Amazon Web Services ブログ
株式会社メタバーズ様の AWS 生成 AI 事例 「メタバース空間上の AI ボットサービスで Amazon Bedrock を活用して生成 AI モデルの対応数増加にかかる開発工数を削減」のご紹介
本ブログは 株式会社メタバーズ様と Amazon Web Services Japan 合同会社が共同で執筆いたしました。
みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの文珠です。
VR や AR といった技術がエンジニア以外の人々にも広く浸透してきた昨今ですが、みなさんは既にメタバース空間を体験されましたか?この分野では日々技術の進化を積極的に取り入れており、様々な企業がその技術を製品の宣伝やアクティビティに活用し、新たな価値を提供しております。
この分野で最近注目されているのは ”生成 AI の技術を VR / AR とどのように組み合わせるか” という観点で、チャットボットやコンテンツ生成など多方面で検討が行われています。その一方で日進月歩で進化している生成 AI の技術に対して、最新の機能に追従していくことは大変だというお客様も多いです。
本記事では株式会社メタバーズ様が VR / AR のサービスに生成 AI の技術を活用された事例を紹介します。メタバーズ様は「メタバース空間構築支援サービス」を提供しております。今回 AWS の生成 AI サービスである Amazon Bedrock をメタバース空間上の AI ボットサービスに組み込むことで、「対応可能な生成 AI のモデル数の増加」と「最新モデルへの追随」を開発工数をかけずに行えるようになりました。
メタバーズ様の状況と経緯
株式会社メタバーズ様は、メタバース空間構築支援サービス「メタバース® CYZY SPACE」を提供しており、本サービスではスマートフォンや PC のウェブブラウザで利用可能なメタバース空間の構築が可能です。
本サービスで作成されたメタバース空間では、数十人から 1,000 人まで同じ空間に集まることができます。こちらの空間は、学校空間、公共施設、常設ショールーム、バーチャル展示場といった様々な用途に展開ができ、幅広い業種のお客様にご利用いただいております。
(メタバース® CYZY SPACE)
本サービスを運用するためには、各メタバース空間の中でエンドユーザーの対応をする人手が必要でしたが、メタバース空間ごとに 24 時間 365 日で実際の人間を割り当てることは費用的に難しいことでした。この課題は本サービスだけのものではなく、メタバース空間を提供するサービスの共通課題とされています。そこで、メタバーズ様は本課題を解決するために、生成 AI サービスとの連携を検証し、新規サービスを開発されました。それが AI チャットボット・アバターボット作成サービス「メタバース® Botbird for Business」です。
こちらのサービスを「メタバース® CYZY SPACE」のメタバース空間と連携させることで、AI ボットによるメタバース空間の顧客対応を実現し、人材不足解決を支援しています。
(メタバース® Botbird for Business)
本サービスを利用するお客様が増えていく中で、様々なユースケースにあわせて生成 AI モデルのバリエーションを増やすことが、お客様の満足度向上に繋がることがわかりました。しかし、様々な種類の生成 AI モデルに対応するには、開発チームの多くの工数が必要でした。そこで、生成 AI 技術の実装箇所に Amazon Bedrock を導入することで、対応可能な生成 AI のモデル数を増加させつつ、その更新の作業もスムーズに対応できるようにしました。
ソリューション/構成内容
3D 空間サービス「メタバース® CYZY SPACE」の各ルームには、必要に応じて AI コンシェルジュを投入することができます。各 AI コンシェルジュはバックエンドでチャットサービスの「メタバース® Botbird for Business」と通信し、生成 AI によるテキストの返信を行います。
Amazon Bedrock は主に、「テキストチャット用の言語モデル」、「検索拡張生成 (RAG) 用のテキスト埋め込みモデル」の 2 つの機能で利用されています。( RAG 、埋め込みモデル、ベクトルデータベース等について、さらに学びたい方はこちらの記事をご覧ください。 )
Amazon Bedrock を利用する際には Converse API を用いて、複数の言語モデルをシームレスに切り替えられる実装をしています。また、チャットサービス内部に組み込まれた RAG 機能では、利用者・用途ごとにベクトルデータベースを作成する必要があり、その並列化のために AWS Lambda を活用しています。実は、テキスト埋め込みモデルを利用したベクトル検索が簡単に使えるようになる以前は、類似検索のための機械学習モデルを独自に作成していました。しかし、これには高いマシンスペックのコンピュートリソースが必要であったため、AWS Fargate のスポットインスタンスをいくつも呼び出す必要がありました。今回、Amazon Bedrock 経由でテキスト埋め込みモデル ( Titan Text Embedding や Cohere Embed など ) が利用できるようになったことにより、 AWS Fargate の代わりにAWS Lambda を用いた軽量な処理に置き換えることができました。
全体として心がけているのは、マネージドサービスおよびサーバーレスサービスをできるだけ活用し、運用コストを下げるということです。少人数チームで運用しているため、自動復旧性能と可用性の高さに助けられている部分は大きいと感じています。
(出展: 株式会社メタバーズ)
導入効果
Amazon Bedrock を導入することで、下記の3つの効果を得ることができました。
- 利用可能なモデルラインナップが倍以上に増え、お客様は利用用途に合わせて柔軟にモデルを切り替えることが可能に
- 生成 AI モデルの切り替えを少ない工数で行えるようになり、新規モデル導入時の開発工数を約 3 日から数時間に削減
- 類似検索のための機械学習モデルを独自に作成する必要がなくなり、その部分の開発コストを 90% 削減
上記の結果、メタバース空間上の AI ボットで用いる生成 AI モデルを、幅広い選択肢の中からお客様のユースケースに合わせて選択することが可能になり、お客様の満足度の向上に繋がっています。今後も新しい生成 AI モデルが登場した際には、すぐにラインナップを増やせるというのも嬉しい点ですね。
まとめ
今回はメタバース空間上の AI ボットサービスで、 AWS の生成 AI サービスである Amazon Bedrock を活用する事例を紹介させていただきました。Amazon Bedrock を用いることで「対応可能な生成 AI のモデル数の増加」と「最新モデルへの追随」を開発工数をかけずに行えるようになりました。これが幅広い業種のお客様の満足度を向上させる結果に繋がっているとのことです。本番環境で利用している生成 AI の最新化や豊富な生成 AI モデルへの対応にご関心のあるお客様は、ぜひ AWS までお問い合わせください。
株式会社メタバーズ : 代表取締役 CEO 兼社長 島谷 直芳 様 (右上)、桂 卓生 様 (右下)
Amazon Web Services Japan : アカウントマネージャー 尾形 龍太郎 (左上)、ソリューションアーキテクト 文珠 啓介 (左下)
ソリューションアーキテクト 文珠 啓介