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【開催報告】AWS Autotech Forum 2019
みなさんこんにちは。ソリューションアーキテクトの岡本です。10/25 に AWS が主催する自動車業界向けイベント「AWS Autotech Forum 2019」が開催されました。「AWS と自動車業界」という組み合わせを意外に感じる方も多いのではないでしょうか?実は自動車業界の様々なワークロードや取り組みの中で AWS が活用されております。本イベントでは Mobility as a Service(MaaS) 、自動運転開発、コネクテッドカー、エッジコンピューティング等の分野に携わるビジネスリーダー及びエンジニアの方々をお招きし、この領域で AWS を活用頂いているお客様から最新の取り組みをご紹介いただきました。本ブログでは各セッションやデモブースの内容を紹介したいと思います。
オープニングセッション
「拡がるモビリティーサービスの実現に向けて」と題し、AWS ソリューションアーキテクト岡本から今年のイベントテーマである MaaS を巡る市場動向を紹介しました。技術トレンドとしての CASE(Connected/Autonomous/Shared/Electric) がそれぞれ深化する中でビジネストレンド MaaS の注目度が高まっており、今後大きな市場の出現が期待されています。MaaS にはエマージングビジネスの側面と企業間アライアンスによる新プラットフォームビジネスの側面があり、それぞれ技術基盤に求められる要件が異なりますが、AWS を活用頂くことでこれらの要件を満たし、ビジネスに集中して頂くことができます。
- エマージングビジネスに必要な基盤の要件
- コア領域に集中
- アイデアをすぐ形に
- スケーラビリティ
- 企業間連携及び新プラットフォームに必要な基盤の要件
- セキュアなデータ連携
- グローバルフットプリント
- 学習コストの最小化(技術者の”共通言語”化)
またゲストスピーカーとしてイスラエル発のスタートアップである Otonomo 様の平戸様と、日本の多くの自動車会社と連携し社会インフラとしての MaaS プラットフォームを推進されている MONET Technologies 株式会社様の 湧川様にご登壇頂き、最新の取り組みをご紹介頂きました。
ブレイクアウトセッション
デンソーの MaaS 開発 ~アジャイル開発で顧客との協調・チームビルディング・実装概要~ 株式会社デンソー
このセッションでは、Small Start でソフトウェアファーストな開発を行う手法として、デンソー デジタルイノベーション室で採用されているアジャイル開発の手法について講演いただきました。試作から本番までの開発プロセスを 4 段階に分け、それぞれの段階で意識されている点を詳細にご説明いただきました。初めの試作フェーズにおいては、何を検証するかわからない PoC や、PoC といいつつ本番移行前提のアーキテクチャ設計やコード作成は NG であるとのことでした。また、試行フェーズ・本番フェーズでは省人化・自働化などの製造業のノウハウを活用されている点についても語っていただきました。
Creating mobility applications with the Transportation Mobility Cloud (TMC) Autonomic
AWS のアドバンスド テクノロジー パートナーである Autonomic 様のセッションでは、同社が提供する Transportation Mobility Cloud (TMC) についてご紹介いただきました。モビリティデータを活用したアプリケーション開発にはメーカーごとや車種ごとに異なる操作を必要とするため複雑さが伴いますが、TMC はそういった複雑性を排除、抽象化しモビリティデータを使いやすくするオープンなプラットフォームです。開発者指向な API が提供されており、アプリケーションの開発速度を迅速にし市場投入までの時間を短縮できる点についてご講演いただきました。
自動運転サービス・実証実験での IoT 技術活用 株式会社ティアフォー
株式会社ティアフォー様では、Autoware という Linux と Robot Operating System(ROS)をベースとした自動運転用オープンソースソフトウェアの開発を主導されています。本セッションでは Autoware を軸に自動運転を利用した MaaS を展開するために必要な自動運転車両の運行管理システムである Autoware FMS と 自動運転車両の遠隔監視・操作プラットフォームである Autoware Drive についてご紹介いただきました。デバイスデートウェイの AWS IoT Core とエッジデバイスで動作する AWS IoT Greengrass をクラウドと車両間だけでなく信号機などの設備との連携にも利用する事例などを交え、アーキテクチャや実証実験での取り組みを詳細にご紹介いただきました。
A Deep Dive into Otonomo’s Data Services Platform Otonomo
オープニングセッションでも登壇頂いた Otonomo 様より、1,800 万台の自動車データを取り扱うデータサービスプラットフォームの機能や構成に関してお話いただきました。車両データの正規化、集約、プライバシー関連法などのレギュレーション対応などがカバーされ、それによりアプリケーションプロバイダーはサービス開発に集中できるということです。またスケーラブルな基盤を実現するためにストレージに Amazon S3、アプリケーションホスティングに Amazon ECS、ストリーム処理に Amazon Kinesis Data Streams/Firehose, AWS Lambda など AWS の様々なサービスを活用し、毎日 20 億データポイントの投入に対応していることをご紹介いただきました。
CASE から MaaS ヘ、プラットフォーム/データ活用を考える アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社/Supership 株式会社
前半は AWS 自動車業界 事業開発マネージャーの高橋が担当しました。日本の自動車業界における AWS 利用は数年前はスタートアップが中心でしたが、近年では完成車メーカー、サプライヤーによる自動運転開発やコネクテッド領域での活用がそれを上回る勢いを見せています。これらは既存の車両開発領域と比較して短い周期で小さく始め改善していく考え方が有効であるためクラウドと相性が良い領域と考えられます。MaaS の領域ではますますそういった考え方が重要になり、意図して作る巨大プラットフォームはなかなか前に進まないことを意識する必要があります。具体的な進め方のご参考として AWS というプラットフォームを例にとり、お客様を起点に検討を進める Working Backwards, 機動性のある組織を維持する Two-pizza team など Amazon の特徴的なプラクティスを紹介しました。後半は Supership 株式会社様より、DX(Digital Transformation) を推進するためのデータ事業開始時に採った “Start Small and Build as you go” (最小限のセットアップからはじめビジネスに合わせて拡大していく)戦略と具体的な進め方を説明いただきました。
ナビタイムジャパンの MaaS に関する取り組みと今後の展開 株式会社ナビタイムジャパン
株式会社ナビタイムジャパン様からは MaaS に関する取り組みと今後の展開についてご講演いただきました。ナビタイムジャパン様では、よく知られる自動車や列車のナビゲーションだけでなく、バスやシェアサイクルルート、トラックカーナビなどあらゆる移動手段、移動のシーンへの対応を目指されております。本セッションでは位置情報データの活用と最新事例として、交通流分析や需要予測、訪日旅行客の行動分析などの事例や MaaS レベル 0 〜 4 の各レベルに応じた取り組み事例、AI を活用したパーソナライズされた経路探索の取り組みなど多数の事例についてご紹介いただきました。
AWS IoT Greengrass を活用したコネクテッドカー向けソリューション アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社/ルネサスエレクトロニクス株式会社
組込ソリューションプロバイダーのルネサスエレクトロニクス株式会社様からは、自動運転時代に向けてクラウドサービスから車両制御までエンドツーエンドのトータルソリューションを提供するコンセプトとコネクテッドカープラットフォームについてご紹介いただきました。MaaS に対応するためにはハードウェア差分に依存しないソフトウェア開発やメンテナンス性が重要であることに着目し、車両側は R-Car 上で動作するルネサス・コネクテッドカー SDK を開発し、クラウドサイドは AWS が提供する Connected Vehicle Reference Architecture(CVRA) を採用し、AWS IoT チームと検証やユースケース議論を重ねているということです。セッション後半では AWS IoT スペシャリストの市川より CVRA の詳細が紹介されました。CVRA はテンプレートからすぐに展開可能なコネクテッドカーバックエンドのリファレンス実装で、トリップ情報の蓄積、ドライバースコア算出、センサーデータの異常検出、通知などの機能が全てサーバーレス(サーバー管理が不要な抽象度の高いサービス群)で構成されています。デバイスゲートウェイとしての AWS IoT Core、車両内デーモンとしてオフライン対応やエッジ処理に対応する AWS IoT Greengrass がコアコンポーネントとなっており、ビジネスロジックに AWS Lambda、ストリーム収容に Amazon Kinesis Data Streams, データ保存に Amazon DynamoDB, Amazon S3 などが活用されています。
デモブース
デモブースでは、株式会社アプトポッド様、Otonomo 様、株式会社ティアフォー様、 GeoSpock 様、AWS によるブース展示がありました。アプトポッド様のブースでは、同社の車載ターミナルを搭載することで独自プロトコルを介し、高い信頼性を維持しつつ MQTT より高いスループットでセンサーデータを AWS へあげ、これを簡単に可視化することを実現するクラウドサービス intdash Automotive Pro を展示していただきました。Otonomo 様のブースでは、オープニングセッションやブレイクアウトセッションでご紹介いただいたサービスの内容について、米国からお越しいただいた同社の方から詳細をご説明いただきました。ティアフォー様からは、講演でも紹介されていた Autoware はもちろん、ワンマイルモビリティとして現在試験運用もされている完全自動運転 EV 社の Milee に関するデモ動画を展示していただきました。GeoSpock 様からは、多様で大量の地理空間データを、独自のインデックスにより、従来のデータベース製品より高速に操作・検索・可視化することを実現している同社SaaSのデモを展示いただきました。AWS からは、CVRA を応用して作成したフリート管理システムのデモと、AWS DeepRacer の展示がありました。CVRA はどなたでもすぐにお使いいただけるので、是非お試しください。また、AWS DeepRacer とは、強化学習 (Reinforcement Learning: RL) によって動作する 1/18 スケールの完全自走型レースカー、3D レーシングシミュレーターを含むサービスです。11 月末にラスベガスで開催されるグローバルイベント AWS re:Invent 2019 では、バーチャルサーキットレースや世界中で開催される Summit サーキットイベントで勝利した方々が参加するチャンピオンシップリーグが開催されます。re:Invent に参加される方の中でもしご興味があれば是非お立ち寄りください。
おわりに
本ブログから自動車および MaaS における業界の熱気と AWS 活用の最前線の状況が伝わりましたら幸いです。今後もお客様の変革を支援し、様々な興味深い事例を発信していければと考えておりますので、ご注目ください!
ソリューションアーキテクト 岡本、安藤、奥野