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【開催報告】新聞社による AWS を活用した DX 事例セミナー

はじめに

2020年10月、アマゾン ウェブ サービス(AWS)国内初となる新聞・出版業界に特化した事例紹介イベント「新聞・出版業界におけるAWS事例オンラインセミナー」を開催致しました。140社、200名を超える皆様にご参加頂き、大盛況のうちに幕を閉じました。それから約一年、2021年11月17日 DXをテーマとして「新聞社による AWS を活用した DX 事例セミナー」と題して、国内新聞社様の事例に特化したオンラインセミナーを開催させて頂きました。今回の参加者は350名を超え、新聞業界の皆様からのAWSへの注目が急速に高まっていることを感じます。

セッション1:
山梨日日新聞社が進めるクラウドを活用した”総合データベースシステム”

株式会社山梨日日新聞社 技術局 技術局長 赤尾 聡 氏より、情報発信の心臓部である“総合データベースシステム”をAWS上にご構築頂き、“攻めのIT”=DX実現に向けた準備を整えた、という事例を紹介頂きました。紙の新聞の休刊日でも、休刊日電子版として「Sannichi plus」では記事配信をしているため、今や新聞製作システムは24時間365日稼働していることは必須条件。また、公開前の情報も取り扱うため、高いセキュリティが必要です。一方で、ハードウェアの保守期限切れに伴うシステム更新時にマンパワーが必要になることも課題でした。それらの課題に対応するため、AWSをご採用頂きました。AWSの導入にあたっては、AWSプレミアムコンサルティングパートナーのNEC Corporation (以後、NEC)との強力な連携のもと推進くださいました。また今後もNECとの協業のもと、新聞製作システム全体の移行が可能か検討していく、という前向きなご発言を頂きました。今後の人材活用、技術導入について、クラウド利用の頻度が高くなってくれば、今までと違った人材も必要になってくるが、その分、新技術の活用もスピーディーになり、システム更新時しかできなかった機能追加が随時可能になる。クラウドであればすぐにテストができるため、その俊敏性を生かして、サブシステムを内製化できる技術をつけていき、攻めの姿勢を取れるようにしていきたい、とお話くださいました。

山梨日日新聞社とNECとの連携

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セッション2:
「産業情報のプラットフォーマー」を目指し、クラウド活用したDXを推進

株式会社日刊工業新聞社 執行役員デジタルメディア局長 DX担当 明 豊 氏からは、日刊工業新聞社が紙の新聞を発行するだけではない「産業情報のサービス事業者」にトランスフォーメーションしていくために、これまでとこれからの施策について、事例紹介頂きました。生き残りをかけた素朴な質問、というタイトルのスライドから始まり「新聞社」のあり方を改めて問い直したあと、日刊工業新聞社として進むべき道「産業情報で未来をよくするプラットフォーマーになる」というミッションステートメントをお示しくださったあと、デジタルコンテンツ中心でマルチに稼ぐモデルへDXするのに必要なシステム改革について、なぜクラウドかという点とあわせ、ご説明頂きました。新 CMSとして、APN Rising Star of the Year 2018 – Japan を受賞したAWSパートナーである Future Architect, Inc. のAWSベースのCMS「GlyphFeeds」をご採用、ビジネスモデルに合わせてカスタマイズ開発を行った事例を紹介くださいました。このシステム改革の一環で行ったウェブサイト改善の事例と、新たなビジネスモデル案についてもお話くださいました。このような大改革の背景には、2015年に創刊100年を迎えた時から長きに渡ってDXのために取り組んできた日刊工業新聞社の努力があること、この100年に一回の大変革に向けて今後どのような開発を行っていくか、などについても具体的にお話くださいました。

日刊工業新聞社のDXに向けた宣言

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セッション3:
言語データを価値あるものに変える有効的なAI活用

株式会社レトリバ 執行役員 新宮領 宏太 氏 / 執行役員 佐藤 雅浩 氏より、株式会社レトリバ(以後、レトリバ)のご紹介と、株式会社 朝日新聞社(以後、朝日新聞社)と行ったお取り組みの事例、AWS上で稼働するレトリバのサービスである YOSHINATSUNADE についてご説明頂きました。レトリバは自然言語処理の領域で広い範囲かつ高い技術力を有することでお客様の課題解決を一気通貫で支援することをミッションとしており、AWSをメインサービスとして活用くださっています。朝日新聞社との共同研究では、新聞記事データを活用してデータドリブンで「今年を振り返る」事例と、単語ベクトル生成、自動見出し生成の研究事例をお話頂きました。自社サービスのご説明では、お客様や市場の声をテキスト分析して事業拡大のヒントを見つけ出すAIツール YOSHINA を活用して、名古屋市役所への電話問い合わせ内容を分析して、市民の声を市政に反映する試みを行った事例を紹介くださいました。また YOSHINAリサーチというサービスを活用することでアンケートの収集から実施から分析までを一気通貫で行えることもご説明頂きました。また、ビジネスパーソンは年間150時間を勤務中に「探し物」をしているという時間の無駄遣いの課題に対し、今自分に必要なデータを見つけることを支援する TSUNADE の詳細をご説明頂きました。

レトリバ様のYOSHINAとTSUNADEのサービス概要

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セッション4:
データの正当性を支える日経のポリシー運用

株式会社日本経済新聞社 デジタル事業 情報サービスユニット サービス企画開発グループ 鶴田 貴大 氏からは、様々な形式のデータの正当性確認を行うために導入している OpenPolicyAgent(OPA)のご説明を頂きました。新聞社では、システム用のマニフェストファイルなどのシステム構築・運用のためのデータから、ユーザー行動分析を行うためのトラッキングデータや、業務の根幹である新聞記事データまで、様々なものがデータで管理されています。それらのデータは種類も量も膨大であるため、正当性チェックを行うためにはできる限り自動化を行う方向で考えなければなりません。それがやりやすいアーキテクチャで構築されたシステムとしてOPAを紹介下さいました。評価内容と評価システムが切り離されているため、評価内容をルールに従って記載することで、あらゆる評価を行うことができます。評価システムはHTTPサーバーとしても、ライブラリとして組み込んで使用することもできるため、対象システムのアーキテクチャに柔軟に対応できます。OPAではRegoという独自言語でポリシールールを記載するため、記載の実例を少し紹介した後、Amazon Elastic Kubernetes Service (EKS)用マニフェストのチェックを組み込むパイプラインやデータパイプライン上の加工状態のチェックのフローなどを説明くださいました。導入効果としては、インフラチームの扱うデータの正当性チェックが自動化されたこと、特にKubernetes環境のレビューが楽になったことなどを挙げてくださいました。

日経新聞社様OpenPolicyAgent動作イメージ

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セッション5:
新聞社によるAWSを活用したDX最新事例のご紹介

最後に、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアソリューションアーキテクト 八木 達也より、2021年に公開くださったお客様事例を中心に、DXを軸として紹介させて頂きました。デジタルトランスフォーメーションの世界観とは「リアルとデジタルが融合」したものです。今後それがあらゆる業界で起こると言われています。デジタル庁がガバメントクラウドにAWSを採用くださったことで、行政としてもその方向を目指すと考えられます。そのような社会環境の変化があったとしても、社会的役割を果たすために、DXが必要です。DXへと向かう最新事例としては、まずは株式会社 毎日新聞社の事例です。認証・課金といったデジタル上での顧客との接点を司るシステムをAWS上で構築され、顧客のニーズに迅速に対応できるようにしました。株式会社 日本経済新聞社では、1000万会員を抱える、顧客を知るための最重要システムである日経ID基盤をAWSに移行され、更にその先の可用性を求めてリアーキテクトを実施しています。株式会社 朝日新聞社は「朝日新聞アルキキ」をAWS上に構築し、音声ニュースサービスという新しいビジネスモデルを稼働させています。株式会社読売新聞東京本社は巨人戦未掲載写真の自動タグ付けAIをAWSで開発されました。また株式会社 日本経済新聞社の渡辺専務取締役が弊社イベントにパネリストとして登壇し、DXを語ってくださった内容も紹介させて頂きました。DXは、システムを新しくすれば実現するものではなく、組織や文化まで深堀りして変革を目指す必要があります。それらに対するサポートのケイパビリティもAWSにはある、という内容で、締めさせて頂きました。

AWS八木による「新聞社によるAWSを活用したDX最新事例のご紹介」スライド表紙

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おわりに

セミナーにご参加いただけなかった方も、本ブログから新聞業界における AWS を活用したDXに向けた取り組みについて、ご参考になれば幸いです。冒頭でも書きましたが、セミナーに参加くださった方が昨年より150名も増えており、新聞業界の皆様からのAWSへの注目が急速に高まっていることを感じます。先日、日本新聞協会様主催の第68回新聞製作講座にソリューションアーキテクト八木が登壇させて頂きましたが、その時の登録者数は1500名程度だったと聞いておりますので、まだまだ努力が必要だと認識しておりますが、来年には更に大きくご注目頂けると信じております。今後も引き続き、お客様のビジネスのご支援をさせて頂きたいと考えております。

最後に、私達のチームでは仲間を募集しております。私達と共に業界のお客様を支援してくださる技術者の方、ぜひ一度ご検討ください。(Link

このブログは Solutions Architect 八木が担当しました。