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生成系 AI の核となる基盤モデル開発に挑む 17 社を採択。AWS LLM 開発支援プログラム Kick off party

昨今、生成系 AI をビジネスに利用する動きが活発化しています。AWS はお客さまがこの新しいテクノロジーの価値をフルに活かせるように、生成系 AI の専門家からなるチームを設置するとともに、柔軟性と費用対効果に優れた生成系 AI サービスを企業に提供しています。あらゆる組織が AI を活用できるように支援するという目標を掲げているのです。

その一環としてアマゾン ウェブ サービス ジャパンは 2023 年 7 月 3 日に、日本独自の施策として国内に法人または拠点を持つ企業・団体の大規模言語モデルの開発を支援する「AWS LLM 開発支援プログラム」を開始しました。本プログラムでは、LLM 開発を行うための計算機リソース確保に関するガイダンスや AWS 上での LLM 事前学習に関わる技術的なメンタリング、LLM 事前学習用クレジット、ビジネス支援などのサポートを提供します。

そしてこのたび、本プログラムで支援する企業・団体が正式に決定しました。本格的な LLM 開発支援が始まり、今後は 2023 年 12 月以降の成果発表会へと進むことになります。2023 年 9 月 4 日には「AWS LLM 開発支援プログラム」の採択企業が集い、Kick off party が開催されました。今回はこのイベントのレポートをお届けします。

代表執行役員社長 長崎 忠雄によるご挨拶

イベントの冒頭では、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長の長崎 忠雄が、「AWS LLM 開発支援プログラム」推進にあたってのご挨拶をしました。アマゾン ウェブ サービス ジャパンは「日本の LLM 開発者や LLM 技術の発展に貢献したい」という思いから、このプログラムを開始。告知後は 60 社弱の企業から応募があったことに長崎は触れ、「ご応募いただいたみなさまに、この場を借りてお礼を申し上げます」と感謝の言葉を述べました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長 長崎 忠雄

AWS は 2006 年に創業し、「テクノロジーを民主化する」という思いのもとクラウドコンピューティングを提供してきました。AI や機械学習などの領域においても、同様に民主化のための取り組みを続けています。

2023 年 6 月 22 日(米国時間)には、AWS は生成系 AI ソリューションの構築と展開を支援する新プログラム「AWS 生成系 AI イノベーションセンター」を稼働開始。「あらゆる技術領域の民主化を、私たちはお客さまとともに実現します」と長崎は解説しました。

こうした各種の取り組みは、Amazon がミッションステートメントとして掲げる Working Backwards(お客さまを起点に考える)という価値観に基づいています。「AWS LLM 開発支援プログラム」も、日本における LLM の開発・普及を加速させ、各社の事業の成長を目指しているのです。

「たくさんのご応募があったなかから、今回は 17 社を採択いたしました。みなさまとともに日本の技術発展に貢献し、各社のプロダクトが世界に羽ばたくような未来を見据えて、ご支援させてください」と結びました。

執行役員 技術統括本部長 巨勢 泰宏によるご挨拶

続いてはアマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 技術統括本部長の巨勢 泰宏からご挨拶をしました。「AWS LLM 開発支援プログラム」にご応募いただいたのは優れた技術や事業を持つ企業ばかりであったこと、選考においても多くの時間がかかったことなどを巨勢は語ります。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 技術統括本部長 巨勢 泰宏

AWS は AI・機械学習の領域において、お客さまに長らくサービスの提供や技術的な支援をしてきました。その結果、数多くの成果が生まれています。生成系 AI の領域においても、2022 年 4 月に Amazon Bedrock を発表しただけではなく、たくさんのお客さまを対象として技術的な支援を行ってきました。「生成系 AI を活用してプロダクトを改善したい」「生成系 AI で新たなビジネスを創出したい」という企業・団体のニーズは高まり続けています。そうした声に応えるため、「AWS LLM 開発支援プログラム」をスタートしました。

「このプログラムを通じて、採択企業には新しい化学反応を起こす機会を作っていただきたい。そして、AWS はクラウドという基盤や各種のプログラム、メンタリングなどを提供し、みなさまをご支援していきます」と巨勢は思いを述べました。

「AWS LLM 開発支援プログラム」の詳細を解説

ここからは「AWS LLM 開発支援プログラム」の企画・運営に携わるアマゾン ウェブ サービス ジャパン 機械学習ソリューションアーキテクトの宇都宮 聖子が、本プログラムの概要や採択企業、AWS のサポート体制についてご紹介しました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 機械学習ソリューションアーキテクト 宇都宮 聖子

本プログラムでは、LLM の開発に必要な 4 つの支援を AWS が提供しています。1 つ目は「計算機リソース選定と確保のガイダンス」です。利用するモデルや深層学習フレームワークなど、参加企業ごとの技術要件に応じた適切なインスタンスの種類の選定や、その計算機リソースを AWS 上で確保するためのガイダンスを実施しています。

2 つ目は「技術相談やハンズオン支援」です。AWS 上での分散学習やクラスタリング時のネットワーク性能最適化、マネージドサービスの活用、AWS Trainium / AWS Inferentia の利用などについて、AWS の技術エキスパートによるサポートを行います。

3 つ目は「LLM 事前学習用の AWS クレジット」です。総額で 600 万 US ドル規模のクレジットを投資し、事前学習用のワークロードに必要な計算機リソースなどの費用を一部支援します。

4 つ目は「ビジネスプランおよびユースケースに関する支援」です。開発した LLM をビジネスに活用する方法や AWS Marketplace などを活用した LLM の公開・販路拡大支援、Amazon SageMaker JumpStart の活用、ビジネスクライアント候補やベンチャーキャピタルとのコミュニケーションなどを実施します。

プログラムは以下のような流れで進行します。

参加対象は「LLM 開発を行う国内の企業・団体」「数十億〜一千億パラメータ以上の規模の LLM の事前学習をしている企業・団体」「今年の 11 月末までに開発成果(例: 本番環境でのローンチなど)を出すことを目指している」「クラウドを活用し、より効率的な方法で LLM を開発したい」などの条件を満たす企業・団体です。そして、技術的観点や研究開発的観点、ビジネス的観点といった総合的な要素を鑑みて選考を実施しました。

応募状況としては、前述の長崎の説明でもあったように 60 社弱の応募があり、そのなかから 17 社を採択しました。スタートアップ企業から大企業まで幅広く、多様な LLM モデルの開発を進める企業・団体が含まれています。以下が「AWS LLM 開発支援プログラム」採択企業の一覧です(公開可能な企業および団体)。

会社・団体名(社名五十音順・敬称略)

・カラクリ株式会社

・株式会社サイバーエージェント

・ストックマーク株式会社

・Sparticle株式会社

・Turing株式会社

・株式会社Preferred Networks

・株式会社Poetics

・株式会社松尾研究所

・株式会社マネーフォワード

・株式会社ユビタス

・株式会社Lightblue

・株式会社リクルート

・株式会社リコー

・rinna株式会社

・株式会社ロゼッタ

・株式会社わたしは

AWS と上記の企業・団体はすでに以下の取り組みを実施しています。

・プログラム期間中のスケジューリング

・計算機リソースの確保のガイダンス

・技術とビジネスの両面でのプランニング

・2023 年 8 月 30 日、2023 年 9 月 4 日に Prototyping Camp を実施

宇都宮は AWS のサポート体制についても解説しました。「AWS LLM 開発支援プログラム」では、AWS の国内外のスペシャリスト・スポンサーによって技術・ビジネスの両面から企業・団体のサポートを行います。

スピーチの終盤では、機械学習向け Amazon EC2 インスタンスそれぞれの特徴や、採択企業向けの Prototyping Camp にて各種インスタンスを参加者にお試しいただいたことなども、宇都宮は解説しました。

イベント参加の採択企業によるご挨拶

次に、イベントに参加していた採択企業より「AWS LLM 開発支援プログラム」参加にあたっての意気込みを語っていただきました。

サイバーエージェント社は「マルチモーダルな LLM や次世代アーキテクチャ構築などにチャレンジしたい」と宣言。

リコー社は「採択企業はライバルではなく、ともに LLM 技術の発展を目指す同志だと考えています」と、会場の方々に語りかけます。

ストックマーク社は「さまざまなビジネスのユースケースに活用できる LLM を作りたい」と大きなビジョンを述べ、

Sparticle 社も「LLM 技術の隆盛は歴史的なチャンスだと思っているため、各社とともに頑張りたい」と前向きな気持ちを語りました。

わたしは社は自社プロダクトの大喜利 AI について触れ「これまでも私たちは言語モデルの開発に取り組んできましたが、より一層この技術に力を入れたい」と言及。

完全自動運転 EV の開発を行う Turing 社も「開発した LLM 関連技術を自動運転の改善に活かしたい」と志を述べました。

リクルート社は自社が多種多様な事業を展開していることを述べたうえで、「それらの事業で蓄積したデータやドメイン知識などを活用し、良い LLM を生み出したい」と前向きに解説しました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 技術統括部 本部長 塚田 朗弘(写真左)

ここで採択企業によるご挨拶の前半パートが終了。「AWS LLM 開発支援プログラム」の企画・運営・立ち上げに携わっているアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 技術統括部 本部長の塚田 朗弘が、機械学習やコンピューティングのスペシャリストで支援体制を構築していることを述べ、会場にいる AWS のメンバーから一言ずつコメントをもらいます。そして「乾杯!」の言葉の後に会場の参加者が飲み物を口にし、採択企業によるご挨拶の後半パートに移ります。

ロゼッタ社は自社の歴史・沿革について述べたうえで「AWS 社や他の採択企業とも協力しながら、最良のものを世の中に出していきたい」と提言。

カラクリ社は提供している事業内容にちなみ、「カスタマーサポートの業務を LLM の技術によって改善していきたい」と目標を掲げます。

AI キャラクター「りんな」を提供する rinna 社は「採択企業のみなさまと一緒に AI の民主化を推進したい」と説明。

自然言語処理や画像解析の AI 開発に強みを持つ Lightblue 社は、ユーモアを交えつつ開発のビジョンを語りました。

「音声のコミュニケーションデータと LLM とを組み合わせて新たな可能性を探りたい」と話したのは、音声認識や音から人の感情を解析する AI、自然言語処理などを扱う Poetics 社。

ユビタス社は GPU 仮想化技術やクラウドストリーミング・プラットフォームに強みを持つ自社の事業について解説。

最後に、東京大学松尾研究室の技術の社会実装を目指す松尾研究所社が意気込みを述べ、採択企業によるご挨拶が終了しました。

閉会のご挨拶

イベント最終盤には「AWS LLM 開発支援プログラム」の企画・運営に携わるアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネジメント部 部長の岡田 大志が閉会のご挨拶をしました。

「日本を代表する AI・機械学習の専門家のみなさまとこのプログラムをご一緒できることを、非常にうれしく思っています。プログラムにご参加くださった各社には、公募への申し込みやヒアリング、プランニングセッション、Prototyping Camp など多大なるご協力をいただきました」と岡田は感謝の言葉を述べました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネジメント部 部長 岡田 大志

ここから本格的な LLM 開発支援が始まり、2023 年 12 月以降の成果発表会を目指して採択企業各社 と AWS はプロジェクトを進めていきます。みなさまの LLM に関する取り組みの成功確率を上げられるように、そして最終的には各社のビジネスにも良い影響を与えられるように、AWS は最大限の支援を行います。

「LLM のトッププレイヤーが一堂に会する機会は、非常に貴重だと思います。今後も AWS はこうした交流会を開催してまいりますので、ぜひみなさま奮ってご参加いただき、情報交換やネットワーク構築にお役立てください」と岡田はイベントを総括しました。