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【開催報告 & 資料公開】金融インダストリー向け: クラウドを活用したレジリエンシーの最新動向

日本の金融業界でもクラウドの活用が進み、重要業務のクラウド化が求められている一方で、クラウドのレジリエンシーへの不安からためらうケースもみられています。AWSではレジリエンシー関連のAWSサービスやサポートサービスの強化、「金融リファレンスアーキテクチャ日本版」の公表等の取組みを行ってきました。
2023年6月15日にオンライン開催しました「金融インダストリー向け:クラウドを活用したレジリエンシーの最新動向」セミナーでは、クラウドだからこそ実現できるレジリエンシーのコンセプト、実装のアーキテクチャー、運用やテスト手法、そしてサポートサービスに渡って全体像をお示しすると共に、お客様とのディスカッションも交えながら実践的なノウハウをお届けしました。
本ブログでは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 金融ソリューション本部 ソリューションアーキテクトの 深森、山北からこのセミナーの開催報告をお届けします。

セッションアジェンダ

  1. 金融におけるレジリエンシー:最新動向と金融機関に求められる取組み
  2. クラウドを活用したレジリエンシーの実現
    2-1. クラウド レジリエンスの全体像
    2-2. アーキテクチャー:「金融リファレンスアーキテクチャ日本版」の最新情報
    2-3. 運用とテスト:オブザバビリティ、テスト手法の高度化
    2-4. クラウド:レジリエンシーを高度化するAWSサービス
  3. パネルディスカッション – クラウドを前提としたレジリエンシーのあり方
  4. Next Action – レジリエンシーの向上へ向けたAWSからのご支援

開催セッション振り返り

1. 金融におけるレジリエンシー:最新動向と金融機関に求められる取組み [スライド]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
コンプライアンス スペシャリスト 高野 敦史

ITシステムへの依存度の上昇により、システム障害やサイバーセキュリティ攻撃が重大なリスクとなっており、このような環境においてオペレーショナルレジリエンスの重要性が高まっています。オペレーショナルレジリエンスの議論は、イギリス、EU、米国などで広がっており、日本でも金融庁からディスカッションペーパーが発表されました。AWSは以前からオペレーショナルレジリエンスに積極的に取り組んでおり、関連するホワイトペーパーの発行などタイムリーな情報発信に努めています。
このセッションでは、コンプライアンススペシャリストの高野が金融業界におけるオペレーショナルレジリエンスについての最新動向と金融機関の取り組みについて解説しています。耐性度とサービスレベル、サードパーティリスクの管理、カオスエンジニアリング、クラウドのメリットなど、オペレーショナルレジリエンスの主要なトピックについて幅広く説明しています。

2. クラウドを活用したレジリエンシーの実現

2-1. クラウド レジリエンスの全体像 [スライド]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
グローバルフィナンシャルサービス ソリューションアーキテクト 深森 広英

クラウドレジリエンスの重要な観点として、高可用性、ディザスタリカバリ、継続的な運用の3つの領域を取り上げ、それぞれの領域でクラウドのユーザが何をすべきか、また、そのためにアベイラビリティゾーンやリージョンやAWSの様々なサービスをどのように活用することが出来るのかについてご説明しています。

2-2. アーキテクチャー:「金融リファレンスアーキテクチャ日本版」の最新情報

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
グローバルフィナンシャルサービス ソリューションアーキテクト 深森 広英

※スライドとセッション動画は2-1に含まれます

金融リファレンスアーキテクチャ日本版に含まれるサンプルワークロードの一つ、勘定系ワークロードは汎用的なトランザクション処理のためのマルチリージョンアーキテクチャです。このワークロードで動くサンプルアプリケーションの提供について多くのユーザ様からご要望を頂いておりましたので、マイクロサービスのSagaパターンを採用したシンプルな銀行アプリケーションを開発いたしました。入出金のトランザクションを発生させながら、AWS Fault Injection Simulator で人工的に障害を注入し、プライマリサイトを東京リージョンから大阪リージョンに切り替えるという障害シミュレーションを安全に簡単に行うことができます。ぜひお試しください。最小限の構成であれば負荷ツールも含めて1時間ほどで構築可能です。
※ 動画の中では「公開予定」としておりますが、7/5に一般公開 しています。

2-3. 運用とテスト:オブザバビリティ、テスト手法の高度化 [スライド]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
技術統括本部 金融グループ 銀行・証券ソリューション部 ソリューションアーキテクト 松本 耕一朗

オブザーバビリティの向上はMTTI(Mean Time-to Identify:平均特定時間)の短縮化に繋がります。オブザーバビリティの3本の柱であるメトリクス、ログ、トレースの各情報を収集するための Amazon CloudWatch メトリクス、Amazon CloudWatch LogsAWS X-RAY を中心に、システムの外形監視を行う Amazon CloudWatch Synthetics、 実際にユーザが体験したウェブページのパフォーマンスを計測する Amazon CloudWatch RUM 等、15個のオブザーバビリティに関するサービスの全体像をご紹介しています。後半では、システムの本番稼働後における定期的なテストの重要性をご説明します。

2-4. クラウド:レジリエンシーを高度化するAWSサービス [スライド]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
技術統括本部 金融グループ 保険ソリューション部 シニアソリューションアーキテクト 山北 嶺

AWS上で回復力のあるワークロードを実現するサービスの中から、より高度なレジリエンスの実現が行える以下のサービスを取り上げてご紹介します。これらのサービスを他のAWSサービスと合わせて活用頂くことで、お客様の大切なシステムのレジリエンス向上につながります。

3. パネルディスカッション – クラウドを前提としたレジリエンシーのあり方

住信SBIネット銀行株式会社
システム開発部部長 渡邊 弘 様
東京海上日動システムズ株式会社
ITインフラサービス本部 インフラソリューション三部
部付部長 山下 裕記 様
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
コンプライアンススペシャリスト 高野 敦史
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
技術統括本部 金融グループ
本部長 布目 拓也(モデレーター)

住信SBIネット銀行株式会社の渡邊様、東京海上日動システムズ株式会社の山下様にご登壇いただき、AWSメンバー交えながら、クラウドを前提としたレジリエンシーに関して、様々なテーマでパネルディスカッションを行いました。お二人には、今までの取り組みや今後の方向性などに関して、踏み込んだ議論を行っていただきました。ありがとうございました!

ディスカッションテーマ:

    • 全社ITにおけるレジリエンシーの課題、クラウドの位置づけと評価
    • レジリエンシー向上のためのObservability(可観測性)の認識と現在の取り組み
    • マルチリージョン構成などクラウド環境ならではの工夫と今後の取り組み予定
    • レジリエンスに関する取り組みにおけるAWS への期待

4. Next Action – レジリエンシーの向上へ向けたAWSからのご支援 [スライド]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
カスタマーソリューションマネージメント統括本部 金融グループ 部長 ザマン アサド

本セッションでは、お客様のレジリエンス向上をご支援するフレームワークとオファリングを取り上げています。
Well-Architected Frameworkの概要とそれをどのようにレジリエンス向上に活かすかについて、レジリエンシーの8つの設計原則に基づいたアセスメントの「Resilient Application Readiness Assessment (RA2)」により、お客様の重要なシステムをアーキテクチャ・テスト・運用の観点で改善点を明らかにできます。最後にお客様のインシデントレスポンスの短縮化をご支援可能な、エンタープライズサポートのアドオンである「AWS Incident Detection and Response (IDR)」を解説しています。

まとめ

本セミナーでは、金融機関のお客様でのAWS活用は重要業務にも展開していること、AWSはオペレーショナルレジリエンスを支える様々なサービス・プログラムをご提供していることをご紹介しました。加えて、お客様とのパネルディスカッションにおいて、実践的なレジリエンシー向上の施策について語っていただきました。
このコンテンツを確認いただき、金融グレードのシステムに求められるレジリエンスをAWSで実現可能であること、レジリエンス改善に向けた具体的な内容について確認いただければ幸いです。