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需要計画のためのインテリジェントオートメーション
この記事は、Madhu Ramanによる記事 Intelligent automation for demand planningを翻訳したものです。
はじめに
企業は戦略レベルから業務レベルに至るまで、事業部門は事業活動全体で計画を最適化し、意思決定の支援をより多くの人に提供するために統一されたリアルタイムなプランニング環境を必要としています。機械学習(ML)は、プランニングの予測精度を向上させるのに役立ちます。しかしながら、予測モデルからのアウトプットを、直接ビジネスプランニングの現場で利用することは、まだ容易ではありません。製造業のビジネス意思決定者に向けた本ブログでは、ビジネスプランニングチームが顧客需要をどのようにして動的に計画を作成できるかを紹介します。これには、需要パターンの発見や、人と機械学習のインテリジェンスを組み合わせた需要予測、チームがビジネスパフォーマンス目標を達成できるようにするかといったことが含まれます。
アジャイルマニュファクチャリング、インダストリー4.0、IoTへの投資により、製造業務の変革が進んでいます。しかし、これらの投資には、正確な需要計画と需要変動分析が必要です。顧客は短い納期と正確な配送日時を設定して、企業はこれを実現するために受注プロセスの一層の透明性が必要になります。需要に関する限定的な知見が、生産活動において誤った優先順位を設定して、その結果、生産性が低下したり、受注処理の不備や、収益の損失を招きます。この記事では従来からある課題に、ML駆動型予測で対処する利点について説明し、最後に、Anaplanのコアサービスの上で動作するAmazon Forecastを使ったAnaplan PlanIQTM プラットフォームについて触れます。これは、人、データ、計画を連携して利用できるようになったAmazon Forecastが稼働する専用のプラットフォームソリューションです。
Amazonは、AWSを中核に革新的なオートメーション、AI、ロボティクスを用いてスマート製品を設計、製造し、グローバルに接続された流通ネットワークを通じて何十億もの製品を流通させています。製造業のお客様は、自社のニーズに対してこれを活用することができます。より広い視野で見るには、AWS for Industrialのページをご覧ください。このブログでは特に、AWSのAmazon Forecastによって実現される、MLによる予測に基づいた需要計画のためのインテリジェント・オートメーションに焦点を当てています。Amazon.comで使われているのと同じ技術に基づくAmazon Forecastは、機械学習を使って時系列データと追加の属性情報を組み合わせて予測を構築します。お客様は、予測の問題では未知の要素に対応して精度を高めていく必要がありますが、お客様はAmazon Forecastを用いてそうした問題に取り組んでいくことができます。
製造業のお客様が抱える需要計画の課題
製造業のビジネスリーダーは、コストと顧客サービスのバランスを取りながら、予測プロセスを通じて真の顧客需要を正確に予測する必要があります。しかし、これは様々な理由から容易ではありません。まず、顧客の購買意欲を高める要因は、一般的に明確ではありません。次に、価格、プロモーション、プロダクトミックス、配置、プロセスなどの影響に対する可視性が限られています。営業、販売パートナー、オペレーションを連携させて望ましい結果を導き出すことは簡単ではありません。製造業のリーダーであれば、売上予測に基づいて需要を計算することの問題点は、その予測が正確なセールスファネル(顧客が商材を契約・購入に至るまでのプロセス)から発展したものではないことをご存知だと思います。他のアプローチとしては、何が起こるかについてのオペレーション評価を取り入れます。このアプローチは、過去の生産要件に依存しており、動的な市場の変化を考慮することはできません。最後に、MLや統計アルゴリズムベースの予測ツールを使用するアプローチもありますが、これらは計画プロセスから切り離されており、予測プロセスを実行するために多大な労力とデータサイエンティストのような専門技術の知識を必要とします。これらの課題の影響は、製品が誤った数量で生産されることです。在庫が出荷され、最適とは言えない場所に送られてしまいます。在庫不足による収益の損失や、過剰在庫によって値下げを発生させてしまいます。また、最も重要なことは、需要計画における予測ミスは顧客満足度の低下を招くことです。
MLによる需要計画のための予測
製造業のお客様と仕事をする際、私たちはMLによる予測をビジネスに取り入れる上で、3つの重要なニーズがあることに気づきました。予測の精度を上げること、多くの人にアクセスしやすくすること、そして拡張性を高めることです。精度の向上には、新しいデータおよび既存のデータを活用して継続的に予測の仕組みを改善することが必要です。たとえば、精度はAmazon Forecast MLエンジンで利用できるような画期的なディープラーニングML技術の採用によって向上させる必要があります。MLを利用するには、より多くのテスト予測シナリオ、相関関係を見つけるための機能、新しいトレンドを特定する能力が必要です。過去のデータと将来的な指標を活用して、より正確な推論を行う必要があります。使用する最適な予測モデルを自動的に選択できるようにする必要があります。
実際に業務に携わるビジネス・ユーザーは予測を作成し実行する必要があり、これはアクセスのしやすさに関する重要な課題です。手作業による準備は避け、データを予測エンジンに適した形式に自動変換する必要があります。ビジネスユーザーにとって、設定や分析が簡単であると分かるようにしなければなりません。最後に、結果は簡単に理解でき、また実行可能なプランとして役立てられるものでなければなりません。ML駆動の予測をより大きな規模に拡大するために、予測を成長させ、調整し、改善するために、継続的な学習ループが必要です。ソリューションやツールへのデータ移行は自動化されている必要があります。社内の業務データ、気象やマクロ経済データなどの外部データを直接、また多くの場合には継続的に取り込むことも継続的に必要になります。
需要計画のインテリジェントオートメーション
インテリジェントオートメーションでは、お客様の既存のIT投資と連携し最適化するための幅広いソリューションやサービスを提供されれば、インテリジェントオートメーションで既存のソフトウェアを置き換える必要がありません。需要計画のインテリジェントな自動化の一例として、すぐに使えるAnaplanの専用プラットフォームがあります。これは、継続的な予測をサポートし、動的でインテリジェントな 計画策定を可能にするものです。お客様は、Anaplan需要管理モデルでPlanIQをセットアップすることから始めて、Amazon Forecastを利用した予測プロセスが実行されます。メトリックの測定に続いて、展開計画が行われます。結果として作られる予測は、ビジネスの意思決定者が将来の需要の要因とその商業的意思決定の影響をwhat-ifの観点でより深く理解することをサポートします。パンデミック後の世界では、新しい市場の動きが顕れているため、外部データの取り込みがより重要になります。
需要計画を正しく行うことで得られる現実的なメリット
アパレル製造の場合には、製品のライフサイクルは3~4ヶ月と短いものがほとんどです。実際の例では、膨大な量(20万個以上)の在庫管理単位(SKU)、年間5億個の商品、何千もの小売業者、そしてサプライチェーンの全体像を把握することができないのが一般的です。このエリアでのビジネス成果としては、例えば在庫コストの数百万ドル以上の削減、過剰在庫の10%以上の削減といったものが代表的です。最高級家電メーカーでは、小売業者からのSKU需要の予測精度を向上させ、予測作成にかかる時間を1週間以内に抑えることに重点を置いています。10,000のSKUとロケーションの組み合わせと3年間の履歴データを使用すれば、予測精度は大幅に改善され、1日で予測を作成することが可能になります。
このブログ記事で取り上げた需要計画は、プロセス製造にも適用されます。ある鉄鋼メーカーにとって重要な課題は、受注に対して生産がいつ完了するかを予測しようとすることでした。注文の構成上、リードタイムが長く、新規注文を受けるための生産能力の可視性が低いため、これを実現するのは困難でした。その結果、販売可能な製品に加工されるまでの鉄鋼原料の量を20%削減し、無駄を省くことでキャッシュフローを他の目的に回すことができました。
まとめ
Amazon Forecastを活用した最新のディープラーニング技術を取り入れた需要計画のインテリジェントオートメーションを是非ご活用ください。この他にも、AWSがお客様の製造業や産業用ビジネスの成長にどのように貢献できるのか、弊社にお問い合わせください。