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Marinus Analytics の共同創業者 Emily Kennedy と Cara Jones による性的人身売買と戦うための AI 利用方法

10 代の若者がヨーロッパを旅している間に新しい物の見方を身に付けて帰国することがよくあります。Emily Kennedy が旅に出たのは 16 歳のときでしたが、物の見方が変わったうえに、生きる目的まで得ることになりました。旅は、彼女が夢にも思わなかったキャリアパスへと導きました。それは、人身売買との戦いです。彼女は自分の会社 Marinus Analytics を介して、人工知能を利用して被害者および人身売買業者の特定を支援するツールで法的処置を支えています。

「東欧では路上で物乞いする孤児をよく見かけました。その子たちがその日に稼いだお金をロシアンマフィアがむしり取るのです。子どもたちが一日のノルマを稼げないと罰が待っています」と、彼女は言います。「こんな人身売買が現実にあったことがショックでした。そして、似たような虐待はアメリカ国内でも起こっていることを知ったのです。特に、性的人身売買です」

話は少し先に飛びますが、Kennedy はピッツバーグのカーネギーメロン大学に進み、倫理学、歴史学、公共政策を学び始めました。「性的人身売買の助長にインターネットがどういうふうに使われているかがわかってきました」と、Kennedy は Craigslist やその後の Backpage.com にも言及します。「非常に複雑な犯罪で、この問題に関心を持ちました。これに取り組みたいと思ったのです」

彼女は、小さいことから始めました。ピッツバーグのマッサージパーラーの人身売買調査に対して法的処置のためのより大きな権限を与える地方条例が適用されるように活動したのです。「その時点では、人身売買をテーマにした自分の論文のために、法執行機関にインタビューを始めたところでした」と、Kennedy は言います。「人はみんな町や州を越えて移動するし、時間がたてば電話番号も変わると聞きました。でも、それを教えてくれるデータがありません。被害者を追跡して救い出すためのオンラインデータがあったら、本当に便利だと思いました」

彼女はこの「シンプルなアイデア」を追求する前に、まず自分の論文を仕上げる必要がありました。彼女は指導を受けるために、大学の Robotics Institute の Auton Lab の責任者 Artur Dubrawski 博士を訪ねました。「私は基本的には単独行動をやめて、アイデアを先生に投げかけました。彼はインスピレーションを得たようでした」と、彼女は言う。「優秀な研究者やプログラマーとつながりができて、アイデアを実行に移すことができるようになりました」

Marinus Analytics の Emily KennedyKennedy は卒業後の 2 年間はリサーチアナリストとして大学に残りました。彼女によれば、「私たちがやっていることに興味を持ってくれた法執行機関や他の政府機関から良い感触を得ていたから」というのがその理由です。そして、2013 年になって、Marinus Analytics のフラッグシップスイートとなるべき人工知能ツールが誕生しました。Traffic Jam と呼ばれるそのツールは、捜査官が性的売買に関係する電話番号、所在地、テキスト、画像といった一般に入手可能なデータを分析して、被害者を特定できるようにします。

最初の問題は、法執行機関がサブスクリプションベースのサービスとして利用できる Traffic Jam がツールとして有用であることを関係者に納得させることでした。「私の年齢、女性が男性優位社会に飛び込むことなど、私が乗り越えなければならない壁のようなものがいくつかありました」と、Kennedy は言います。「その技術がどんなに優れていて、ユーザーにとって重要であっても、私には彼らが信用するに値するものが足りないということがわかるのに時間がかかりました。大切なのは、生み出す価値です。データを手動でふるいにかけていた時間を、何時間も、何日も、何週間も省けることを見せてあげられるというのに」

Dubrawski 博士が Kennedy を コンピュータエンジニアの Cara Jones に引き合わせてくれたのはそんなときでした。博士は彼女が Traffic Jam を (ということは必然的に、Marinus Analytics を) より実践的にできると確信していました。その第一歩とは何か。資金調達です。「適切なファンディングと従来の研究機関の基礎研究におけるファンディングを比較検討することから始めました」と、Jones は言います。彼らは最終的に、大学が開発したテクノロジー製品の商業化支援を目的とした NSF I-Corps プログラムに参加し、DARPA、National Science Foundation、Bank of New York Mellon から資金提供を受けました。

Marinus Analytics はそれ以降、政府機関向けの非構造化データの可視化や、AI ツール活用促進を目的としたクラウドへのデータ移行を検討する政府機関の支援といったほかのサービスの提供も手がけるようになりました。彼らは 2017 年に Amazon の AWS Rekognition を組み込んで大きな成果を出し、引き続き Traffic Jam を前進させています。「私たちがリリースしたときにちょうど、ソーシャルメディア上のオンラインアクティビティを調べ上げて、何週間もかかって 1 人の未成年者を救おうとしていた捜査官がいました」と、Jones は言います。「私たちが彼女の行方を見つけるのにかかった時間は、たった数秒です」捜査官は顔認識ツールを使用するために、被害者の写真をアップロードして、システム内のデータと一致するものがないか調べます。広告を指でスクロールしていたことに比較したら想像もできないような進歩です。

こんな邪悪なテーマに取り組みながら前向きでいられた理由を Kennedy に尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。「リサーチャーだったころは、こう思っていました。この仕事を通じて人身売買の被害者という人生から自由になるチャンスをあげられるのがたった 1 人だったとしても、それだけでもこの仕事には価値がある。今は会社という形で活動していますから、日々優先順位の高い仕事が他にもあるし、ストレスもあります。そんなときでも、いつもあのころの初心に返ることにしています。私たちが助けようとしているのがたった 1 人であっても、この仕事には最終的に意味があるのです」

 

このブログの作者:ミシェル・クン – Michelle Kung

ミシェルは、AWSのスタートアップマーケティングチームに所属し、コンテンツ制作を率いています。AWSに参加する前は、Index Venturesのコンテンツリードとして活躍していました。それ以前には、The Wall Street Journalにおける貴社および編集者を経験、Huffington Postのビジネス記事編集者、THe Boston Globeの特派員、Publisher’s Weekでのコラムニスト、Entertainet Weeklyにおけるライターの経験を持っています。