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核融合科学研究所、大型ヘリカル装置(LHD)実験の大規模データ25年分 約2ペタバイトをオープンデータとしてAWSで公開
- 世界の核融合エネルギー(フージョンエネルギー)研究を支える核融合科学研究所では大型ヘリカル装置(LHD)の実験データを大規模に保有しており、今回AWSの基盤にてオープンデータとして公開した
核融合科学研究所は、大型ヘリカル装置(LHD)の実験データの25年分 約2PB(ペタバイト)をオープンデータとしてアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)の クラウド上で公開しました。学術研究基盤LHDは、核融合科学研究所が、25年にわたって世界最大級の超伝導プラズマ閉じ込め装置として実験研究しているものです。学術研究基盤LHDでは、超高温プラズマを安定に生成し、多様な高精細計測装置を用いてプラズマの内部構造を計測することによって、核融合に限らず宇宙、天体プラズマにも共通する様々な複雑現象の原理に迫り、超高温、極低温、放射線などの極限環境における材料科学などの分野においても革新的な進歩が期待できます。またグリーンイノベーションとして、太陽と同じ核融合を地上でエネルギー源として利用する核融合発電の実現に必要な要素の一つである超高性能プラズマの定常保持の実証を行っています。日本政府の科学技術・イノベーション戦略でも、新たなムーンショット型研究開発制度が始まっており、核融合エネルギー(フュージョンエネルギー)もその目標の中にあります。
核融合科学研究所では、学術研究基盤LHDを国内外の共同研究者に利便性高く利用可能としており、標準化されたデータの公開を進めていました。25年にわたるデータアーカイブがありかつ大規模データであるため、公開用のストレージとデータ提供基盤、データ転送に関わるネットワークに課題がありました。オープンデータとして公開するデータは約2PBにもなり、この規模のストレージを長期的に維持していくことが必要です。保守期限を迎えるとその入れ替えに手間や時間がかかることが想定されており、データを利用するユーザーとしては大容量のデータとなるため転送にも時間がかかりすぐに解析等処理ができないことが課題となっていました。また今後LHDのデータ利用が進み大量のデータのダウンロード行われていくと研究所の対外接続用ネットワークの帯域が占有されてしまう可能性があり通常業務への影響も懸念されていました。これらの理由などから、核融合科学研究所ではオープンデータを安定的に提供する基盤を探していました。
AWSオープンデータスポンサーシッププログラムには、数百以上のデータセットが集められ、AWS アカウントの有無にかかわらず、これらのオープンデータを誰でも検索して見つけることができ、誰でもが利用することが可能です。クラウドでの利用に向いた高価値データセットのストレージコストを AWS が負担することによってコミュニティの研究や開発の加速に寄与するオープンデータスポンサーシッププログラム をデータプロバイダーと協力して実施しています。
このたび核融合科学研究所は、AWSオープンデータスポンサーシッププログラムを利用し、学術研究基盤LHD の25年分にわたる実験データをオープンデータとして公開しました。データは AWS のオープンデータプログラム上で提供されるため、先に触れましたように、AWS アカウントの有無にかかわらず利用可能です。核融合科学研所がAWSを採用した理由は、スケーラビリティや耐久性の高さからAmazon Simple Storage Service (Amazon S3)へのデータ格納に価値を見出していた結果です。また、AWS 上で解析をする場合には、利用者にとってデータ転送にかかる手間を減らしてクラウド上ですぐにデータを解析できる環境を提供することができるようになります。AWS の基盤からのデータの配信となるため、核融合科学研究所のネットワークへの負荷も無く、研究所内のシステムと切り離した形でデータ提供も実現できました。
AWS 上へのデータ移行に関しては、AWS が SINET6 向けに SINET クラウド接続サービス内で提供している回線を利用し、平均 10Gbps 以上の伝送速度で核融合科学研究所から AWS 上へ伝送が行われ、データ伝送が比較的短期間で実施できたことも核融合科学研究所から評価いただけました。
今後 AWS 上で今回のデータを使って解析をする簡単な手順や、ワークショップなどを核融合研究所で実施されていく予定となっております。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮は、次のように述べています。「核融合科学研究所様との連携により、フージョンエネルギーの活用に弊社が貢献できること、大変嬉しく思います。国内の学術研究分野にとどまらず、全世界の産業界からこの オープンデータが活用され、様々な科学分野において技術革新が進むことを期待します。」
詳細について、核融合科学研究所のプレスリリースをご覧ください。
https://www.nifs.ac.jp/news/collabo/240614.html
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)について
核融合科学研究所(NIFS: National Institute for Fusion Science)は、大学共同利用機関法人自然科学研究機構を構成する研究所の1つであり、1989年に核融合科学分野における国立の研究所として設置されました。大学共同利用機関として国内外の研究機関から研究施設の共同利用が行われています。総合研究大学院大学をはじめとして大学院の学生に対する教育も実施しています。日本政府の科学技術・イノベーション戦略でも、新たなムーンショット型研究開発制度が始まっており、フュージョンエネルギーもその目標の中にあります。詳細については以下の URL をご覧ください。
https://www.nifs.ac.jp/
大型ヘリカル装置(LHD)について
大型ヘリカル装置(LHD:Large Helical Device)は核融合科学研究所により、25年にわたって世界最大級の超伝導プラズマ閉じ込め装置として実験研究されています。LHDでは、超高温プラズマを安定に生成し、多様な高精細計測装置を用いてプラズマの内部構造を計測することによって、核融合に限らず宇宙、天体プラズマにも共通する様々な複雑現象の原理に迫り、超高温、極低温、放射線などの極限環境における材料科学などの分野においても革新的な進歩が期待できます。この規模の実験装置は世界的にも簡単には製作できず実験も大がかりなものとなるため、実験によって計測されたデータは様々な研究機関や企業にとって貴重な研究材料となります。現在も実験が行われていますが、これまでも25年にわたって様々なデータをとり続け、現在約2PBもの大規模データとなっています。