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AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)– お客様の大規模なリホスト移行やクラウドネイティブ移行、中小規模のクラウド移行を支援する、新たな包括的クラウド移行支援プログラム
みなさん、こんにちは。マイグレーションスペシャリストの富松です。
AWSジャパンでは、AWSへの大規模なシステムの移行を実現し、ひいてはお客様のデジタルトランスフォーメーションをサポートする 「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」を2021年にリリースし、2022年には内容を強化・拡大した「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ2.0(ITX2.0)」をリリースしました。今回のブログでは、ITXパッケージ2.0をより包括的なものへと進化させ、2023年4月にリリースした「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)」をご紹介します。(ITX 2023の資料ダウンロードはこちらから)
ITXパッケージ2.0(2022年版)のおさらい
AWSジャパンでは、2021年にITXパッケージをリリース以来、170社(2023年4月現在)を超える多くのお客様にご活用頂き、企業のITトランスフォーメーションを支援してきました。ITXパッケージ2.0では、マイグレーションプロジェクトを評価(Assess)フェーズ、準備(Mobilize)フェーズ、移行&モダナイゼーション(Migrate & Modernize)フェーズに分け、各フェーズで次のサービスを提供していました。
(1) 評価フェーズ
- クラウド利用の経済的合理性評価、およびAWS移行後のCO2排出削減量の試算
- クラウド利用における準備状況のアセスメント
(2) 準備フェーズ
- お客様社内のAWSコア人材育成のためのトレーニング(Solution Architect Associateレベルを目指すトレーニング)
- AWSジャパンがお客様と伴走してパイロットプロジェクトを進めながら、移行手法、組織変革、カルチャーチェンジを進める体験型ワークショップ(Experience-Based Acceleration=EBA)
- プロフェッショナルサービスによるCCoE立ち上げ、移行計画作成、ガイドライン作成支援など
- ソリューションアーキテクトによる移行アーキテクチャ、移行方式のレビュー支援
- お客様へマイグレーションのベストプラクティスを提供するCustomer Solutions Manager(=CSM)をお客様担当としてアサインし、プロジェクトの円滑な進行をサポート
(3) 移行&モダナイゼーションフェーズ
- 利用料の一定割合をクレジットで還元するMAP2.0により、大規模で長期に渡るクラウド移行において、お客様がプロジェクトを速やかに立ち上げ、軌道に乗せることをサポート
- IT Divestにより、IT機器の買い取りサービスパートナーを仲介し、IT機器の買い取り、撤去とリサイクル、環境に配慮した廃棄をサポート
- AWS利用実績にもとづいたCO2排出削減量のモニタリング、分析、将来予測が可能なAWS Customer Carbon Footprint Toolの提供
ITXパッケージへのお客様からのご要望
上記のような各フェーズでのご支援策は好評を頂いていましたが、2022年にご提供したいくつかのお客様から、改善すべき課題やニーズをお聞きする事がありました。
1つ目は、全社的なクラウド人材の育成を求める声です。クラウド導入においては、クラウド推進組織(Cloud Center of Excellence=CCoE)と呼ばれるクラウド導入の専門チームを社内に作り、プロジェクトの主導的役割を担っていくことがベストプラクティスです。ITXパッケージ2.0で提供する人材育成トレーニングは、このCCoEのコア人材育成を目的としていました。しかし、CCoEのコア人材育成にとどまらず、全社的なクラウド人材の育成を支援して欲しい、という声を頂きました。
2つ目は、クラウドネイティブ化への対応です。オンプレミスのアーキテクチャを踏襲する単純移行方式(リホスト)では、他の移行方式と比較して移行が容易であるため、移行期間の短縮ならびに移行工数・費用の削減が可能になります。一方で、現行システムの見直しを行わないため、既存システムが複雑な構成であった場合は、保守・運用性を高められないまま移行することになり、クラウドのメリットを最大限に活かせない可能性があります。そのため、クラウドならではの技術を活用したクラウドネイティブ移行を支援して欲しい。また、リホストの移行方式でクラウド移行後の、さらなるクラウド最適化を進める支援をして欲しいという声を頂きました。
3つ目は、日本の多くのお客様は自社のみでITを推進するのではなく、多くのシステムインテグレーター等のパートナーと共に推進されているため、パートナー企業でもクラウド移行を包括的に支援して欲しいという声が多くありました。
4つ目は、中小規模のお客様のシステム移行では、IT予算、社内ITスタッフが限られ、それゆえ移行にかけられる時間も限られるため、大企業向け・大規模クラウド移行向けに開発されたITX2.0は、そのままでは活用するのが難しいという声を頂きました。
そこでAWSジャパンでは、これら4つの課題やニーズに応えるため、従来のITXパッケージ2.0をより包括的なものへと拡張して、AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)としてリリースいたしました。
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)とは?
この度、4/20に発表したAWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023ファミリーは、目的別に応じて4つの支援パッケージを提供いたします。1つ目は、大規模なリホスト移行の確実・迅速な遂行を支援する「ITX for Cloud First」です。2つ目は、クラウドならではのクラウドネイティブ技術を活用した移行を支援する「ITX for Cloud Native」。3つ目は、AWS移行コンピテンシーパートナー(Migration Competency Partner=MCP)の付加価値を活かしたプログラム群を提供する「ITX for MCP Partner」。4つ目は、中小規模のお客様を対象としたクラウド移行支援パッケージ「ITX Lite」です。
これら4つの中から、いずれか1つを選んでいただく事もできますし、複数を組み合わせてご利用いただく事もできます。
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for Cloud First(ITX for Cloud First)
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for Cloud First(ITX for Cloud First)は、2021年からご提供を続けているITXパッケージ、およびITXパッケージ2.0の進化版です。2023年に強化したポイントは、CCoEのコア人材にとどまらない、全社的なクラウド人材育成プログラムの拡充と、クラウド財務管理(Cloud Financial Management=CFM)によるクラウドコスト最適化のワークショップの提供開始です。
全社的なクラウド人材育成プログラムでは、4段階のステップと目的に応じた支援をご提供します。第1ステップの「自己学習・事前準備」では、ITおよびクラウドの用語や基本的な考え方についての理解を目的とします。第2ステップの「クラウド基本技術習得」では、クラウドの基礎的なスキルを身につける事を目的とし、AWS認定取得を目指します。第3ステップの「提案ブートキャンプ」では、クラウドの基礎知識をベースとして、実践的な設計のスキルや目利き力を身につける事を目的とし、架空のシステム化要件(RFP)に対する設計を検討するワークショップを提供します。第4ステップの「個別テクノロジーワークショップ」では、モダンアプリケーション設計のエッセンスの理解を目的とし、座学・ハンズオン・グループディスカッションを通じた実践を経験頂けます。
また、クラウドコストの最適化ワークショップ(Cloud Financial Management-Experience Based Acceleration=CFM-EBA)では、AWSのコスト最適化フレームワークおよびAWSコスト管理サービスの使い方をハンズオン形式で学んでいただくことにより、持続的なクラウドコスト最適化を推進していただけることを目指します。
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for Cloud Native(ITX for Cloud Native)
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for Cloud Native(ITX for Cloud Native)では、クラウドならではのクラウドネイティブな技術を活用した移行を支援し、検討・評価・準備・移行の4つのフェーズでプログラムを提供し、お客様のクラウドネイティブ移行をご支援します。
AWSが提案するクラウドネイティブ化は、モダナイゼーションとも呼ばれますが、既存の組織やシステムを段階的に変革し、「ビジネス俊敏性の最大化」や「イノベーションの加速」、「技術的負債の低減」を実現することを指します。アーキテクチャー面では、コンテナやマネージドDBの活用、サーバレスアーキテクチャへの再構築などをクラウドネイティブ化と定義しています。
リホストによるAWSへの移行後、そこから更にクラウドネイティブ化を進めたお客様では、リホスト移行後に比べて
- サーバレスアーキテクチャーの採用により、インフラコストを39%削減
- コンテナ化により、1人あたりで管理可能なサーバー台数が80%改善
- セキュリティインシデント解決時間を13%短縮
- 新機能リリースまでの期間を20%短縮
という、クラウドネイティブ化による更なる効果が出ています。
ITX for Cloud Nativeの検討フェーズで提供する、クラウド戦略策定ワークショップ(Modernization Strategy Workshop=MSW)では、モダナイゼーション候補システムとその妥当性を評価することで、お客様がクラウドネイティブ戦略の道すじをつけることをご支援します。
また、評価フェーズにおいては、モダナイゼーション候補のシステムに対し、AWSチームがビジネス・アプリケーションやDevOpsの様々な観点から評価を行い、モダナイゼーションのポイントやToBeアーキテクチャ案を提示するアーキテクチャ計画支援(Modernization Assessment=MODA)を提供します。
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for MCP Partner(ITX for MCP Partner)
AWS移行コンピテンシーパートナー(Migration Competency Partner=MCP)とは、“移行コンピテンシー”を保有されているAWSパートナーの事を指し、基幹システムや業務アプリケーションのAWSへの移行において、調査から計画、移行、運用までのすべてのフェーズにおける専門知識、豊富な実績やソリューションを持つAWSパートナーを認定させていただくものです。そのようなMCPパートナー各社が提供しているプログラムと、ITトランスフォーメーションパッケージが従来より提供していたプログラムを組み合わせたものが、「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for MCPパートナー(ITX for MCP Partner)」になります。
ITX for MCPをご利用いただく事により、AWSが持つクラウド移行の様々なオファリングに加えて、MCPパートナーが持つビジネスに関する専門知識、移行およびモダナイゼーションツール、教育などのサポートを併用して受けていただくことができます。
以下はSCSKより提供するITX for MCPの一例になります。今後、他のMCPパートナーから、各社独自のパッケージが順次提供されていく予定です。MCPパートナーについては、こちらのページよりご確認いただけます。
AWS ITトランスフォーメーションパッケージ Lite(ITX Lite)
ITX Liteでは、他のITX Familyと同様に評価・準備・移行の3フェーズでトータルでお客様をご支援します。ほぼ全てのプログラムを無償で提供し、中小規模のクラウド移行プロジェクト向けに必須の内容に絞りこみ、お客様の負担を軽減しています。
IT人材や知識、経験不足によりなかなか移行決定が進まないというお悩みに対し、評価フェーズではお客様の負担を軽減しつつ移行開始までを手厚く支援し、移行への意思決定をサポートいたします。移行に関わる人員が少ない状況を考慮し、ヒヤリングを一度で、かつ厳選した質問で行うことで、お客様の負担を軽減し、通常数カ月かかる評価フェーズをヒヤリングから数週間で提供することで、移行決定までをスピーディーにサポートさせていただきます。移行決定後も人材の技術支援や円滑な進行を支援させていただきます。コスト面では利用料の一定割合をクレジットで還元させていただくだけではなく、クラウド移行後もコスト最適化の支援をさせていただきます。お客様自身での移行が難しい場合はAWSパートナーをご紹介いたします。
また、評価フェーズ前には、クラウドのもたらす価値創造への集中を経営層と体験いただける、デジタルイノベーション体験ワークショップもご活用いただけます。
ITXパッケージ 2023ファミリーの始め方
ITXパッケージ 2023ファミリーご利用に向けての入り口は2つあり、どちらからでも結構です。
1)Webフォームからお問い合わせ頂き、AWSからの連絡をお待ち頂く、 2)担当営業までご連絡ください。
クラウドへのマイグレーションをお考えの際はAWSへの移行のページもご確認ください。AWSへの移行に必要な情報が網羅されています。また、ITXパッケージ 2023ファミリーにご興味をお持ちのお客様は、是非上記2つのいずれかよりAWSへのコンタクトをお待ちしております。
事業開発統括本部 マイグレーション&モダナイゼーション事業開発本部
マイグレーションスペシャリスト 富松卓郎