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AWS HealthScribe の紹介 — 患者と臨床医の会話から臨床文書を自動で生成

この記事は、“Introducing AWS HealthScribe – automatically generate clinical notes from patient-clinician conversations using AWS HealthScribe” を翻訳したものです。

はじめに

本日 (2023 年 7 月 26 日)、AWS HealthScribe (プレビュー) を発表できることを嬉しく思います。これは、医療ソフトウェアベンダーが、患者と臨床医の会話を分析して予備的な臨床記録を自動的に生成する臨床アプリケーションを構築できるようにする、HIPAA 適格の新しいサービスです。

AWS では、医療とライフサイエンスにおいて、お客様のコラボレーションの方法、データ主導の臨床および運用上の意思決定、精密医療の実現、医療費削減などの目的に特化したサービスに投資してきました。AWS には、医療やライフサイエンスのデータを保存、変換、分析、アクセスできる、高性能で人口規模のアプリケーション構築が可能な最先端の機能が備わっています。目的に特化した機能により、お客様は、臨床記録、ゲノムやその他のオミクスデータ、医用画像、構造化されていない医療テキストや音声など、さまざまな種類の医療データや科学データを管理し、そこから得た知見を活用することができます。

文書化の義務が患者の診察体験を妨げる

クリニックでの忙しい一日を想像してみてください。臨床医は、すべての患者に質の高いケアを提供しようと、予約をやりくりしながら一日を過ごしています。休憩時間が限られているこの連続したスケジュールに加えて、臨床医は患者の診察を行うたびに詳細な文書を保管する必要があります。この必要な管理業務に費やされる時間と労力により、患者との貴重な対面でのやり取りの時間を奪われてしまうことがよくあります。

業界の要件により、厳密な文書化が求められます。臨床医は、患者との対面でのやり取りよりも、管理作業に約 2 倍の時間を費やすことがよくあります1。そのため、思いやりのあるケアを提供することと、正確な記録を維持することとの間で葛藤が生じています。この負担は、臨床医と患者の両方に発生します。患者は医療提供者からあまりケアを受けられない一方で、臨床医は燃え尽き症候群のリスクが高くなり、仕事の満足度が低下します。医療筆記は文書作成の作業負荷を軽減するのに役立ちますが、雇用、訓練、維持に費用がかかり、文書作成に時間がかかるため、同様の燃え尽き症候群に直面することがよくあります。

新時代: AI を活用した医療情報文書化ソリューション

AI は、管理業務への臨床医や医療筆記の関与を大幅に減らすことで、臨床文書の作成プロセスを変革する可能性を秘めています。従来の支援型 AI エージェントは、書き起こされた会話のコンテキストを理解する能力が限られていました。しかし、生成系 AI と大規模言語モデルの進歩により、コンテキストの理解が大幅に向上しました。

生成系 AI の核となるのは、学習データから複雑なパターンを識別して再現することの学習です。この機能は、データの複雑さと多様性が大きな課題となる医療業界の課題に非常に適しています。生成系 AI は、手間と時間がかかっていたタスクを迅速化し患者ケアの時間を確保する、といった医療提供変革の支援ツールを構築する新たな機会を生み出します。

AI への期待は大きいですが、医療アプリケーション開発者は、AI を構築し臨床アプリケーションへ統合する際に、いくつかの課題に直面しています。

  1. 実装の複雑さ: 会話型 AI および生成系 AI サービスのトレーニング、最適化、統合には、時間と費用がかかる場合があります。
  2. セキュリティ: 開発者は、AI 搭載ソリューションがセキュリティ、プライバシー、医療に関する厳しいコンプライアンス要件を満たしていることを確認する必要があり、開発プロセスがさらに複雑になります。
  3. 信頼: AI が生成する臨床記録への信頼の欠如、およびモデルトレーニングにおける患者データの使用可能性に対する信頼性の欠如は、AI ベースのソリューション採用をためらう原因となります。

AWS HealthScribe の紹介

AWS HealthScribe は、医療ソフトウェアベンダーが患者と臨床医の会話を文書化、要約し、臨床記録を自動生成するアプリケーションの開発を支援する HIPAA 適格サービスです。AWS HealthScribe は、会話型 AI と生成系 AI を組み合わせることで、臨床記録作成の負担を軽減し、診察体験を向上させます。AWS HealthScribe は、臨床アプリケーションにおける臨床記録作成を迅速に行えるよう設計された AI 搭載の堅牢な機能一式を提供します。AWS HealthScribe は、患者と臨床医の会話音声を分析して以下の機能を提供します。

  1. 豊富な診察文書化: AWS HealthScribe は、文書化された各対話において単語レベルでのタイムスタンプを含む包括的なやり取りの文書化を提供します。
  2. 話者の役割識別: 診察室にいる個人は記録の中で一意に識別され、会話の内容から医師または患者を識別します。これにより、医師と患者のやり取りの中で、「誰が何を言ったか」を明確に確認できるようになります。
  3. 文書のセグメンテーション: AWS HealthScribe は、文書化された対話を分類し、臨床関連部分を主観、客観、評価、計画などの適切な要約セクションに整理します。また、会話中の雑談や沈黙時間も特定できるため、文書の特定箇所を見つけやすくなります。
  4. 臨床記録の要約: AWS HealthScribe は、診察内容を分析し、主訴、現在の病歴、評価、計画などの項目ごとにまとめられた臨床記録を生成します。これらの要約は簡単にレビュー、編集、最終決定が行え、臨床医や筆記の診察要点を素早くまとめることができます。
  5. エビデンスマッピング: AI が生成する臨床記録で使用されるすべての文書には、元の診察記録への参照が含まれているため、ユーザーは要約の正確性を簡単に検証できます。
  6. 構造化された医学用語: AWS HealthScribe は、病状、医薬品、治療法など、会話の記録から構造化された医学用語を抽出します。これらの医学用語を使用すると、臨床応用のさまざまな分野に関連する有用なワークフロー候補を生成したり、関連するエントリを自動提案することができます。

医療アプリケーション開発者は、AWS HealthScribe を臨床アプリケーションに統合することで、医療従事者へ患者診察時の重要な項目を強調表示することができます。


図 1: 医療アプリケーション開発者が AWS HealthScribe により医療従事者へ提供できるアプリケーション体験の実例

これらの機能を統合することで、AWS HealthScribe は個別に AI サービスをトレーニング、最適化、統合、カスタムモデルを構築する必要性を減らし、より迅速な実装を可能にします。お客様は、個々の AI コンポーネントの最適化について心配することなく、エンドユーザーへの価値提供に集中できます。

すばらしい事例として、3M、ScribeEMR、Babylon などの医療ソフトウェアベンダーがすでに AWS HealthScribe を使用して臨床アプリケーションを強化していることが挙げられます。

3M Health Information Systems(3M HIS)は業界リーダーであり、その多様な M*Modal 音声理解、対話型およびアンビエント AI ソリューションは、現在全米で 30 万人以上の臨床医によって使用されています。

3M HIS のプレジデントである Garri Garrison 氏は、次のように述べています。「AWS に組み込まれた機械学習によって、3M HIS は臨床医のワークフローや手間のかかるプロセスを変革し、医療機関における臨床文書の作成や請求業務を効率化できます。3M HIS は AWS と提携し、臨床における文書化ワークフローに直接、対話型生成 AI を導入しています。AWS HealthScribe が当社の臨床アプリケーションの中核コンポーネントとなることで、3M のアンビエント臨床文書作成やバーチャルアシスタントソリューションをより迅速かつ高度化して、大規模に提供できるようになるでしょう」

Babylon は、人々の健康を大規模に管理するデジタルファーストの統合プライマリケアサービスです。

Babylon のチーフ・サイエンス・オフィサーである Saurabh Johri 氏は、次のように述べています。「人間の持つ医療の専門知識と AI を融合することで、質の高いヘルスケアをより手頃な価格で利用しやすくし、医療従事者にかかる負担を軽減できます。その一例が臨床概要などの分野でのイノベーションであり、ヘルスケアにおけるアウトカムの改善につながる可能性を持っています。Babylon は AI イノベーションのリーダーとして、引き続き AWS と連携し、AWS HealthScribe の生成系 AI 機能と当社の自然言語処理ソリューションとの統合を探求できることを期待しています」

ScribeEMR はバーチャルメディアスクライブ(補足:遠隔医療筆記)のリーディングプロバイダーとして、何百もの診療所や病院、医療システムに医療コーディングや医療オフィス用サービスをバーチャルで提供しています。

ScribeEMR の共同創業者兼ゼネラルマネージャーである Daya Shankar 氏は、次のように述べています。「ScribeEMR が目指すのは、ヘルスケア業界における実務の効率を高め、収益を最大化して医療従事者の燃え尽き症候群を減らすために貢献することです。AWS HealthScribe の能力を活用することで、当社は生成系 AI を利用して医療文書の作成プロセスを変革することができます。AWS HealthScribe との連携により、当社の高度なプロセスは患者の来院をより効果的に把握して解釈できるようになり、EMR のワークフローやコーディング、償還手続きを最適化することができます」


図 2: AWS HealthScribe は、AI が生成した要約が診察記録にリンクされるよう、的確に設計されている

セキュリティとプライバシーに重点を置き、的確に構築されています

AWS HealthScribe は、患者データのセキュリティとプライバシーを優先する HIPAA 適格サービスです。AWS は、AWS HealthScribe サービスを通じて生成された入力または出力を AWS HealthScribe のトレーニングに使用することはありません。ユーザーはデータを完全に管理でき、作成文書や予備的な臨床記録の保存場所を指定することができます。

AWS HealthScribe は、医療従事者が簡単に文書作成することができることを目的として、補助的な役割で使用するよう設計されています。AI が生成した要約はそれぞれ診察記録にリンクされているため、ユーザーは原本と相互参照することで正確性を簡単に検証でき、AI が生成した記録の根拠となるコンテキストを理解できます。AI が生成する知見のトレーサビリティと透明性を提供することは、説明可能性という責任ある AI の原則と合致し、臨床現場における AI の信頼獲得と安全な利用促進に役立ちます。

まとめ

AWS は医療ソフトウェアベンダーと協力し、お客様が臨床医と患者の診察体験を改善できるよう支援しています。臨床アプリケーションでは、AWS HealthScribe が豊富な診察文書を自動生成しセグメント化、患者と臨床医の話し手の役割を特定、医学用語の抽出、そして予備的な臨床記録の生成を行います。AWS HealthScribe はこれらの機能を組み合わせることで、個別に AI サービスを統合および最適化する必要性を減らし、実装を迅速化します。AWS HealthScribe は、AI が生成する臨床記録の全ての文書に元の患者記録への参照を含めることで、医療ソフトウェアベンダーが AI を責任を持って使用できるよう支援します。AWS HealthScribe には、機密性の高い患者データを保護するためのセキュリティとプライバシーの機能が組み込まれています。

AWS HealthScribe は米国東部 (バージニア) でプレビュー版をご利用いただけます。このサービスにアクセスするには、 AWS HealthScribe のサインアップページ製品ページにアクセスしてください。

[1] 医師は患者応対時間のほぼ 2 倍の時間を電子カルテ / デスクワークに費やしている

Jason Mark

Jason Mark

Jason Mark は、アマゾンウェブサービスの米国非営利医療部門ソリューションアーキテクトチーム責任者です。 彼は SA チームを率いてお客様の課題を解決し、AWS を活用して患者に提供するケアを改善しています。 病院の薬局システム、コーディングと償還ソフトウェア、自然言語理解プラットフォームでの仕事など、医療技術の分野で 21 年の経験を持ち、Misys Healthcare と 3M Health Information Systems で勤務していました。 彼の仕事以外の生活は、娘や犬、飛行機による飛行を中心に回っています。

Sarthak Handa

Sarthak Handa

Sarthak Handa は、ワシントン州シアトルのアマゾンウェブサービス (AWS) AI/MLチームにて、シニアプロダクトマネージャーを務めており、医療業界の進歩を促進する AI サービスの開発に主眼を置いています。 AWS で働く前は、スタートアップの創業者として数年間働き、医療および災害救援セクター向けのテクノロジーソリューションを構築していました。

Tehsin Syed

Tehsin Syed

Tehsin Syed は、アマゾンウェブサービスのヘルス AI 担当ゼネラルマネージャーであり、Amazon Comprehend Medical、Amazon HealthLake、Amazon Omics、Amazon Genomics CLI などのヘルス AI 戦略、エンジニアリング、製品開発の取り組みを主導しています。 Tehsin は、エンジニアリング、科学、製品、テクノロジーを担当するアマゾンウェブサービスのチームと協力して、画期的な医療およびライフサイエンス AI ソリューションと製品を開発しています。 AWS で働く前は、Cerner Corporation でエンジニアリング担当副社長を務め、医療とテクノロジーの交差点で 23 年間働いていました。

翻訳は Solutions Architect 松浦が担当しました。原文はこちらです。