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【開催報告 & 資料公開】テレコム業界向け AWS re:Invent 2023 Recap – インダストリー 編

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクトの陳です。

テレコム業界に携わるお客様やパートナー様、5G やエッジ等の最新技術の動向にご興味のある方々を主な対象として、2024 年 1 月 31 日に「AWS re:Invent Recap インダストリー編 – テレコム業界向け」をウェビナーで開催しました。

本記事では、当日の内容・動画を皆様にご紹介します。

ウェビナー開催の背景

世界中の AWS ユーザーが集まり、ベストプラクティスや最新情報を学ぶための年次カンファレンス「AWS re:Invent」が 2023年11月ラスベガスで開催されました。本イベントでは、AWS re:Invent の 発表内容より、テレコム業界領域における最新動向、AI を駆使した事例、モバイルネットワークのクラウドアーキテクチャー、クラウドへの移行で直面する課題と解決法等の内容をお届けしました。

下記は発表内容をセッションごとのサマリとなります。

サマリは Amazon Bedrock による生成された内容をベースに加工しました。

1. テレコム業界の AWS re:Invent ハイライト

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第二ソリューション部

ソリューションアーキテクト 陳 誠

動画アーカイブリンク

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このセッションでは、AWS のテレコム業界向けの最新動向とお客様の事例を紹介しました。AWS はクラウドインフラ、テレコムワークロード、付加価値サービス、デベロッパープラットフォームの4つのレイヤーで通信事業者の変革を支援しています。

インフラ面では、33 のリージョンをカバーするグローバルな展開力で通信事業者を支援します。ローカルゾーンの提供によりエッジまで一貫性のある管理が実現できます。コンピューティング能力に関しては、新世代プロセッサー AWS Graviton 4 により大幅な性能向上が図れます。

付加価値サービスとして、メキシコの Smartlite 様がAR/VRソリューションを活用し、収益化に成功した事例を紹介しました。ITプラットフォームでは、Dish 様がコンタクトセンターをクラウド化した結果、エージェントの生産性が25%向上しました。

5G 関連では、ハワイの MVNO である Mobi 様が、5Gコアネットワークを1週間以内で稼働できた事例が発表されました。韓国のLGU+様では、災害対策としてのクラウド活用が進められています。

AI 活用の面では、ネットワーク運用業務の効率化が期待できます。ケーブルテレビ大手の Cox Communications 様がその好例として取り上げられていました。

AWS は通信事業者と協力し、こうした先進的な取り組みを通じて、クラウドを活用した次世代のテレコムの実現を目指しています。

2. 通信事業者のための生成系 AI の活用方法

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部

ソリューションアーキテクト 菊地 貴彰

動画アーカイブリンク

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このセッションでは、AWS と Altman Solon 社の調査をもとに通信事業者の生成 AI の動向を紹介した後に、AWS re:Invent で発表された生成 AI の活用事例を紹介しました。Allied Market Research 社の調査によると、2026 年までに 95 % の通信事業者がデータ、分析、AI の取り組みを導入する見込みと言われています。すでに先進的な通信事業者は生成 AI を活用してビジネスに高い付加価値をもたらしていますが、世界的に見ても生成 AI の導入はまだ初期段階にあります。


生成 AI の導入初期段階で多いユースケースは、カスタマーサービスの顧客向けチャットボットです。従来のルールベースから、生成 AI ベースのチャットボットに移行し、会話の質を高めてコンタクトセンターでのやり取りを減らすなどの効果が期待されています。その次に多いユースケースは、従業員生産性向上を目指したガイド付き支援です。

生成 AI 活用における課題は、データのセキュリティやプライバシー、データガバナンスへの懸念、技術的リソース不足、生成 AI の出力の信頼性への懸念などが挙げられています。技術的リソース不足も背景にあって独自に基盤モデルを構築することよりも、既存のマネージドサービス活用を望む声が大きいことがわかっています。

AWS の生成 AI サービスとして、Amazon Bedrock が注目されています。主要な基盤モデルからニーズに合わせて選択可能であり、基盤モデルのカスタマイズもできます。検索拡張生成(RAG)や一連のタスクの自動化ができるエージェントのマネージドサービスも提供しており、生成 AI をお客様のアプリケーションに簡単に組み込めます。

生成 AI の活用事例として、Cox Communications 様のガイド付き従業員支援と Globe Telecommunications 様のパーソナライゼーションを紹介しました。生成 AI の活用により、前者はネットワーク問題の発見、診断、解決にかかる時間を大幅に短縮でき、後者は顧客体験の向上に貢献したことが確認できました。通信事業者における生成 AI は今後拡大すると見込まれるため、その動向に注視する必要があると考えられます。

3. テレコム業界におけるクラウドアーキテクチャのご紹介

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部

ソリューションアーキテクト 宮崎 友貴

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このセッションでは、通信事業者の主要な 5つのワークロード (ビジネスソリューション、カスタマーエクスペリエンス、OSS/BSS、5Gコア/IMS、5G RAN) について、それぞれの現在の課題と AWS クラウド上での参考アーキテクチャーを紹介しました。

具体的には、TMフォーラムの ODA に準拠した AWS 独自のクラウドネイティブなビジネスソリューションフレームワーク、コネクテッドカスタマージャーニーと 生成 AI によるカスタマーエクスペリエンスの向上、コスト最適化と低レイテンシーを考慮した OSS/BSS のモダナイゼーション、AWS Local Zones や AWS Outposts を活用した 5Gコア/IMS のリファレンスアーキテクチャ、数千拠点に展開可能な Amazon EKS Anywhere や AWS Outposts を使用した O-RAN リファレンスアーキテクチャー等について解説がありました。

事例として、Smart Home を提供している TELUS 様の例が紹介され、デバイス、ネットワーク、AWSサービス、CSPサービス、アプリケーションからなる層構造の論理アーキテクチャが説明されました。また、Liberty Latin America 様は、複数の国やデータセンターにまたがるモノリシックなプラットフォームを統合し、アジャイルな方法で最新のアプリケーションを短期間で導入できるようになったBSSのマイグレーション実績が紹介されました。さらに、Telefónica Germany 様による 5G コアを AWS上で実装され、優れたネットワーク品質とカスタマーエクスペリエンスの向上につなげられた事例が紹介されました。

4. 通信事業者における大規模ワークロード移行のクラウドジャーニー

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部

ソリューションアーキテクト 加藤 知愛

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このセッションでは、LG U+ 様のクラウド移行の事例を紹介しました。LG U+ 様は韓国 3 位のキャリアで、2007 年から LG エレクトロニクスのセットトップボックスを使った VOD サービスを開始しました。現在のこのサービスの加入者数は 500 万人規模です。15 年以上サービス提供しており、チャンネル数が増え、日々 1.3 億のデータが更新されるなど、バックエンドが複雑化していました。


硬直化したアーキテクチャからくるサービス品質低下を解消するため、AWS へのクラウドマイグレーションを決定しました。1 年の準備期間で、アプリケーションのマイクロサービス化、CI/CD パイプライン構築、IaC(Infrastructure as Code)導入などを行いました。マイグレーションでは、サービスを無停止で移行する方針を打ち出し、AWS Database Migration Service (AWS DMS) を使ったデータベースの移行、API の Strangler パターンの採用、マイクロサービス化を段階的に実施しました。

マイクロサービス化では 78% の API をモダナイズしました。コンテナ基盤の Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) 上でマイクロサービスを展開し、データベースも Amazon Aurora に移行しました。CI/CD パイプラインと IaC により、ソフトウェアのリリースのスピードが向上しました。また、Amazon Aurora のスケーラビリティにより、負荷増時の対応力が向上しました。

準備に 1 年、移行に 1 年の計 2 年で、サービスを止めることなくマイグレーションを完了しています。自社主導の着実な準備と段階的な移行が成功の鍵でした。AWS によりビジネスの成長と継続的なプラットフォーム革新が可能になりました。

クラウドマイグレーションには長期的視点が重要です。丁寧な準備と段階的な移行で既存サービスを維持しながら、マイクロサービス化と CI/CD 等のアジャイル手法を取り入れ、サービス品質とスピードを両立させることができました。大規模システムの移行には時間がかかりますが、LG U+ 様の事例はその道筋を示しています。

まとめ

2024 年 1 月 31 日に開催した「AWS re:Invent Recap インダストリー編 – テレコム業界向け」の振り返りとして、開催概要や発表の見どころ紹介、お客様事例をご紹介いたしました。セミナーにご参加いただいた方、誠にありがとうございました。参加頂けなかった方も、このブログから動画や資料を参照いただき、今後の AWS 活用の参考になりましたら幸いです。内容に関して、ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。

このブログの著者

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第二ソリューション部
陳 誠

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部
菊地 貴彰

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部
宮崎 友貴

技術統括本部 ストラテジックインダストリー技術本部 通信グループ 通信第一ソリューション部
加藤 知愛