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VMware ワークロードの Red Hat OpenShift on AWS へのモダナイゼーション:変革をもたらすメリットを解き放つ
本稿は、2024 年 9 月 17 日に IBM & Red Hat on AWS Blog で公開された “Unlocking Transformative Benefits of Modernizing VMware workloads to Red Hat OpenShift on AWS” を翻訳したものです。
今日の急速に進化する技術の環境において、企業は VMware のワークロードと仮想マシン (VM) をクラウドに移行・モダナイゼーションする方法を求めています。注目を集めているアプローチの 1 つは、従来の VM を Red Hat OpenShift on Amazon Web Services (AWS) などのコンテナ化された環境に移行するか、OpenShift Virtualization on AWS に直接移行することです。
VMware ワークロードを移行してモダナイゼーションする方法を多くのお客様が探しています。お客様にとってスピードは最も重要な要素の 1 つですが、実際の VM をクラウドに移行するスピードはあくまで考慮すべき 1 つの要素に過ぎません。可観測性や VM へのトラフィック公開方法など、VM を本番環境で使用できるようにする前に実装しなければならない追加の要件があります。
本稿では、VMware の VM とワークロードを Red Hat OpenShift Service on AWS (ROSA) に移行する際の「何を」「なぜ」「どのように」について説明し、移行プロセスの理解と、さらに深く掘り下げるための追加リソースを提供します。
Red Hat OpenShift Service on AWS とは
Red Hat OpenShift Service on AWS (ROSA) は、クラウドネイティブのアプリケーションプラットフォームで、組織が AWS 上でコンテナ化されたアプリケーションのビルド、デプロイ、管理をシームレスに行えるようにします。Kubernetes の上に構築されたサービスのスタックを提供し、アプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化するための一連の機能を提供します。
ROSA は、OpenShift の機能と AWS のスケーラビリティと柔軟性を組み合わせた、Red Hat Site Reliability Engineer (SRE) によるフルマネージドなサービスです。この統合により、組織はクラウドネイティブプラットフォームのメリットを活用しながら、サーバーレスコンピューティング、マネージドデータベース、高度な分析などの AWS が提供する幅広いサービスの利点も享受できます。
VMware VM を OpenShift Virtualization on ROSA に移行する理由
OpenShift Virtualization on ROSA を使用すると、VM を クラウドに移行するスピードを満たし、運用要件を簡素化することで VM を本番環境に移行するまでの時間を短縮できます。Red Hat Migration Toolkit for Virtualization (MTV) を使えば、既存の VMware クラスターを ROSA に接続し、移行したい VM を選択して ROSA にインポートできます。お客様は VM 自体を変更する必要なく、ROSA の Infrastructure as Code (IaC) 用の組み込みツール、メトリクス、ダッシュボード、ロードバランシング、アラートを活用できます。
このアプローチにより、お客様は AWS への移行を加速し、VMware vSphere または VMware Cloud Foundation (VCF) から AWS へのリプラットフォームにかかる総時間を短縮できます。
VMware ワークロードを Red Hat OpenShift Service on AWS (ROSA) に移行すると、さまざまな利点があります。特にアプリケーションのモダナイゼーション、クラウドネイティブ機能の活用、運用の簡素化を目指す組織にとって有益です。ROSA に VMware ワークロードを移行する主な理由を以下に示します。
OpenShift Virtualization on ROSA の利点
クラウドネイティブアプローチ : 組織はリソース使用率の改善、より高速なデプロイメントサイクル、アプリケーション管理の合理化など、クラウドネイティブアーキテクチャの利点を活用できます。
アジリティとスケーラビリティの向上 : 従来の仮想マシンはリソースを大量に消費し、アプリケーションのスケーリングや更新に関して俊敏性が低下する可能性があります。ROSA は自動スケーリング機能を提供し、アプリケーションがワークロードの変化に動的に対応できるようになるため、最適なパフォーマンスと効率的なリソース活用が可能になります。
ライセンスコストの削減 : 組み込みの無制限の RHEL エンタイトルメントにより実現します。OpenShift Virtualization には、すべての RHEL ゲスト VM に対する無制限の RHEL サブスクリプションが含まれています。
セキュリティとコンプライアンスの強化 : ROSA は業界をリードするセキュリティ標準に準拠し、さまざまな規制要件に準拠しています。組み込みのセキュリティ制御、自動化された脆弱性管理、セキュアなマルチテナンシーなどの機能を備えており、アプリケーションとデータを保護します。
運用オーバーヘッドの削減 : ROSA を活用することで、組織はインフラストラクチャのプロビジョニング、スケーリング、メンテナンスなどの多くの運用タスクをマネージドサービスにオフロードできます。この運用オーバーヘッドの削減により、チームは複雑なインフラストラクチャの管理ではなく、ビジネス価値の提供に集中できます。
従量課金制 (Pay-As-You-Go) : 使用したリソースに対してのみ支払うことができます。ROSA に移行することで、従来のデータセンターモデルにありがちな多額の先行投資の必要性が軽減されます。
VM ワークロードの高可用性 : OpenShift および AWS アベイラビリティーゾーンの組み込み機能により実現します。アベイラビリティーゾーン間の VM への接続を簡素化するために、Elastic Load Balancing (ELB) を活用できます。
ディザスターリカバリー機能 : AWS のグローバルインフラストラクチャとサービスを活用して、地理的に分散した AWS リージョン間で環境やアプリケーションをレプリケートすることができます。
ROSA を活用したモダナイゼーション:変革をもたらすメリットを解き放つ
従来、VM ベースのアプリケーションをクラウドに移行し、コンテナ化したいお客様は、進め方の選択肢が限られていました。たとえば、VMware のワークロードを Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) 上で実行するように変換するなど、同様のコンピューティングプラットフォームへのリフト&シフトによる移行を行うことができます。この段階でお客様はクラウドに移行し、AWS クラウドの利点を得られますが、アプリケーション自体はメリットを得られません。
コンテナを利用するには、お客様はモダナイゼーションの取り組みに着手し、VM ベースのアプリケーションをマイクロサービスに分解し、コンテナとしてデプロイし、最終的に新しくコンテナ化されたアプリケーションを選択したコンテナプラットフォームに移行する必要があります。
お客様に別の簡単な選択肢、つまり VM をクラウドとコンテナプラットフォームに直接移行できる選択肢があったらどうでしょうか。
ここで OpenShift Virtualization と ROSA が役立ちます。OpenShift Virtualization は、アップストリームプロジェクトの KubeVirt に基づいており、これによりお客様は Kubernetes 内でネイティブリソースとして VM を実行できます。コンテナに利用可能なすべての機能や特徴が VM に拡張されるようになりました。コンテナ化されたアプリケーションがサービスメッシュを使用している場合、VM をそこに追加できます。サービスオブジェクトを定義してコンテナを公開する方法と同様に、VM へのトラフィックを公開して負荷分散します。さらに、オンデマンドで VM リソース (CPU/MEM) の垂直スケーリングや VM のライブマイグレーション機能などの追加機能もあります。
ROSA は、同じプラットフォーム上で VM とコンテナの両方を管理できる機能を提供します。これにより、VM ベースのアプリケーションをマイクロサービスに分解し、移行の手順を減らすことができます。 変換できない VM の場合、またはライセンスなどの理由でVM として残す必要がある場合でも、ROSA からアプリケーション中心のメリットをすべて享受できます。コンテナと VM の両方に単一画面と共通のツールセットを使用することで、運用オーバーヘッドを削減できます。
ROSA 上の VM をモダナイゼーションする手順
移行プロセス全体を通して、アプリケーション開発者、オペレーション担当者、セキュリティ専門家など、さまざまな部門の関係者を関与させることが重要です。このような協業的なアプローチにより、移行が効率的に実行され、結果として得られる環境が組織の目標と要件に沿ったものになります。
さらに、クラウド移行とモダナイゼーションプロジェクトに特化した Red Hat と AWS パートナーの専門知識を活用することをお勧めします。これらのパートナーは、移行プロセスを円滑化し、成功を確実にするための貴重なガイダンス、ベストプラクティス、実践的な支援を提供できます。
VMware VM を ROSA に移行およびモダナイズする際の高レベルの手順を次に示します。
計画と評価 : 移行対象のアプリケーションまたはワークロードを特定し、優先順位付けをします。アプリケーションのアーキテクチャ、依存関係、リソース要件を評価します。移行に伴う潜在的な課題やリスクを評価します。
アプリケーションのコンテナ化 : アプリケーションをコンテナ化の原則とベストプラクティスに従うようにリファクタリングまたは再構築します。アプリケーションとその依存関係をコンテナイメージにパッケージ化します。コンテナ化されたアプリケーションが十分にテストおよび検証されていることを確認します。
インフラストラクチャのセットアップ : Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC)、サブネット、セキュリティグループなど、AWS 上に必要なインフラストラクチャをプロビジョニングします。AWS Marketplace の Red Hat OpenShift Serviceリストを通じてサブスクライブしデプロイすることで、ROSA クラスターをデプロイおよび構成します。アプリケーションで必要な追加の AWS サービス (データベース、キャッシュ、メッセージングシステムなど) をセットアップします。
アプリケーションのデプロイメント : コンテナイメージを OpenShift クラスターからアクセス可能なコンテナレジストリにプッシュすることで行います。必要な Kubernetes リソース (Deployment、Service、ConfigMap など) を定義して適用し、OpenShift にアプリケーションをデプロイします。必要に応じてネットワーキング、ストレージ、その他のリソースを構成します。VMware VM を ROSA Virtualization にシームレスに移行するには、OpenShift Virtualization on AWS ブログの情報に従ってください。
テストと検証 : デプロイされたアプリケーションを徹底的にテストし、新しい環境で期待どおりに機能することを確認します。さまざまな負荷条件下でのパフォーマンス、スケーラビリティ、および復元力を検証します。セキュリティとコンプライアンスのチェックを行い、組織のポリシーと規制要件を遵守していることを確認します。
モニタリングとメンテナンス : アプリケーションとインフラストラクチャのパフォーマンスを可視化するため、モニタリングとロギングソリューションを実装します。OpenShift 上のアプリケーションの継続的なメンテナンス、更新、スケーリングのためのプロセスを確立します。ローリングアップデート、ロールバック、自動スケーリングなどの OpenShift 組み込み機能を活用し、アプリケーションライフサイクル管理を合理化します。
まとめ
企業は、コンテナ化によってもたらされるメリットやその影響力、および ROSA のクラウドネイティブ機能を活用することで、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを加速し、イノベーションを促進し、ますます競争が激しくなる市場で優位に立つことができます。慎重に計画し、ベストプラクティスを遵守し、経験豊富なパートナーと協力することで、移行における課題と複雑さを最小限に抑えることができます。
さらに詳しく知りたい場合は、AWS または Red Hat のアカウントチームにご連絡いただくか、AWS Red Hat パートナーチームに電子メールをお送りいただくか、近くで開催される OpenShift Virtualization ロードショー の日程をご確認ください。(訳註:日本ではエンドユーザー様を対象に 2024 年 11 月 15 日 14:00-16:00 に開催が予定されています。)
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本稿の翻訳は Partner SA の豊田が担当しました。