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Omeda Studio は Amazon GameLift と Pragma を使用して ‘Predecessor’ のバックエンドを5ヶ月以内にリプレイス

マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)ゲーム “Predecessor” の開発に取り組む Omeda Studios の開発者の献身さは、いくら強調してもしすぎることはありません。スタジオが正式に設立されたのは 2020 年ですが、そのコアチームは 2018 年からこのゲームを開発してきました。ファンによって、ファンのために作られた “Predecessor” は、2016 年から 2018 年にかけて Epic Games が開発した MOBA ゲーム “Paragon” の遺産から生まれました。”Paragon” の終了後、 Epic Games は Unreal Engine の無料使用のために “Paragon” のすべてのアセットを自由に使用できるように公開しました。Omeda は 2021 年末に PC で “Predecessor” の最初のビルドを有料早期アクセスとしてリリースし、その後 2022 年 4 月に無料オンラインテストとしてリリースしました。16 ヶ月間ライブゲームを運営した後、 Omeda Studios は Amazon Web Services (AWS) の専用ゲームサーバー管理サービスである Amazon GameLift を使用して Pragma にバックエンドを移行しました。この変更は、最新リリースの前に実装され、クロスプラットフォームで無料プレイを可能にしました。

Omeda Studios のライブプロダクションおよびゲームオペレーションのシニアマネージャーである Jon Sredl 氏は次のように述べています。「AWS はゲーム業界のゴールドスタンダードで、 GameLift を選択するのは簡単な決断でした。私たちが必要とするサーバータイプを必要な地域で提供してくれますし、プレイヤーの利益を最大化するキャパシティも備えています。プレイヤーにとって最大の変化は、社内で構築した Pragma ベースのマッチメーカーを GameLift と接続できるようになったことで、マッチメイキング体験の品質が向上したことです。GameLift のサーバーオーケストレーションに独自のマッチメーカーを柔軟に導入できるようになり、プレイヤーに高品質な体験を提供出来るようになりました。」

ブラックボックスからクリアボックスへ

Omeda Studios は当初から “Predecessor” の試合をホストするために AWS インスタンスを使用していましたが、サーバーの管理やメンテナンスを全面的に請け負う外部のゲームサーバサービスを利用していました。チームはゲームのクロスプラットフォーム展開の準備をしながら、小規模ながら熱心なプレイヤーを維持することに初期の開発努力を集中させました。そして、2023 年後半に、ゲームのバックエンドをより制御するために GameLift と Pragma を採用しました。以前のゲームサーバーホスティングサービスとは異なり、このアプローチにより、Omeda Studios は比較的小規模なチームでも、ゲームの最新リリースを加速し、開発者に明確なオブザーバビリティを提供できるようになりました。

Sredl 氏は次のように述べています。「オブザーバビリティは私たちにとって大きなチャレンジでした。なぜなら、以前のゲームサーバーホスティングソリューションはブラックボックスに近かったのですが、GameLift はより細かい制御が可能なクリアボックスを提供してくれます。また、開発者にどれだけうまく機能しているかを見せることができます。そして、このようなタイトなスケジュールでも GameLift を採用することで機能を実現できると分かっていました。」

GameLift と Pragma の連携

これまでで最大規模の “Predecessor” ローンチを前に、Omeda Studios はソリューションインテグレーターであり AWS パートナーでもある Code Wizards に、GameLift と Pragma の接続を構築するよう依頼しました。Omeda チームと協力して、Code Wizards はシステム同士が通信できるようにするフレームワークを設計し実装しました。その際、Amazon GameLift のエンジニアリングチームは、リアルタイムで Slack のやりとりに参加し、両チームと協力して課題に対するタイムリーな解決策を見出すなど、迅速かつタイトなスケジュールへの対応を支援しました。

今回の実装は “Predecessor” に向けにカスタマイズしたものでしたが、わずか数ヶ月でライブゲームを新しいバックエンドとゲームサーバーオーケストレーションに移行したい開発者も、同様に GameLift と Pragma を活用し、 GameLift エンジニアリングチームと CodeWizards 開発チームの専門知識を利用することで、同様の結果を達成できる可能性があります。

「Code Wizards は事実上、私たちのコア開発チームの一部であり、AWS チームは私たちの成功に非常に重要な役割を果たしました。素晴らしいコラボレーションでした。このパートをこれほど短期間で完了できたことは、Pragma 移行の他の部分に取り組むために非常に重要でした。」と Sredl 氏は述べています。

現在、Pragma は “Predecessor” のバックエンドのマッチメイキングを管理しており、マッチメイキングはカスタムコードを通じて処理されています。プレイヤーがグループにマッチングされると、GameLift に通知が送られ、指定されたリージョンでサーバーが起動します。これにより、マッチングされたグループの各プレイヤーが同じ高品質な体験を楽しめることが保証されます。“Predecessor” はオンラインでのみ利用可能であり、練習モードを含むすべてのゲームプレイが GameLift を通じてルーティングされます。

“Predecessor” のマイルストーンを追跡

2022 年 4 月の Epic Games Store とオンラインゲームプラットフォーム Steam での無料オンラインテストの成功を受けて、スタジオは 2022年 12月 に PC 向けの無料 “Predecessor” アーリーアクセスを開始しました。2023 年末には、 PlayStation 4 (PS4) と PlayStation 5 (PS5) 向けにクローズドベータ版として提供されるようになりました。そして、ゲームの新しいバックエンドは 2024 年 3 月 5 日にデビューしました。

2024 年 3 月 28 日、”Predecessor” は無料プレイ (F2P) モデルで公開され、Amazon GameLift と Pragma を活用することで、Epic Games Store、Steam、PS4、PS5、Xbox Series X、Xbox Series S におけるグローバルなクロスプラットフォームプレイに対応しました。プレイヤーは依然として、ユニークなゲーム内アイテムや通貨を含むアーリーアクセスバンドルを購入できますが、ゲーム自体は無料でプレイできます。最新のリリースによってゲームがより多くのプレイヤーからアクセスしやすくなったため、チームはトラフィックが急増しても、プレイヤーに高品質な体験を確実に提供できるようにする必要がありました。

「私たちが最初に実現したいのは、誰もが良い時間を過ごしているということです。そして、私たちはその基準を間違いなく大きく超えました。わずか数ヶ月の間に、このサービスのライブ移行を実現するために、社内の開発チーム全体で前例のない努力が行われました。そして、GameLift と Pragma のコンポーネントはすべてシームレスに機能しています。」と Sredl 氏は共有してくれました。「プレイヤーの人口がこれまでで最大規模になりましたが、まだまだ成長し続けているのです。これは非常にエキサイティングです。私たちはこの勢いを維持することを目指しており、多くの大きな新機能やゲームモードを開発中です。」

負荷テストの重要性

“Paragon” との関連性から、“Predecessor” は発足以来、熱心なファンからの強い注目を集めてきました。そのため、このゲームは常に大規模のプレイヤーをサポートする必要がありました。2021 年の初回オンラインテストでは、週末で 68,000 人のプレイヤーが 1,100 万分間のプレイを記録し、その後の新リリースごとに需要は増加し続けています。ゲームの無料プレイ (F2P) のリリースに先立ち、チームは需要のピーク時でもプレイヤーが最適な体験を楽しめるよう、広範な負荷テストを実施しました。スタジオは Pragma で最大 200,000 人の同時接続プレイヤー、GameLift では最大 500,000 人のプレイヤーを想定して負荷テストを行いました。

「私たちは過去 2 ヶ月間ほぼ継続的に負荷テストを実施してきました。テストを実行し、結果を分析し、必要に応じてサービスに調整や変更を加え、次のテストの準備をするというサイクルを繰り返してきました。しかし、バックエンドとサーバー管理システム全体を入れ替えてから、過去最大のプレイヤーを対象に無料プレイを開始するまでの期間が短かったのです。最高品質のシステムを構築するだけでなく、それを徹底的にテストすることが不可欠でした。」と Sredl 氏は述べました。「ありがたいことに、ローンチはスムーズに進み、バックエンドは非常に安定しています。負荷テストは極めて重要で、事前に問題を発見し対処するのに役立ちました。」

“Predecessor” はグローバルにプレイヤーが存在しています。現在、4 つの主要な AWS リージョン(北米に 2 つ、ヨーロッパに 1 つ、アジア太平洋に 1 つ)で稼働しています。Omeda チームはより多くのリージョンにゲームを簡単に拡張でき、健全なマッチメイキングとローカライゼーションによって、プレイヤーに高品質な体験を提供することができます。同時に、GameLift のオートスケーリング機能により、ゲームの無料プレイモードの人気が高まるにつれて増加するプレイヤーベースに合わせて、より簡単にスケールが可能になりました。

将来のリリースに備えて

Omeda Studios が “Predecessor” のバックエンドとシステムのコードベースの両方を所有するようになったことで、ファンのために新機能をより迅速に開発し実装できるようになりました。チームは、既存の製品にコードを組み込む方法を心配することなく、すぐにアイデアをテストできます。コミュニティ主導の企業として、この新たに獲得した俊敏性は “Predecessor” の究極のビジョンを実現する上で極めて重要です。

「長期的には、私たちはただ最高に面白く、魅力的で、楽しい体験を作りたいだけなので、迅速にプロトタイプを作成できるようになったことは非常に大きな意味を持ちます。“Predecessor” は “Paragon” の夢と理想に基づいて構築されたゲームであり、現在の目標は、プレイヤー体験と品質の基準をどこまで高められるかを探ることです」と Sredl 氏は述べました。「また、AWS のようなパートナーとさらに協力し、独立系デベロッパーとしてどのように世界クラスの AAA ゲームを構築できるかも検討しています。現在の立ち位置と将来に向けて構築する機会に、これ以上ない喜びを感じています。」

最後にアドバイス

自社のバックエンド開発している開発者に対して、Sredl 氏はまずプレイヤー体験を考慮し、そこから逆算してインフラストラクチャを決定することを推奨しています。彼は次のように結論づけました。「プレイヤーが気にするのは、ゲームにフォーカスできるかどうかです。そのためには、開発の観点から適切なレイテンシーとサーバーパフォーマンスが必要となります。スケーラビリティはあらゆる段階で重要であり、常に高い品質基準を設定することも同様です。私たちにとって、それは GameLift を使用することを意味しました。私たちは AWS の品質を知っており、長期にわたって AWS のマシンで運用してきたので、パートナーシップを拡大することは本当に理にかなっていました。」

Amazon GameLift のページでは、このテクノロジーと、その予測的なサーバースケーリング、エンタープライズ級のセキュリティ、マッチメイキングが、開発者に世界で最も要求の厳しいゲームの構築とスケーリングを可能にし、発売日の不確実性を取り除く方法について詳しく紹介しています。

この記事は Omeda Studios swaps out ‘Predecessor’ backend in less than five months using Amazon GameLift and Pragma を翻訳したものです。翻訳はソリューションアーキテクトの山本が担当しました。