ナカの人に聞いてみた ~
クラウドコンタクトセンターを簡単セットアップ !
米倉 裕基, 清水 幸典
builders.flash 読者の皆様こんにちは。
テクニカルライターの米倉 裕基と申します。
「ナカの人に聞いてみた」と題した本シリーズは、実際に AWS で働くソリューションアーキテクトの皆さんに、各種 AWS サービスの機能や利点を聞いてみようというインタビュー形式の記事になります。
第 5 回のゲストは Amazon Connect スペシャリストソリューションアーキテクトとして活躍されている清水 幸典 (しみず ゆきのり) さんです。
本記事では、AWS が提供するクラウドベースのコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」の魅力や機能について語っていただきます。
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米倉 裕基
こんにちは、清水さん。
この度は、第 5 回「ナカの人に聞いてみた」のゲストとしてインタビューをお引き受けいただきありがとうございます。
清水 幸典
米倉さん、よろしくお願いいたします。
米倉 裕基
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、インタビューを始めるにあたって、清水さんの自己紹介をよろしくお願いします。
清水 幸典
はい。
はじめまして、清水 幸典 (しみず ゆきのり) と申します。
2020 年にパートナーソリューションアーキテクトとして AWS Japan に入社しました。
入社当初は、大手 SIer パートナー様をご支援するロールを担っていましたが、ある案件で Amazon Connect に深く関わったことをきっかけに、Amazon Connect のスペシャリスト SA に異動しました。
私の所属するチームでは、お客様の従業員体験と顧客体験の向上を目指し、ビジネスの拡大をサポートしています。
単に Amazon Connect への技術的な支援だけでなく、時にはコンタクトセンターや会社組織の改革に関する議論にも積極的に参加しています。
お客様の成功を促進するために、私たちは幅広い視野を持ちながら包括的なサポートを提供しています。
米倉 裕基
Amazon Connect の導入支援だけでなく、広い視野でお客様のビジネスをサポートしているということですね。
会社組織の改革ともなると、さまざまな役割と責任を持つ関係者が関わることになると思います。
十分なコミュニケーションと情報共有を通じて、お客様との間に信頼関係を築くことが重要なんでしょうね。
清水 幸典
その通りです。
私たちの目標は、単に Amazon Connect というテクノロジーの導入だけでなく、お客様との緊密なパートナーシップを築くことです。
お客様とのコミュニケーションを通じて共有の価値観を築き上げ、信頼関係を築いていくことを重視しています。
米倉 裕基
ちなみに、具体的な案件で扱ったことをきっかけにして Amazon Connect のスペシャリスト SA に異動されたということは、清水さんにとってそれだけ Amazon Connect は魅力のあるサービスだったということでしょうか?
清水 幸典
そうですね。
初めてハンズオンの手順をなぞって、1 時間程度でコンタクトセンターが出来上がったときは驚きました。
ただ、スペシャリスト SAになった直後は、Amazon Connect の技術面はキャッチアップできても、コンタクトセンターの運用や関連する知識はほとんどありませんでした。
特にお客様と直接会話する場面では、大きな不安を感じてもいましたね。
米倉 裕基
Amazon Connect のサービス内容は理解したとしても、主要な導入先であるコンタクセンターに関する知見がなければ血の通った提案は難しいのかもしれませんね。
それこそご担当者様と直接の会話ともなると、前提知識の必要な専門用語が容赦なく飛び交いそうですね。
清水 幸典
はい、そのため経験豊富な同僚からの支援や、外部のコンタクトセンター勉強会への参加、時にはお客様から直接実情を教えていただくなど、さまざまな方法で知識を補っています。
以前の勤務先でもリモート会議や音声会議のソリューション提案は行ってましたが、実は電話に関する知識は不十分でしたので、例えば電話をかけた時の呼び出し音や、お話中のツーツー音はどこで鳴らしているかなど、基礎から学び直しました。
米倉 裕基
電話音の鳴る位置!
正直考えたことすらなかったです...。
Amazon Connect というと、コンタクトセンター向けのオールインワンのサービスというふんわりとした認識でしたが、実際ソリューションを提案するとなると、それだけしっかりとした基礎知識が必要になるわけですね。
Amazon Connect とは?
米倉 裕基
それでは、今回のインタビューのテーマである Amazon Connect の概要からまずは伺っていきたいのですがよろしいでしょうか。
清水 幸典
はい。
Amazon Connect は、簡単にスケーラブルなコンタクトセンターを構築できるクラウドベースのコンタクトセンターサービスです。
顧客とのコミュニケーションを強化するために、音声、チャット、メールなど複数のチャネルをサポートしています。
AI (人工知能) や ML (機械学習) を活用し、自動音声応答や自動応答チャットボットなどの機能を提供することで、顧客対応の効率と品質を向上させることができるサービスです。
Amazon Connect の製品ページ
米倉 裕基
個人的にコールセンターという用語の方が馴染みがあるのですが、コンタクトセンターとコールセンターは別物なんでしょうか?
清水 幸典
コールセンターは、主に電話での顧客対応に特化した拠点です。
一方コンタクトセンターでは、電話だけでなくメールやチャット、ソーシャルメディアなど、さまざまなチャネルを通じて顧客とコミュニケーションを行います。
顧客は自分が便利と思う方法でコンタクトセンターに連絡することができ、問題解決や情報提供などのサポートを受けることができます。
米倉 裕基
なるほど。
それで、Amazon Connect はコンタクトセンターサービスとして、複数のコンタクトチャネル、いわゆるオムニチャネルをサポートしているというわけですね。
清水 幸典
その通りです。
ところで、米倉さんも何か手続きが必要な場合や問い合わせがある際、電話やチャットを使ってコンタクトセンターを利用することは日常的によくあるかと思います。
ただ、オペレーターに繋がるまでに何十分も待たされたり、何度も同じことを説明しなければならず不満がたまったり (あるいは爆発してしまったり) したことはありませんか?
米倉 裕基
そ、そうですね。
正直言って「全くない」とは言えないかも...。
清水 幸典
顧客体験の向上を実現するためには、具体的に何から始めれば良いのか迷うことがあると思いますが、実は誰もが経験したことのあるような不満が良い足がかりになります。
多くのお客様に共通する不満を解消し、素晴らしい顧客体験を提供するためには、どのような取り組みが必要かを考えることが第一歩です。
米倉 裕基
なるほど。
それが顧客体験向上の最初のステップとなるわけですね。
では、先ほどの電話口での待ち時間などのケースで言うと、具体的にはどのような改善案が考えられますか?
清水 幸典
例えば、電話口での待ち時間を短縮するためには、簡単な用件であれば、自動応答ボットが対応することができるでしょう。
また、顧客に同じ説明を何度もさせないためには、顧客データベースと連携し、前回の問い合わせ内容を表示することも有効ですね。
米倉 裕基
ふむふむ。
そうやって技術的にお客様の不満を解消していくわけですね。
清水 幸典
ただ、ここで注意しなければいけないのは、お客様の不満だけでなく、コンタクトセンターで働くオペレーター側にも抱えている課題がある点です。
オペレーターは、お客様の要件を丁寧にヒアリングして問題を特定し、素早く解決する必要があるとても難しい仕事です。
特に、商品のサポート窓口では、お客様がイライラしたり焦っている状態で電話をかけてくることがあり、要件をヒアリングするだけでも困難なことがありますし、クレーム対応であればなおさら時間がかかることもあります。
それに、一つの問い合わせが終わっても、迅速に結果をまとめてシステムに登録し、次の問い合わせに対応しなければなりません。
負担の多いオペレーター業務
米倉 裕基
改めて考えてみると、本当に大変なお仕事ですね。
清水 幸典
一般的にストレスの多い現場ですので、オペレーターの離職率は高く、どのコンタクトセンターも採用に頭を悩ませています。
そのため、オペレーターの負荷を技術的な側面から軽くし、従業員体験を向上させることも非常に重要なんです。
米倉 裕基
顧客体験だけでなく、コンタクトセンターで働くオペレーターの従業員体験の向上にも配慮することが大事なんですね。
清水 幸典
お客様が感情的にならずに話してくれればオペレーターは迅速に問題を特定できますし、オペレーターが気持ち良い対応をすればお客様も落ち着いて話せますよね?
このように、顧客体験と従業員体験は切り離せないものであり、お互いに影響を与える重要な要素なんです。
米倉 裕基
興味深いお話ですね。
通常、サービスの改善という点では、顧客体験ばかりに焦点が当てられがちですが、実際には従業員体験の向上も欠かせない要素というわけですね。
清水 幸典
はい。
そして、こうした顧客体験や従業員体験の改革を実現するためのプラットフォームとして、Amazon Connect は最適なサービスと言えます。
Amazon Connect の導入
米倉 裕基
まずは、Amazon Connect が顧客体験と従業員体験どちらも向上できるコンタクトセンターサービスという概要の部分をご説明いただきましたが、実際にサービスを導入する際には特別なインフラの構築などが必要なのでしょうか?
清水 幸典
いいえ、必要ありません。
Amazon Connect は、AWS のフルマネージドサービスとして提供されています。
ですから、電話回線や音声設備用ネットワークの敷設、サーバーの購入などを行う必要はないんですよ。
米倉 裕基
なんとなくコンタクトセンターを構築するとなったら、何よりまず電話回線や専用線の設置から始めるというイメージがありました。
Amazon Connect は、特別なインフラの設置なしに利用を開始できるということですね。
清水 幸典
その通りです。
加えて、AWS がインフラの運用も担当しているので、メンテナンスはシステムを停止することなく行われます。
また、通信設備、サーバー、電力、データセンターには冗長性が備えられているので、単一の障害があってもシステム全体に影響を与えません。
米倉 裕基
つまり、Amazon Connect の導入時も運用時も、ユーザー側はデータセンターとの契約や、サーバーの管理などの作業が不要になるということですね。
それはすごいですね。
清水 幸典
はい。
コンタクトセンターの電話回線も含めて、AWS から提供されますので、お客様はコンソール上での設定と、AWS サポートへの手続きを行っていただければ、お客様専用の電話番号を取得することができます。
電話番号は、直通ダイヤル (DID) 番号として知られる「050」「03」や、通話料無料番号の「0120」「0800」から始まる番号から自由にお選びいただけますよ。
米倉 裕基
特別なインフラの設置も不要で、電話番号も AWS サポートから取得できるとなると、Amazon Connect の利用を始めるにあたって必要な準備は他にあるんでしょうか?
清水 幸典
利用者側で必要な設備は、PC、ヘッドセット、そしてインターネット回線です。
これらがあれば、オペレーターは自宅からでも通信環境が整っていればコンタクトセンターの業務を行うことができます。
顧客体験/従業員体験の向上
(クリックすると拡大します)
米倉 裕基
PC、ヘッドセット、インターネット回線だけですか?!
じゃあ、例えば僕が今から自宅でオペレーター業務を始めることもできちゃうわけですね。
ワゴンセールで手に入れた特価 980 円のヘッドセットは、買い直した方がいいかもしれませんが (笑)。
清水 幸典
はい、一般的な PC 環境があれば、誰でもすぐオペレーター業務を開始できますよ。
それに、コンタクトセンターの管理者も、どこにいてもオペレーターの状況を把握したり、通話のモニタリングを行うことができるんですよ。
クラウドベースのメリット
米倉 裕基
オペレーター業務だけでなく管理業務も、どこででもできてしまうんですね。
場所の制約を受けないのは、いかにもクラウドのメリットといった感じですね。
清水 幸典
Amazon Connect がクラウドベースのサービスであることのメリットは多くありますね。
一例ですが、2020 年のコロナウイルスによる緊急事態宣言下では、各所のコンタクトセンターへの問い合わせに対応するため、オペレーターにオフィスへの出社を要請せざるを得ない状況が生じました。
しかし、時世柄、オペレーター全員の出社は困難なため、十分な人数を確保することが難しく、その結果、顧客の待ち時間などの対応品質が低下するという事態を招きました。
米倉 裕基
コロナ禍では特にリモートでの問い合わせのニーズは急増したことでしょうし、加えて稼働できるオペレーターの人数が減ったとなると、多くのコンタクトセンターが苦境に立たされたのでしょうね。
清水 幸典
ただ、このような特殊な状況下においても、Amazon Connect および AWS を利用する数千の企業が、クラウドの特性を活かして、社会のニーズに迅速に対応することができました。
米倉 裕基
いざという時に安定的に稼働を維持できるのは、高い可用性と耐久性を備えた AWS クラウドの強みですね。
清水 幸典
そうですね。
加えて、システムの設定変更の容易さも、クラウドベースのメリットとして挙げられると思います。
米倉 裕基
設定変更の容易さですか。
清水 幸典
特にオンプレミスのコンタクトセンターシステムをご利用中のお客様に、Amazon Connect の機能を紹介すると、現場で設定やメッセージの内容を変更できることに驚かれることがあります。
なぜなら、一般的なコンタクトセンターシステムでは、ベンダー独自の設定を専門知識を持ったエンジニアが行う必要があり、現場から設定の変更を依頼しても、数日後にようやく変更が反映されるといったことがよくあるからです。
米倉 裕基
オンプレの場合、システムの設定一つ変えるのもそれだけ手間がかかることがあるんですね。
清水 幸典
一方、Amazon Connect ではセルフサービスのコンフィグレーションが基本となっています。
GUI 上のフローチャートで、絵を描くように直感的な操作で設定が可能です。
問い合わせフローを誰でも簡単に設定できるので、顧客体験の改善を迅速に行えますよ。
問い合わせフローのフローチャート
(クリックすると拡大します)
米倉 裕基
なるほど!
コンタクトセンターのような常に迅速な対応が求められる現場では、自分で簡単にシステムの設定変更ができるのは大きなアドバンテージになりそうですね。
AWS サービスとの連携
清水 幸典
もう一つ、Amazon Connect を利用するメリットとして、他の AWS サービスとの連携が容易である点が挙げられます。
特に、文字起こしや感情分析、自動応答ボットなどの AI サービスと連携することで、作業の効率化を図ることができますよ。
米倉 裕基
確かに!
Amazon Transcribe と連携してお客様との通話内容をテキスト化したり、Amazon Comprehend と連携して会話内容の感情分析など、さまざまな応用ができそうですね。
先ほど、オペレーターは問い合わせが終わった後、結果をシステムに登録する必要があるとおっしゃっていましたが、他の AWS サービスと連携することで、こうした定常的な作業の多くを自動化できる可能性がありそうですね。
清水 幸典
AWS の豊富なサービスセットと連携することで活用の幅が広がりますね。
実は、連携できるのは AWS サービスに限りません。
Amazon Connect は、多彩な機能を利用できる API を提供しているので、AWS 以外のサードパーティーサービスや、自社で構築した業務システム、オンプレミスの CRM (顧客管理システム) などとも連携できます。
各種 AWS サービスとの連携
(クリックすると拡大します)
米倉 裕基
API リファレンスに記載のある Amazon Connect 自体の API 以外にも、「Amazon Connect Streams」という API ライブラリが GitHub リポジトリで提供されているようですね。
清水 幸典
はい。
コンタクトセンターは、お客様からの問い合わせを受け付けるだけでなく、電話や SMS、メールを使用してお客様へ通知を送ることもあります。
その際、例えば Amazon CloudWatch で検出されたログに基づいてイベントを作って、Amazon Connect の API を使って担当者に電話でアラートを通知する仕組みを組むことが可能です。
それに、担当者が電話に出ない場合は、繰り返し電話したり、別の担当者に電話する、なんてロジックも構築できますよ。
米倉 裕基
なるほど!
他の AWS サービスとの連携や、Amazon Connect の多彩な API を使うことで、多岐にわたるユースケースに柔軟に対応できるわけですね。
清水 幸典
それに、Amazon Connect は機械音声サービスとの連携も相性が良いと思います。
米倉さんは、機械音声でキャンペーン案内やアンケートの電話がかかってきた経験はありませんか?
米倉 裕基
そうですね。
たまにそういう電話がかかってくることはあります。
清水 幸典
AWS の機械音声サービスである Amazon Polly を活用することで、自動的にそのような音声案内を配信することが可能です。
電話番号リストに基づいて順次電話を自動発信し、Amazon Polly のニューラル音声を使って任意のメッセージを一斉に配信することができます。
米倉 裕基
コンタクトセンターというと、お客様からの問い合わせを受け付ける窓口という認識でしたが、逆にコンタクトセンターからお客様に向けてメッセージを送信することもできるんですね。
清水 幸典
はい。
Amazon Connect は、電話を発信するための API (StartOutboundVoiceContact) を提供しています。
この電話発信の機能を使えば、アプリケーションから日本の電話番号を使用して自動的に発信し、必要な情報を必要なタイミングで必要な方に届けることができますよ。
もちろん、その他アイデア次第でさまざまなユースケースでお使いいただけます。
StartOutboundVoiceContact API 実行の流れ
(クリックすると拡大します)
あらゆる業種・業態・規模で利用可能
米倉 裕基
Amazon Connect の利用に適した業種・業態などはありますでしょうか?
自分のイメージでは、やはりコンタクトセンターを持っているような業界という意味で、小売業だったり、通信事業や銀行、旅行代理店などでの利用が想像しやすいのですが。
清水 幸典
いえ、Amazon Connect は、特定の業種・業態に限定されるサービスではありません。
電話やチャット等の問い合わせ窓口を持つすべてのお客様にご活用いただけます。
米倉 裕基
ううむ、なるほど。
僕自身がコンタクトセンターを持つような会社で働いた経験がないからか、特定の業界に特化したサービスと思ってしまいました。
清水 幸典
コンタクトセンターというと、どうしても「自分たちには関係ないな」と思ってしまう方が多くいらっしゃるかもしれませんが、実際にはほとんどの業種・業態において、お客様との電話窓口はありますよね。
お客様との接点を持つ業務であれば、Amazon Connect を使って最適化できるんですよ。
米倉 裕基
なるほど。
基本的にどんな会社でも、電話窓口は必要ですもんね。
清水 幸典
はい。
業種や業態に関わらず、代表電話の対応が一部の人に偏ったり、お客様の問い合わせが集中して業務に支障をきたしたり、出社制限下で電話当番のためだけに出社する必要があるなどは一般的な課題です。
Amazon Connect であれば、そういった課題を、受電業務の分散化、対応業務の均等化、在宅勤務のサポートなどで効果的に解決することができます。
米倉 裕基
では適切な利用人数の規模などはありますか?
例えば、最低 100 名以上のオペレーターを持つコンタクトセンターに適しているなど。
清水 幸典
利用人数についても特に制約はありません。
Amazon Connect は、設定の容易さ、オールインワンの機能、最低限のハードウェア、初期費用無しの従量制料金といった特徴を活かし、少数のオペレーターから 1 万人を超す大規模なコンタクトセンターまで柔軟に対応可能なサービスです。
あらゆる業種・業態・規模で活用可能
米倉 裕基
数名程度のスモールスタートでの利用から、1 万人を超える運用にまでスケール可能なんですね!
清水 幸典
もし Amazon Connect の利用が適さないケースがあるとすれば、既存のコンタクトセンターの機能をそのまま継承したい場合でしょうか。
つまり、以前のコンタクトセンターで行っていた運用や操作を完全に同じにしたい場合は、要件を満たさないこともあるかもしれません。
米倉 裕基
従来のシステムの運用や操作を再現したい、というニーズはよくあるものなんでしょうか?
清水 幸典
お客様からそのようなご要望をいただくこともありますが、その際にはより良い機能や運用をご提案しています。
例えば、スマホの機種変更をする時だって、できれば新しい機能を利用したいとは思いませんか?
コンタクトセンターをリニューアルする時だって同じだと思います。
米倉 裕基
つまり、どうせシステムを刷新するなら、新しい機能を使いたいということですね。
清水 幸典
Amazon Connect はクラウド PBX (電話交換機) サービスとは異なります。
例えば、「外出先からモバイルアプリで電話を受けたい」「社内の内線電話として利用したい」「ハードフォン (電話機) だけを使用して通話を行いたい」といった要望をお持ちの場合、Amazon Connect では適さない場合があるのは確かです。
Amazon Connect は「以前のコンタクトセンターでできたこと」をクラウドで再現するサービスではなく、むしろ「以前はできなかったけどやりたかったこと」を実現するためのサービスなんです。
Amazon Connect の利用料金
米倉 裕基
先ほど、Amazon Connect の始めやすさの理由として「初期費用無しの従量制料金」という点を挙げてらっしゃいましたが、利用料金について詳しく教えていただけますでしょうか。
清水 幸典
はい。
Amazon Connect は、お客様が利用した価値に応じて料金が発生する従量課金制を採用しています。
ちなみに、音声通話料金とチャット料金では異なる料金体系が適用されますね。
米倉 裕基
音声通話とチャットでは料金が違うんですね。
具体的にはどんな料金体系になりますか?
清水 幸典
音声通話の場合、「取得した電話番号の数」と「通話時間」に応じて利用料金が発生します。
シンプルな計算なので、もし現在の通話時間のデータがあれば、それを元に概算のコストを算出することができますよ。
具体的な料金単価は、Amazon Connect の料金表でご確認いただけます。
Amazon Connect の料金表
米倉 裕基
なるほど。
従量課金とはいえ、導入前からおおよその金額感を把握できるわけですね。
チャットの利用料金はいかがでしょう。
清水 幸典
チャット料金もシンプルで、「顧客とオペレーターが対話したメッセージ数」×「チャット料金」が利用料金となります。
米倉 裕基
チャット料金もわかりやすいですね!
おおよそのメッセージ数の見込みがつけられれば、コストの概算ができそうですね。
ちなみに、音声通話とチャット以外に必要な料金はありますか?
清水 幸典
そうですね。
Amazon Connect は、感情分析やキーワード検索を可能にする Contact Lens や顧客情報のプロファイルを作成できる Customer Profiles など、多数のオプション機能を提供しています。
これらオプション機能を利用する場合も、使用した分だけ従量課金で料金が発生しますね。
米倉 裕基
Amazon Connect 単体での利用もできるし、ユースケースに合わせてさまざまなオプション機能を追加することも可能なんですね。
公式ドキュメントを見ると、他にも Agent Workspace や Voice ID、Wisdom など、さまざまなオプション機能が提供されているようですが、従量課金制が適用されるのであれば気軽に試すことができそうですね。
清水 幸典
はい。
オンプレミスのコンタクトセンターだったら、なかなかこうはいかないと思いますよ。
通話の録音や声紋認証、入電数の予測といった機能を導入するとなれば、ハードウェアやソフトウェアに初期投資が必要になりますし、気軽に試してみるなんて使い方は難しいでしょうね。
米倉 裕基
確かに!
相応の初期投資額が必要になりそうですし、試した後に「やっぱりやめた」なんて判断はとてもできなさそうですもんね。
清水 幸典
その点、Amazon Connect は、初期費用や月額費用、最低利用期間のような制約がありません。
気軽にオプション機能を試しながら、アジャイルでコンタクトセンターを進化させることができますよ。
それに、臨時の窓口をすぐに立ち上げたり、一年の内で問い合わせが多い時期のみコンタクトセンターを立ち上げるなどの用途にも適しています。
米倉 裕基
ふむふむ。
初期投資不要かつ従量課金制なんですもんね。
それなら、コロナ禍のような急激なニーズの変化にも柔軟に対応できそうです。
清水 幸典
加えて、より多くのお客様にご利用いただいた結果を還元するため、Amazon Connect では継続的に料金の見直しを図っています。
2023 年 4 月には、0120/0800 のテレフォニー料金を 46% 引き下げました。
米倉 裕基
46% の値下げですか!
それはまた大胆な価格改定ですね。
Amazon Connect の参考資料
米倉 裕基
ここまで、Amazon Connect の機能やユースケース、利用料金など、網羅的にご説明いただきました。
最後にお聞きしたいのですが、これから実際に Amazon Connect を試してみたい、もっと機能をよく知りたいと思われる読者の方にお勧めできる参考資料などはありますでしょうか?
清水 幸典
そうですね。
手始めに動画コンテンツでサービスの概要を把握するのはいかがでしょうか?
私のチームでは、AWS Black Belt に「Amazon Connect 再入門シリーズ」という動画を複数掲載しています。
このシリーズでは、ソフトフォンの操作方法やカスタマイズ方法、コンタクトフローとは何かなどをテーマに、わかりやすい日本語の動画を提供しています。
米倉 裕基
すでにシリーズで 6 本もアップされているんですね!
動画であれば、サービスの利用イメージを掴むのにぴったりですね。
清水 幸典
それから、ハンズオンも多数公開していますので、具体的な利用手順を知りたい場合はぜひそちらもご覧ください。
実際にコンタクトセンターを構築し、電話をかけてみる基礎的なものから、個々の機能にフォーカスしたものまで幅広く提供してますよ。
Amazon Connect による基本的なコンタクトセンター
(クリックすると拡大します)
米倉 裕基
ハンズオンで、実際にコンタクトセンターの立ち上げまで体験できてしまうのはすごいですね。
清水 幸典
ぜひ実際に手を動かして、Amazon Connect を使った迅速なコンタクトセンターの立ち上げを体験してください。
米倉 裕基
僕も自分専用のコンタクトセンターを開設してみたいと思います。
清水 幸典
Amazon Connect も他のサービスと同様に、お客様の声をもとに進化を続けています。
皆様の声が Amazon Connect をより使いやすいコンタクトセンターへと進化させる一助となりますので、ぜひたくさんご利用いただき、フィードバックをお寄せいただければと思います。
米倉 裕基
ちなみにフィードバックや、導入や利用方法に関して質問したい場合はどこでできますか?
清水 幸典
まとめ
米倉 裕基
清水さん、本日は本当にありがとうございました。
これで、第 5 回「ナカの人に聞いてみた」のインタビューは終了になります。
コンタクトセンターの構築には、ハードウェアとソフトウェアの両面で入念な準備と大規模な取り組みが必要だと考えていましたが、Amazon Connect を使えば大変簡単にスモールスタートで始めることができることがよくわかりました。
最後に、清水さんから読者のみなさんにお伝えしたいことがあればお聞かせいただけますでしょうか。
清水 幸典
私は、他の AWS サービスと同様に、Amazon Connect は顧客体験と従業員体験の向上を通じて、多くの人々のストレスを軽減し、世界をより良く変えるサービスであると真剣に考えています。
Amazon Connect によって、お客様が問題を自己解決できる割合を高め、オペレーターの負担を軽減する「問い合わせのないコンタクトセンター」の実現に向けて、私たちは日々努力しています。
私自身、問い合わせ窓口に電話をかけた際に、Amazon Polly の機械音声が聞こえると、Amazon Connect を利用していただいていることがわかってとても嬉しくなります。
この記事を読んでいる皆さんにも、まずは Amazon Connect を試していただき、進化を続けるクラウド型コンタクトセンターの利便性をぜひ体験していただきたいと思います。
読者の皆さん、米倉さん、本日はどうもありがとうございました。
米倉 裕基
清水さん、改めまして本日はありがとうございました!
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参加者プロフィール
米倉 裕基
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
テクニカルライター・イラストレーター
日英テクニカルライター・イラストレーター・ドキュメントエンジニアとして、各種エンジニア向け技術文書の制作を行ってきました。
趣味は娘に隠れてホラーゲームをプレイすることと、暗号通貨自動取引ボットの開発です。
現在、AWS や機械学習、ブロックチェーン関連の資格取得に向け勉強中です。
清水 幸典 (しみず ゆきのり)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ソリューションアーキテクト
Amazon Connect のスペシャリスト・ソリューションアーキテクトとして、顧客体験/従業員体験向上に関する技術的なご支援を社内外に向けて行っています。
趣味はソロキャンプで細かな道具をついつい衝動買いしてしまうのですが、収納スペースが無くなってきたので断捨離を始めています。
AWS を無料でお試しいただけます