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AWS ITトランスフォーメーションパッケージ ファミリー(ITX)– 生成AIの土台となるデータ活用を支援し、パートナーと連携した支援を拡充。さらに、 公共のお客様の大規模なクラウド移行を支援する、新たな包括的クラウド移行支援プログラムを開発

みなさん、こんにちは。シニアマイグレーションスペシャリストの富松です。

AWSジャパンでは、AWSへの大規模なシステムの移行を実現し、ひいてはお客様のデジタルトランスフォーメーションをサポートする 「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」を2021年に、2022年には内容を強化・拡大した「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ2.0(ITX2.0)」をリリースしました。2023年にはITXパッケージ2.0をより包括的に進化させた「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)」をリリースし、2021年以来多くのお客様にご活用頂き、企業のITトランスフォーメーションを支援してきました。

今回のブログでは、ITX 2023を更に包括的に進化させ、2024年6月にリリースした、最新版の「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ ファミリー(ITX)」をご紹介します。(最新版のITX資料ダウンロードはこちらから

生成AIの活用が企業の喫緊の課題に

近年、生成AIが画期的な技術革新をもたらしています。自然言語処理の生成AIから、画像生成AI、さらにはコード生成AIまで、様々な分野でイノベーションが生み出されています。企業においても、業務効率化や新規ビジネス創出に向けて、生成AIの活用が進んでいます。

PwCコンサルティングの「生成AIに関する実態調査2023 秋」によると、調査対象企業の87%が「既に生成AIの社内利用あるいは社外活用(その検討)を進めている」と回答。さらに43%が2024年3月までの生成AI本格導入を予定し、約58%は今後1年以内に導入を検討しているなど、導入に向けた動きが加速する見込みです。

しかし一方で、生成AIを実際のビジネスに活用する際には、大きく2つの課題が存在しています。

1つ目の課題は、データ基盤の整備です。AWSのVice President of Data and AIであるDr. Swami Sivasubramanianが「データは生成AIアプリケーション活用における差別化要因である」とre:Invent 2023において述べているように、生成AIモデルの入力データの質が重要になります。しかし、企業の多くではデータのサイロ化が進み、必要なデータが統合されていないのが実情です。

2つ目の課題は、生成AIの活用に必要なスキルやノウハウの不足です。同レポート「生成AIに関する実態調査2023 秋」では、生成AI活用において直面した課題の上位2つが「必要なスキルを持った人材がいない」「ノウハウがなく、進め方が分からない」となっています。従来の機械学習とは発想を転換する必要があり、社内人材のリスキリングや専門人材の確保が欠かせません。

企業のDXを支えるパートナー連携の重要性

デジタル変革を推進するうえで、クラウドへの移行はほとんどの企業が直面する大きなチャレンジです。DXに取り組む企業の約6割が上流工程などの内製化を志向していますが、ユーザー企業におけるIT人材不足が阻害要因となっています。依存度の高いシステムインテグレーターや専門コンサルティング会社との協業は必須不可欠です。

しかし単に顧客がパートナー企業に移行を任せるだけでは不十分です。つまり、パートナー企業がITをどのように活用すればお客様のDX推進につながるか、パートナー企業が深く理解する必要があります。「ITを使って何ができるのか」「どのようなアーキテクチャが適切なのか」といった視点から、クラウド上のシステム開発・運用を支援することが求められます。

また、システム開発やシステム運用を支援するパートナー企業は、既存プロジェクトの技術支援だけではなく、AWS環境全体の運用やアカウント管理 (リセール事業)、新規のシステム移行支援などでも顧客に貢献したいと考えています。

AWS ITトランスフォーメーションパッケージ (ITX)の最新版で、包括的な支援を実現

こうした企業の課題と要望を受け、AWSジャパンでは「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」の最新版を2024年6月20日にリリースしました。最新版のITXでは、クラウド移行、データ活用、生成AI導入の3つの側面から、デジタル変革の実現をワンストップで支援します。AWSの専門性とソリューション、AWSパートナーネットワークを最大限活用することで、包括的な支援を行います。

また、ITXパッケージはこれまで民間企業のお客様のクラウド移行を支援してきましたが、公共分野特有の要素を固有には取り込んでいませんでした。今回AWSの活用やガバメントクラウドへの移行を考える中央省庁や地方自治体といった公共のお客様と、そうしたお客様を支援する事業者様向けに従来のITXの内容を拡張し、5つめの支援パッケージとして、ITX公共版(ITX for PS)を2024年7月5日にリリースしました。

最新版のITXでは、生成AI活用に向けた新サービスとして、ITX for Cloud Nativeにおいて、以下の2つを提供します。また、ITX for MCP Partnerにおける、パートナー連携を強化します。

データプラットフォーム検討支援「Data Platform Modernization Assessment(DPMODA)」

データプラットフォーム検討支援「Data Platform Modernization Assessment(DPMODA)」では、データドリブン経営や、自社データを生成AIで最大限活用することを目指すお客様に対して、AWSの専門チームがお客様の現行データ基盤を分析し、モダナイゼーションのポイントや、To-Beアーキテクチャ案を提示します。

データプラットフォーム検討支援を通じて、現行データ基盤の成熟度を把握することで、今後の戦略策定に活用できます。また、To-Beアーキテクチャ検討を通して、現行基盤の単純移行にとどまらず、クラウドでの機能強化のヒントが得られます。

生成AI活用ワークショップ「Innovation EBA(Experience-Based Acceleration)」

生成AI活用ワークショップ(Innovation EBA)は、アジャイル型のインタラクティブなアクティビティです。お客様は、組み込みのAWSサービスと規範的なガイダンスを利用して、ビジネス価値向上を達成するためにAI/MLモデルの構築や、生成AIのユースケース実践をすばやく実現できます。

具体的には、約6週間でAI/MLモデルや生成AIユースケースを開発・実行できるようサポートしたり、未活用のデータや技術から新たなビジネス価値を引き出すことができます。技術ではなく主要なビジネス課題の解決に焦点を当て、実践を通してAI/ML、生成AIのスキルを身に付けられます。さらに、お客様ビジネスに合わせたユースケース開発の加速も図ることができます。AI/MLや生成AIを事業戦略の中核に据え、経営陣の強力な後押しと変革への意欲があれば、より効果的です。ビジネスインパクトが大きく本番環境への展開が見込めるユースケース、生産性や顧客体験、成長分野でのAI/ML活用ニーズがあれば適しています。

ITX for MCP Partnerにおけるパートナー連携強化

AWS移行コンピテンシーパートナー(Migration Competency Partner=MCP)とは、“移行コンピテンシー”を保有されているAWSパートナーの事を指し、基幹システムや業務アプリケーションのAWSへの移行において、調査から計画、移行、運用までのすべてのフェーズにおける専門知識、豊富な実績やソリューションを持つAWSパートナーを認定させていただくものです。そのようなMCPパートナー各社が提供しているプログラムと、ITトランスフォーメーションパッケージが従来より提供していたプログラムを組み合わせたものが、「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ for MCPパートナー(ITX for MCP Partner)」になります。

ITX for MCP Partnerをご利用いただく事により、AWSが持つクラウド移行の様々なオファリングに加えて、MCPパートナーが持つビジネスに関する専門知識、移行およびモダナイゼーションのツールやオファリング、教育などのサポートを併用して受けていただくことができます。

MCPごとに提供内容は異なりますが、例えば移行の計画立案から実行、データ分析基盤の構築、AIシステムの開発、運用支援まで、DXの実現に向けた幅広い支援が受けられます。

2024年6月現在、SCSK、Classmethod、富士ソフト、NHNテコラス、TIS、TOKAIコミュニケーションズ、 CTC、サーバーワークス 各社のITX for MCP Partnerがリリース済みで、今後は他のMCP各社のITX for MCP Partnerも追加予定です。多様なパートナーと連携することで、企業のニーズにより適合したソリューションを提供できます。

ITXパッケージ最新版の始め方

ITXパッケージ最新版のご利用に向けて、入り口は2つあります。
1)Webフォームからお問い合わせ頂く。あるいは 2)担当営業までご連絡ください。

AWSクラウドへの移行やモダナイゼーションにご関心をお持ちのお客様は、AWSで移行とモダナイズのページをご確認ください。AWSへの移行やモダナイゼーションに必要な情報が網羅されています。

ITXパッケージ最新版にご興味をお持ちのお客様は、是非上記2つのいずれかよりAWSへお問合せください。

サービス&テクノロジー統括本部 マイグレーション&モダナイゼーションビジネス本部
シニアマイグレーションスペシャリスト 富松卓郎