AWS Startup ブログ
検索機能を充実させサービスの UX を向上。「おむすびチャンネル」の Amazon OpenSearch Service 活用
「おむすびチャンネル」は、会員同士がリアルタイムで交流できるライブ配信・視聴機能を中心として、動画や記事の投稿・閲覧やグループチャット・ダイレクトメッセージ、投げ銭などの機能を活用できる有料会費制のデジタル・メンバーシップ・プラットフォームです。「世界各地で日本語を学ぶ外国の方々」「海外にお住まいの日本人の方々」「国際経済や国際情勢に精通する方々」などが配信者として発信している国際色豊かなプラットフォームとなっています。
かつて「おむすびチャンネル」には、ユーザーやコンテンツの検索機能がありませんでした。ですが利便性を向上させるため、OpenSearch クラスターのデプロイ、オペレーション、スケーリングを容易にするフルマネージドサービス Amazon OpenSearch Service によって検索機能を実現したのです。
今回はアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャーの菅野 菜美子が、「おむすびチャンネル」を運営する株式会社FJC 代表取締役社長の岡本 広樹 氏と執行役員の竹田 嶺 氏にお話を伺いました。
信頼性の高い、有料会費制のデジタル・メンバーシップ・プラットフォーム
菅野:FJC 社が提供するサービスの概要を教えてください。
岡本:私たちは「おむすびチャンネル」という、ライブ配信・視聴機能を中心としたデジタル・メンバーシップ・プラットフォームを運営しています。「おむすびチャンネル」の特徴は、課金して利用するクローズドなコミュニティであることです。有料会員数は 2023 年 3 月時点で 17,000 名ほどで、クローズドではありますがそれなりの規模になっています。
ここでは長所として特に 2 点を挙げてご説明します。まずは、プラットフォーム内で誹謗中傷やヘイトスピーチなどのトラブルが発生しないように徹底的に管理している点。もうひとつが、日本語を勉強する外国人や海外在住の日本人の方などが発信したことを、それらの外国に関心のある方々が視聴して有益な情報を学べる点です。現在、約 90 カ国から 1,000 名を超える配信者が発信をしています。
近年、「おむすびチャンネル」内では「世界や日本の経済」「働き方や暮らし方」といったコンテンツへの需要が高まっています。クローズドなプラットフォームだからこそ、そうした「センシティブだけれども、知見のある方々の意見を聞きたいテーマ」を議論したり学んだりする場として有効に機能しているのだと思います。
2023 年 3 月 7 日にはビジネス系インフルエンサーである田端 信太郎 氏が「おむすびチャンネル」のコミュニティ・プロデューサーに就任しました。3 月 20 日には新たな配信カテゴリーとして、就職や転職、独立などの議論を行う「キャリア枠」を導入しました。田端氏の参画やキャリア枠の導入により、さらに魅力的なプラットフォームになっていくことを期待しています。
また、弊社は従業員・業務委託員の約 8 割が、IT エンジニアです。昨今、Generative AI や Web3.0 など、IT 領域の話題が目立つなか、「おむすびチャンネル」でも IT 領域のテーマを作っても面白いかもしれないと考えています。
菅野:御社はロシア侵攻によるウクライナ避難民の急増を受けて、2022 年 4 月から「おむすびチャンネル」のスキームを活かし、ウクライナ避難民に新たな収入機会の提供を行っていますよね。こちらについてもお話しください。
岡本:「おむすびチャンネル」内で行っているウクライナ避難民への支援は、主に次の内容になります。
●ウクライナ避難民による英会話プロジェクト
日本国内や諸外国に避難するウクライナの方々には「日本に興味を持っているが、日本語を話すことができない」という人がいます。そうした方々は多くの場合、日本語は話せなくとも英語なら話すことができます。
FJC 社はそうしたウクライナ避難民の方々が「おむすびチャンネル」に配信者として登録し、英語で配信することにより新たな収入を得られるスキームを構築しています。ウクライナ避難民に限り、投げ銭などによる成果型報酬に加えて配信時間による報酬を付与し、万が一、成果型報酬が少ない場合でも一定額の収入が得られるようにしてきました。
なお最近は、FJC 社の社員や業務委託員に対する福利厚生と絡めたウクライナ避難民支援もしています。英語の得意なウクライナ避難民配信者に対してFJC 社の英語教師としての報酬をお支払いし、社員や業務委託員は一対一の英会話レッスンを無料で受けることができる、というものです。社員などへの福利厚生とウクライナ避難民への収入支援を両立させています。
●「おむすびチャンネル」におけるウクライナ避難民支援活動
「おむすびチャンネル」ではリリース当初から、ウクライナ在住の日本語を学習するウクライナ人が配信者として参加していました。ウクライナ情勢悪化に伴い、FJC 社は当該ウクライナ人配信者の安否確認、国外避難、日本への渡航支援、ならびに、日本での生活面の支援を行っています。
また、ウクライナ周辺国にいる在留邦人(「おむすびチャンネル」配信者含む)と協力し、ウクライナ避難民の日本への受け入れに関連した日本側からの情報提供、受け入れ体制構築のための支援も実施しています。
岡本:弊社のビジネスモデルは“コミュニティ”です。会員の方々も、自分の帰属するコミュニティが社会的に意義のある活動をしてくれたら、そのことを誇りに思って頂けるかもしれません。また、コミュニティとしての安心感や健全性の向上にもつながるはずです。
当社はウクライナ避難民支援のみならず、日本語教育振興や地方創生など、自分たちが手の届く範囲で社会的に意義のある活動に取り組んでいます。事業の成長とともに、社会貢献を拡大させていきたいと考えています。
株式会社FJC 代表取締役社長 岡本 広樹 氏
Amazon OpenSearch Service ならば検索機能を簡単に実現できる
菅野:Amazon OpenSearch Service を導入することを決めた経緯を教えてください。
竹田:私たちは、フルマネージドの NoSQL データベースサービスである Amazon DynamoDB を用いて、配信者の情報を管理しています。しかし、Amazon DynamoDB はパフォーマンスに優れているものの柔軟性の高い検索はできないことから、当初は「おむすびチャンネル」に検索機能そのものが存在しなかったんです。
そのため、会員様が「おむすびチャンネル」内で特定の配信者や他の視聴者、関心のあるコンテンツを探したくても、その情報になかなか到達できないことが大きな課題でした。検索機能の実現手段について開発メンバーが一丸となってディスカッションする過程で「Amazon OpenSearch Service を使えば、容易に実現できるのではないか」という案が出ました。調べてみると確かに Amazon OpenSearch Service が有効そうだとわかり、導入を決めました。
もし仮に Amazon OpenSearch Service を使用しなかったならば、意図したデータを Amazon DynamoDB から取得するために複雑なクエリを書かなければならなかったはずです。実装のコストがかなりかかりますし、メンテナンスも難しくなります。ですが、Amazon OpenSearch Service は容易に導入できましたし、ユーザー名やカテゴリ、タグなどでの検索が柔軟にできるようになりました。
菅野:検索機能を実装されてから、ユーザーからの反応が変わった部分はありますか。
竹田:「おむすびチャンネル」ではこれまで、配信者および視聴者が対面で交流する機会を創出するため、オフラインイベントを積極的に開催してきました。そうしたイベント後に、ユーザーが「おむすびチャンネル」内の検索機能を使って、オフラインで会った人々とつながりやすくなったと聞いています。これが結果的に、サービス利用時間の増加や解約率の低下などにつながっています。
岡本:また、検索機能の導入によってカスタマーサポートの負担も減りました。検索機能を使うことで、ユーザー自身が必要な情報にすぐたどり着けるようになり、関連する問い合わせの数が相対的に減少したためです。
菅野:FJC 社と同じようなアーリーフェーズのスタートアップ企業の方々に向けて、何かコメントはありますか。
岡本:私たちもまだまだアーリーフェーズではありますが、サービスを改善するうえでは、やはり積極的にユーザーの声を聞くことが大切だと考えています。当社は、先ほど述べたオフラインイベントを頻繁に設け、運営として積極的に会員様とコミュニケーションを取り、ヒアリングを続けてきました。その結果、「おむすびチャンネル」内での検索機能のニーズがかなり高いことがわかり、今回の事例に至りました。
当然、検索機能以外にも、会員様とのコミュニケーションやヒアリングから実装された機能や取り組みが多々あります。地道にユーザーの意見を拾い上げることが、事業やサービスの改善につながっていくのではないかと思います。
株式会社FJC 執行役員 竹田 嶺 氏
積極的に AWS を活用し、サービス改善に結びつけたい
菅野:AWS 関連で今後さらに改善したいことはありますか。
岡本:コスト削減ですね。サービスの拡大に加えて円安の影響もあり、インフラにかかるコストが大きくなっています。そういった意味では、AWS の社員の方々から、コストを減らすための施策を積極的にご提案いただけることで非常に助かっています。
菅野:私たち AWS は「ユーザーの事業が成長すること」を最優先に考えています。インフラのコストを削減すると AWS 側の売り上げは短期的には減りますが、その結果としてスタートアップ企業のビジネスが成長すれば、中長期的に見て Win-Win の関係性になりますから。
岡本:AWS の社員の方は、すごく親身になって相談に乗ってくれるのも良い点です。どのような連絡をしても、かなりスピーディーに返答をしてくれます。スタートアップ企業は基本的に時間が勝負です。だからこそ、AWS の柔軟な対応にとても感謝しています。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップアカウントマネージャー 菅野 菜美子
菅野:今後、事業やシステムをどのように発展させたいですか。
岡本:事業面では、取り扱う話題のカテゴリの幅を広げていく一方で、プラットフォームとしての健全な文化を守ることを最優先にしたいです。だからこそ、事業の急拡大を狙うというよりも、良質なコミュニティを維持していく方向性で運営していきます。
竹田:システム面では、各種のデータを分析してさまざまな施策を実施したいです。たとえばユーザーの配信履歴のデータなどを Amazon OpenSearch Service で分析することで、「より多くのユーザーに視聴してもらえる配信の傾向を割り出す」などの施策が可能になると考えています。
岡本:それ以外にも、ライブ配信に関連する AWS のサービスを積極的に利用したいです。たとえば先日に AWS のソリューションアーキテクトに提案してもらったのが、機械翻訳ができる Amazon Translate や文字起こしができる Amazon Transcribe を活用することでした。
「おむすびチャンネル」内でユーザーが英語で配信する場合、現状では英語のわかる人しか内容を理解できないため、視聴者は限定的になってしまいます。ですが自動翻訳や自動文字起こしができると、視聴者層がより広がります。
そうした機能を積極的に実装していくことで「おむすびチャンネル」を外国語や国際教養を効果的に学べる場にしていきたいです。そして、(サービス名が「おむすび」というだけに)世界のより多くの方々がムスばれるプラットフォームにしていきたいです。
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