Amazon Web Services ブログ

AWS利用におけるマネージドサービスの重要性

ラスベガスで開催された re:Invent が終わり、日本各地で、パートナーやユーザーコミュニティ、弊社による re:Capイベント(まとめイベント)が行われています。

ウェブページ「AWS re:Invent 2017 で発表された新しい機能とサービスの詳細」で新しく発表されたサービスの一覧がまとまっていますので、是非ご覧ください。

今回Amazon EC2では、C5インスタンスM5インスタンスH1インスタンスBare Metalインスタンス、等いくつかの新サービスの発表がありました。

それらに加えてとても多くのマネージドサービスの発表がされています。

私は、プロダクトマーケティング エバンジェリストとして外部でお話をさせていただく機会が多いのですが、予てより、AWSをより安価に、より効果的に、ご利用いただくためにはマネージドサービスの活用が不可欠です、というお話をさせていただいています。今回AWS re:Inventで多くのマネージドサービスが新たに発表され、お客様から、AWSは複雑になりそのキャッチアップが大変だ、というお話をいただいたこともありました。改めてマネージドサービスの重要性について費用面からまとめてみたいと思います。

ここでは、AWSの中で一番簡単なマネージドサービスであるAmazon S3を例にご紹介いたします。

静的コンテンツの保存におけるEC2/EBSとS3の使い分けに見る費用対効果

 

S3はどのような量のデータでも保存と取得が可能なオブジェクトストレージであり静的コンテンツの保存に特化しています。データに対して 99.999999999% の耐久性を持ち、バックアップや冗長化はAWSがマネージドサービスとして提供しておりますので、みなさんは管理の必要がありません。保存されているデータ容量に対してのみ課金が発生します。

アクセスはEC2に対してマウントする形態ではなく、CLIやRestインターフェースを使ってプログラムから操作します。

一方EC2にアタッチして使用するEBSは、永続的なブロックストレージボリュームです。OSからマウントして使用ができます。実際に使用している容量ではなく、割り当てた確保済の容量に対して課金が発生します。

S3、EBSそれぞれに複数のサービスレベルを備えたモデルを用意していますが、本比較では、デフォルト状態で選択されるそれぞれのモデル、S3 – 標準、 EBS – 汎用SSD(gp2)、について比較します。(S3のモデルの使い分け、EBSのモデルの使い分けが行えている場合は、きっと静的コンテンツの保存におけるS3とEBSの使い分けもできていますね!)

それぞれ100GBを保存したとした場合以下の費用差異が発生します。1$113円で計算しました。

 

かなりの費用差異が発生しています。しかしこれだけではありません。

EBSは、コンポーネントに障害が発生した場合でも高い可用性と耐久性を維持できるように、Amazon EBS の各ボリュームはアベイラビリティーゾーン内で自動的にレプリケート(コピー)されていますが、SLAという観点ですと

Amazon EC2 または Amazon EBS のいずれか(どちらか使用不能だった方、または両方が使用不能だった場合は両方)
に対して、地域(Region)使用不能が発生した毎月の請求期間について、影響を受けた地域(Region)

という表記となっており、つまり2台の複数Availability Zone (Multi-AZ)構成で使用することが商用環境の前提とされています。これをもとに先ほどの表にSLAを付け加えて再度比較してみます。(EC2とEBSのSLAが先日、99.95%から99.99%に更新されました

さらにもう2点費用面において影響を与える点があります。

  1. S3は確保領域の設計が必要ないのですが、EBSではあらかじめ余剰領域の確保が必要となります。システムがオンライン状態であれば保存すべきデータは増えていきます。本比較では10%の余剰を見込みました。EBSでは2017年2月にアップデートがかかり領域の自動拡張機能がリリースされていますので、だいぶ使いやすくなっています。
  2. EBSはS3と異なりデータ耐久性の指標が設定されていません。このためEBSはバックアップの取得が必要となります。EBSのバックアップはS3に保存されます。サービスレベルをそろえるためにはバックアップの費用も見込む必要があります。EBSのバックアップは取得時に圧縮されます。本比較では70%の圧縮率とし、30GBをバックアップとして見込みました。

再計算した表が以下となります。

 

かなり大きな費用差異が発生しますね。このため静的コンテンツの保存は、アプリケーションが許すのであればS3を有効活用した方が費用対効果が高いといえます。もちろんアプリケーションが対応していないケースもありますので、すべてにおいて適応できるわけではない点は注意が必要です。

Backup設計におけるEC2/EBSとS3の使い分け

最後に費用面だけではなく、バックアップの運用についても簡単にまとめます。EBSのバックアップの仕様についてはBlackBeltの資料の53ページ以降に、とてもよくまとまっています。EBSのバックアップはSnapshotと呼ばれますが、世代管理や取得時における静止点の管理などはユーザーが運用設計を行い管理する必要があります。S3であれば、ユーザーによるバックアップ設計は必要ありません。(s3は99.9999999%という高いデータ耐久性を持つとはいえ100%ではないことに注意してください。またEBSのSnapshotはS3へ保存されます。)

とはいえ先にご説明したように、EC2にマウント出来るストレージはEBSだけですので、最初の導入段階でその二つの特性を把握し、設計を行うことが大事になります。例えばEBS上に蓄積されるファイルを定期的にS3へ退避するなどの運用を行うことで、コストを圧縮し、なおかつ障害時のデータポイントリカバリー設計を簡易にすることができ、システムの運用におけるトータルコストを下げることが可能となります。

まとめ

今回は、最もわかりやすい静的コンテンツの保存に特化したAWSにおけるマネージドサービスの有用性を説明しましたが、AWSでは90を超えるサービスをご提供しており、多くのマネージドサービスをご利用可能です。もちろんEC2のみでシステムを構成しても、クラウドの良さを体験いただくことはできます。しかしこういったサービスをうまく組み合わせて使っていただくことでよりクラウドは安く、便利にみなさんのITに貢献させていただくことができます。

 

-プロダクトマーケティング エバンジェリスト 亀田