Amazon Web Services ブログ

Amazon Bedrockの生成系AIテクノロジーを活用して設計開発業務を進化させよう

みなさん、こんにちは!製造業のお客様を中心に技術支援を行っているソリューションアーキテクトの山田です。

AWS の生成系 AI サービス・ Amazon Bedrock  が GA (General Availability) になりました。

本ブログでは、Amazon Bedrock の Claude v2 ( by Anthropic 社) モデルを指定して、 Playgrounds のチャット機能を手軽に使用する方法について解説します。

今回は製造業で設計開発業務に取り組まれている R&D (Research and Development:研究開発) エンジニアの方を想定ユーザーとして設定させていただきました。本サービスを活用して、どのように設計開発業務改善を実現できるかについてのイメージを持っていただけるような構成になっています。

なお、本ブログの内容は2023年10月12日時点の内容に基づいて実行しています。執筆段階では東京リージョンにおいては Claude v1.3 モデルしか利用できません。 現時点で最も新しいバージョンは v2 になりますので、ここでは v2 モデルが利用できる北米のバージニア北部リージョンで試行を行います。また、 Amazon Bedrock は日々進化しており、ブログ作成段階ではできなかったことも、ブログを読んでいただいた時点ではできるようになっている場合もありますのでご注意ください。

取り組む内容

設計開発プロセスの大きなマイルストーンの一つに、 DR (デザインレビュー:設計審査)があります。 DR では設計仕様書や設計計算書など、たくさんの設計ドキュメントを用意する必要があります。本ブログではその中から、 FMEA ( Failure Mode and Effects Analysis :故障モード影響解析)に着目し、 Amazon Bedrock を活用して FMEA のドキュメントを効率的に作成するイメージをお見せしたいと思います。

FMEA の狙いは、製品や製造プロセスに潜在する故障モードを事前に洗い出し、影響を分析評価したうえで対策を講じることです。なるべく広く故障モードを想定できたほうが設計品質が高くなりますが、それには熟練の知識や経験が必要になります。また、洗い出す項目が多いほど、ドキュメント作成に時間を要します。このような FMEA のドラフトを、 Amazon Bedrock を活用して作成することで、基盤モデルの特性を活かした広い観点での項目抽出を素早く行うことができるようになります。

実行方法

まずマネジメントコンソール上部の検索バーで、「bedrock」などと打ち込んでいただくと、 Amazon Bedrock が候補に表示されます。クリックしてサービス画面に移行してください。

サービス画面に移行すると、画面左に Playgrounds という項目が表示されます。今回は Chat 機能にアクセスして、生成系 AI と対話形式でやり取りを行います。

Amazon Bedrock では、主要な AI スタートアップ企業や Amazon から提供される幅広い基盤モデルの中からユースケースに適したものを選択して使用することができます。詳細については Amazon Bedrock の製品ページをご参照ください。初期状態ではモデルアクセスへの権限が与えられていない状態のため、以下画像のように Base Models の中から選べるものが存在しません。そこで、まずモデルアクセスへの権限付与設定を行います。

画面左の Base Models をクリックし、 Claude v2 にカーソルを当てると、画面の黄色部分のような枠が表示されますので、 Model access ボタンをクリックします。

すると、以下画面に遷移しますので、 Claude にチェックマークをつけます。現状 Available が灰色になっていますが、このチェックを入れた状態で画面最下部でオレンジ色の Save changes ボタンをクリックすると、利用可能な状態に変わります。

以下画面のように、 Claude が Access granted の状態になれば利用可能です。

Access Granted

画面左の Chat ボタンを押すと、以下画面のように、 Base Models として Anthropic が選択可能な状態になっています。その右では Claude v2 を選択します。

この状態で、Add InstructionsのHuman : と記載されている箇所からチャット文章を書き込むことが可能になっていますが、書き込む文章が長い場合などに備えて、 Update inference configurations をクリックして、 Maximum Length (出力トークン数の最大値)を上げましょう。(トークン数はおおまかに文字数に相当するものと捉えてください)

In

Maximum Length をデフォルトの300から上限の2048に上げます。

事前の設定が済めば、いよいよチャット文章を打ち込みます。以下画面の赤枠で、Human : と記載されている箇所に続いてこのような文章を打ち込みました。

「冷却ファンのFMEA(故障モードと影響解析)を作成してください。表形式で、列には、機能、故障モード、故障影響、故障原因、重要度(影響の重大度)、重要度(発生頻度)、重要度(検知難易度)、致命度(影響の重大度*発生頻度*検知難易度)、対策内容を入れてください。重要度はそれぞれ、1,2,3点のいずれかで表してください。多様な機能の観点で合計10個の故障原因について、対策内容は50文字程度を目安に具体的に記述してください。」

Run ボタンを押すと、紫色の箇所に Anthropic Claude v2 から回答文章が返ってきました。この状態では表形式で表示されていませんが、右上のほうにあるコピーボタンを押して、Excel などの表計算ソフトに貼り付けていただくと、表形式で表示されます。

必要に応じて罫線や色を追加するなどして見やすく編集しましょう。こちらが Anthropic Claude v2 によって数秒で作成された冷却ファンの FMEA になります。(※注意点として、生成系 AI ではランダムな要素が含まれるため、同じ質問をしても異なる回答が返ってくることがあります)

FMEA

このFMEAの良い点、改善が求められる点としては主に以下が挙げられます。

良い点

  • 機能ごとに故障モード、影響、原因を網羅的に洗い出されている
  • 致命度が指示された定義通りに算出されており、リスクの大きさが定量化されている
  • 対策内容が適度な文字数である程度具体的に記載されている

改善が求められる点

  • 重要度(影響、頻度、検知)の評価根拠が不明確(例えば、異音発生の重要度(影響)は本当に1点が相応しいのか、まだ動く状態だが騒音不快感を考慮すると影響はもっと大きいのではないか、など)
  • 対策内容が要件に合うかが不明(例えば、定期的に確認する対策項目が多いが、要件に即時性が求められていた場合常時監視などの対策が必要となる、など)

このように、生成系 AI を活用してドキュメントを作成する際には大事なポイントがあります。

ポイント1:質問段階で希望する出力形式を具体的に指定すると、それに沿ったドキュメント作成が行える

ポイント2:項目の洗い出しや、ドキュメントのドラフト作成をまず生成系 AI に任せて、取捨選択判断や仕上げは人間が行うことで、品質向上や工数短縮が実現できる

生成系 AI は便利である一方、タスクを任せきりにしてしまうと思わぬ誤りがコンテンツに含まれてしまったりすることがあります。適材適所で生成系 AI に任せる部分、人間が責任を持って判断する部分を切り分けるようにして、設計開発業務を進化させましょう。

著者プロフィール

山田 航司 (Koji Yamada @yamadakj)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト

製造業のお客様を中心にクラウド活用の技術支援を担当しています。好きな AWS のサービスは Amazon Transcribe です。

愛読書は「大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ」です。