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機械学習を使用してリアルタイムのレース分析を提供
AWS DeepRacer は、機械学習 (ML) を初めて使用する経験のない開発者にとって、楽しく簡単な方法です。2019 年シーズンの終わりに、AWS DeepRacer リーグは、Amazon ML Solutions Lab と協力して、re:Invent 2019 で行われた AWS DeepRacer チャンピアオンシップカップの新しいスポーツ分析機能を開発しました。
このようなリアルタイム分析の目的は、上位の競争相手の戦略や戦術について、コンテキストやより詳細な経験を提供することにありました。これにより、視聴者は特定のモデル戦略がどのようにして順調に進展したのかを明確に理解でき、ML の開発をさらに分かりやすいものにし、実世界での応用できることを実証しました。この強化により、ファンは世界中の競争相手のパフォーマンスと運転スタイルを監視できるようになりました。
この投稿では、これらの分析を開発し、本番環境にデプロイし、ファンに配信した方法について説明します。
ML と従来の統計情報から得られるインサイトを活用
ML Sokutions Labは、モータースポーツに関する当社の専門知識を活用して、ML と従来の統計学の両方を活用したカスタムのアナリティクススイートを構築しました。
競争相手の勢いは、将来のパフォーマンスを示す重要な指標です。例えば、連勝状態にあると、超高速ラップを続けて記録する場合のように、自信を深めることができます。しかし、連敗状態になると、逆に働き、順調に進めることは困難になります。競争相手の次のラップタイムを予測することで、この傾向をファンに伝えました。Amazon Forecast で AutoML を使用してさまざまな予測方法を比較した結果、指数平滑化法( ETS )アルゴリズムを使うと、使用可能なデータセットが小さいにも関わらず正確な予測が得られることが分かりました。
ラップタイムの一貫性のようなメトリクスにより、ファンは、64 人の競技者が参加するチャンピオンシップカップ開幕戦では、さまざまな運転スタイルを解釈することができるようになりましたが、2 日目のトーナメント試合では、どのスタイルが優位に立つのははっきりしませんでした。ソラの攻撃的で危険なほど早いペースを、フミアキの一貫して正確なスタイルが抑えて勝利を収めるのでしょうか?
シミュレーションされたレースを使用して、各対戦の勝者を予測することができ、ファンが最後まで大接戦となるようなレースを予測することできるようにしました。統計的アプローチをとり、各競合相手のラップタイムを確率分布でモデル化しました。2019 年の AWS DeepRacer サミットのデータを参照することで、特定の競合相手のラップタイムの分布は全体的に右に歪んでおり、時間の経過とともに改善していることが分かりました。このラップタイムの歪度をとらえるには、最尤推定法を用いてワイブル分布にあてはめることにより、最適スケールとシフトパラメータを見つけます。
次にグラフは、上位 3 名の競合相手のラップタイムの分布を示しています。
勝者の予測問題を、より早い競争相手の最速タイムに打ち勝つ可能性(テイル確率)としてとらえ、モンテカルトシミュレーションを使用して、各競争相手のワイブル分布からサンプルと採取し、その可能性を計算しました。
サーバレスアーキテクチャを使用したソリューションをデプロイ
これらのインサイトをリアルタイムで計算するために、AWS 上で低レイテンシでサーバーレスのアーキテクチャに分析法一式をデプロイしました。次の図は、このアーキテクチャを示しています。
アーキテクチャには、次の手順が含まれます。
- 競争者がラップを完了すると、その時間は Amazon Aurora サーバーレスを動作させている Amazon Relational Database Service (RDS) クラスターにアップロードされます。RDS をデータストアとして使用することで、軽量でステートレスな AWS Lambda の集合として全分析法一式を実行することができました。
- 通知をトリガーするためのインターフェイスを公開し、MGM ガーデンアリーナでのコメントと当社のインサイトを動的に統合できるようにしました。
- トリガーされた Lambda 関数は、RDS に照会して履歴データを取得し、それを使用してデータ分析を行います。
- Lambda 関数は、ウェブフックを使用して、インスタントメッセージングをサポートするビジネス会議ツールである Amazon Chime にインサイトを公開します。
- ソーシャルメディア、AWS DeepRacer TV、制作チームなどのさまざまな関係者が、Amazon Chime がインストールされたタブレットを使用して分析フィードにアクセスできます。
サーバーレスに移行することで、当社のチームは迅速に繰り返すことができ、本番システムに必要な拡張性と耐障害性を確保できました。3 人のチームが、わずか 3 週間弱でこのアーキテクチャを構築しました。このアーキテクチャは、アイドル状態のリソースに料金がかからないため、非常にコスト効率良く実行できました。チャンピオンシップカップの後、どのサーバーも電源を切ることすらしませんでした。
リアルタイム分析の使用
最後に、私たちのインサイトをチャンピオンシップのプログラミイングに統合するために、解説者と協力して、適切なタイミングで分析を提供しました。ヘッドセットを使って、本番チームが提供するライブ音声を聞き、次のような解説者からの特定の合図を受けました。
- 特定の競争相手へのインタビュー
- 競争相手がラップを開始または終了した旨の掛け声
- 世界新記録の樹立、接戦となる競争相手どうしの対決などの主要イベントへの注目
2020 年にはさらに多くのことをご期待ください。
当社の分析は、チャンピオンシップカップ中、ファンのエクスペリエンスを向上させました。しかし、まだ完了してはいません。re:Invent 2019 の期間中、500 人以上の競争相手から 12,000 周以上のラップタイムをキャプチャしました。AWS DeepRacer は、新車と新しい競合フォーマットを展開することになるので、このデータは 2020 年にはさらに高度な分析に進歩させることになるでしょう。
AWS DeepRacer チームには、この素晴しい機会を提供いただき、ありがとうございました。また、この機会を実現するために協力していただいた制作、ソーシャルメディア、解説者の各チームにも感謝致します。 製品またはプロセスにおける機械学習の使用を促進するための支援をご希望の場合は、Amazon ML Solutions Lab までお問い合わせください。
AWS DeepRacer ( www.awsdeepracerleague.com )で機械学習を始めましょう。
著者について
Ryan Cheng は、Amazon ML Solutions Lab のディープラーニングのアーキテクトです。彼は、スポーツ分析から光文字認識まで、幅広い ML ユースケースに取り組んでいます。ライアンは、余暇には料理を楽しんでいます。
Delger Enkhbaya は、Amazon ML Solutions Lab のデータサイエンティストです。彼女は、スポーツ分析、公共部門、医療分野でディープラーニングの幅広いユースケースに取り組んでいます。彼女のバックグランドは、機構設計と計量経済学です。
Saman Sarraf は、AWS Machine Learning Solutions Lab のデータサイエンティストです。彼のバックグラウンドは、ディープラーニング、コンピュータビジョン、時系列データ予測などの応用機械学習です。