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e コマースのトラフィックパターンにおける異常検知の自動化

e コマース市場は年々拡大を続けており、小売業界のさらなる変革を後押ししています。小売業者は、より多くの顧客を EC サイトへ呼び込むことに尽力しており、特にブラックフライデーやサイバーマンデーなどのピーク時の売上において、EC サイトが占める割合が高まっています。Statista によると、2022 年第 3 四半期、米国の小売業全体の売上において、 e コマースの占める割合は 14.8 % で、これは前四半期を上回っており、金額にして約 2660 億ドルになります。

小売業のリーダーが、e コマース事業から更なる価値を得る方法を模索しているのは、驚くことではありません。そのため、多くの企業がウェブサイトのトラフィックを監視し、売上に影響を与え得るオンラインアクティビティの変化の兆候を見つけ出そうとしています。例えば、トラフィックが減少することは、製品の価格設定が最適でなかったことや、システム障害などの要因により、需要が減少したことを示す可能性があります。いずれにせよ、売上は打撃を受けることになります。

一方、e コマースのトラフィックが急増することは、小売業者にとって良いことのように思えますが、必ずしもそうとは限りません。例えば、価格設定にミスがあり、オンラインショップの顧客がとんでもない安値で商品を買い占めていった場合です。最近、ある大手小売業者が、ウェブサイト上の小数点の位置を間違えて、100 ドルの人気商品をわずか 10 ドルで表示したことがありました。オンラインショップの顧客は大喜びで商品を大量に注文し、小売業者はこの不手際を修正し、さらなる損失を食い止めるために奔走することになりました。

どちらのシナリオでも、重要なのは、e コマースのトラフィックを常に把握し、発生した問題を解決するためにチームを迅速に動員することです。そこで、アマゾン ウェブ サービス( AWS )の人工知能と機械学習ソリューションが役に立ちます。小売業者は、ビデオやデータストリームをリアルタイムで収集、処理、分析できる Amazon Kinesis や、メトリクス内の異常を自動的に検出し、その根本原因を特定する Amazon Lookout for Metricsなどのサービスから多大なる恩恵を受けることができます。

トラフィックの変動に対処する

小売業者は、e コマースのトラフィックが季節、月、日付、時間帯によって大きく変化することをご存じでしょう。例えば、多くの e コマースサイトでは、朝方の時間帯よりも夕方の時間帯でトラフィックが多くなります。また、平日ではなく、週末にトラフィックが急増するケースもあります。一方、休日やその他のピーク時のトラフィックは、これらのトレンドのいずれにも当てはまらないかもしれません。このように動的で様々なパターンがあるため、ユーザートラフィックの少数派な異常をニアリアルタイムで検出することは非常に困難です。

大規模な e コマースを展開する企業の多くは、ユーザートラフィックの主要な異常を検出するための手順をすでに整えています。しかし、これらのプロセスは、静的なアラートや手動による監視技術に依存していることが多く、少数派な異常をニアリアルタイムで検出することは困難であり、問題が起こった際にチームが迅速に介入し、対応することが難しくなっています。

小売業者は、過去のデータパターンに基づいて、ユーザートラフィックのわずかな変化を検出することができるスマートなソリューションを必要としています。しかし、静的なルールに基づいてこれらの傾向をプログラミングすることは、非常に時間がかかり、導入後の効果もあまり期待できないことがあります。

予想されるトラフィックの変動を考慮しつつも、小売業者が自動的に少数派な(そして主要な)異常を検知したい際に、AWSの異常検知ソリューションがどのように役立つかを詳しく見ていきましょう。

e コマーストラフィックのための異常検知ソリューションのアーキテクチャ図

図1. e コマーストラフィックのための異常検知ソリューションのアーキテクチャ

AWS の異常検知ソリューションとの連携

このソリューションは、データ収集と異常検知を自動化し、データを操作して、重大性に基づいて異常をフィルタリングするためのグラフィカルユーザーインターフェースを提供します。ここからは、このソリューションがどのように機能するかを説明します。

  1. 顧客は、オンラインショッピングのために e コマースアプリケーションを利用します。 

    プロセスは、顧客がモバイルまたはデスクトップアプリケーションを使用して、e コマースのウェブサイトで商品を検索し、表示することから始まります。買い物かごに商品を入れた後、決済ページで購入を完了します。これらのページのトラフィックは、時間間隔に基づくデータの塊に分解されます。これらは、トラフィックのパターンを理解するために使用できるデータポイントとして機能します。

  2. データは、取り込まれ、変換され、保存されます。 

    e コマースアプリケーションは、複数のフォーマットと異なる量のデータを生成します。それを理解するためには、データを継続的に取り込むストリーミングプラットフォームにデータを供給する必要があります。このソリューションでは、Amazon Kinesis Data Streams(あらゆる規模のデータストリームの取得、処理、保存を支援)を使用して、ユーザーのトラフィックを取得し、e コマースアプリケーションとのやりとりを記録します。通常、収集したデータを修正または「変換」して、迅速な分析や機械学習に適した形式で保存する必要があります。Amazon Kinesis Data Firehose(ストリーミングデータを取り込み、変換し、データレイク・データストア・分析サービスに配信することができるサービス)や AWS Lambda(サーバーやクラスタを意識せずにコードを実行できるサーバーレス、イベント駆動型のコンピューティングサービス)などの AWS サービスは、データを変換して分析用に準備するために役立ちます。データは、どこからでもどんな量のデータでも取り出せるように構築されたオブジェクトストレージサービス、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)を使って、効率的にクラウドに保存されます。

  3. トラフィックの異常を検出し、チームに通知します。 

    データをニアリアルタイムで分析し、異常を特定する準備が整ったので、ここからが Amazon Lookout for Metrics の出番です。まずは、Amazon Lookout for Metrics で検出器を作成し、Amazon S3 データリポジトリからデータを自動的に取り込むことから始めます。検出器が起動すると、Amazon Lookout for Metrics はデータの監視を開始し、異常があればニアリアルタイムでフラグを立てます。誤検知を減らすために、検知システムの感度を 0 から 100 の間で調整することができます。機械学習技術を使用して、Amazon Lookout for Metrics は、トラフィックパターンからフィードバックを得て、時間の経過とともに検出結果の継続的な改善をします。当然ながら、異常があればチームメンバーに通知したくなるでしょう。通知により、ウェブサイトで何が起きているのかを理解でき、必要に応じて迅速に是正措置を講じることができるようになります。このソリューションは、Amazon Simple Notification Service (Amazon SNS) とシームレスに統合されており、SMS テキストメッセージ、モバイルプッシュ、電子メールを通じてアラートや通知を自動的に送信することができます。

まとめ

AWS の異常検知ソリューションにより、小売業者は e コマースのトラフィックを監視し、売上に影響を与え得るトラフィックパターンの異常を迅速に検知するための強力なツールを手に入れました。これは、従来の静的アラートや手動による監視技術を大きく前進させるものです。オンライン販売の拡大と不必要な損失の回避を目指す小売業者にとって、このAWSのソリューションは、コストと時間のかかる自社開発ソリューションに投資することなく、目標を達成するための効果的な方法となり得るでしょう。

各サービスの詳細は

著者について

Aditya Pendyala

Aditya は、NYC を拠点とする AWS のシニアソリューションアーキテクトです。クラウドベースのアプリケーションのアーキテクトとして豊富な経験があります。現在、大企業向けに、拡張性、柔軟性、耐障害性に優れたクラウドアーキテクチャの構築を支援し、クラウドに関するあらゆることの案内をしています。Shippensburg 大学でコンピュータサイエンスの理学修士号を取得しました。また、彼は、” When you cease to learn, you cease to grow “という言葉を信条としています。

翻訳は Solutions Architect 金成が担当しました。原文はこちらです。