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【ACC ブロンズ受賞】写真で一言ボケて電笑戦 / AWS Summit Online 2022

2022年5月に開催された AWS Summit Online 2022 内のスペシャルプログラムとして企画された、AIを活用した大喜利イベント「写真で一言ボケて電笑戦」は、2022 62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS クリエイティブイノベーション部門において、ブロンズを受賞しました。本記事では、「写真で一言ボケて電笑戦」のイベントレポートをお届けします。

「写真で一言ボケて電笑戦」は、株式会社オモロキが運営する国内最大級のお笑いメディア「写真で一言ボケて」の約 100 万件のお笑いのデータを利用して、人間が考え出したボケを上回る新たな笑いを AI が生み出せるかを競う AI 大喜利対決です。2021 年の AWS Dev Day Online Japan で人々を爆笑の渦に巻き込んだこのイベントが、さらにパワーアップして AWS Summit Online 2022 に登場しました。

ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS は、国内で最も規模が大きく権威のあるアワードのひとつとして知られており、さまざまな業界の第一線で活躍するクリエイターや有識者・著名人など、数多くの審査委員による厳正な審査を経て受賞が決定されます。「写真で一言ボケて電笑戦」がブロンズを受賞したクリエイティブイノベーション部門の審査基準は「ビッグアイデア × テクノロジー」。名誉あるアワードでブロンズを受賞した「写真で一言ボケて電笑戦」が、アイデアとテクノロジーをどのようにかけあわせて受賞にいたったか、以下にご紹介します。

このセッションのスピーカー (所属は当時のものです):

  • 挑戦者
  • コメンテーター・司会
    • FUJIWARA (原西 孝幸 氏 / 藤本 敏史 氏)
    • 電通デジタル 谷井ありさ
  • 技術解説・コンプライアンスチェック
    • 電通デジタル AI エンジニア 石川 隆一 氏
    • アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップソリューションアーキテクト 針原 佳貴
    • アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアエバンジェリスト 亀田 治伸

挑戦者登場

セッション序盤では、「写真で一言ボケて電笑戦」の挑戦者であるストックマークの森長氏、MIXI の中西氏、カレーちゃん氏が登場。それぞれの紹介 VTR が流れ、本戦に向けた意気込みが語られました。

エントリーナンバー 01

まずはストックマークの森長氏。同社は 2016 年に設立し、自然言語処理技術を武器に急成長している AI スタートアップ企業です。森長氏は前回の大会で惜しくも優勝を逃した、スキルの高いシニアリサーチャー。今回のイベントに向けて、本業であるビジネス文書解析で培った自然言語 AI をさらにパワーアップさせ、「Aboke (エーボケ)」を作り上げました。
「Aboke」は、与えられた画像から連想によってデータを紡ぎ出し、ボケを生み出すことを得意とする AI です。森長氏は「今回は負けない。リベンジできるように AI を強化してきました」と力強く話しました。

エントリーナンバー 02

次は MIXI の中西氏。中西氏は普段の業務で、MIXI 独自の人工知能を搭載した癒しの会話 AI ロボット「Romi (ロミィ)」の開発に携わっています。中西氏は、自ら作ったネタを学生時代から人前で披露しており、エンジニアとコント師という 2 つの顔を持っています。
今回は「Romi」の開発過程で培った高度な会話 AI 技術に加えて、過去の「ボケて」のデータを再評価して AI に学習させることで、「REIWA NO KAIBUTSU」を完成させました。「今日は自分自身のコントではなく、AI によるボケのほうで頑張ります」とユーモアを交えて意気込みを語ってくれました。

エントリーナンバー 03

カレーちゃん氏は、もともと公務員として働いていましたが、そこから一転、独学で AI の世界に飛び込んだ異色のエンジニアです。データサイエンスコンペティションで Grandmaster を取得したほどの実力者であり、データサイエンティスト向けの書籍も複数執筆。「夢はでっかくと考えています」と述べ、大きな自信を胸に登場。独自 AI「カレー」で勝負に挑みます。

 

 


技術解説員紹介

次に、本イベントのエバンジェリストと技術解説員 3 名を紹介。アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社からは、シニアエバンジェリストの亀田 治伸と、スタートアップソリューションアーキテクトの針原 佳貴が登壇しました (写真左から AWS 亀田、針原、電通デジタル 石川氏)。

亀田はコンプライアンスチェック担当として、AI の生成したボケが放送可能であるかをチェック。針原は AI・機械学習の専門家として、ボケ AI の裏側でどのような技術が活用されているのかを説明します。

また、株式会社電通デジタルからは、「写真で一言ボケて電笑戦」が開催されるきっかけとなった大喜利 AI “bokete camera” の開発者である AI エンジニアの石川 隆一 氏が登壇。AI の面白さや技術的な見どころを伝えます。

ルールやデモ、ハンズオンコンテンツの説明

登壇者の紹介のあとに、「写真で一言ボケて電笑戦」のルールが説明されました。お題はヒト、動物、無機物の 3 部門から各 2 問ずつの全部で 6 問が出題。1 分間のシンキングタイムのあと、お題に対して各 AI が一度ずつボケを返します。そして、最後に視聴者投票によって一番面白かった AI を決定します。

本戦に先がけて行われたデモンストレーションでは、コメンテーターの FUJIWARA 原西氏のシュールな写真をもとに、各 AI がボケを発表。それぞれの AI は順調に動作し、人間さながらのユーモアあふれるボケを披露しました。

本イベントで使用されているボケ AI は、画像を見てその内容を解釈し、それをもとに言葉で表現するという学習過程を経ています。このプロセスをたくさんのエンジニアが試せるように、AWS は誰でもボケ AI を作れるハンズオンコンテンツを用意しています。「ぜひ、このハンズオンを活用して、ボケ AI を開発していただきたい」と針原が紹介しました。

ハンズオンはこちら: ボケて電笑戦 Workshop


本戦 〜ボケ AI がしのぎを削る〜

そしていよいよ、本戦のお題が発表されました。各テーマに対して AI がいくつものボケを生成し、それらのうち最も面白い回答を開発者が選択、発表していきます。

いくつかピックアップして取り上げると、ヒト部門では「頭の上に鍋のような物を持っている女性の写真」が出題されました。「Aboke」は「アンパンマン!新しい顔よっ!!」、「REIWA NO KAIBUTSU」は「これの s あります?」、「カレー」は「部長の後頭部」とそれぞれ発表。人間がうまく意味を理解できないような画像に対しても、AI なりの解釈を行い、回答している様子が見てとれました。

動物部門では「猫の目からビームが出ている画像」が出題されました。「Aboke」は「ウォシュレットの水圧が強すぎた」、「REIWA NO KAIBUTSU」は「実写版『猫の恩返し』がひどい」、「カレー」は「メラがこっちに飛んできた」などのボケを発表。画像には写っていない、映画やゲームなどの内容も絡めて、回答していました。

無機物部門では「レースをしている 2 台の車がコーナーで競っている画像」が出題。「REIWA NO KAIBUTSU」は「アッコさん、そっち行かないでー!」、「カレー」は「ドリフターズ」、「Aboke」は「帰宅部世界大会決勝戦」とそれぞれ発表しました。

FUJIWARA のお二人は、それぞれの回答に対してボケやツッコミを入れつつ進行。「将来的に AI がイジリや天丼 (同じボケを繰り返すことで笑いを取る手法) もできるようになったら面白いですね」と、お笑い芸人観点のコメントを頂きました。


結果発表 〜栄えある優勝者は?〜

イベント終盤では、亀田や針原、石川氏が AI の技術解説や「写真で一言ボケて電笑戦」の所感を述べました。

針原は「どのボケも非常に面白く、AI それぞれの個性が出ている」とコメント。電通デジタルの石川氏は「画像に人が写っていても、ストレートに人について触れるのではなく、違った角度からボケている。画像を見たままの発想からずらすことも AI は学習できている」と言及。亀田は「前回の大会よりも相当に AI モデルがパワーアップしており、さまざまなボケの出力を楽しめた」と結びました。

そして、審査の結果、見事優勝したのは「REIWA NO KAIBUTSU」となりました。開発者である MIXI の中西氏は「印象の強さで言えば (他の開発者や AI に) 負けていたかもしれないですが、コンスタントに笑いが取れて良かったです」と語りました。

今年の「写真で一言ボケて電笑戦」も AI の可能戦に挑戦した意義深いセッションとなり、前回よりも着実にボケ AI のレベルが上がっていたと感じます。自分も AI でボケたいという方は、ぜひボケて電笑戦 Workshop で自分のボケ AI を作ってみてください。