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【開催報告】AWS Summit Tokyo2019メディアセッション

6月12-14日に開催されたAWS Summit Tokyo2019にて、メディア業界バーティカルセッションを実施しました。

3つのセッションにおいて合計8社のお客様にご登壇頂き、最新の事例をご紹介頂きました。

全セッションを通して500人収容の会場は満席、注目度の高さが伺えました。

技術でメディアを拓く:AI と日経の記事・動画・文化事業
東京大学共同研究員博士(理学)
日本経済新聞社/日経イノベーション・ラボ上席研究員 中島寛人様

中島様より、日経イノベーションラボにおけるAI導入とAWSの活用方法について発表頂きました。AWSを研究開発リソースとして活用し、用途に合わせて性能を選べる点や、同じ環境を作り出せるため実験条件を揃えやすい点にメリットを感じているとのことでした。まず、AIが記事内の誤りを検出する校正システムについてデモを交えてご紹介頂きました。新聞紙面における掲載箇所など新聞業に特化した校正ルールまで理解したAIが、人の目では見つけることが困難な誤りを瞬時に検出し指摘する点が興味深かったです。実行環境はAmazon EC2 P2インスタンスを使っています。深層学習の簡易シュミレーションが行えるサイト(CNN Playground:http://dlpg.nikkei.com/)のバックエンドで使用されているモデルの学習では、Amazon EC2 P3インスタンスを8台並行処理させ10日間で学習を終えることができ、AWSだから早く終わったとの感想を頂きました。

制作・管理・アーカイブ・配信までエンドツーエンドのAWSメディア最新事例

制作・管理・アーカイブ・配信のワークロードそれぞれの変化やトレンドについて事例を発表頂きました。

モデレーター
アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト 石井悠太

株式会社ジェイ・スポーツ
技術本部製作技術部長(兼)国際映像チーム チームリーダー 富久洋次郎様
構成制作本部 企画制作部 第一制作チーム ディレクター 沼倉敦様

昨年末の全国高等学校ラグビーフットボール大会におけるクラウド編集導入事例を発表頂きました。中継の最後に流れる、毎年注目度が高いエンディング映像の編集をAWS上で実施いただきました。これまで歴代のディレクターは年末年始に編集所で寝泊まりしつつ実施していた作業を、ホテルからWi-fiでAWS上の編集環境に接続し実施できるようになりました。急な変更作業や他メンバーとの素材共有も可能となり、今後は複数の編集作業平行に向けたワークロード策定や、初の4K放送となるラグビーワールドカップでの活用を検討するとのことです。

株式会社NHKテクノロジーズ
メディア技術本部 開発技術センター メディア開発部 チーフエンジニア 菅原賢司様

CG制作におけるAWS活用について発表頂きました。従来CGレンダリングの課題として、クオリティへの要求のためにリソースが不足することや、複数サーバでの分散処理が必要だが、プロジェクト開始から締切に向けて徐々にリソース使用率が上がるためにキャパシティプランニングが困難かつ無駄が出てしまうことがあったとのことです。そこでAWSのクラウドレンダリングファーム管理ソフトであるAWS Thinkbox Deadline 10をオンプレ環境とのハイブリット構成で導入し、Spot instanceを活用することで必要な時に必要な分だけ低価格でリソースを確保できるようになりました。今後は分散ストレージのAmazon FSx for Lustreや、リモートCGプロダクション環境に仮想ディスクトップ技術であるTedadici PCoIP の活用も検討、制作ワークロードのさらなる効率化を推進いただいております。

株式会社フジテレビジョン
技術局 放送技術センター 放送部 井村紀彦様

クラウドを活用したマスターのコンテンツ管理プラットフォームについて発表頂きました。従来は、地上波、BS、CSそれぞれで管理していたコンテンツを、クラウド上の「総合コンテンツ管理システム」に移行することで、組織間でのコンテンツ共有や管理コストの削減を実現されました。初期設備投資や保守費を抑えられること、コストの見える化が図れること、倉庫から出庫することなく番組素材に即アクセス可能になったこと等に導入効果を感じられているとのことでした。また2021年に向けて、ポストプロダクションからのオンライン搬入や、『フジテレビオンデマンド』や番組販売システムとの連携にも取り組まれているということでした。

株式会社IMAGICA Lab.
研究開発本部 技術開発室長 工藤隆朗様

ポスプロ作業 on AWSについて発表頂きました。スケジュール管理システムをAWS上に構築し、社員からの要望である、全社員が複数拠点にて共同で使うことができてサクサク動くシステムを実現されました。課題となっていた朝一・月末月初のアクセス集中はAuto scalingにより解決したとのことです。また、AWS上でコンテンツの管理や共有を行うためのメディアアセットマネジメントシステム「TASKEE」を開発・提供されており、TASKEEではAWS Elemental MediaConvertやAmazon S3を活用いただいています。また、Glass Valley社のEDIUSとの連携も進んでおり、TASKEE上で管理された素材に対しクラウド編集が簡単に実現できることをお話しいただきました。

株式会社フジテレビジョン
技術局 技術開発部 副部長 伊藤正史様

2K4K同時配信とCMAF、視聴計測の開発事例について発表頂きました。2K同時配信では、送出マスターと配信のリアルタイム情報連携基盤を構築、AWS Elemental MediaTailorを利用することでマスターの信号と連動してサーバーサイド広告挿入を行っていただいております。4K同時配信では、4Kで収録した番組を放送波では2Kで放送、ハイブリッドキャスト機能で4K配信に切り替えて視聴できるハイブリッド配信基盤をAWS上に構築されました。この構成は既に5局で採用、1局で新規採用予定とのことです。CMAF配信の検証では、マルチデバイスに対応し、セグメントファイルのフラグメント化による超低遅延配信を実現しました。これは、今年4月にチャンク形式のオブジェクト転送に対応したAWS Elemental MediaStoreとAmazon CloudFrontを活用したものであり、実際に低遅延で映像が配信される様子をデモでご披露頂きました。最後にテレビ視聴計測について、大量に発生する視聴ログ収集のための、Network Load Balancer+EC2+S3によるログ収集基盤の構築、大量視聴ログの分析/可視化にクエリサービスのAmazon AthenaとBIツールのAmazon QuickSightを活用して構築された、視聴データのリアルタイム処理基盤について発表いただきました。これらはすべて伊藤様がアジャイルで開発された事例であり、放送技術のソフトウェア化により、AWSを活用すれば大規模設備を持つ必要なく迅速に技術開発が可能になると宣言して頂きました。課題としてこれらを実行できる技術者の育成を挙げられ、伊藤様が実行されている解決策としてペアプログラミングやメディア業界コミュニティMediaJAWSの活用をご紹介頂きました。

視聴体験を向上するメディアデータ分析・機械学習 事例

多様化する視聴者にアプローチする方法として、自動化/スケーラブルなクラウドでワークフローを構築し、視聴ログ等のデータを取得・分析することが考えられます。本セッションでは視聴体験向上のためのデータ分析・機械学習にフォーカスした内容が話されました。

モデレーター
アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト 金目健二

株式会社TBSラジオ
メディア事業局 インターネット事業推進部 部長 萩原慶太郎様
株式会社電通
データ・テクノロジーセンター DMP開発部 シニア・ITストラテジスト 福留賢二様

最初に地上波ラジオの課題としてリスナー調査の情報が乏しいことを提起されました。そこでラジオアプリのradikoのアクセスログデータを可視化し、リアルタイムで視聴データを見ることができる環境を構築されました。運用保守のコスト削減と安定化のためマネージドサービスのAWS Lambda、AWS Glue、Amazon Athenaを使用し、DBはリアルタイム性を高めるためAmazon Auroraを使用されています。導入の結果、データからの気付きからPDCAを回すことができるようになり、さらに何ができるか?といった社内からの質問が増えたとのことです。社内の意識改革が起こり視聴データをどう活かすのか、他と連携できないか、といった部署を超えた動きが起こりました。今後はデータ精度の向上やレポーティング機能の強化に取り組むとのことでした。

株式会社テレビ朝日
技術局設備センターサイバーメディアシステムG 兼 インターネット・オブ・テレビジョンセンター 松下剛様

テレビ朝日様からは、インターネットに接続しているテレビから視聴データを収集し、データワークフローを構築して分析を実施した事例を発表頂きました。テレビだけでなく関連Webサイトのログも併せてAmazon S3に保存したデータを起点とし、Amazon Kinesisを使ったリアルタイムの分析により視聴者数増減を確認されています。アドホックの分析ではエンジニアが直接クエリを実行し、番組個別のプロフィールを可視化しています。また、Amazon SageMakerを用いて機械学習も実施し、視聴データから視聴者のクラスタリング、プロフィール予測を可能にしました。

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ソリューションアーキテクト 門田、安司