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Amazon SageMaker Canvas および AutoML API で時系列予測が50%高速に
Amazon SageMaker Canvas でより高速でより直感的に、時系列予測の機械学習モデルを作成できるようになりました。SageMaker Canvas は、ビジネスアナリストが機械学習の経験やコードを記述することなくマウス操作だけで、高精度な機械学習 (ML) モデルを生成できるサービスです。
SageMaker Canvasは、小売業における在庫管理のための時系列予測、製造業における需要計画、旅行やホスピタリティにおける人員計画および顧客計画、財務における収益予測、その他、正確な予測が必要となる多くのビジネス・クリティカルなユースケースをサポートしています。例えば、小売業者は需要予測によって保持する在庫量、物流、マーケティングキャンペーンの計画を立てています。SageMaker Canvas の時系列予測モデルは、高度な技術を使用して統計アルゴリズムと機械学習アルゴリズムを組み合わせ、非常に高精度な時系列予測を作成します。
本記事では、SageMaker Canvas の予測機能の強化について説明し、ユーザーインターフェイス (UI) と AutoML API を使用して時系列予測を行う方法を説明します。SageMaker Canvas UI にはコーディング不要のビジュアルインターフェイスがありますが、API を使用すると開発者はこれらの機能をプログラムから操作できます。どちらも SageMaker コンソールからアクセスできます。
時系列予測の改善
今回のリリースにより、SageMaker CanvasはAutoMLを使用して予測機能をアップグレードし、以前のバージョンと比較して、モデルの構築が最大50%、予測が最大45%高速になりました。これにより、データサイズが最大 100 MB の 750 時系列の一般的なバッチでは、モデルトレーニングの平均時間が 186 分から 73 分に、平均予測時間が 33 分から 18 分に短縮されます。また、ユーザーは Amazon SageMaker Autopilot API を通じてモデル構築関数と予測関数にプログラムでアクセスできるようになりました。同時に構築されたモデルの説明とパフォーマンス・レポートも取得できます。
以前は増分データを導入するにはモデル全体を再トレーニングする必要がありました。これは時間がかかり、オペレーション遅延の原因となっていました。SageMaker Canvas ではモデル全体を再トレーニングしなくても、最新のデータを追加して将来の予測を生成できるようになりました。モデルに増分データを入力するだけで、最新の洞察を今後の予測に使用できます。再トレーニングをなくすことで予測プロセスが加速し、その結果をビジネスプロセスにすばやく適用できるようになります。
SageMaker Canvas が予測に AutoML を使用するようになったことで、SageMaker Autopilot API を通じたモデル構築および予測が可能になり、UI と API の一貫性が確保されるようになりました。例えば、UI でモデルを構築し、次に API を使用して予測を生成するように切り替えることができます。この最新のモデリング手法により、モデルの透明性もいくつかの点で向上しています。
- ユーザーは、予測に影響を与える要因について説明可能性レポートで明確に知ることができます。これは、リスク/コンプライアンスチーム、外部規制当局にとって有益です。このレポートは、データセットのどの属性が時系列予測にどのように影響するかを解明します。インパクトスコアを使用して各属性の相対的な効果を測定し、それらが予測値を増幅するか減少させるかを示します。
- トレーニング済みのモデルにアクセスし、SageMaker エンドポイントまたは任意のインフラストラクチャにデプロイできます。
- AutoMLが選択した予測モデルや、トレーニングで使用されるハイパーパラメータについて、パフォーマンスレポートから確認できるようになります。
SageMaker Canvas UIを使った時系列予測の生成
SageMaker Canvas UI を使えば、クラウドやオンプレミスのデータソースをシームレスに統合、これらを簡単にデータセットにマージ、高精度なモデルのトレーニング、追加データを使った予測、これらをコーディングすることなく実行できます。この UI を使用して時系列予測を生成する方法を見てみましょう。
まず、SageMaker Canvas にデータを取り込みましょう。データは、PC上のファイルや、Amazon Simple Storage Servide (Amazon S3) のバケット、Amazon Athena、Snowflake など40以上のソースから取り込み可能です。データを取り込んだら、散布図や棒グラフを使って、それらを探索的に確認することができます。そして、予測対象となる目的変数や予測期間などの必須項目を設定し、すぐにモデルを作ることができます。以下は、複数店舗における売上実績データに基づいた需要予測のビジュアライゼーションの例です。
SageMaker Canvas UI での時系列予測の包括的なガイドについては、こちらのブログ記事をご覧ください。
ワークフローの自動化や アプリケーションへの直接統合が必要な場合は、API を通じて予測機能にアクセスできます。次のセクションでは、API 使用して予測を自動化する方法を説明したサンプルソリューションを紹介します。
APIを使った時系列予測の作成
API を使用してモデルをトレーニングし、予測を生成する方法について詳しく見ていきましょう。このデモンストレーションでは、企業が顧客の需要を満たすために各店舗の商品在庫量を予測する状況を考えてみましょう。API による時系列予測は、大まかに言うと以下のステップに分かれます。
- データセットを準備します。
- SageMaker Autopilot ジョブを作成します。
- Autopilot ジョブを評価します。
- モデルの精度メトリクスとバックテストの結果を確認します。
- モデルの説明レポートを確認します。
- モデルから予測を生成します。
- Autopilotジョブで生成された real-time inference エンドポイントを利用する、または
- batch transform ジョブを使用します。
Amazon SageMaker Studio ノートブックでの API による予測のサンプル
ビジネスでAPIを使ったプログラムで予測システムを手早く本番利用したいという皆さんのために、GitHub で SageMaker Studio ノートブックのサンプルを提供しています。このノートブックは、パブリックな S3 バケットでサンプルデータを提供し、上記で説明した一連の予測の流れを実行します。ノートブックでは基本的な予測APIの使い方を学習できますが、ご自身のユースケースに合わせてカスタマイズすることもできます。例えば、データスキーマや予測単位(日ごと・週ごとなど)、予測期間など、その他必要なパラメータを必要に応じて変更してください。
まとめ
SageMaker Canvasは、ユーザーフレンドリーでコーディング不要のインターフェースを提供することで、時系列予測を民主化します。これにより、ビジネスアナリストでも精度の高い機械学習モデルを作成できます。AutoMLのアップグレードにより、モデル構築が最大50パーセント、予測が最大45パーセント速くなり、モデル構築と予測機能の両方にAPIアクセスが導入され、透明性と一貫性が向上しました。再トレーニングなしで増分データをシームレスに処理できる SageMaker Canvas 独自の機能により、絶え間なく変化するビジネス要求に迅速に適応できます。
SageMaker Canvasは、直感的なUI・汎用性の高いAPIのいずれにおいても、データ統合、モデルトレーニング、予測を簡素化し、データ主導の意思決定と業界全体のイノベーションにとって極めて重要なツールとなっています。
詳細については、ドキュメントを確認するか GitHub リポジトリにあるノートブックをご覧ください。SageMaker Canvas を使用した時系列予測の利用料金は、SageMaker Canvas 料金ページでご覧いただけます。SageMaker Autopilot API を使用する場合の SageMaker トレーニングおよび推論の料金については、SageMaker 料金ページを参照してください。
これらの機能は、SageMaker Canvas と SageMaker Autopilot が一般公開されているすべての AWS リージョンで利用できます。リージョンの可用性の詳細については、「リージョン別の AWS サービス」を参照してください。
著者について
Nirmal Kumar は Amazon SageMaker サービスのシニアプロダクトマネージャーです。AI/MLへのアクセスを拡大することに尽力し、ノーコードおよびローコードのMLソリューションの開発を主導しています。仕事以外では、旅行やノンフィクションの読書を楽しんでいます。
Charles Laughlin は、AWS の Amazon SageMaker サービスチームで働くプリンシパル AI/ML スペシャリストソリューションアーキテクトです。サービスロードマップの策定を支援し、さまざまな AWS のお客様と日々協力して、最先端の AWS テクノロジーとソートリーダーシップを発揮してビジネスの変革を支援しています。チャールズはサプライチェーン管理の修士号とデータサイエンスの博士号を取得しています。
Ridhim Rastogi は、AWS の Amazon SageMaker サービスチームで働くソフトウェア開発エンジニアです。彼は、AI/ML を通じて現実世界の問題を解決することに重点を置いた、スケーラブルな分散システムの構築に情熱を注いでいます。余暇には、パズルを解いたり、フィクションを読んだり、周囲を探索したりするのが好きです。
Ahmed Raafat は AWS のプリンシパルソリューションアーキテクトで、20 年のフィールド経験を持ち、5 年間は AWS エコシステムに携わってきました。彼はAI/MLソリューションを専門としています。彼はさまざまな業界で豊富な経験を持っており、多くの企業顧客の信頼できるアドバイザーとなって、クラウドへの移行のシームレスなナビゲーションと加速を促進しています。
John Oshodi は、英国ロンドンを拠点とするアマゾンウェブサービスのシニアソリューションアーキテクトです。彼はデータと分析を専門としており、多数の AWS 企業顧客のテクニカルアドバイザーを務め、クラウドへの移行をサポートし、加速させています。仕事以外では、新しい場所に旅行したり、家族と一緒に新しい文化を体験したりすることを楽しんでいます。
この記事の翻訳はソリューションアーキテクトの横山誠が担当しました。原文はこちらです。