Amazon Web Services ブログ

IQVIAサービシーズ ジャパン合同会社 の AWS 生成 AI 事例: Bedrock の Knowledge Base を利用した社内 RAG チャットシステムの構築

本ブログは、IQVIA サービシーズ ジャパン合同会社 と Amazon Web Services Japan が共同で執筆しました。

IQVIA は、データ・テクノロジー・高度な分析・ 専門性を駆使することにより、 ヘルスケアや人々の健康の進展に取り組むお客様をご支援するグローバルリーディングカンパニーです。 お客様とともに、 近代的なそして効果的かつ効率的なヘルスケアシステムの実現を重ねていくことによって、 ビジネスと患者さんの治療アウトカムを変革する画期的なソリューションを生み出しています。

抱えていた課題

IQVIA サービシーズ ジャパンでは、臨床試験や市販後調査(PMS)、医薬品関連文書の作成等の業務において、日本における医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令や治験業務を行う上での規制のように一般に公開されているドキュメントの内容を確認する必要がたびたび発生します。それらの症例や規制の内容について疑問がある場合にはガイドブックやウェブで公開されている情報を元に手作業で調査を行っていましたが、この調査に時間がかかることが課題になっていました。

また、実際の薬品の開発のプロセスで行われる臨床試験のプロジェクトの中でも情報の検索・調査が課題になっていました。

プロジェクトには、臨床試験が適切に実施されているかを監視する役割である臨床開発モニターが大規模なプロジェクトで数十人といった規模で参加します。そのプロジェクトの中で行われた質疑応答については、Q&A の形で社内に蓄積しておき、臨床開発モニターがその Q&A を調べることでプロジェクトに関する情報を確認することがあります。ただし、この Q&A は膨大な数になるため人手での調査には多くの時間を消費しており、平均して 月合計 204 時間を費やしていました。

上述のように多数の業務中の情報確認のための検索・調査に費やす時間が多大にかかっていることに加えて、人によって必要な情報にたどり着くまでのスキルに差異があり、慣れていないメンバーではかなりの時間をこの調査にかけてしまっている場合もありました。

ソリューション

調査効率の向上のために、IQVIA サービシーズ ジャパンでは Amazon Bedrock のナレッジベースを用いた RAG(Retrieval-Augmented Generation) ベースの AI チャットソリューションを構築しました。Amazon Bedrock のナレッジベースは、データソースへのカスタム統合を構築してデータフローを管理することなく、取り込みから取得、迅速な拡張まで、RAG ワークフロー全体を実装するのに役立つフルマネージド機能です。

IQVIA サービシーズ ジャパンでは、少人数でこの RAG チャットの開発・運用を行う必要がありそれらのコストを小さくしたいと考えていました。そのため、はじめは自前で RAG チャットの実装を試していましたが、ドキュメントのチャンキングとインデクシングといったデータの準備からベクトルデータベースと LLM との連携をマネージドに実現することができる Bedrock ナレッジベースを採用しました。ひとまとまりの Q&A 形式のファイルを Q&A 単位で分割し質問と回答が対応するかたちで入力すると言った簡易な加工はありつつも、フィルターなどの Bedrock ナレッジベースのネイティブ機能でほとんどの要件を達成しています。また、このソリューションは AWS Amplify や AWS Lambda、Amazon DynamoDB といった フルサーバレスな構成を採用しており、運用負荷をおさえたものになっています。

IQVIA サービシーズ ジャパンではこの RAG ソリューションの検証と構築を担当者 1 名のみで実施し、約 2 ヶ月という期間で実現しました。

導入効果

この RAG チャットソリューションを IQVIA サービシーズ ジャパン 全体に広く導入し、約 2 ヶ月で社内ユーザー 321 人を達成しました。また月あたりの検索・調査に費やしていた時間を 93 % 削減することを実現されました。

その他にも調査の苦手なメンバーでも効率的に調査を実施することが可能になり、検索結果の品質向上や均質化した答えが得られることも導入効果として挙げられています。

社内からは今回導入された部署以外でも利用したいという要望が多数あげられており、ソリューションの拡大を検討されています。現在は各部署でデータの投入部分をはじめ運用の一部を担ってもらえるようなサービスの拡張に取り組んでいます。

開発担当者の上長からも、「作成物のイメージがあれば、柔軟性高く、迅速に開発が可能で、マネージドサービスのおかげで限られたリソースでも対応できたので満足しています。また、今回の RAG チャットの開発費用に関しても想像以上に安く抑えられました。」というフィードバックをいただいています。

まとめ

Amazon Bedrock のナレッジベースを用いて開発・運用コストを最適化したRAG チャットソリューションを短期間で構築された IQVIA サービシーズ ジャパン 合同会社の取り組みについてご紹介しました。

同社では、この取り組み以外にも AWS の先進的なテクノロジーと 生成 AI を活用し、より広いユーザーへ向けた新たなサービスを展開されることを検討しています。ぜひ続報をお待ちください。