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Amazon AppStream 2.0 がシンプルな AppStream 2.0 Pricing Tool をリリース

このブログは2019年10月04日に Murali Rathinasamy によって投稿された “Amazon AppStream 2.0 releases a simple pricing tool” をソリューションアーキテクトの前田が翻訳したものです。

はじめに

このブログでは、 Always-on フリートおよび On-demand フリートを利用いただく際の AppStream 2.0 Pricing Tool の使用方法と、一般的な料金の例を紹介します。Elastic フリートをご検討の場合は、AWS が Amazon AppStream 2.0 での Elastic フリート機能を発表 および、AppStream 2.0 の料金ページ をご参照ください。

Amazon AppStream 2.0 はフルマネージド型のアプリケーションストリーミングサービスで、デスクトップアプリケーションを一元的に管理し、どのコンピュータにも安全に配信できます。AppStream 2.0 では、ハードウェアやインフラストラクチャの調達、プロビジョニング、運用を行うことなく、世界中の任意の数のユーザーに対応できるような拡張性を提供します。

ソフトウェアベンダーでは AppStream 2.0 を使用して GPU を多用する 3D デザインおよびエンジニアリングアプリケーションをユーザーにストリーミングし、企業は自社のアプリケーションストリーミングテクノロジーを AppStream 2.0 に置き換えています。

負荷が低くなるような夜間、週末、祝日であっても、ピークキャパシティーのプロビジョニングが必要であった既存のアプリケーションストリーミング環境とは異なり、ユーザーのストリーミングニーズを満たすためにプロビジョニングしたインスタンスに対してのみ支払う AppStream 2.0 の料金モデルはお客様に好評です。

お客様が AppStream 2.0 の料金を見積もるために、シンプルで使いやすいAppStream 2.0 Pricing Tool をリリースしました。
合計ユーザー数、1 時間あたりの実際の同時使用量、インスタンスタイプ、フリート使用率を入力するだけで、AppStream 2.0 Pricing Tool はユーザーあたりの料金を試算します。また、Always-on フリートではなく On-demand フリートを使用した場合の、予想されるコスト削減額も試算されます。どちらのフリートタイプもスケーリングポリシーを使用して、ユーザーがストリーミングしたいときに十分な数のストリーミングインスタンスを確保できるため、ユーザー (管理者) はアプリケーションの起動時間とコストのどちらを優先するかで起動タイプを選択をすることができます。ユーザーが Always-on ストリーミングインスタンスでアプリケーションを起動すると、アプリケーションはほぼ即時にロードを開始します。一方、 On-demand ストリーミングインスタンスは、ストリーミングインスタンスが起動されて使用可能になるまで、短時間 ( 90 秒程度) 待機します。Always-on ストリーミングインスタンスでは、ユーザーがストリーミングしていない場合でも、インスタンスの時間単位の料金を適用します。 On-demand ストリーミングインスタンスでは、ユーザーがストリーミングしていない場合は、稼働インスタンスの料金よりも低い停止中インスタンス料金を適用します。

AppStream 2.0 Pricing Tool では、AppStream 2.0 の使用に関連する AWS 料金の試算のみが提供され、適用される税金は含まれていません。実際の料金は、AWS サービスの実際の使用状況など、さまざまな要因によって異なります。

事前準備

AppStream 2.0 Pricing Toolの使用方法

AppStream 2.0 Pricing Tool は Microsoft Excel または OpenOffice Calc スプレッドシートとして提供されており、使用状況に関する基本情報を入力して、AppStream 2.0 環境の料金試算ができます。このスプレッドシートには、[ Price Estimator ] ワークシートと [ Usage Pattern ] ワークシートがあります。スプレッドシート内では、入力が必要なセルは明るい青色の背景で示されます。背景が灰色のセルは情報または集約値で、緑色の背景のセルは計算された試算結果です。
開始するには、Microsoft Office またはオープンオフィスを使用して AppStream 2.0 Pricing Tool を開きます。[ Price Estimator ] ワークシートで、次の情報を入力します。

  • セル B8 : 月にストリーム配信を利用されるユニークユーザーの総数。1 時間あたりの予想同時利用数は後で記入します。
  • セル B9 : 使用するオペレーティングシステム
  • セル B10 : 使用する AWS リージョン
  • セル B11 : ユーザーが使用するインスタンスタイプとサイズ
  • セル B12 : RDS SAL タイプ — 商用ライセンス込み、持ち込み可能な RDS CAL がある場合は Bring your own license ( BYOL ) 、または認定された学校、大学、および公的機関の場合は Academic license included から選択できます。RDS SAL タイプは Microsoft Windows オペレーティングシステムにのみ適用できます。Amazon Linux 2 には RDS SAL タイプがないため、「該当なし」に設定する必要があります。
  • セル B13 : 新しいインスタンスがプロビジョニングされるのを待たずに新しいユーザーがストリーミングを開始できるように、バッファ容量として維持する同時実行数の割合を入力します。

: 各セルにマウスポインタを合わせると、追加の詳細と手順を示すテキストが表示されます。

[ Price Estimator ] ワークシートにすべての情報を入力したら、[ Usage Pattern ] ワークシートに切り替えます。[ Usage Pattern ] ワークシートで、次のように入力します。

  • セル C2 : 1 か月あたりの週数を入力します。既定では、1 か月あたり 4 週間が入力されています。
  • セル C5 : 1 週間の稼働日数を入力します。既定では、1 週間あたり 5 日間が入力されています。
  • セル C7-C30 : 平日の 1 時間あたりの実際の同時実行数または推定同時実行数を入力します。特定の時間に使用されないことが予想される場合は、0 を入力します。列 D は、[ Price Estimator ] ワークシートに入力されたバッファ容量に基づいて自動的に計算されます。
  • セル C35 : 週末あたりの日数を入力します。デフォルトでは週末に 2 日間が入力されています。
  • セル C37-C61 : 週末の 1 時間あたりの実際の同時実行数または推定同時実行数を入力します。特定の時間に使用されないことが予想される場合は、0 を入力します。列 D は、[ Price Estimator ] ワークシートに入力されたバッファ容量に基づいて自動的に計算されます。

AppStream 2.0 Pricing Toolは、列 C に入力した内容と、[ Price Estimator ] ワークシートで指定されたバッファ容量の割合に基づいて、バッファインスタンスの数を自動的に計算します。

[ Usage Pattern ] ワークシートで 1 時間あたりの使用パターンを入力したら、[ Price Estimator ] ワークシートに切り替えます。AppStream 2.0 Pricing Tool は、有効な月間使用時間とバッファー時間、合計月次コスト見積もり、年間コスト見積もり、ユーザーあたりの月間実効コストの見積もりを計算します。また、AppStream 2.0 Pricing Tool では、 On-demand フリートと Always-on フリートを使用したコスト削減額を計算するため、アプリケーションの起動速度とアプリケーション配信コストのどちらかを優先するかの選択に利用することができます。

1 ユーザーあたりの月間利用時間の計算 ( effectively monthly hours per user ) を使用して、使用パターンに入力された値が、予想されるユーザー使用量と一致するかどうかをチェックできます。想定と異なる場合は、[ Usage Pattern ] ワークシートに切り替えて、1 時間あたりの使用パターンを調整します。

利用例

それでは、AppStream 2.0 価格設定ツールの使用例をいくつか見ていきましょう。

基幹業務アプリケーションのストリーミングシナリオの例

たとえば、アプリケーションストリーミングテクノロジーを使用して SAP GUI をユーザーにストリーミングする企業や、会計ソフトウェアを顧客にストリーミングしたいと考えている金融 ISV であり、AppStream 2.0 の使用料金を見積もる必要があります。インフラストラクチャはオレゴン (us-west-2) AWS リージョンに構築されており、その月にストリーミングされるユーザー数は合計 2,000 人です。アプリケーションは stream.standard.medium インスタンスタイプとサイズを使用して実行されます。平日の使用量は予測可能であるため、20% のバッファーを維持し、週末は稀に使用されます。エンタープライズにはマイクロソフトライセンスモビリティがあり、RDS CAL を AWS に持ち込みして AppStream 2.0 で使用することができます。RDS CAL の対象となるユーザーには、月額ユーザー料金は発生しません。価格見積もりワークシートの入力内容は、次のようになります。

使用パターン予想は次のようになります。

この使用パターンと環境の詳細に基づいて、AppStream 2.0 Pricing Tool は、ユーザー 1 人あたりの実質的な月額コストは Always-on フリートで 7.49 USD、On-demand フリートで 6.56 USD と見積もっています。価格見積りワークシートの一番下に、次の情報が表示されます。

グラフィックアプリのストリーミングシナリオの例

ここで、SOLIDWORKSSiemens NX のような GPUを多用するアプリケーションをフランス、ドイツ、イタリアにいる設計エンジニアにストリーミングしたいと考えているインダストリアルエンジニアリング企業であるとします。現在、エンジニアリングワークステーションを配備していますが、エンジニアは Ultrabook を使用して、作業方法と作業場所のポータビリティを求めています。このため、AppStream 2.0 GPU ベースのインスタンスを使用して、設計エンジニアに Ultrabook を提供するためのコストを見積もりたいと考えています。製品ライフサイクル管理と製品データ管理インフラストラクチャは、フランクフルト (eu-central-1) の AWS リージョンにあり、3,000 人の設計エンジニアが 1 日中散発的にストリーミングします。設計エンジニアは stream.graphics-design.2xlarge を使用して、十分な CPU、メモリ、および GPU を確保します。持ち込み可能な既存の RDS CAL がないため、AWS から購入することになります。使用パターンがよくわからないため、オンボーディングフェーズでは追加のバッファ容量を 40% 維持し、使用状況が特定されたら調整する必要があります。週末には、使用は期待していませんが、必要になる設計エンジニアのためにある程度のキャパシティを維持したいと考えています。[ Price Estimator ]ワークシートでは、次のように入力します。

使用パターン予想は次のようになります。

この使用パターンと環境の詳細に基づいて、AppStream 2.0 Pricing Tool は、Always-on フリートでは 76.36 USD、On-demand フリート では 56.30 USD と見積もっています。このシナリオでは、ユーザーが On-demand フリート でアプリケーションが起動するまで待機することで、26.3% 節約できます。これは、[ Price Estimator ] ワークシートの一番下にあります。
On-demandフリートでは 56.30 USD と見積もっています。このシナリオでは、ユーザーが On-demand フリート でアプリケーションが起動するまで待機することで、26.3% 節約できます。これは、[ Price Estimator ] ワークシートの一番下にあります。

考慮すべきその他の費用

AppStream 2.0 Pricing Tool は、ストリーミングインスタンスのコストを見積もるのに役立ちます。AppStream 2.0 環境に共通するその他の主なコストはストレージです。たとえば、AppStream 2.0 のホームフォルダまたはアプリケーション設定の永続性機能を利用した場合。または、ユーザーがデータを保存するための Amazon FSx ファイル共有 を作成した場合です。

まとめ

AppStream 2.0 を使用すると、ピークキャパシティ向けに設計されたアプリケーションストリーミング環境から、使用した分だけ課金される、動的でスケーラブルなマネージド型サービスに移行できます。また、AppStream 2.0 Pricing Tool を使用すると、ユーザー 1 人あたりのコストをすばやく見積もり、他のオプションプランと比較できます。