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デジタルトランスフォーメーション:なぜ、誰が、どの様にそして何を – パート2「誰が」

デジタルトランスフォーメーションにおいて、テクノロジーは依然として挑戦的であり重要なのですが、多くの場合、簡単な部分と言えます。実際のところは、人に関わる部分が最も重要なのですが、しばしば見落とされたり、過小評価されています。以前のブログ記事「なぜ」では、デジタルトランスフォーメーションの目標と、それに成功した組織に共通するいくつかの重要な属性について説明しました。これらの属性の多くは、人、組織、および文化に関連しています。デジタルトランスフォーメーションはテクノロジーではなく、業界をディスラプト(訳註:業界のルールを再定義し既存バリューを一気に時代遅れにする)する新しい考え方と運営方法です。トランスフォーメーションを成功させるためには、従来の組織構造、文化、人材へのアプローチを考え直す必要があります。

今までのやり方は通用しない

2020 年の著書「 No Rules Rules: Netflix and the Culture of Reinvention 」の中で、Netflix の CEO であるリード ヘイスティングスは「産業革命は過去 300 年間に渡り、世の中で成功している経済の多くを支えてきました … エラーを最小化した大量生産のためのマネジメントパラダイムが、ビジネスの組織慣習を支配するようになりました。」と述べています。しかしながら組織設計や権限移譲に関するこれまでのベストプラクティスが、今日のダイナミックな環境と相容れないものになっていることを示す証拠はたくさんあります。

これまでのベストプラクティスは、統制、効率、一貫性に最適化されており、デジタル化された今日のビジネスで成功するために必要な自律性、革新性、俊敏性を実現するものではありません。また、「最も報酬が高い者の意見 ( HiPPO ) 」に頼って、厳密な指揮統制のもとで企業戦略と実行を管理することもよくありました。組織の最も重要な決定はトップで行われ、正しく現場へと落とされますが、最終的に顧客にソリューションが提供されるまで、ほとんどフィードバックされませんでした。

従来の組織は、計画、議論、監督によって確実性を高めようとし、何重もの管理層を通して意思決定を行います。これに対し、デジタルトランスフォーメーション型組織ではモデルを逆転させ、従業員に権限を与え、仕事の成果に対して責任を持たせることによって、できる限り顧客の近くで意思決定をし、行動します。また、迅速な実験によって得られる継続的なフィードバックにより、新たな教訓を次の変更に素早く取り入れることができます。

革新的な組織フレームワーク

デジタルトランスフォーメーションを成功に導く「人」とは、一人の人間や特定のタイプの従業員ではありません。むしろ、次の4 つの重要な領域に焦点を当てた、幅広い組織、文化、人の変化の組み合わせです:

  1. エンパワーメント (訳註:権限移譲) された組織モデル
  2. 広範な学習文化
  3. イノベーションを生み出す風土
  4. インクルーシブ (訳註:お互いを認め合い受け入れる姿勢を持つ) で意欲的な従業員

エンパワーメントされた組織モデル – Two-Pizza ( 2 枚のピザを分け合える規模) チーム

アマゾンでは、デジタルトランスフォーメーションのための最適な組織作りは、摩擦や引継ぎ、その他の付加価値のない作業を減らすことで、スピード、俊敏性、効率性をもって業務やイノベーションを行えるチームを作ることだと考えています。このようなチームには、いくつかのユニークで重要な特徴があります。第一に、可能な限り自己完結し、自律的であること。第二に、特定の限定されたビジネス機能に対してエンドツーエンドで(アイデアから設計、開発、テスト、リリース、運用まで)責任を持ち、しばしば「プロダクト」と呼ばれる特定領域に対して長期的なオーナーシップを持つことが期待されます。第三に、担当領域内でビジネス価値を生み出すためのオーナーシップと説明責任を持ち、その価値を実現するための最善の方法を決定する権限も与えられていることです。第四に、社内外の顧客の近くで活動し、理解と説明責任を促進すること。第五は、チームは 8 人から 12 人で、2 枚以下のピザを分け合って食事ができるほど小規模であることです。

これらのチームは継続的にフィードバックを受け、新しいアイデアやイノベーションを次の変更に素早く取り込むために行動します。自己完結し、自律的であるため、価値を提供するために他のチームとのコミュニケーション、連携、調整の必要性が低く、より速く、よりアジャイルな方法で活動することができます。

このモデルは、私たちアマゾンでは有効に機能しています。また、最も高い業績を上げている組織が採用しているモデルでもあります。しかし、多くのものと同様に、このモデルが適切かどうかを判断するためには、あなたの組織、文化、ゴールの視点から検討することが不可欠です。

最初から組織全体を変えようとするべきではありません。その代わり、このモデルにうまく適合し、一文で説明できる明確なビジネス成果を持つチームから始めてください。もし懐疑的な人がいれば、意欲的な参加者を見つけて、このモデルがうまく機能することを証明してあげましょう。最後に、組織構造を「プロダクト」ベースの Two-Pizza チームに変更する際には、まず顧客をセグメント化し、次にその顧客向けの製品ライン、そしてそのラインの中の個別製品、最後にその製品の機能をセグメント化することから始めてください。8人から12人の規模に収まるのであれば、Two-Pizza チームが複数のプロダクトをサポートすることは可能です。これは、社内外の顧客に対して有効です。

学習文化の醸成

スキルギャップは現実のものです。私たちはよく、一般的に言って変革を担うのに必要な社員は揃っているが、新しいテクノロジーを使った新しい仕事のやり方を教育する必要があるということをお話します。大まかに言えば、スキルギャップを埋めるために全員を教えることが目標になるはずです。デジタルの世界では変化のスピードが速く、今後もすぐに減速することはないでしょう。従業員が成功するためには、部門横断的に活動する能力が必要です。また、従業員がスキルを伸ばし、新しい専門知識を学び続けられるようなリソースやプラットフォームにアクセスし、適切かつ最新の状態で、安定したキャリアを維持できるようにする必要があります。学習を重んじて報奨を与え、トレーニング機会やハンズオン学習、資格認定へのアクセスを基盤とする継続的な学習をキャリアアップと結びつける、包括的な学習戦略を確立してください。

私たちはしばしば、既存の従業員を訓練する代わりに、彼らを指導できる専門家を雇う必要があると考える組織に遭遇します。このような専門家は確かに役に立ちますが、多くはおらず、通常は成功に不可欠なビジネス、プロセス、顧客に関する知識が不足しています。パートナーに依存しすぎないこと、そして競合に対する差別化要素を外部委託してしまうことに注意してください。能力の確立、PoCの迅速な実施、チームメンバーの補完のためにパートナーを迎えることは、堅実なアプローチと言えます。しかし、デジタルトランスフォーメーション戦略の推進やその実施方法について、これらのパートナーに依存しないようにしてください。それは、自社従業員が管理し、所有する必要があります。

イノベーションを生み出す風土を形成する

従業員が新しいスキルを身につけるのを支援するだけでなく、組織のトップから始まるリーダーシップチームは、イノベーションを生み出す風土を植え付け、維持する必要があります。ブログ記事「なぜ」で述べたように、実験と失敗がイノベーションの鍵です。リーダーの仕事は、失敗した実験の影響を最小限に抑えながら、社員がより多くの実験を行えるようなイノベーションの文化を構築することです。アマゾンでは、イノベーションを組織に追加するのではなく、イノベーションを可能にし、その邪魔をしないようにすることが重要だと考えています。イノベーションを可能にするには、明確な説明責任と権限委譲、組織としての価値に焦点を当てた明確な原則、差別化につながらない仕事を排除して顧客に焦点を当てる再現可能なメカニズムの確立が必要です。

インクルーシブで意欲的な従業員 – 従業員が自分にとって何を意味するか理解できるようにする

経営コンサルタントで作家のピーター・ドラッカーの「文化は戦略を食う」という有名な言葉を聞いたことがあると思いますが、これは本当です。結局のところ、組織文化が最も重要なのです。文化を正しく理解しないと、変革に対応するために苦労することになります。ほとんどの伝統的な企業は、長い時間をかけて強い規範と文化的モラルを築き上げ、それが組織のアイデンティティそのものになっています。リーダーや従業員は、物事がどのように行われるかを入念に見極め、規範からの逸脱に無意識的にでも抵抗することが多いでしょう。

このような従来型の企業では、ほとんどの従業員が長年にわたって現在の方法をマスターし、仕事に熟練してきました。しかし今、デジタルトランスフォーメーションに伴い、彼らは新たな技術、組織、行動のスキルを習得する必要に迫られ、新たな大きな課題に直面しています。従業員は、デジタルトランスフォーメーションが自分の仕事を脅かす可能性があると認識した場合、意識的または無意識的に変化に抵抗することがあります。

リーダーは、そうした不安を認識し、デジタルトランスフォーメーションのプロセスは、従業員が将来の市場に合わせて専門知識をアップグレードする機会であることを強調することが重要です。従業員に対して透明性を保ち、デジタルに変革された新しい組織における彼らの役割と、成功に必要なトレーニングや時間の確保をどのようにサポートするかを説明することです。

プロジェクトの早い段階から従業員を巻き込む必要があります。そうすることで、恐怖、不確実性、疑念 ( FUD )を取り除くだけでなく、現場からの洞察を得ることができ、確実に成功するために戦略を適応させることができるようになります。従業員は何がうまくいき、何がうまくいかないかを知っており、変革の一環として改善の可能性について組織に助言することができます。一方、トップダウンのアプローチで作られた戦略は、組織のニーズを満たすことができず、失敗や不必要な退職につながる可能性があります。

アンチパターン:イノベーションチーム

私たちはよく、新しいデジタルトランスフォーメーション活動にフォーカスするためのイノベーションチームやイノベーションラボを持つことを計画している組織に遭遇します。このモデルは、チームやラボが、解決すべき問題や、リリース後の製品をサポートする必要性から離れすぎていることが多いため、最適とは言えません。この種のチームは、規模を拡大し、デジタルトランスフォーメーションについてより多くを学ぶための優れた出発点となり得ますが、このモデルは長期的にはあまり効果的ではないことが分かっています。

本連載第3回目のブログは「どのように」に焦点を当て、デジタルトランスフォーメーションをサポートするために必要なプロセスの変化を浮き彫りにしています。

Tom Godden

Tom Godden

Tom Godden は、アマゾン ウェブ サービス (AWS) のエンタープライズストラテジスト兼エバンジェリストです。AWS 以前は、Foundation Medicine の最高情報責任者として、FDA が規制する、がんゲノム診断、研究、患者予後プラットフォームを構築し、予後の改善と次世代精密医療への情報提供を支援しました。それ以前は、オランダのアルフェン アーン デン レインにある Wolters Kluwer で複数の上級技術責任者を務め、ヘルスケアおよびライフサイエンス業界において17年以上の経験を有しています。Tom はアリゾナ州立大学で学士号を取得しています。

Gene Shadrin

Gene Shadrin

Gene Shadrinは、アマゾン ウェブ サービス (AWS) の ソリューションアーキテクチャーのシニアマネージャーです。AWS 以前は、American Honda の CTO 兼 Director of Archtecture として、ローカル/リージョン/グローバルレベルで技術革新プログラムを確立し、エンタープライズアーキテクチャーを実践し、ビジネス成果の向上と技術的負債の軽減のために新しいデジタルビジネス機会を実現することに貢献しました。自動車、ソフトウェア、小売業界において20年以上の経験を持っています。

この記事はアマゾンウェブサービスジャパンの大塚信男が翻訳を担当しました。(オリジナルはこちら