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VMware Cloud on AWSを使用した複数のディザスタリカバリSLAへの対応

AWSでPartner Solutions Architectを務めるKiran Reid、VMwareでTechnical Marketing Architectを務めるMike McLaughlin氏による記事です。

VMware クラウドオン AWS ダーク

以前のブログでVMware Cloud on AWSを利用したディザスタリカバリ(DR)の設計上の考慮点について説明し、VMwareが提供するDisaster Recovery as a Service(DRaaS)オファリングであるVMware Site RecoveryVMware Cloud Disaster Recoveryを紹介いたしました。

本稿では、これら2つのオファリングについて、そしてそれらをどちらか一方、または両方デプロイして、より堅牢なDRをVMware Cloud on AWSに導入できる可能性に焦点を当てます。どちらのアプローチも、個々のビジネス要件を満たす為に、複数のサービスレベルアグリーメント(SLA)とサービスレベル目標(SLO)に対処するのに役立ちます。

どちらのソリューションもDRプラン内に、既存の本番ネットワークをVMware Cloud on AWS内で構成した適切なDRネットワークにマッピングする堅牢ながらシンプルな方法を提供します。

これはSoftware Defined Data Center(SDDC)でアプリケーションの仮想マシン(VM)を起動するための、文書化及びオーケストレーションの機能を提供します。また、DR機能をテストしたり、予期しないシステム停止後のビジネス継続性を実現するための適切な接続性も提供します。

ハイブリッドクラウドのVMware DRソリューションのアーキテクチャは、既存のVMware Cloud on AWSアーキテクチャと統合されます。VMware Cloud on AWSの基本的なブロックについての詳細はこちらの記事を参照下さい

ディザスタリカバリ・シーケンスの理解

以下の図は、仮想化されたワークロードのリカバリの実行に必要な手順を示しています。

VMC-DR-スラ-1

図1:ディザスタリカバリ・シーケンス

  • ステージ1: 通常時 — この段階では、すべてのシステムが本番稼働し、正常に動作しています。
  • ステージ2: 災害発生 — ある時点で災害が発生し、システムを復旧する必要があります。この時点で、目標復旧時点(RPO)は、時間内に測定されたデータ損失の最大許容量を決定します。アプリケーションのSLAおよびDRコスト要件に応じて、これは30分、4時間、またはそれ以上になる可能性があります。
  • ステージ3:リカバリ — システムは回復されてオンラインに戻りますが、まだ本番環境の準備ができていません。目標復旧時間(RTO)は、すべての重要なシステムをオンラインに戻すために必要な最大許容時間を決定します。これは、数分、数時間もしくはそれ以上の場合があり、リカバリポイント(バックアップコピー)から仮想マシンをパワーオンしたり、障害を修正したりする時間が含まれます。
  • ステージ4:本番環境の再開 — この段階で、システムがリカバリされます。システムやデータの整合性が検証され、すべての重要なシステムが通常のオペレーションを再開できます。業務復旧時間(WRT)は、システムやデータの整合性を検証するために必要な最大許容時間を決定します。

    例として、データベースとログのチェック、アプリケーションまたはサービスが実行され利用可能であることの確認などがあります。これらのタスクは通常、アプリケーション管理者、データベース管理者などによって実行されます。

RTOとWRTの合計が、最大許容停止時間(MTD)であり、業務の停止が許容される最大の時間を定義します。この値は、ビジネス管理チーム、最高技術責任者(CTO)、最高情報責任者(CIO)、またはITマネージャによって定義されます。

VMware Cloud on AWSのVMware DRaaSデプロイメント・オプション

保護されるサイトを考える時、VMware DRソリューションの選択とそれぞれのSLAを決定する上で、企業にとって2つの重要な検討事項があります:

  • リカバリポイントのクラウドストレージの容量と場所: リカバリポイントを、プライマリ(SDDC vSAN)データストアに保存するのか、それともSDDCですぐに利用できるセカンダリのScale-out Cloud Filesystem(SCFS)に維持するのか。
  • RPO: リカバリポイントをどのくらいの頻度で取得し、どのくらいの期間または数を保持するのか。この2つの指標が、RPOのSLAの可能性を後押しします。

また、これらの選択は、ストレージやコンピューティングのニーズに対するクラウドベースのリソースの消費を促進し、これらのクラウドベースのリソースに内在する弾力性を活用する可能性をもたらします。

VMware Cloud Disaster Recovery

このソリューションは、リカバリポイントを維持するためにSCFSを活用し、オンデマンドでスケーラブルなSDDCデプロイメント・メソッドと、よりダイナミックでコスト効率に優れたクラウドマネージドのDRサイトアプローチを提供します。

フェイルオーバーワークロードはこのリカバリポイントからほぼ即座に開始でき、ストレージvMotionがバックグラウンドで自動的に処理され、VMをVMware Cloud on AWS SDDC vSANデータストアに配置します。VMware Cloud DRには、フェイルオーバーサイトを構築および拡張するために、わずかに大きい(長い)RPO、SLA、および潜在的に長いRTOというトレードオフがあります。

VMware Cloud DRでは、わずか2ノードから開始できるPilot Light環境の利用も可能です。これにより、Tier-0アプリケーションや、セカンダリドメインコントローラなどの重要なユーティリティVMを常時実行できます。そして災害発生時にオンデマンドでスケールアップできます。

このアプローチでは、災害発生時にノード数を増やしてVMware Cloud DRを活用し、SCFSからVMを復旧させてワークロードを回復させるまで、お客様は2ノード分の料金を支払うことになります。

VMware Cloud DRソリューションの詳細および関連する価格についての詳細は、製品ページを参照してください。

VMware Site Recovery

このソリューションでは、保護サイトおよびリカバリサイトにVMとしてインストールされるVMware Site Recovery Manager (SRM)とvSphere Replication (VR)コンポーネントの基本を活用して、ターゲットのVMware Cloud on AWS SDDC vSANデータストアにVMレプリケーションのリカバリポイントを確立します。

アプリケーションの仮想マシンを保護するこの方法では、永続的なクラウドオペレーション・フットプリントのコストの代わりに、より低いRPOと潜在的により高速なRTOを実現することが出来ます

このアプローチでは、保護サイトからリカバリサイトへのvSphereレプリケーションをサポートするために、予めプロビジョニングされたSDDCが必要となります。期待通りのリカバリポイントを保持する為に、そのSDDCは適切なvSANデータストアのサイズを確保できるようプロビジョニングする必要があります。

VMware Cloud DRのPilot Light環境と同様に、わずか2台のESXiホストから始める事ができ、必要に応じてより多くの容量をプロビジョニングするアプローチを取ることにより、さらにコストを削減できます。

Site Recovery ソリューションの詳細については、製品ページを参照ください。

VMware DRaaSの考慮事項

両方のVMware DRaaSソリューションは、ディザスタリカバリのためにVMware Cloud on AWSにフェイルオーバーを可能にし、保護サイト(オンプレミスまたは代替となるSDDCのいずれか)を定義するための同様の方法を提供します。

また、保護グループ(クラウドにバックアップされるVM)を確立し、DRイベントに応答するために使用できるDRプラン(オーケストレーション手順と詳細を記録したランブック) を定義します。 これらのソリューションのいずれかをいつ使用できるかについての考慮事項を以下に示します。

VMC-DR-SLA-2.1

図2 — 適切なソリューションの選択

これら2つのVMwareソリューションの類似点とトレードオフの詳細を次の表にまとめます。

VMC-DR-SLA-3

図3 — 類似点とトレードオフ

最適なDR保護のために両方のソリューションを使用

VMware Cloud on AWSへディザスタリカバリを実装するための理想的なソリューションは、両方のアプローチを組み合わせる事です。このシナリオでは、VMware Cloud DRを使用して、常時稼働の小さいSDDCを事前にプロビジョニングし、さらにVMware Site Recoveryを併用して、RPO/RTOをより低くする事でビジネスクリティカルなワークロードに対応できます。

この最初に構成されるSDDCはフェイルオーバーが必要な残りのワークロードのVMware Cloud DRのPilot-Light SDDCモデルとして使用でき、SCFSとスケーラブルなクラウド・デプロイメントの弾力性を活用できます。

DRイベントが軽減されると、クラウドベースのDRサイトを縮小して、VMware Site RecoveryとVMware Cloud DRの両方をサポートする小さなベースフットプリントに戻す事ができます。

VMC-DR-スラ-4

図4:ディザスタリカバリ・アーキテクチャ

まとめ

VMware Cloud on AWSをセカンダリデータセンターとしてご利用いただく事により、小規模から始めて、機能を証明し、クラウドの効率的な経済性によって即時の価値と拡張性を提供し、さらにDRaaSソリューションに対する最も要求の厳しいニーズにも満たすことができます。

VMwareが提供するこれらのディザスタリカバリ・ソリューションについて、互換性、サイジング、および一般的なコストに関するVMwareおよびAWSの最新情報をオンラインで確認することを常にお勧めいたします。

詳細については、AWSまたはVMwareのアカウントチームにお問い合わせいただくか、AWSまたはVMwareのウェブサイトをご覧ください。

翻訳はPartner SA 豊田が担当しました。原文はこちらです。