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未来に対応できる企業になる

組織が未来に対応できるようにすることは、企業のシニア・リーダーの仕事です。しかし、残念ながら未来は不透明で、急速な変化、不確実性、複雑性の時代においてはなおさらです。天気と同じように、私たちは近い将来をある程度確実に予測することができますが、先を見通すにつれて、その保証は薄れてきます。そして今日、濃い霧が立ち込め、1、2メートル先も見えないような状況になっています。では、どうすれば企業はその未来に備えることができるのでしょうか?

喩えを徹底的に打ちのめすことを終わりにして、うまくいかないことを認めざるをえません。それは、霧の中を大胆に闊歩して、突然穴ぼこにつまずいたり崖から落ちたりするまで、あたかも見えているかのようにすることです。それは、馬鹿げているかと思えるかもしれませんが、多くの伝統的な企業がやっていることです。あたかも遠くまで見通せるかのような硬直した計画を立て、今年のニーズでさえ変化する可能性が高いのに、来年必要になると思われるリソースを獲得し、変化や革新を困難にするガードレールを設けることをしています。

本ブログは、未来に対応できるようになるための記事ですが、正直なところ、筆者は未来がどうなるのかほとんどわかっていません。労働力としてロボットを管理し、AI に事務用品を人質に取られたときに交渉する方法をお伝えしたいところだが、私が目にするのは、時折可能性のある道筋が垣間見える霧のようなものがほとんどなのです。

とはいえ、リーダーは組織が未来に備えるようにしなければなりません。そのための方法がこちらです。

回復力と俊敏性を高める

回復力と俊敏(訳者注:Resilience and agility、レジリエンスとアジリティ) とは、予期しない、あるいは予期できない状況に対応する能力を指す言葉です。それ故に、ビジネスにとって価値があります。貴社は、回復力と俊敏性への投資のリターンをどのように評価しているのでしょうか? 通常、企業は、収益の増加やコストの減少といった目に見えるリターンの予測に基づいて、潜在的な投資の価値を評価します。しかし、回復性への投資は、リスクの削減や選択肢の創出といった、より具体的な準備への投資です。具体的なリターンが予測される投資と比較して、優先順位をつけるのは困難です。特に、組織が、未来に霧がかかっていないかのように装ってリターンを予測している場合はなおさらです。

しかし、回復性と俊敏性は、将来への備えとして極めて重要です。そのためには、将来への継続性という広い視野が必要です。将来には、突然、新たな分かれ道が現れ、道路工事や料金所、あるいは空から降ってくる象によって、道が不意にふさがれてしまうかもしれません。組織には、新たなテクノロジーに対応し、容易に変更し、拡大・縮小できる技術インフラが必要です。また、状況の変化に適応できる労働力と企業文化も必要である。組織がロボット労働者の権利を認める必要があると判断したとき、あるいは生成 AI が顧客一人ひとりに関する小唄を作成し始めたとき、企業のガバナンス・プロセスはそれを受け入れることができるでしょうか? さらに深刻なのは、状況の変化に応じて資金やその他のリソースを振り向けることができるかどうかです。パンデミックや戦争でマネジャーがいなくなった場合、他の誰かが代わりに行動できるでしょうか? マネージャーのかわりの人は適切な権限を持ち、適切なデータにアクセスし、必要に応じて支出を委ねることができるだろうか?

技術面では、未来に対応する組織は柔軟なテクノロジーと技術プロセスを採用する必要があります。今日、DevOps とクラウドは、回復性と俊敏性を獲得するための最良の方法です。クラウドは、インフラストラクチャの迅速な変更と、イノベーションをサポートするサービスの迅速なプロビジョニングを可能にします。DevOpsは、変更を本番環境に迅速に導入します。技術アーキテクチャは柔軟に設計でき、機械学習は、極めて複雑な機能を迅速に構築するための強力な手法になります。機械学習は、未来に対応できる企業の持つ道具セットに入っているべきなのです。

組織に回復性と俊敏性を構築することについては、まだまだ語りたいことがたくさんありますが、他のブログ記事でも頻繁に取り上げているので、この辺で話を進めることにしましょう。

未来志向のパートナーやプロバイダーとの連携

ベンダーやパートナーも同様の課題に直面しています。彼らもまた、不確実な将来に備えなければなりません。この意味で、クラウド・プロバイダーの選択は非常に重要です。

AWS が理想的なパートナーである理由を説明したいと思います。 AWS はクラウドのパイオニアであり、クラウドサービスにおけるイノベーションの最前線にいます。新しいテクノロジーが登場すれば、それらは間違いなくクラウドに登場します。どのような技術かは聞かないでほしいのですが (前述の通り、私はあなたと同じ霧の天気予報しか持っていません)、おそらく、あなたのデータセンターで利用できるようになるずっと前に、クラウドで利用できるようになるでしょう。 AWS は、新しいテクノロジーを試すコストとリスクを軽減することに取り組んでおり、私たちの基本理念の1つは、新しいテクノロジーを民主化し、簡単にアクセスできるようにすることです。言い換えれば、たとえ私たちが未来がどうなるのかよくわからなくても、 AWS が未来を利用できるように努力することは保証されます。

AWS は Amazon.com を動かしているテクノロジーであることを覚えておいてください。 AWS の顧客は、 Amazon.com が未来に進むために頼りにしているのと同じクラウド機能を利用できるのです。 AWS はアマゾンのニーズを満たすために進化し続けます。この表現の通り、まずは自分たちで試しているわけです。アマゾンのレコメンデーション・エンジン、フルフィルメント・センターでのロボットによるピッキング・ルート、配送ドローンや Amazon Go 店舗のビジョン機能、サプライチェーンやロジスティクスの予測システムなどの基盤となっています。

未来に対応できるようになるには、ベンダーの現在の能力だけでなく、ベンダーの未来への可能性を検証することが必要です。

目的と使命を明確にする

たとえあなたの組織が変化に対応することに長けていたとしても、潜在的な問題はあるはずです。強い使命感、ビジョン、目的、指針が必要です。それは、ミッション・ステートメントを言葉で作ったり、壁に貼るポスターを作ったりする問題ではなく、何をもって自社の努力を団結させ、従業員のモチベーションを高め、競合他社や他のステークホルダーとの相対的な世界における自社のポジションを定義するかという問題なのです。

目的は、切迫感、思いやり、新しいアイデアに挑戦する意欲、結果のオーナーシップを駆り立てます。それは従業員に力を与え、誰もが組織の方向性を理解することで意思決定の分散化を可能にするのです。また、会社が何を目指しているのかを顧客に伝えることができ、競争力のあるポジショニングの一部となっていきます。

未来対応型であることとは、混乱期においても企業の努力を統合し、リーダーや従業員が変化の時代に迅速な意思決定を行えるような、強い方向感覚を持つことです。

労働力と柔軟なキャパシティ

これは我慢しがたいことかもしれませんが、未来に対応する組織には余剰キャパシティが必要です。経済的には非効率に聞こえるかもしれませんが、リーン思考は、稼働率が高すぎ、そのキャパシティに対する需要が予測不可能な場合、キングマンの方程式で予測されるように、リードタイムが大きく損なわれる可能性があることを示しています。需要が予測可能な場合、生産能力計画は効果的なのです。需要が予測不可能な場合、ベルトの締め付けが強すぎると、単に他のコストが発生するだけです。

それには、従業員がジェネラリストであり、必要に応じて1つの機能と別の機能を行き来できることが助けになります。未来は霧に包まれているため、私たちは何をしなければならないのか、あまりよくわかっていません。それよりも、組織の目的を達成するために必要なことは何でもやるという文化を育て、さまざまなスキルを持った社員を抱える方がいいのです。

結論

未来に対応できるというのは、未来に何が起こるかを正確に知っていて、そのために今どう準備すべきかを知っているという意味ではありません。未来が進む方向を察知し、それに適応する能力に長けているということです。そしてそれは、組織が習得できるスキルであり、リーダーが率いるべき方法なのです。

Mark Schwartz

Mark Schwartz

マーク・シュワルツは、アマゾンウェブサービスのエンタープライズストラテジストであり、『 The Art of Business Value and A Seat at the Table:IT Leadership in the Age of Agility 』の著者です。 AWS に入社する前は、米国市民権・移民業務局 (国土安全保障省の一部) の CIO、Intrax の CIO、および Auctiva の CEO を務めていました。 彼はウォートン大学で MBA を取得し、イェール大学でコンピューターサイエンスの理学士号を取得し、イェール大学で哲学の修士号を取得しています。

この記事はアマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクトの佐藤伸広が翻訳を担当しました。原文はこちらです。