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AWS Academy による高等教育への投資

世界中で高等教育が面している課題については、既知の事実であり嘆くべきことです。高騰を続ける学費は、教育への投資に対する利益率を減少させるばかりでなく、教育の享受のしやすさや公平性まで脅かし、企業が求める人材へのニーズと、卒業生が持つスキルのギャップも広げています。こうしたトレンドは、教育システムに対する信頼の危機を招いています。米国 Gallup polls の調査によると、2015 年以来、高等教育システムの信頼度は低下の一途を辿り、英国でも多くの学生が自身の能力の価値について懸念を持っていることが報告されています。

こうした動向は憂慮すべき一方、同時にイノベーションや連携への新しい扉を開いているとも言えます。高等教育機関には、学生たちがより良い学習体験を得て成果をもたらすことを視野に、競争力かつ創造性のある方法を見い出すことが求められています。そのため、従来のビジネスモデルやアプローチの見直しを図ることを余儀なくされています。

しかし、新しい世代の若者が社会に羽ばたく準備をする負担を、高等教育機関だけに押し付けるべきではありません。企業もその責任の一端を担い、教育機関と連携し支援することに対し膨大な動機付けが必要です。米国 Manpower Group の報告によると、世界中の企業の 54% が、最長では 10 年以上に渡り人材不足であると報告しています。アマゾン ウェブ サービス (AWS) では、お客様やパートナー様から、クラウドコンピューティング業界では、「量」と「質」の両方の側面でこのスキルギャップの課題が顕著になっている – 大学は雇用側が求めるレベルのクラウドスキルを身につけた十分な数の学生を輩出できていないと耳にします。この課題を効果的かつ意図的に解決し、必要な人材のサプライチェーンを構築するためには、産学連携が必要不可欠です。

AWS Academy で世界中の高等教育機関に投資を行っているのはこのためです。AWS Academy は、クラウドコンピューティングのエントリーレベル人材のパイプラインを構築するために設計され、AWS 公認のコース、教育者向けのトレーニングを無償で提供するプログラムです。私たちは高等教育がまだ世界的に労働力創出の重要な場であると信じています。そして、学生が需要のある役職に就職する準備をするのに必要なスキルやリソースが確実に教育者に行き渡るよう尽力しています。

では、産学連携とは言っても、効果的な連携とはどのようなものなのでしょうか。これまで、世界中の地方や都市部のコミュニティーで、小規模のコミュニティ・カレッジや大規模な研究機関で、この連携が形になっているのを目にしてきました。最も成功しているのは、卒業生の雇用適性について前向きかつフレキシブルで、熱意を持って取組んでいる教育機関です。

 

インドCharotar UniversityのAWS Academy認定講師、Sandip Patel氏と学生たち

インド Charotar University の AWS Academy 認定講師、Sandip Patel 氏と学生たち

 

例えばインドの Charotar University of Science and Technology では、AWS Academy 認定講師である Sandip Patel 氏が地元のスタートアップ企業 2 社と連携し、学生に AWS のハンズオンプロジェクトワークを提供しています。地元のリクルーターが大学を訪れた際、20 名以上の AWS Academy 修了生が地元企業でクラウドに特化した職種で採用されました。

ニュージーランドのトップ大学のひとつに数えられる University of Auckland は、地元のクラウド人材の需要に応えるため AWS Academy のコースを活用しています。この大学の AWS Academy 認定講師を務める David TJ Huang 博士によると、彼の学生のひとりが、オークランドのデータ&リサーチ企業である Brave New Coin でのインターンシップ中であり、卒業後は AWS 担当のビックデータエンジニアとして内定をもらっていると報告してくれました。Huang 博士は、こうした成功例から AWS Academy コースへの需要が非常に高いことを認識し、今年はこのコースの定員を今までの 3 倍に増やし開講する予定です。

世界的に見てもクラウド人材への需要は膨大です。AWS Academy は、「質と量」の課題に対する取組みを示すことに成功した一つの例に過ぎません。私達は革新的かつ拡張性のある産学連携を促し、グローバル人材のサプライチェーンを構築しようとしています。このモデルを更に効果的な取組みとするためには、企業側と教育機関側双方の独特な課題や強みについて、互いに理解することが求められます。キャリア上の成果や採用について優先付けを行い、従来の慣習や働き方を変えていく柔軟さやイノベーションが求められます。

こうした行動が実を結んで初めて、高等教育期間は将来のビジネスリーダーやエンジニア、ビルダー、起業家を生み出し、彼・彼女らが労働市場に付加価値をもたらすのに必要なスキルを身につけ、生涯に渡り学習を継続するための場であり続けるのです。

By Kevin Kelly

Kevin Kelly

Kevin Kelly は アマゾン ウェブ サービス (AWS) で、認定と教育プログラムのディレクターを務めており、AWS スキル習得を証明する認定プログラムの世界での開発や、クラウドキャリアの開発プログラムを統括しています。