知識の交流が行われてきました。日常の業務から離れ、技術リーダー同士で交流していただくことで、コミュニティを活性化して業界全体が発展していくことを目的としています。

例年はオフライン形式で開催されてきた CTO Night & Day ですが、2020年は昨今のコロナ禍の状況を鑑み、9月16日にオンライン上で開催されることとなりました。本記事では、その模様をダイジェスト形式でお届けします。

AWS re:Mind for CTOs

カンファレンス序盤に実施されたのは、AWS スタートアップソリューションアーキテクト 松田 和樹による AWS re:Mind for CTOs です。AWS re:Invent 2019 から本カンファレンス 開催時点までの、AWS の各種サービスや機能のアップデートを網羅的にお伝えしました。

 

AWS re:Mind セッション中の様子

 

AWS Startup Architecture of the Year Japan 2020

カンファレンス中盤では、優れたアーキテクチャでビジネスをけん引しているスタートアップのためのコンペティション AWS Startup Architecture of the Year の決勝戦である Japan Live Finale が開催されました。多数の応募のなかから選出された6組のファイナリストが登壇。自社サービスのアーキテクチャについて熱いピッチをくり広げました。

Startup Architecture of the Year 放送中の様子

<国内最終戦に進出したファイナリスト 6名>

Hmcomm株式会社 第1R&Dセンター 副センター長 / リードエンジニア 齋藤 翔太 氏

オーティファイ株式会社 CTO 松浦 隼人 氏

株式会社GINKAN 取締役 CTO 三田 大志 氏

株式会社トレッタキャッツ エンジニア 廣山 篤志 氏

ナイル株式会社 執行役員 モビリティサービス事業部 CTO 兼 ICT 推進室 室長 梅本 雄二 氏

ユニファ株式会社 取締役 CTO 赤沼 寛明 氏

※企業名五十音順

Hmcomm株式会社の齋藤 氏は、業務や生活における“異音”を AI/ML により検知することで社会の課題を解決する「FAST-D」のアーキテクチャを解説。システムに求められる社会的ニーズが多様であることや、研究開発の速度に追従するためスピーディーな実装が求められることをふまえ、マイクロサービスアーキテクチャを採用したことやその工夫を語りました。

オーティファイ株式会社の松浦 氏は、AI を用いたソフトウェアテスト自動化プラットフォーム「Autify」において、テスト実行の待ち時間を最小化しつつコスト最適化も実現するための知見を披露。AWS Lambda を活用することで、テストに必要なリソースを動的に立ち上げる仕組みを紹介しました。

株式会社GINKAN の三田 氏が解説したのは、グルメ SNS プラットフォーム「SynchroLife」において、開発のスピードと柔軟性を向上させるために取り組んだ認証認可基盤の工夫。AWS の各種サービスを有効活用してアーキテクチャを構築したことや、その結果として開発効率を圧倒的に向上させられたことなどを語りました。

株式会社トレッタキャッツの廣山 氏は、猫の健康をサポートする IoT トイレ「toletta」のアーキテクチャについて「動画データの処理」「猫の個体識別」「それらの非同期化」という3つの観点に沿って解説を行いました。

ナイル株式会社の梅本 氏は、新車・中古車を月額定額で利用できるカーリースを中心としたサービス「定額カルモくん」において、AWS のサーバーレス技術を活用してどのようにマイクロサービス基盤を構築したかを熱弁。

ユニファ株式会社の赤沼 氏は、保育士の方々の重要な業務である、お昼寝中の園児の突然死を防ぐための見守りをサポートする「ルクミー午睡チェック」のアーキテクチャを解説。システムの信頼性や、運用上の優秀性を向上させるためのノウハウを紹介しました。

 

CTO FailCon

カンファレンス終盤では、日本を代表する CTO の方々に過去の失敗談を赤裸々に語っていただく CTO FailCon を開催。CTO FailCon は二部構成となっており、前半パートは以下のスピーカー・ファシリテーターで議論を行いました。

<スピーカー>

株式会社UB Ventures テクノロジーパートナー / 株式会社イエソド 代表取締役 竹内 秀行 氏

株式会社メルカリ CTO 名村 卓 氏

<ファシリテーター>

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 スタートアップソリューションアーキテクト 塚田 朗弘

CTO FailCon の様子①

まずは「スタートアップ企業において、開発リソースが足りない場合に外部ベンダーに協力していただくことの意義」について議論。竹内 氏はユーザベース創業期における SPEEDA の開発事例をもとに話を切り出しました。

「当時は社内にエンジニアのリソースが不足していたことから、CEO の提案により開発の一部を小規模なソフトウェアハウスにアウトソースする方針になりました。

ですが、外部ベンダーの方々は『要件通りのシステムを納品すること』にフォーカスし、『メンテナンス性に優れたソースコードを書くこと』をそれほど重視しない傾向にあります。結果として、機能追加は順調に行われたもののソースコードのメンテナンス性が徐々に悪化することに。外部ベンダーがプロジェクトから抜けた後、リファクタリングに大きな工数が必要になりました」と竹内 氏は振り返ります。

とはいえ、当時は外部ベンダーの手助けがなければ短期間で新機能を次々とリリースすることは不可能であったと竹内 氏は続け、開発のアウトソーシングには長所・短所のいずれもあると述べます。

その発言を受けて名村 氏は、サービスの運用者と外部ベンダーの目指すゴールが異なる点に言及。「サービスの運用者はサービスの成功がゴールである一方、外部ベンダーは要求されたシステムを一定のコストと品質で期限通りに納品することがゴール。両者が目指す方向性の違いを念頭に置くことが重要」だと提唱します。竹内氏は「外部ベンダーに協力していただくことが是か非かという二元論ではなく、開発の目的や長所・短所をふまえて適切に使い分けることが大切なのでしょうね」と結びました。

次に、採用における失敗談に議題は移ります。名村 氏は「メルカリは一時期、ブランディング施策として開発組織の良い部分ばかりをアピールしすぎていた」と述べました。

ポジティブな要素を全面的に打ち出すと採用の成功率は上がるものの、入社前の期待値と入社後の実態とのミスマッチが生じやすくなります。だからこそ採用面接などで、実務における泥臭い部分も正直に話しておくべきだと、過去の事例を振り返りました。

名村 氏の発言をふまえ、セッションでは採用において重視していることについて議論。そのなかで竹内 氏は「採用においてはエンジニアの技術力よりも、プロダクトを成長させようとする意志や、周りと協調して仕事ができる人間性を重視しています。そのマインドがあればスキルは自然と伸びていくものです」と、マインドセットを大切にすることの意義を語りました。

CTO FailCon の後半パートは以下のスピーカー・ファシリテーターで引き続き議論を行いました。

<スピーカー>

合同会社DMM.com CTO 松本 勇気 氏

グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高技術責任者 藤本 真樹 氏

<ファシリテーター>

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 技術統括本部長 執行役員 岡嵜 禎

CTO FailCon の様子②

セッション序盤では、アーキテクチャ構築の失敗談について議論を進めます。松本 氏は前職の株式会社Gunosy 時代に、マイクロサービスアーキテクチャを過度にやりすぎてしまった事例について解説しました。

「あるプロジェクトにおいて、既存プロダクトと似たようなプロダクトをもう1つ立ち上げることになりました。すでにアーキテクチャ設計の答えがなんとなく見えていましたから、綺麗にマイクロサービス化したいという欲が出て、結果としてサービスを過度に分割しすぎてしまったのです」と松本 氏は振り返ります。その結果、サービスの依存関係が複雑になり、デプロイの難易度が非常に高くなってしまったそうです。

その失敗から、重要なのは必要に迫られたタイミングではじめてマイクロサービス化すること、そして後のサービス分割を見越して“分割が容易な設計”を心がけておくことだと松本 氏は提唱しました。

議論のテーマは、エンジニアのマネジメントに移ります。藤本 氏は「これは自分のトラウマになっているのですが」と前置きしたうえで、かつてマネージャーを務めていたチームのエンジニアたちと仲違いした経験を打ち明けました。

藤本 氏は当時の自身をいまよりもマネージャーとしてずっと未熟だったと振り返り、メンバーの個性やマインドを無視して、自分の意見を押し通すようなマネジメントをしていたと語ります。その結果、あるミーティングで怒ったメンバーたちが会議室から退室してしまったそうです。藤本 氏は「当時の自分はマネージャーという立場ではあったものの、適切に現場の声を拾い上げられていなかった」と反省点を述べました。

セッションのまとめとして、失敗についての哲学を両氏に語っていただくことに。松本 氏は「熟慮して決断した場合と素早く決断した場合とで、実はそれほど成功確率に違いはない。だからこそ、思い悩むのではなく素早く決断すること。仮に失敗しても、そこから何かを学びとっていくこと」が大切だと提言。

続いて、藤本 氏は論語の「小人の過つや必ず文る(品性の卑しい人は過失を犯しても改めようとせず、言い訳をしてごまかそうとする)」という言葉を引用し、「失敗を失敗として認められるようになることが、人間として成長するうえでは重要」と結びました。

FailCon の終了後は、CTO Night & Day 参加者の方々に、少人数のグループに分かれて自身の失敗談をお話いただく「俺のFailCon -Online Networking」を開催。みな思い思いに、“ここだけの話”に花を咲かせていました。

 

おわりに

例年とは異なりオンラインでの開催となった CTO Night & Day でしたが、CTO・VPoE の知見を共有し合う場として、今年も大きな盛り上がりを見せました。本記事をご覧になって、各企業の CTO・VPoE の方々と議論したい、技術リーダーとの交流を通じて業界全体を発展させていきたいと思われた方は、ぜひ次回の CTO Night & Day にご参加ください。